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『み』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『み』


愛などいらない。
寒くなったなら、体温だけ共有すればいい。

ずっと、そうして生きてきた。
カカシにも、例外ではなく。
“付き合う”とは名ばかりで、俺の心は微動だにせぬまま、カカシとの関係を持っていた。

「サ、スケ‥‥?」

だから、普段甘えるなんてしない俺が、カカシの部屋に入るなり抱きついた事は今までになくて。
俺からの初めての行動に、カカシは驚いているようだった。

「9月‥‥アンタの誕生日があるんだろ?」

カカシの胸に顔を埋め、遠慮がちに問いかける。

「そう、だけど‥‥」
「だから、たまには、アンタのために何かしてやろうと思って」

悪戯。
ただ、普段澄ました顔の上司を驚かすためだけの行為。
共有するのは熱だけで、心なんていらない。
俺の心は、いつだって凍りついたまま。
それでいい。
復讐に温もりなんていらないのだから。

(ただ、何となく思いついたからやっただけだ)

そのはずだったのに。
振り返ったカカシの表情に、胸がざわついた。


『見たことも無いようなアホ面は、それでいてこれ以上にない笑顔だった』


――コイツは俺の心を掻き乱す。なんてズルい奴だろう。


Fin.『み』
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