カカサス50音SSS 『た』



カカシの家。
ソファーに並んで座る二人。

「何か無いの?」
「‥‥無い」

サスケへの質問。
回答と静寂。

「一緒にいるのつまらない?」
「‥‥さっきから何なんだよ」

カカシを見る瞳は相変わらずで眉間にはシワが寄り、答える口はまるで捻くれているかのような形をしていた。
それはカカシの中に不安と必死さが生まれるには十分だった。

「サスケには少しでも楽しい時間を過ごしてほしいんだよ」

それはカカシの呆れるほど素直な思いだった。

「余計なお世話だ」

冷たく突き放せばすぐに凹む頼りない所も、サスケは知っていた。

「切ないなぁ‥‥」

そしてそんな所にさえ和んでしまうようになっていた事も、サスケは分かっていた。
悔しいが事実な一言を、ぽつりと呟く。

「今のままでいい」

いや、今のままがいい。
そのサスケの思いは、口に出されることは無かった。

(並んで座ってるだけで十分だって思ってること、いい加減に気付けウスラトンカチ)

分かっていないのか、本当はお見通しなのか。
今だによく分からない事もあっと苛立つけれど。
代わりに、ほんの少しだけ、カカシに身を寄せるように座り直すサスケの姿が在った。


『ただ、それだけで良かったんだ』


――それ以上の幸せは眩しくて、目が眩んでしまいそうだから。

Fin.『た』
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