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第6話(下)

敵というものは待ってはくれない。1日に2回以上怪人が出現する時だってある。


ソード・メギド戦後から数時間後。鼎は身体の痛みに悶えながらも救護所で眠っていた。
鎮痛剤は打ってあるが、戦闘のダメージはそれでも効かない時もある。

「痛い…。これでは眠れない…」

鼎はなんとなく眠れずにいた。



深夜近くにアラートが鳴る。さすがに夜中なのでアラートの音量は控えめだが。

救護所の通路をバタバタ走る音がした。夜勤の隊員達が出動しているな…。



夜の市街地。怪人はうろうろしながら人間を狙っていた。夜中なせいか、街中の人は少ないので避難はあっさりと完了。


宇崎は直接隊員達に指示を出す。

「とにかく銃撃しろ!そこに御堂は…いるわけないか」
「室長!御堂さんはいませんが、渋谷さんならいます!」
「よし、現場の指揮は霧人に任せる。き〜りと〜、出番だよ〜」
「室長、深夜だからって変なテンションで指示しないで下さい」

霧人の声だった。
「悪い悪い。霧人、お前って変わった武器を使うよな?」
「トリッキーなもん、好きですからね」
「出現したメギドは戦闘員と強さの差があまりない量産型みたいだ、霧人。好きにやっちゃって」
「はーい」
「深夜だから早く片付けたいだろ」



深夜の市街地。霧人はどこからか戦輪を2つ、出した。それを指でぐるぐる回す。
怪人はそれが何かわからない様子。霧人はニッと笑うとその戦輪を勢いよく投げた。

勢いづいた戦輪は弧を描き、怪人にスマッシュヒット!怪人はトリッキーな攻撃に翻弄される。霧人は夜間戦に強いため、夜の任務が多い。


霧人は次々とトリッキーな攻撃を繰り出し、時折肉弾戦をし→約10分でメギドを撃破。


霧人は撃破の報告を入れた。

「室長、メギド殲滅しました」
「霧人、お前スマートに倒すよな〜。早く撤収して、帰りなさい。寝たいでしょう、君たちは」
「夜勤、キツいですからね〜」
「対怪人組織は昼夜交代だから仕方ないだろ!いつ来るかもわからんのに」
「確かにそうですね〜。んじゃ、俺達撤収します」


通信が切れた。宇崎は安堵した。ようやく寝れる…。仮眠でもいいから寝れるぞ…。



深夜のゼルフェノアはだいたいこんな感じ。

隊員達は昼夜交代制。いつ敵が来るかわからないため、どの時間帯もハード。しかも常に命懸け。なので待遇はいいし、給料も高い。当たり前か。市民が憧れるのも納得。

実は司令クラスの方がベリーハードだが。宇崎は激務でショートスリーパーになってしまっている。
逆に支部の小田原はロングスリーパーだと聞くが。



1日に2回以上出現は稀らしく、その日の本部は本部に泊まる隊員が続出した。


本部には簡易宿泊スペースも整備。8部屋くらいまであり、男女別々に完備。男女別々のシャワールームもある。
隊員共用(男女別々)の洗濯機まで完備されているのが本部宿泊スペースだ。



鼎は再び通路をバタバタする足音を聞いた。隊員達が帰ってきたんだ。
今夜は本部に泊まる隊員多そうだが、眠れない…。


発動の反動で身体の負荷が倍になったせいで、思うように動けないでいる。
これでは明日(今日)も大人しく救護所に引きこもるべきか…?
これだからこの身体が憎いのだ…。あのせいで、あれのせいで全て奪われたのだから…。

仮面生活になってから長いが…。戦闘後が苦痛すぎる。
仮面なしでは外出なんて出来ない。人前で素顔なんて無理だ、抵抗がある。人前で手袋を外すのですら抵抗があるのにだ…。



鼎は眠れぬ夜を過ごしている。

戦闘後、ほぼ毎回のように救護所行きになっている気がしてならない…。最近は頻度が増えてるような。

全ての元凶はあれのせいだ…。あれのせいで私は…。


第6話(上)

晴斗は鼎が言う「受け入れる覚悟」を決めたものの、内心もやもやしていた。御堂さんも同じようなことを言っていたなぁ…。

そんなもやもやから数日経過。しばらく何も起きなかったが、敵は待たない。いきなりやってくる。



市街地でメギド出現。戦闘員とソード・メギドが街を暴れまくる。今度は剣モチーフかよ!?

剣ってどういうこっちゃ!?


晴斗達は現場に到着。なんとなくいつものメンバーが固まりつつある。今回は晴斗・鼎・御堂。彩音は援護。

御堂は早速指示を出す。
「相手は剣モチーフの怪人だ、ここは刀剣がメイン武器のやつがいい。…てなわけで晴斗・鼎、お前らが前衛で行け。俺らは戦闘員倒すから」
「了解した」
「前衛って、そういう意味なの…」

晴斗、理解がいまいち追いついてない。


鼎は早速抜刀、いきなり先制攻撃をする。
ソード・メギドは楽しそう。ソード・メギドは女怪人だった。
「あなたと戦えて嬉しいわ。たくさん斬り刻んであげる」
「黙れ、大人しくやられとけ!」

鼎はギリギリと迫る。鼎vsソード・メギドのつばぜり合いが発生。互いに譲らない展開。
晴斗は攻撃出来る隙がない!


御堂と彩音は確実に戦闘員を倒していた。御堂は銃で殴りつつ、蹴りを加えたり裏拳したり。彩音も戦闘員の武器を強奪したり、それを利用したり時折間接技を仕掛けたり。
彩音は肉弾戦は苦手だが、間接技は得意。戦闘員の武器を利用することが多い。

御堂は交戦中の鼎をチラ見する。鼎はメギドとつばぜり合いしてやがる…。
あいつは戦闘時間が限られている。長引いたら終わりだ…。


鼎は焦りを見せ始めていた。先制攻撃こそは上手くいったが、そこから先がうまくいかない…!
ソード・メギドはしてやったりと思っている。

「この程度なの?仮面の隊員さん」

鼎は無言。言い返したら相手の思うつぼだから。つばぜり合い→時折激しい剣戟、にらみ合いが続く。
晴斗は攻撃しようにもタイミングがなかなかつかめない。


鼎は晴斗に言った。
「私のことはいいから攻撃しろ」
「でも鼎さん巻き込んじゃうって!」

鼎は息切れし始めていた。戦闘開始から約7分経過。鼎からしたら微妙なライン。


「いいから攻撃しろ!」

鼎は必死に叫んでいた。晴斗は決心し、助走をつけ少しずつダッシュ。そして踏み切り、勢いよくジャンプ→ソード・メギドに狙いを定め、鉈を振りかぶって攻撃を叩きつけた!

ソード・メギドは不意討ちにやられた。メギドのターゲットは晴斗へと変わる。鼎はその隙になんとか離れようとするが、ソード・メギドは鼎も巻き添えにする気らしい。


「少年。この女を救えるかな?」
「てめー卑怯だぞ!」
晴斗、怒る。
「卑怯で悪いかねぇ。我らはヴィランゆえ」

このメギド、自分が悪役なのを自覚している…。
鼎はメギドの腕の剣を突きつけられている。そんな状況にもかかわらず、晴斗に言う余裕があった。


「私のことはいいから殲滅しろ」
いつも通りの冷淡な鼎。晴斗は感情的になっていた。

「そんなこと出来るわけないよ!鼎さん巻き添えなんて…絶対に嫌だから!俺…ずっとヒーローに憧れていたんだ…。ここ(ゼルフェノア)に来れて良かったと思ったのに。…鼎さんそんなこと言わないでよ!」

鼎は晴斗の言葉に目を覚ましたようだった。私がゼルフェノアに入った理由と似ている…。


鼎はメギドの腕の剣をなんとか振り切り、再びブレードで攻撃。
御堂はかなり焦っていた。鼎の時間がない!

そんな御堂をよそに2人はソード・メギドの両腕の剣をぶった斬る。メギドの剣は折れた。
武器をなくしたソード・メギドは一気に劣勢になる。


晴斗と鼎はアイコンタクトをとった。一気にケリをつけようと。
晴斗は鉈に気を込めた。御堂は東雲の真の威力を知ることとなる。

鼎はブレードを発動させる。刀身が赤く発光する、攻撃力アップモードだ。
御堂はヒヤヒヤした。発動なんて使ってしまったら、鼎の消耗が激しくなっちまうだろ!身体の負荷も倍になるってのによ…。


2人はほぼ同時にソード・メギドに強力な攻撃を畳み掛けた。
晴斗の鉈から発した気のせいか、鼎の発動効果なのか辺りは激しい衝撃波に包まれる。

とどめを刺したのは鼎だった。



戦闘後。鼎は発動で消耗していたらしく、救護隊に運ばれていった。命に別状ないが、かなり苦しそうにしてる。
晴斗は鼎の様子に茫然とする。御堂は優しく声を掛けた。

「晴斗。鼎は消耗が激しかっただけだ。ただ…発動を使ったせいで身体の負荷は倍になっちまったがな」
「発動って…あの刀が光ったやつ…ですか?」
「そうだ。あいつは戦闘時間に制限があるんだよ。室長が鼎を守るために制限を作った。あいつは約15分しか戦えない」

晴斗は「え…」というような顔をしてる。


「じゃあ戦闘時間が過ぎてしまったら、鼎さんはどうなるんですか…」
「死のリスクが高まる。だから鼎には戦闘制限があるんだよ…」

「鼎さんの『リスク』や『負荷』って一体なんなんですか?なんでそんなにも鼎さんはハイリスクなの…。仮面の理由と関係あるの…?」

「そのうち本人から言うと思うから、それまで待っていればいい。鼎も心の整理があるからな。お前に言う準備がな」


今日の御堂さんはやけに優しい。だから御堂さんは戦闘中、あんなにも焦っていたのか。
鼎さんの戦闘制限が迫っていたから…。死のリスクが高まるから…。だからしょっちゅう「無茶するな」と言っていたんだ…。



ゼルフェノア本部・救護所。彩音は救護隊と共に先に本部へと戻っていた。
ベッドの上には鼎が横たわっている。まだ苦しそうだ…。


「鼎…なんで発動使ったのよ…」

鼎は彩音を見る。厳密には仮面のせいで、彩音をなんとなく見たようにしか見えないが。
「晴斗のおかげで目が…覚めた…。私がゼルフェノアに入った理由も晴斗と同じだったから…。それを私は忘れかけていた…」
「晴斗くんはヒーローに憧れていたって言ってたけど、晴斗くんの場合はヒーローはお父さんのことだよね。元ゼルフェノア隊員だったって聞いたから」


「…私の場合は彩音だった。彩音がきっかけでゼルフェノアを知り…戦うことを決意したから…。でも最初の頃は私は復讐に駆られていた…」
「あの頃の鼎は殺伐としていたよね…。復讐に取りつかれていたんだもの。今は憑き物が取れて良かった…」

「晴斗に感謝するしかない…」
彩音は鼎の様子を手慣れた様子で見ている。彩音は鼎の手を触る。

「鼎、ゆっくり休んでね。下手に発動は使っちゃダメだよ。大切なもの、これ以上失いたくたいんでしょう?」
「もうたくさんだ。これ以上、辛い思いはしたくはない…」


彩音は救護所を出ようとしたが、一言言ってから出た。
「ゆっくり身体を休ませてね。鼎の身体は悲鳴を上げているからさ…。じゃあ私は帰るね。おやすみ」

彩音は帰り際に部屋の電気を消してくれた。鼎は自分のこの状態に時折泣きそうになる。この身体が憎い…。
いくら自分を守るためとはいえ、室長からは戦闘時間に制限がつけられている。


こんな状態でよく生きていられたよな…。



司令室。宇崎は支部の小田原司令とリモートで会話していた。
小田原司令は強面でサングラス、ガタイのいい叩き上げの司令。研究員上がりの宇崎とは真逆のタイプ。

だが小田原司令はその怖そうな見かけによらず、可愛いものが好きというギャップの持ち主。手芸が得意なのも意外だが。


「宇崎。暁の様子はどうだ?」
「もうね、メキメキと成長してますよ。鼎と会ったことがトリガーになったみたいで」
「…紀柳院か。そうだ宇崎、長官から例のシミュレーション怪人装置、近々本部と支部に設置するそうだ」

宇崎は「またかよ」みたいな反応をしてる。
「長官、自ら開発するの好きですよね〜。変態の領域ですよ。あそこまで来るとさぁ」

小田原、思わず突っ込む。
「宇崎、お前…その長官の後輩だろうが。お前が言うなすぎるぞ」
「そうでした〜」


宇崎はモニターに映る小田原がチクチク縫っているのが気になってしまった。
あれはたぶん、ぬいぐるみかマスコットを作ってるな…。





第6話(下)へ続く。

なんか理不尽すぎる


話題:ひとりごと
親父のしょーもねー理不尽に合い、消化不良起こしてる。アニメがなければ救われてなかった。

アニメと特撮が楽しみですが、土曜はヒロアカ見て内心「うわあああああ」とほぼ毎回なるの、どうにかしたいよ…。
内心「うわー」「ギャー」ってなってる。ヒロアカは王道ストーリーなだけに、味方が容赦なくやられる展開はキツい…。



明日のニチアサ、楽しみだ。
予告見たらドンブラ、ソノシはオネエキャラっぽいっすな〜。ただでさえカオスなドンブラにまた癖つよキャラが…。
ギーツはパンクジャックが大暴れしそうな予感。ギーツはビートフォームになるっぽいね〜。



自己満小説の登場人物がじわじわ増えてきたので「創作設定」カテゴリーを追加してしまいました。
まだ、設定記事は上げないよ。

序盤終了後にちまちまと詳細設定は上げていくつもりだ。


本編でもそこそこ掘り下げてはいるのですが。サブキャラは設定にフルネームが出るだろな…。
メインキャラは本編で掘り下げまくってるからまぁ…。



なんだか不完全燃焼すぎるので、6話を上げてから寝ます。6話はわりと平穏ですが(王道展開来るかも)、7話で話が動く予定。

序盤のピークは7話以降になりそうだなぁ。

第5話(下)

御堂との約2週間の特訓で、なんとか対怪人用鉈・東雲を難なく使いこなせるレベルまで来た晴斗。

宇崎はこの2人、意外と気が合うんじゃ?…と見ている。



その日、登校時間に怪人出現との知らせが届いた。晴斗は自転車を飛ばし、現場へ。登校時間だったので高校の制服姿。


現場にいち早く着いたのは御堂だけ。御堂はカスタム銃「だけ」でメギドと戦ってる。
晴斗は御堂の銃の扱いに驚いた。あれ…対怪人用の銃じゃないのか。通常の銃で怪人と戦う御堂さんって…。

御堂は晴斗をチラ見。
「特訓の成果を見せる時が来たな!晴斗っ!」
晴斗は慌てて鉈を出す。刀身に巻きついている布をほどいた。御堂は銃撃をわざとやめ、晴斗に攻撃のチャンスを与える。

「早く攻撃しねーとやられるぞ」
晴斗はなんだかもやもやしながらも東雲でメギドに攻撃を加える。御堂との特訓のせいか、動きが軽やかになり鉈の攻撃は重くなる。


晴斗もびっくりしていた。正しい使い方をすればこんなにも攻撃力が上がるのかと。晴斗は特訓がてら肉弾戦のいろはも習っていた。


怪人の攻撃に屈することなく、晴斗は飛び蹴りを加えたり振りかぶって鉈を叩きつける攻撃をする。明らかに手応えがある。

応援に鼎も来た。鼎は御堂の制止を振り切って日本刀型ブレードを抜刀。
「バカ!鼎やめろ!無茶すんなっ!!」


鼎はダッシュし、思いっきり2段蹴りを喰らわせる。怪人は怯んだ。御堂はにやけた。
来たか、鼎得意の蹴り攻撃…。鼎は肉弾戦でパンチは苦手だが、キックに特化している。


さらに鼎はブレードで斬りつけ、叩きつけた!
ほんの数分だったが、鼎の攻撃はかなり効果的だったらしい。

「晴斗。早くとどめを刺せ!」


鼎は晴斗に誘導した。今の一連の鼎さんの攻撃は俺にチャンスを与えるためだった…?
晴斗はうおおおと言いながら東雲で一気にぶったぎった。怪人は爆散した。


晴斗は心地よい疲れを感じた。まさか朝から戦闘になるとはな〜。


一方の鼎は時間帯が良くなかったのか、コンディションが悪かったのか調子悪そう。御堂は鼎を気にかける。

「鼎…ったく、無茶すんなって言っただろうが!お前の身体は並みの人間と違って常に負荷がかかってる。あのせいでな…」

鼎は消耗したのか、ずっと下を向いたまま。
髪の毛で隠れて目元が見えないが、そもそも仮面を着けてるので顔は見えてない。よく見ると息切れしてるようにも見える。


「御堂…余計なことを言うな…」
「負荷がかかってるのは本当のことだろうが!」
「少しは黙っててくれないか…。私だってなりたくてこうなったわけじゃない!」

さっきから言ってる「負荷」って一体なんのことなんだ?鼎さんが感情を露にするなんて…。
なんだか鼎さん、声が泣きそうになってた…。


鼎は少しして落ち着いたのか、ブレードをしまい立ち去ろうとする。
晴斗は鼎に恐る恐る声を掛けてしまう。


「鼎さん…。『負荷』って何?教えてよ…。仮面の理由も…知りたいのに」
鼎は少しだけ振り替える。僅かに仮面が見えた。

「まだお前に教える気にはなれない。晴斗の覚悟は出来ているのか?受け入れられる覚悟をだ。…覚悟があるのならば…私は話そうと思う。今日ではない、後日…」


鼎は立ち去った。背中がどこか寂しげなのが気になる。孤独感…なんだろうか…。


鼎が立ち去った後。晴斗は複雑な表情のまま、固まってる。御堂は晴斗にはっきりと言った。

「言っておくが鼎の仮面の理由はお前にとってはキツいかもしれない。それでもいいのか?」
「…受け入れる覚悟は出来たよ」



その後の晴斗は授業が全然頭に入らなかった。
受け入れられる覚悟は出来たものの、なんだか怖い。鼎さんの仮面の理由…一体なんだろう…。

それにあんなにも感情的な鼎さん、初めて見た…。
御堂さんが言ってた通り、ああ見えて意外と繊細なのかな…と。



放課後。その日の晴斗は朝のこともあり、本部に行く気になれなかった。一時隊員なので、別に毎日来る必要性はないけれども。

その日の晴斗は珍しくストレート帰宅。



ゼルフェノア本部。御堂は晴斗が来ていないことに気づいた。今日は来ないと感じていた。
晴斗にはちょっと言い過ぎたかなー…。それよりも鼎が心配だ。あいつ…ついにカミングアウトを決めたのか…。


鼎からしたらあのことをずっと隠すのは辛いし、しんどい。
重荷になっていたならば、少しでも楽にしてあげたいが…。だけどこれは鼎も辛いのではなかろうか…。


何も出来ないのがもどかしい…。


御堂は1人、トレーニングルームへと向かった。
そしてサンドバッグにパンチをひたすら繰り出す。半分八つ当たりみたいになってしまっている。

「くっそー!」


御堂も複雑だった。鼎の事情を知っているだけに…。


鼎は宇崎に告げ、早々と帰ってしまう。

「鼎…お前、大丈夫か?」
宇崎はなんとか引き留めようとするが、様子がおかしい。
「今日はひとりにさせてくれ…。ひとりに…なりたいから…」

声が弱々しい。朝の出来事が関係してるのは確かだが、鼎がまさかカミングアウトを決めたなんてな…。
精神的に来たのかもしれない…。


彩音は御堂と宇崎から鼎が帰ったと聞かされる。宇崎は彩音に聞いた。

「彩音、最近何かなかったか?鼎についてだよ」
「…鼎は私に相談してきました。…あのことをずっと隠すのが辛いって、1人で抱えこんでたんです。それてかなり悩んでいたみたいで…。あと晴斗くんのこと、気にしていました」


やっぱりか。鼎は晴斗を知っているが故の悩みだ。
だが晴斗は鼎の正体を知らない。すれ違うのも無理もない…。
晴斗は鼎を見た時に初めて会った気がしないと感じていたらしい。あのことを知ればそのカラクリがわかる…。



暁家。晴斗は自室に籠り、もやもやしていた。


鼎さんが言ってた「なりたくてなったわけじゃない」ってどういうことなんだろうか…。
あんなにも感情的になっていたってことは、仮面の理由と関係してるのかな…。

やっぱりなんというか…鼎さんとはどこかで会っている気がしてならない。
顔は仮面に隠れて見えないけど、あの感じ…。あの空気感…。



考えれば考えるほど、もやもやがループする。
鼎さんは後日教えると言ってたが、なんだか知るのが怖いのも半分ある。


どう見てもあの仮面は飾りには見えない。身体の一部にしか見えないのだ。

わざわざ日常用兼戦闘用のベネチアンマスクを作ったということは、込み入った事情がありそうで…。
あの仮面を改良したの、室長だって聞いたな。組織がわざわざ隊員1人をサポートするほどって、絶対何かあるとしか…。

彩音さんも言ってたな。鼎さんにはサポートが必要とかいうあれ。仮面の理由と関係しているんだろうか…。

第5話(上)

ある日の本部。司令の宇崎が御堂に忠告してる。
「和希。晴斗はまだ不慣れだから、お手柔らかに頼むぞ〜。晴斗をいじめるなよ〜」
「へいへい」

御堂は支部の小田原司令によって約3週間しごかれ…いや、鍛えられようやく本部のある東京へと戻ってきた。


この「御堂和希」という隊員、鼎と関わりが深い先輩でありながらも分隊長クラス。


…だがどこか冷めてる態度とめんどくさがり屋なせいか、だるそうな姿がよく散見されている。
戦闘スタイルもかなり独特で制服を着崩してる上に、戦闘へ行く時はだいたいTシャツに戦闘用の指貫グローブ、愛用のカスタム銃(対怪人用ではない)にサバイバルナイフ(対怪人用ではない)という、軽装。

ゼルフェノア隊員の中にはプロテクターを着けている人もちらほらいるが、鼎・彩音・時任や御堂達は動きにくいという理由でプロテクターはしていない。


宇崎はにっこりと笑った。

「じゃあそんなわけでよろしくな♪」

宇崎は御堂相手になると口調がさらにふざける。話しやすいのだろうか。
御堂はかったるそうに司令室を出た。


御堂はノロノロと通路を歩きながら思った。鼎のやつ、暁とうまくいってるっぽいけど。…てか、「暁晴斗」って…どんな奴なんだ?


ゼルフェノア本部・トレーニングルーム。晴斗はそこで自分なりに鍛えていた。
こないだのあんなもん見せられたら(暴走怪人の件)、鍛えるしかねぇじゃねぇかよ!

御堂はよくトレーニングルームに来る。そこでひたすら鍛えている高校生を発見。見た感じ、どこにでもいそうな高校生。


…こいつが「暁晴斗」か?


御堂は無言でトレーニングルームへ入り、いきなりサンドバッグへパンチを繰り出してる。しかも素手。
晴斗はその気迫に思わず動きを止めた。

御堂は視線を感じ、パンチを止めて晴斗を見た。そして一言。
「お前が暁晴斗っていうのか?」
「そ、そうだけど…」

な、なんだこの人。なんか鼎さんとは違う圧がある…。鼎さんが言ってた「御堂」って、この人か?


「俺は『御堂和希』っていうんだ。暁晴斗、お前…想像以上にガキじゃねぇか」


いきなり見下された。

晴斗は地味にショックを受ける。そりゃあ大多数の隊員からしたら俺はガキだけどさーっ!そこは否定しないけど…。
鼎さん経由で、御堂さんはナチュラルに口が悪いとは聞いてたが…初対面でいきなりそれ!?


この組織、癖の強い人だらけだ…。室長からして癖が強い。
あんなふざけたちゃらんぽらんが司令とか…。しかも研究者上がりという経歴のせいか、余計に変人に見える…。


晴斗はまだ知らなかった。

支部の小田原司令とこの組織トップの長官もかなり癖が強い面子だということに…。



鼎は晴斗が組織に来て以降、自分に変化が起きていると感じていた。
不安になった鼎は彩音に相談する。部屋はあの質素な部屋。この部屋は滅多に人が来ない。

「鼎、やっぱり気にしていたんだね。そのうち晴斗くんも受け入れてくれると思うから、大丈夫だよ。1人で抱え込まないで」
「…あの事件から12年経っているというのに、犯人の怪人の手がかりが未だにわからないままなのが…」

彩音は鼎に合わせる。
「その件なんだけど、解析班が改めて調べているみたいだよ。今のところはメギドの出現頻度少ないから、ここぞとばかりに調べまくってる」
「あの解析班が?」

鼎の声が少しだけ明るくなった。



ゼルフェノア本部・解析班の部屋。ここには解析班しかいない。解析班は6人。

解析班の制服は戦闘隊員と少しだけ違う。右腕の腕章のようなデザインの色が違うのだ。
戦闘隊員は赤だが、解析班は青。


そんな多数の機器が並ぶ解析班のチーフが朝倉。勝ち気な性格でぐいぐい行くタイプの女性隊員。副チーフは矢神。冴えない眼鏡の男性隊員だ。
この2人と、民間組織から引き抜かれた元凄腕ハッカーの神(じん)をメインにして、解析班は回っている。ちなみに神は若い男性。


朝倉はカタカタとキーボードを打ちながら矢神と話してた。

「12年前の連続放火事件の犯人の怪人の手がかり探せって、室長は何考えているのかしら。都筑家が犠牲になった事件よね…」
「改めて防犯カメラの映像とか確認していますが…いまいちなんだよな〜」
「とにかく解析するっきゃないでしょ。神さん、そっちはどう?」

神はぼそっと呟いた。
「怪しいものはちらほら出てきたが…まだ掴めないね」
「今思ったんだけど、私達警察みたいなことしてる…。警察動けってんだよっ!」

朝倉はちょっとイライラしてた。未解決事件故に風化してるのもあるが…。


なんとなく朝倉と矢神は鼎が気になっていた。
あの事件以降、組織直属の施設に数年間匿われていたのが紀柳院鼎だと聞いている。
彩音はそこで鼎と出会ったという。

彩音さんと鼎さんは、事件について何かしら知っているのではないか…?
特に8件目に発生した、都筑家放火事件について。



晴斗はなぜか御堂とトレーニングしていた。御堂はスパルタなのか、手加減なし。
「そんなんじゃ怪人倒せねぇぞ!これは喧嘩とは違うんだっ!『東雲』はこう使うのが妥当だっつってんだろ!」
「はいぃーっ!」


御堂、どうやら晴斗に対怪人用の鉈・東雲の使い方をレクチャーしている模様。晴斗はなすがままに訓練されていた。

御堂さんは確かに口は悪いが、不器用なだけか?言い方がぶっきらぼうだ…。


「東雲を使いこなせばかなりの戦力になるんだよ。素人が東雲を使ったと聞いたからレクチャーしてやってんだ、感謝しろ。使えてるだけオメーはすげーよ」
「あ…ありがとうございます」
こう言うしかなかった。晴斗、内心びくびくしながらレクチャー中。


鼎さんの先輩なだけあって、どこか似ている気がする…。言い方はどことなく似ているような気が…。
先輩後輩って、似るもんなのか?


「晴斗、ぼーっとすんな!」
「すいませんっ!」

このノリ、運動部かな?御堂さんはバリバリの体育会系な感じがするんだが。



宇崎はこっそりトレーニングルームを覗き見していた。
予想通り、和希は晴斗に東雲の使い方を教えてるな…。東雲は一見するとただの鉈だが、対怪人用なためか叩き切ることに特化している。


御堂は晴斗の東雲の使い方を見かねて教えていた。

「東雲は素人でも扱える数少ない対怪人武器だ。こいつをマスターすればお前は何でも使いこなせるはずだ」


あれ?なんか少し優しくなった…。言い方はあれだけど。



小一時間後。晴斗と御堂、トレーニングルームで休憩中。晴斗は訓練させられ疲れている模様。
ここで晴斗と御堂は自然と話せるようになっていた。


御堂はスポーツドリンクを飲みながら話してる。

「はぁ?晴斗は鼎のことをもっと知りたいって?お前…受け入れられる覚悟があるのかって聞いてんだよ。鼎に関してはデリケートなこともあるからな。あいつは一見冷たいように見えるが、ああ見えて繊細だ…」

受け入れられる覚悟?覚悟…。


「そのうち鼎自ら言うかはわからないが、お前…鼎の仮面の理由を知らないだろ。なんで仮面姿なのか」
「それは地雷だって聞きました」
「鼎はなかなか心を開かないからな〜。でもなぜかお前には開いてた。心の壁は厚いがな」


心の壁…?


晴斗もスポーツドリンクをがばがば飲んでいた。トレーニングルーム付近にも自販機はある。

「とにかく晴斗を鍛えて素人レベルから隊員レベルに上げてやっからな。東雲を徹底的に使いこなせるようにしてやるからな」



本部の一角にあるとある質素な部屋。鼎はあのことを言うかでかなり迷っているらしい。


「晴斗くんが知ったらショックを受けるかもしれないけど、やっぱりカミングアウトするの?」

「晴斗が受け入れる覚悟があるかどうかで変わってくるが…。私は…もう嫌なんだ、あのことを隠し続けるなんて…。仮面の理由もわかってくるだろう。そしたらあいつは…」
「考えすぎだよ。晴斗くんは鼎を助けたし、大丈夫だって。だからといって素顔を見せる必要はないと思う…。無理してまで人前で仮面、外したくないんでしょう?」
「正直…怖いんだ…」

鼎はずっと顔を背けている。僅かに彩音を見た。白い仮面が見えたがどこか寂しげに見える。
鼎は感情を拳に込めることがよくあるらしい。現に鼎は両手を固く握りしめていた。


彩音は鼎を落ち着かせようとする。


「落ち着いて。確かにあれは鼎からしたら壮絶だったけど、ごめん…なんか思い出しちゃって…」

彩音は何かを思い出したらしく、複雑そう。鼎は感情を露にする。
「この事実を聞いてすんなりと受け入れられると思うか!?晴斗はなんとなく察しているかもしれない…。憶測だが、顔の大火傷の跡を見られた…。それ以降、晴斗の様子がよそよそしいのが引っ掛かる…」
「き、気にしすぎだよ…」

彩音のフォローがフォローになってない。なんだか気まずくなってしまった。



晴斗は御堂のもと、東雲を使いこなすべく日々トレーニングの毎日になっていた。御堂は基本的にスパルタだが、時折優しくしてるため飴と鞭方式。

晴斗はだんだんこの対怪人用鉈・東雲をマスターしかけていた。



そして御堂の特訓から約2週間が経過した。





第5話(下)へ続く。

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