カカサス50音SSS 『み』
愛などいらない。
寒くなったなら、体温だけ共有すればいい。
ずっと、そうして生きてきた。
カカシにも、例外ではなく。
“付き合う”とは名ばかりで、俺の心は微動だにせぬまま、カカシとの関係を持っていた。
「サ、スケ‥‥?」
だから、普段甘えるなんてしない俺が、カカシの部屋に入るなり抱きついた事は今までになくて。
俺からの初めての行動に、カカシは驚いているようだった。
「9月‥‥アンタの誕生日があるんだろ?」
カカシの胸に顔を埋め、遠慮がちに問いかける。
「そう、だけど‥‥」
「だから、たまには、アンタのために何かしてやろうと思って」
悪戯。
ただ、普段澄ました顔の上司を驚かすためだけの行為。
共有するのは熱だけで、心なんていらない。
俺の心は、いつだって凍りついたまま。
それでいい。
復讐に温もりなんていらないのだから。
(ただ、何となく思いついたからやっただけだ)
そのはずだったのに。
振り返ったカカシの表情に、胸がざわついた。
『見たことも無いようなアホ面は、それでいてこれ以上にない笑顔だった』
――コイツは俺の心を掻き乱す。なんてズルい奴だろう。
Fin.『み』
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2011-9-11 23:20