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『ま』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『ま』


人に待たされるのは、嫌いだ。

待ち合わせなんて事自体、他人に比べれば機会も少ない俺だが、全く無いというわけでもない。
今日は、カカシとの修業‥‥という名目の、所謂デートの約束だ。

(約束‥‥)

『明日、朝7時にせんべい屋の前で!』

幼きあの頃に交わした約束は、叶うことなく、
待っても待っても、彼は来なかった。
皆、亡くなったのだから。

ふと思い出された記憶に、不安が募る。

口先の約束はひどく脆く危ういものだと、サスケは身をもって知っているのだった。

「‥‥‥‥ケ、サスケ」
「っ!!」

視界が陰り、かけられた声にハッとなる。
どうやら思考だけ飛んでいたようだ。
そしてそこから連れ出してくれたのは、待って止まなかった相手で。

「待たせてすまないな、サスケ」

約束より15分遅いけれど、普段の任務でルーズなカカシからすれば早い方だ。
それに、珍しく汗ばんだカカシの様子を見るに、何かあったように感じられた。

「‥‥遅い」

そして何より、来てくれたことだけで、もうなんでも良くなってしまっていたものだから、せめてもの抵抗にと、いつもの悪態をつくしかできなかった。


『待たされる間の不安は、君の顔を見ただけで消えていく』


――君の存在が、何よりも僕に安堵をくれる。


Fin.『ま』
Next→『み』

多分表紙

間に合うといいなと願いながら製作中です。

『ほ』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『ほ』


「この間借りてた本、分かりにくかったから‥‥」
「そう。アレはかなりの上級者向けだからね‥‥それよりも少し易しめの本、読む?」
「あ、ああ‥‥」
「とりあえず、上がって」

ここに来た時の彼は無防備だ。
日を経て無防備になっていった、というのが正確なところだろう。
最初の頃は、ここに来ている最中も、毛を逆立てた猫みたいに警戒していた。
今は安堵を感じてくれているようで、それでいて、どちらかというと遠慮がちな様子さえ伺える。

「これ、どうかな」
「少し、読んでもいいか?」
「もちろん」

俺の心の中でうごめく感情を、この子は知るはずもない。
けれど日に日に増すのは『欲しい』という端的で貪欲な独占欲。

「あの本の入門編みたいな作りになってるんだけど」

身体だけなら、強引にでも奪えてしまうだろう。
肩を抱いて引き寄せたら、気を抜いているその軽い身体はこちらに倒れてくるだろう。
そんな情景を脳内で描き、それを現実にしようと無意識に伸びる、手。

「チィ、やっぱり難しいな‥‥」
「ッ‥‥!」

肩に触れる寸前、彼の声でようやく我に返る。
この子の心までは、それでは得られないだろうと自分を咎め、腕を引いた。

それは、もっともらしい理由という名の、言い訳にすぎないと知りながら。



『欲しがってはいけないのだと、何度も言い聞かせて』

――幾重にも気持ちに蓋をして、傷つく事から逃げてばかりの、そんな臆病者。


Fin.『ほ』
Next→『ま』

『へ』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『へ』



「なぁ、顔色悪いんじゃないのか?」
「そんなことないよ」

草むしり任務の多いこの時期は、太陽の日差しが鬱陶しい。
日陰で監視という名目の、休憩兼サボりをしていた俺に対するサスケの問いは、正しかった。
けれど、それを容易に肯定するのは、師であり、大人であり、恋人である俺には無理な話だ。

「嘘つくなよ。早く帰れ」

アンタがいなくたってこれくらいの任務ならできるから。
そう言うサスケが少し意地悪に見えたから、俺なりの意地悪を返した。

「そんな悲しいこと言うサスケくんには、チュウしちゃうよ?」

顔を触れるギリギリまで近づけて。
夜しか出さないような特別な声色を使って。

こんな事をしてる時点で、相当熱にやられてるのだと頭の片隅で分かっても、もう遅い。

少しやり過ぎたか。
さすがのサスケも赤面して動けないだろうと思い、油断した、その時。

「ほら、やっぱり熱、あるじゃねぇか」

額当てを取られ、額にひんやりと触れたのは、小さな掌。
サスケでなく、俺が驚かされるなんて。
心臓が跳ねる、なんて表現は今まで比喩でしかないと思っていたけれど、まさにそんな感覚だった。

身体のわずかな変化にも気づいたこの子は、きっとこの先俺が悩んだり落ち込んだ時、強がってもやはり、違いに気づくのだろう。
それでも俺は、きっとまた嘘をつく。


『下手な嘘などすぐに見抜かれてしまうのに』


――それでも大丈夫だと、大切な君の前だからこそ強がる俺を許して。


Fin.『へ』
Next→『ほ』


おやすみなさいm(_ _)m

『ふ』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『ふ』


初めての、感覚。
胸が奮えるような。

「サスケ!」
「分かってる!」

他の誰と組んでも、チームワークなんてものは生まれたことが無かった。
里に返ってきて、出来る限りの罪滅ぼしをと思っても、異端なスキルと感性に、誰も付いてこれはしなかった。

カカシを除いて。

互いの手の内が、次の手が、言わなくても分かる。
空気だけで伝わってきて、自然と身体に染み込んでくる。
過剰に合わせようと意識せずとも、元々ベクトルが似通っているのか、通じ合いやすかった。

初めて他者と力を合わせる事の可能性を感じた。
全身がざわついて、胸が熱くなった。

二人で相手するには一見不可能にさえ感じられるような人数を相手にしても、半分以上はチャクラが残っていた。

「サスケで助かったよ」

俺だって同じ。
カカシで助かったと思ったけれど、言おうとした唇はカカシのそれで塞がれ、言葉が紡がれることはなかった。
変わりに心の中で、一つの思いが強まるのを感じた。

先程の言葉と同様に、カカシも同じように思ってくれていたらいいなと、そう思った。


『二人でなら、何でも出来そうな気がする』


――今までは一人で出来ると、強がっていたのに。

Fin.『ふ』
Next→『へ』



久々のカカサス50音SSでした(>_<)
状況説明が少ないのは皆様の想像力に委ねるということで‥‥←コラ