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第17話(下)

幹部が3人いると判明したのはいいが、いまいち打開策がない。
晴斗はたまたま釵游と交戦したことで、晴斗の日本刀型ブレード・恒暁(こうぎょう)が釵游の十文字槍と相性抜群だと判明。


「あの手応えって、そういうことだったの!?」

晴斗はびっくりしてる。御堂はだるそう。
「みたいだぜー。どうやら相性があるみたいなんだわ。俺が戦った杞亜羅の扇子にも効果的な装備はあるはず」
「飛焔の炎には何が効くんだろ…」

「単純に考えたら『水』になるが、簡単には消火出来ねぇ代物だぞ。あいつの能力は。
ゼノクから送られてきた武器シミュレーションデータによると、鼎の鷹稜(たかかど)が有力らしい。それも発動状態という、条件つき」

「発動はマズイでしょ!?」
「鼎は少しずつ火のトラウマを段階的に克服しているみたいだが、精神的にかなり負担らしくてな…心配だわ」
「そういえば今日、鼎さん来ていない…」
「トラウマ克服のための精神的疲労のピークが来たみたいでな、急遽今日休みにして貰ったらしいぞ」

「鼎さん、無茶したのかなぁ…頑張りすぎて」


心配する晴斗に御堂がさらっと言う。
「鼎は頑張りすぎてるくらいに頑張ってんだろうが。無茶しやすいけどよ…」



鼎が火のトラウマの克服を始めてから1週間以上経過していた。
バーチャルの火にはそこそこ平気になったが、まだ本物の克服には行けてない状態。小さな蝋燭の火ですら苦手なのだから。


鼎はこの克服を始めてから、あの事件の夢を頻繁に見るようになる。
真っ赤に燃え盛る炎と怪人。自分が生きたまま焼かれる夢だ。

夢はだんだんリアルさを増していた。悪夢にうなされる…。


そして、毎回のように夢の火の熱さで中途覚醒してしまっていた。実際は夢なので熱くないのに。
あまりにもリアルすぎたので、思わず自分の体を確かめた程だ。



鼎は火のトラウマ克服をやめようと考えていた。
日に日に生々しくなっていく、あの日の悪夢。



鼎が急遽休んだ翌日、彩音にこう告げた。

「トラウマ克服を始めてから、夢にあの事件が毎日のように出てきて…。もう耐えられない…。だから…火のトラウマ克服は辞退するよ…」


鼎の声に力がない。

毎日!?これは予想外だった。鼎に悪影響を及ぼしていたなんて。


「鼎に無理…させたかな…。そうだよね、辛いよね。毎日あの悪夢って……しんどいよ」
「日に日に生々しくなっていったんだ。解放されたい…」


鼎からしたらこの克服は酷だった。



そんな中、鼎にリモートで話がしたいとゼノクにいる流葵(るき)から連絡が。鼎は研究室の小部屋へ。


久しぶりに見た流葵は白いベネチアンマスクを着けていた。方針を変えてあえて人前ではそのままにしたとは聞いたが――。


「紀柳院さん、お久しぶりです」
「久しぶりも何も、あれから1ヶ月経ってないだろうが…」

「そうでしたね。こうして紀柳院さんと話が出来る場が出来て嬉しいんです」
「治療は進んでるのか?」


「今はゼノク内の居住区に住んでます。通院してますが、ひどい洗脳からはほぼ解放されましたよ。
仮面は人前では思うように外せないんで、西澤室長が『そのままでもいいよ』って。ゼノクの人達は優しいですよ」
「そうか…」
「紀柳院さん、本当は嬉しいんじゃないんですか!?仮面仲間の話、聞いたんです。それが引っ掛かってて…」


「流葵は6年も洗脳されていたのだな…。なかなか仮面、外せるはずもない。無理する必要はない」
「そのうち会えるといいですね。たくさん話、したいんです。紀柳院さんと」

「…あぁ」


リモートが終わった。

流葵は声のトーンからするに、元気そうだった。仮面をあえてそのままにする選択肢、西澤は私を参考にしたのだろうか…。いや、まさかな…。


第17話(上)

諜報員・高槻のおかげで元老院の動向がある程度読めてきたゼルフェノア。どうやら敵は内部抗争勃発寸前なのか、険悪らしい…。


ゼノク・司令室。

そこには蔦沼・西澤・南の3人が。本部・支部とは異なり、ゼノクの場合は蔦沼本人が指揮することもあるが、ほとんどが室長の西澤に委ねられている。

ゼノク所属隊員は西澤によって動いている。


じゃあ長官は何してるかというと、長官としての業務をしつつ敵の動向を監視。はたまた自ら装備などを開発したりと自由奔放。

今回はゼノク所属の諜報員を異空間に送り込むという、トンデモ技をやってのけた。
高槻はそこで元老院の長と鐡が敵対してると知る。そして元老院の目的も判明。それは「ゼルフェノア潰し」だった。



その報告を聞いた蔦沼達の会話はこんな感じ。


「鐡は目撃情報が少ないが、暁と接触した黒づくめの男ですよね。長官」

「西澤、そいつが鐡だよ。今現在調査中だが、鐡は何の意図で暁に接触したかもわからないんだ。
どうやら鐡は元老院と敵対しているみたいだね〜。今は元老院の力が強いから元老院vs鐡の構図ねぇ。……互いに潰し合えばいいのに。うちから見たら敵同士なわけだから」


今、長官「潰し合え」って言った!?
そりゃあ、敵が内部崩壊したらうちらからしたら楽になるけどさっ!


西澤、思わずツッコミそうになるのを寸前で抑えてる。


西澤は気になっていたことを蔦沼に話してみた。

「高槻の報告からするに、迷い人を利用しているとなるとどうにかしなければなりませんよ。
人間が異空間に迷いこむ→元老院に無理やり連れてこられ→監察官になれるよ〜と居場所を与え→洗脳した上に→監察官になれた人間は部下として使い、そうでない者は容赦なく抹殺されていたなんて、極悪非道ですよっ!」
「元老院は手段を問わないからね。まだ鐡には心があるようだよ。元老院に宣戦布告したらしいし」


「長官!?鐡に関してはまだ調査中なんじゃ…」
「鐡はね、イレギュラーなやつかもしれないよ」



異空間。元老院本拠地。


鐡は夜中、館へと侵入していた。あることを確かめるためだ。
鐡は元老院の館を全て把握していた。なぜ、人間がいとも簡単に洗脳されているのか、気になっていたからだった。


あれにはカラクリがある…。


鐡はある部屋を開けた。そこには元老院の出で立ちとなっている、ローブと白い仮面が置かれている。見たところ、新しい。

なんとなく鐡は白いベネチアンマスクに触れてみた。


…なるほどな。あのジジイと腰巾着、姑息な手を使っていたのか…。

迷い人には罪はねぇ。そんな人間を洗脳したのが許せなかった。おまけにジジイどもは監察官以外の人間を抹殺してるらしいじゃねーか…。


だから極端に館にいる人間が少なかったんだな。
今回はあの高槻とかいう男のおかげで、4人は脱出出来たみたいだが…。
監察官になっちまった朔哉というやつ、洗脳を解いてやるかねぇ。


鐡はその白い仮面をひとつ、拝借した。
洗脳のカラクリはこの仮面だろうなぁ。独特のルールと仮面の掟がある時点で怪しいとは思ってた。


鐡は館を後にする。さて…あとは朔哉とどう自然に接触しようかな。…俺、何やってんだろ。人助けなんていうガラじゃねーのに。



2日後。元老院本拠地。


鐡はものすごく自然に朔哉に接触。
「あ、貴方はく…」

朔哉が「鐡」と言いかけたところを鐡は彼の仮面の口元を押さえる。朔哉は動揺し、言えなくなった。

「あんた、本当に楽しいか?この元老院がよ。監察官の朔哉と言ったな…。ちょっとこっちへ来い」
「な、何をする」
「でけー声出すなよ?出してジジイどもに知らせたら…わかっているだろうなぁ?」

鐡は脅しつつも朔哉をある部屋へと連れていく。そこは倉庫だった。


元老院の元締めはまず来ない場所として、倉庫にしたわけで。
この館には元締め以外にも使用人が常駐している。使用人もローブは着てはいないが仮面着用。


鐡は朔哉にジリジリ話す。


「あんたは鳶旺に騙されているんだよ。そして洗脳されている。自覚ないだろ?」
「鳶旺様がそんなこと…」

「元の世界に帰りたいとは思わねぇのか?あんたはここへ迷いこんだ『人間』なんだよ」


朔哉の様子が変だ。鐡は察した。やはりあの仮面が洗脳に大きく関係してやがる…。
鐡は左耳のピアスを指先でつん、と揺らした。ピアスからはキーンというような高らかな金属音が鳴る。



「洗脳を解いてやったぞ。朔哉、お前はこの世界にいるべきじゃねぇ。元の世界へ帰りな」
朔哉は音で気を失っていた。鐡はその隙に朔哉の仮面を外す。

やっぱりな…。仮面と強力な暗示による洗脳か…。


鐡は再びピアスを鳴らした。朔哉は目を覚ます。そして寝起きのようにぼーっとしていた。
鐡はワームホールを出現させる。朔哉は言われるがままに元の世界へと帰された。


「もう2度と、迷いこむんじゃねぇぞ」

鐡は姿を消した。



元老院では朔哉が消えたことで混乱が起きている。

「監察官はどこだ!?」
「どこにもいない!」
「消えるなんて前代未聞だぞ!?」


そこにふらっと現れたのは鐡。

「何をお探しでしょうか、鳶旺『様』」
「鐡!貴様何かやったのか!」


鐡は冷めた態度。

「していませんよ?だいたい迷いこんできた人間洗脳して、最終的に抹殺なんてひどい話だよねぇ。
あんたら人間が憎いんだろ。『ゼルフェノア潰しは』名目に過ぎなくて、本当の目的を吐けってんだよ」

「妨害かね?挑発か?」
「両方だ。…さっさと俺の部下達、返してくんねぇかな。幹部達が板挟みになってるの、わかってないだろ。人間でもメギドでも物扱いすんのな」


――しばしの間。


「元老院の敵は俺だけでいいだろうがよ。目的は知らねーが、迷い人の洗脳と抹殺はやめやがれ」
鐡の語気が強くなっていた。そして消えた。


残された元締め2人は黙りこんでいる。

…鐡に全て見抜かれていた…!ゼルフェノア潰しはただの名目であることでさえも見抜かれていただと!?



鳶旺は焦りを見せ始める。鐡、完全に見くびっていた…。

「絲庵、やり方を変えるぞ。迷い人を使わずにやる」
「通例をなくすんですか!?」
絲庵は大袈裟なリアクション。

「鐡に見抜かれてしまった以上、やり方を変えるしかないだろう。だが、幹部はまだ返さないがな」





第17話(下)へ続く。


詳細設定(主要人物7・長官と長官絡み)

自分用メモを兼ねた自己満創作小説の詳細設定。主要人物7は味方サイドの長官と長官絡みの人々。
長官は追加更新ちょいちょいありそう…。



・西澤紀晶(にしざわ としあき)


ゼノク研究室長。青色の詰襟タイプの制服(腕章デザインなし)に、白衣を羽織ったスタイルをしている。

普段は眼鏡をかけないが、時々眼鏡をかける場面もあり。


一人称は「俺」、もしくは「私」。隊員の名前は基本的に名字で呼び捨て。長官はそのまま「長官」呼び。
基本的に敬語で話すが、時折タメ口。


ゼノクにおいて、自由奔放な長官に振り回される1人でもある。たまに長官に作業を丸投げされたりと、雑な扱いをされがち。

フリーダムすぎる長官によく突っ込みを入れる。長官とよく絡む人間の1人。


ゼノクにおいて指揮権を持つ1人。ゼノク隊員を指揮出来る権限がある。



・南洸一(みなみ こういち)


長官秘書兼世話役。

真面目そうな堅物眼鏡。秘書の制服はダークグレーの詰襟タイプ(腕章デザインなし)。常に手帳で長官のスケジュールを確認する姿が散見されている。


一人称は「私」。だいたい名字の呼び捨てで呼ぶが、長官は別。だいたい敬語で話す。冷静沈着な性格。滅多に物怖じしない。


自由奔放でフリーダムな長官に時々突っ込みを入れる。
たまに長官の義手を外すなど、世話役としても必要な存在。長官の義手のあれこれに関してはやたらと詳しい。


一見弱そうだが、戦うと司令レベルの強さを誇る。南はボディーガードとしての役目もあり。
戦う場合は銃と肉弾戦を使う。



・蔦沼栄治(つたぬま えいじ)


特務機関ゼルフェノア長官。要はゼルフェノアの最高責任者・トップである。通称「義手の長官」。

普段は本部ではなく、ゼノクにいる。ゼノクが長官の本拠地みたいな。


出で立ちは独特で隊員と同じ白い制服だが、長官のみ詰襟タイプでないものを着用している。スーツタイプでネクタイをしているのが長官の制服。
さらに袖をカスタムしているため、存在感がすごいらしい。

両腕が戦闘兼用義手であることから、戦闘の妨げにならないように肘から先が見えるよう、ゆとりがある五分丈くらいの袖になっている。
そこから黒い義手が見えているためか、白い制服から義手が際立っている。


両腕は日常用兼戦闘用義手。見た目は黒く、スタイリッシュかつ洗練されたデザイン。
長官自ら設計、西澤と共に義手を完成させた。


一人称は「僕」。組織の仲間に対しては優しい語り口で話す。基本的に名字で呼び捨てだが、どこか優しさがある。
逆に敵サイドにはものすごく冷たい言い方をする。

仲間思いで裏切らないため、絶大なる信頼があり慕われている。
戦うとめちゃくちゃ強い。強さは司令以上。義手のハンデなにそれ?…な感じでかなり攻撃的な戦闘を好む。

義手には様々な装備を搭載している。
今現在確認されている装備は銃撃モード・刃物展開・火炎放射・雷撃・バリア。


長官が義手になった発端は約10年前にあった、元老院の長・鳶旺との激戦にある。
当時の長官は鳶旺に敗北し、両腕を切断された。この激戦で蔦沼は鳶旺の仮面を割り、素顔を露にさせている。なので長官のみ鳶旺の素顔を見たことに。


鳶旺とは因縁が。


蔦沼曰く、鳶旺の見た目年齢は自分と同じくらいだそうだが…ざっと50代前半くらいか?
長官が比較的若いのは、組織が出来てから20年経っていないのもある。彼こそがゼルフェノアを立ち上げた張本人。

ゼルフェノア黎明期は長官ではなく司令だった。
宇崎は蔦沼の後輩に当たる。


優しい語り口の長官だが、研究者上がりなせいか自ら開発したりと自由奔放で周囲(ゼノク)を振り回す。
そんなフリーダムな長官に、研究室長の西澤と秘書の南は振り回されっぱなし。


世間の長官のイメージとは大幅に違うために、隊員はイメージが壊れる現象が多発。
長官が開発したものには取説を必ずつける。親切なのか、なんなのか。


フリーダムな長官だがめちゃくちゃ強くて説得力があるので、ぐうの音も出ない部下達…。

曲者揃いのゼルフェノアにおいて、本部司令の宇崎以上に癖が強い上層部の1人。宇崎も変人だが長官も変人。研究者上がりは変人ばかりなのか?
開発は変態の域らしいが、バリバリ役立ってるので文句なんて言えない。

鐡が持ち掛けた打倒元老院のために「あえて」同盟に乗った。


第16話(下)

本部・グラウンド横のスペース――。

晴斗と御堂はSSUKEの縮小版のような、アスレチックのようなもので訓練中。パルクールの練習場にも見える。


「これ、難易度どうなってんだ!?キツいぞこれ」

あのストイックな御堂が音を上げている。晴斗は身体能力が高いのもあるが、ひょいひょいと壁を登り、障害物を越えていく。


「御堂さん、これめちゃくちゃ楽しい!パルクール始めようかな」

晴斗のやつ、覚醒しそうだな〜。お前の身体能力が高すぎるんだよ…。
あぁ、もう目をキラキラさせちゃってさぁ…。



都内某所・地下駐車場。

飛焔は釵游(さゆう)と共に地下駐車場にいる。今回は釵游と一緒に襲撃するパターン。


「話は聞いただろ、釵游。元老院からの命」
「『ゼルフェノアは潰せ』…だろ?わかってるよ」
「じゃあ早速いきますか…って、新しい監察官がいるねぇ」


2人は背後を見た。そこには黒いローブに仮面姿の「男性」が。


「初めまして。新たに監察官となりました、朔哉(さくや)と言います」
「今度は男かよ…」

飛焔、ちょっと残念そうな反応。
「監察官として幹部の方々を監視しますので、よろしくお願いします」
「人間風情が何言ってるんだか」

飛焔は完全に冷めきっていた。釵游は監察官なんていないように振る舞っている。
「飛焔、どこを襲撃するのー?」
「市街地を叩く」


飛焔は戦闘員を出現させ、地上へ送り込んだ。
「ゼルフェノアはどうするのかなー?」
「まずは戦闘員で様子見ってわけね」



本部では市街地にメギドが出たとアラートが鳴った。

グラウンドで訓練していた2人も向かうことに。組織車両内。

「なんかメギドと戦うの、久しぶりに感じる」
「晴斗、幹部もメギドだぞ?幹部以上は上級メギド。もしかしたら今回も幹部が噛んでるかもしれねぇな」


車内には時任もいる。

「幹部相手だとあたしらまだ勝てないっすよ!」
桐谷は時任をなだめる。
「まだ幹部に勝てなくても策はあるはずです。現地にいる隊員からの情報で、今現在は戦闘員だけだそうです。避難は進んでます」


「戦闘員だけ?」


晴斗と時任がハモった。戦闘員だけって意味がわからないぞ…。



某市街地。そこには予想外の数の戦闘員がいた。


「数多くない!?」
「晴斗、倒さねーと意味ねぇだろが!」
「そうだった!」

晴斗はいきなり肉弾戦で戦闘員と取っ組み合いを始めた。戦闘員には武器を持ってる者もいるため、武器を強奪して利用するプレーも。
御堂は得意の銃撃で戦闘員を確実に攻撃。時任はワイヤーで一気に倒してる。

桐谷はというと、対怪人用のライフルで遠方から狙い撃ち。スナイパーかっ!


この様子を飛焔と釵游は高みの見物をしていた。
「なかなかやるじゃん、あいつら。釵游、戦いたいか?」
「そうだね」

釵游は十文字槍を出現させる。
「俺の出番かなぁ」


釵游は怪人態になり、いきなり晴斗達に襲いかかる!

晴斗はとっさにブレードを抜き、釵游と小競り合いに。


「お前、一体何者なんだよ…!」

晴斗はブレードをギリギリさせている。
「飛焔と杞亜羅の仲間だと言ったら君はどうするのかな」
「幹部はもうひとりいたのかよ…」


この状況、マズイかもしれないな…。
晴斗は3人目の幹部と交戦中、桐谷と時任は多数の戦闘員と交戦中…。俺はあの幹部が気になるが、飛焔あたりがいそうな気がしてならない…。


釵游はジリジリと攻めていた。晴斗はブレードを発動させる。
「お前、名前なんていうんだよ!」
「釵游(さゆう)…これで満足かい?」

発動させてるのにあまり攻撃が効いてない!?
そこへ飛焔がとぼとぼとやってきた。
「宴の会場はここかな?」

飛焔は人間態のまま、右手から炎を出す。蒼い炎…!御堂は焦った。あの火は危険すぎる…!人間態でも出せるのか。


御堂は飛焔の攻撃を防ぐので精一杯。
「飛焔…てめぇ…」
「彼女は元気かな?あの仮面の女…『紀柳院鼎』と言ったかな。本名は『都筑悠真』だろ?」
「なんであいつの名前を知ってる!?」

「だって12年前…あいつらを襲撃したのは俺だからねぇ。あの時の高校生が生きてたのは想定外だったけどさぁ」


強さの差がありすぎる。晴斗と釵游は拮抗。互いに譲らない状況。時々激しい攻撃をしてる。
御堂は飛焔には負けたくないが、こんなにも差を見せつけられたら…。太刀打ち出来ねぇじゃねぇか…。



時任と桐谷は残りの戦闘員を全て倒していた。
幹部2人は鼎がいないことに気づく。

「今日は来てないのか、仮面の女…」
「あいにくあいつは来れねーんだわ。残念だったな」


御堂は一瞬の隙を突いて飛焔に強烈なパンチを喰らわせる。ただのパンチじゃない、銃ごと殴ったのだ。

銃ごと殴ったことにより、威力は増していた。飛焔は怯む。



その隙に撤収を試みた。晴斗はまだ交戦中。晴斗も思いきって蹴りを釵游に喰らわせる。
釵游は予想外の攻撃に隙を見せ、人間態に戻ってしまう。

晴斗は攻撃しようとしたが、御堂に気づいた。
「おら晴斗、撤収すんぞ!幹部はまた来る。一撃で倒せる敵じゃねぇから早く乗れっ!」


釵游も飛焔と共に撤収していた。
晴斗も車に乗り込む。



組織車両内。晴斗は釵游に手応えを感じていた。


「あの釵游とかいう幹部、冷めてる感じがした…」
「晴斗もそう思ったのか。俺も気になっていた。渋々戦っていた感じだったな」


御堂も気になっていたようだ。

「元老院で何か起きてるとか?敵幹部のイメージと違いすぎだもん、釵游ってやつ。飛焔と女幹部はいかにも『俺達敵幹部ですよ〜』な雰囲気出てるのに」


晴斗の呟きに時任も乗る。

「悪の組織のイメージとはなんか違うんだよな〜。あの幹部。黒幕が気になる…」
「黒幕って、元老院の元締めのことじゃねぇか。長官と因縁あるらしいぞ」


「ちょ!?ちょちょちょちょ長官と元老院の黒幕って因縁あるの!?」
時任、パニクる。
「長官が義手になったきっかけが、元老院の黒幕らしいからな。それはそれは激しいバトルだったらしいぞ、噂では」


どんな戦いだったんだろう?蔦沼長官と元老院元締めの戦いって。

今でも語り草になっているということは、相当凄かったのかなぁ…。


第16話(上)

敵幹部を倒すべく、日々隊員達は鍛練を重ねたり鼎は火のトラウマ克服を懸命にしているが、ある日、本部のグラウンド側の空きスペースに見慣れないものが設置されていた。

晴斗はそれを見てあれを連想した。SSUKE…?何この鉄パイプとかで出来た謎物体の集合体は!?


本部にはトレーニングルームが5つあるが、シミュレーション怪人装置は3つの部屋に置いてある。
晴斗はトレーニングルームが1つ増えていることに気づく。あれ…トレーニングルーム、こんなところにあったっけ…?

恐る恐るその新しいトレーニングルームの扉を開けてみると、そこにはグラウンド横にあった謎の物体の縮小バージョンが。
「何…これ?トレーニングルームが増えてる…」


本部・休憩室。


御堂もグラウンドにあった謎の物体の集合体と、トレーニングルームが1つ増えていることに気づいていた。

「晴斗も見たのか、トレーニングルームが増えてるの。グラウンドにあった『あれ』は一体なんなんだ…」
「昨日までなかったよね…。6つ目のトレーニングルームになった場所、あそこは広い空き部屋だったはず。いつの間にトレーニングルームになったんだろう」

そこへ時任と桐谷もやってきた。

「ちぃーす!御堂さん、暁くん何の話をしてたんすか」

御堂がすぐさま反応。
「時任は気づいてないのか?グラウンドにあった『あれ』。鉄パイプとかで組まれた謎物体だよ。あといつの間にかトレーニングルームが1つ増えてるって話していたんだよ」
「えっ!?知らなかった…。グラウンドはあんまり行かないから気づかなかった」

「私も気づきませんでしたねぇ」
桐谷は呑気に言ってる。



本部・司令室。
宇崎はニッコニコで晴斗と御堂に話した。


「グラウンドの『あれ』とトレーニングルームが増えたの、気づいたのはお前らだけか。鋭いな」
宇崎はご機嫌なのか、口調がいつもよりも軽い。

「あれはな、まぁ全身を動かして体を鍛えるための装置だよ。見た目はかなりSSUKE寄りにしたが、パルクールにも使えるようにしたのさ。6つ目のトレーニングルームはパルクール用だ」


パルクール?


晴斗はぽかんとしている。御堂は説明した。
「パルクールっていうスポーツがあんだよ。公園でも出来るんだっけか。ちょっと待ってよ…この動画がその『パルクール』ってスポーツだ」

御堂はスマホでパルクール動画を見せる。そこには選手が縦横無尽に壁を飛び越えたり、ジャンプしたりと身軽な動きをしている。

カッコいい…!


「御堂、解説ありがとね。晴斗!第6トレーニングルームとグラウンドのあれはお前用のようなもんだぞ。晴斗は身体能力が高い、低い壁なら飛び越えられるんじゃないかと思い、設置した」
「お、俺用…?」

晴斗は戸惑いを見せている。
「鼎が火の克服しようと頑張ってんのに、晴斗はたるんでるぞ!」
まるで小学生のような言い方だな…。室長…。

「俺だってやってんのに」
「室長、晴斗を攻めるなよ!不毛な争いはやめろってんだよ…。

御堂は少しイライラしてる。宇崎は気を取り直した。
「悪い、誤解だった。とにかく好きなように使っていいからな〜。誰でも使っていいんだよ」



2階にある第2トレーニングルームでは、鼎と彩音が火の克服のために訓練していた。


彩音が心配そうにシミュレーション装置をシチュエーションモードにする。

「鼎、ここずっと毎日のように訓練やってるけど…そろそろ休んだら?どう見ても疲れてるのに…」
「たき火くらいの大きさはなんとか克服出来た…」
「こないだの長官が言ってた通りに段階踏んで行くよ。バーチャルの火を完全に克服出来たら本物の克服に移行するよ」


彩音は設定を「中」にする。火の範囲がたき火よりも少し広がった。偽物なので熱さはない。
「強」にすると熱さも本物さながらに伴う。バーチャルなので怪我はないように出来ているが、見た目はかなりリアル。


鼎は動けなくなってしまう。彩音は声を掛けた。
「鼎、一旦休もう。疲れているのに無理したらダメだってば。今の鼎には休息が必要だよ」

彩音は装置の電源を切った。バーチャルの火が空間から消える。彩音は設定を怪人モードに戻した。



異空間・元老院本拠地。


鳶旺と絲庵は新しい監察官を迎えている。
「朔哉(さくや)、どうだね?監察官になった気分は」

朔哉と呼ばれた男性は、あの監察官候補者のリーダー格の男だった。
監察官に昇格したため、ローブはライトグレーから黒になっている。

「ありがたき幸せにございます」
朔哉は昇格したことでキャラがガラッと変わっていた。上司の前というのもあるが。深々と礼をした。

「では早速任務と行きましょう。飛焔の監視につくのです」
「飛焔ですか?」

絲庵は続ける。
「君の任務は大事なんだ。幹部がきちんとゼルフェノアと戦っているかを見る必要性がある」
「御意」


朔哉は部屋を出た。



元老院・東館。


諜報員の高槻はあることに気づく。この東館にはわかりにくいが出入口がある…。出入口は本館だけじゃなかったのか。

東館は4人だけになってしまった。高槻は伊波と親しくなっていた。
残された監視官候補者はどうなるんだ!?元老院の判断次第では脱出するしかない。

この元老院の牙城を出るのは難しいだろうな。
高槻はゼノクへ連絡する。

『元老院を脱出する。ゲートの解放をお願いしたい』



群馬県某町・ゼノク。蔦沼は高槻の連絡を受理。

「西澤。ゲートを解放するんだ。高槻がいつでも来れるように」
「異空間で何かあったんですかね…」
「高槻は危険を感じたのだろうな。元老院のやり方に」



元老院・東館。


高槻は伊波にこんなことを言っていた。

「元老院は残された僕達をどうするつもりなんだろう。監察官が決まったということは…」
「殺されるかもしれないですね。だってこの館、拷問部屋があるのを見たんです…」



元老院・会議室。長と副官は残された監察官候補者について話している。

「あの4人、どうしますか?」
「監察官が決まった以上、彼らには居場所はない」
「では抹殺ですね。中級メギドを使って」



東館では少しずつ動いていた。残された4人でこの館を脱出しようとしたのだ。


高槻は眼鏡の男と少年も出たがっていることに気づいた。

「君たちも出たいのか?」
高槻の質問に少年は答えた。
「だって前にいた監察官候補者が1人もいないのって、おかしいよ!」
「…変だと思っていました…最初から…」

眼鏡の男もおかしいと感じていたらしい。


高槻は東館の出入口を発見する。棚の後ろに外へと扉が隠されていた。
「棚を動かすぞ、手伝ってくれ」
「うん」

少しずつ棚を動かし、扉の全貌が明らかに。
本館では鳶旺が何かを感じていた。


「今すぐ中級メギドを複数東館に送り込め!複数だ!候補者を逃がすな!!」
絲庵はメギドを出現させ、東館へ行けと命令。

伊波は嫌な予感がした。
「さっきから音が近づいてません?…怖い…」
「追っ手が接近してる!俺達を殺す気だ!!」

高槻は3人を連れ、扉を開けた。外には戦闘員もいる。
4人は四面楚歌となる。怪人を前にした3人はパニックで洗脳が解けかけている。
高槻は肉弾戦で戦闘員と交戦。その隙にまずは少年を館の外へと逃がす。その後に眼鏡の男、最後は伊波と共に館の外へとなんとか脱出成功。

少年は戸惑いながら高槻に聞いた。
「高槻さんって、何者なの!?」
「話は後だ!ゲートが開いてるから全員飛び込め!撒くぞ!」


目の前には異次元に繋がるワームホールが開いていた。4人は一斉に飛び込む。高槻は叫んだ。
「ゲートよ閉じろ!」

追っ手の戦闘員や中級メギドは寸前のところで4人を逃がしてしまう。



―――ゼノク・とある部屋。高槻を始めとする4人は異空間からの脱出に成功した。
少年はここはどこ?と呟いている。高槻が解説した。

「ここはゼルフェノアの施設だよ。ゼノクっていうんだ」


伊波は泣いている。
「戻れたんだね…。私達…」


少年はあの質問をした。
「高槻さんって、だから何者なの?」
「ゼルフェノアの諜報員。スパイさ。元老院を監視しに行ってたんだよ」
「ス、スパイ…!?」
少年は驚いている。

「危険が迫ったから任務は止めたけど、大収穫だよ。敵の本拠地に行くのは楽ではないな」


眼鏡の男と少年は仮面を外し、フードを脱いでいた。眼鏡の男は仮面に縛られて大変だったせいか、解放されている。

高槻も仮面を脱ぐ。だが、伊波だけはなかなか仮面を外せなかった。
伊波は絲庵から「人前以外でも仮面を外すな」と強く言われていたせいもある。


伊波だけ暗示にかけられていた。
「伊波さん、仮面…外さないのか…」
「心では外したいのに、外せない」

絲庵の暗示が効いてるのか?



そこに蔦沼と西澤がやってきた。

「高槻、迷い人を連れて戻ってくるとはねぇ」
「1人は監察官になっているため、全員は無理でした」


蔦沼は伊波を見る。

「そこのお姉さん、かなり強い暗示をかけられているね。このゼノクでは怪人による後遺症治療もしてるから少し…治療しないか?」


「強い暗示……」

「君みたいに元老院で強い暗示、まぁ洗脳とも言うな…をかけられ、人前で仮面を頑なに外さない人もいる。
彼女はだいぶ元に戻ってはいるけどね、仮面だけは難しいからあえて人前では着けたままにしているよ」


「その人って…。前監察官の流葵(るき)さんじゃあ…」





第16話(下)へ続く。


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