市街地をひたすら走る暴走怪人を止めるべく、カーチェイスの様相を呈してきたゼルフェノア隊員5人+同行しただけの晴斗。
霧人主導のもと、暴走怪人を果たして止めるとこが出来るのか!?
霧人はバイクのスピードを上げ、だんだん怪人へと接近していく。霧人はさらにスピードを上げる。
そして、並んだ。霧人は並んだ瞬間どこから出したかわからない銃で攻撃を加える。怪人も霧人に攻撃。
霧人はなんとか振り切り、怪人の前へと出た。
霧人から通信が。
「紀柳院・時任双方作戦開始しろ!相手のメギドは予想通り列車メギドだったよ。こっちは人気のない地点までなんとか引き付ける!既に場所は封鎖しているからな。誘き寄せるぞ」
「了解だ」
「しぶやん了解っす!」
「しぶやん」って…霧人さんのことか?時任なんなの…。緊張感なさすぎない?
同行しただけの俺が言えたわけじゃないが…。
鼎と時任は連携しながらそれぞれライフルとボウガンを放つ。
鼎は仮面故に照準が合わせにくいようだ。時任はそんな鼎に声をかけた。時任は彼女なりに心配してる。
「きりゅさん、きりゅさんはライフル使った方がいいよ!私はこっちを使うから。この状況だときりゅさん身体の負荷大丈夫なの!?」
「ちょっとキツいが、通常よりはかなり楽だぞ…。時任、ありがとな」
「お礼は後でいいから早く暴走止めなきゃ!」
時任はボウガンを撃ちまくる。鼎は確実にライフルで敵を捉えていた。
時任のとっさの判断で、装備を逆にして正解だったらしい。
時任さんは鼎さんのことを「きりゅさん」と呼んでいるようだ。
晴斗は時任の台詞からあることが気になった。鼎さんの「身体の負担」ってなんだ?仮面の理由と関係してるのか?
彩音はかなりハラハラしていた。晴斗を頼まれたとはいえ、攻撃出来ないせいかモヤモヤしている模様。
「晴斗くん、下手に動かないでよ!じっとしていて!」
彩音まで参戦。暴走怪人はそれだけ止めるのに難しいことなようで…。彩音は銃で援護していた。
先を走る霧人は怪人を誘導する。なんとかうまくいった。
誘導先には待機していた隊員達がいる。霧人から待機中の隊員達に通信が入る。
「暴走メギド、そろそろ来るからスタンバイして!ハイエースはうち(ゼルフェノア)の車だ。絶対に攻撃するなよ!中には桐谷達がいるからな!」
待機中の隊員達はバリケードや建物の陰から銃をそれぞれ構えた。遠くから音がする。
先に見えたのは赤いバイク。霧人だ。それから数秒後、暴走怪人が猛スピードでやってきた。霧人は合図をする。
一斉射撃だった。
桐谷が運転するハイエースはわざと減速して少し離れた場所へと停まる。鼎と時任は車から降り、淡々と銃撃してる。
霧人はバリケードの向こう側に停車。
晴斗は鼎の精度に驚いた。
鼎さん…仮面着けてるのに、確実に当ててる!?いつもの銃よか精度高くナイデスカ!?いつもの銃もすごいけど!
鼎は銃に関してはライフルの方が得意。仮面との相性もあるのだろう。このライフルも対怪人用。
この一斉射撃により、暴走メギドは蜂の巣にされ倒された。
今回は人海戦術で勝利したパターン。桐谷と霧人の連携とも言えなくもない。
ちなみに霧人のバイクは自前だが、組織のエンブレムをマーキングしている。
戦闘後。桐谷はマイペースな桐谷へと戻っていた。
晴斗達を乗せた車両は本部へと向かう。
晴斗はなぜか疲れていた。怪人との追いかけっこ、カーチェイスのせいだと思われる。危うく車酔いしそうになった。もう、ぐだぐだ。
桐谷さん、変わりすぎだろ…。普段はのほほんとしてるのに、戦闘になるとスイッチが入るのだろうか…。ギャップが激しすぎでしょ。
時任さんはふざけているようで意外と真面目だとわかった。言動は癖が強すぎるが。
ゼルフェノア本部へ帰還。
晴斗は再び休憩所へと向かった。疲れたのか喉が乾いた。
そこへ桐谷がやってきた。
「晴斗くん、振り回してごめんなさいね。任務だから致し方なかったんですよ。本当は気にしてました」
「酔いそうになりましたよ〜」
晴斗はぐでーっとしてる。
「すいません。戦闘になるとスイッチ入ってしまうんです。今回はまだマシな方ですから」
カーチェイスがマシ!?
桐谷さん、絶対まだ何かあるよな…。ニコニコマイペースなんで読めない…。
時任は晴斗を気にしたのか、お菓子を分けてくれた。
「暁くん。チョコあげるから食べてちょ。疲れたでしょ?ゼルフェノアって、怪人殲滅のプロ集団だから。君達からしたら私らはヒーローかもしれないけど、現実はこんな感じなんだな」
そこへ鼎と彩音もやってくる。鼎は疲れたのか、スポーツドリンクを自販機から買っていた。時任さんが言っていた「身体の負荷」がかかったんだろうか…。
晴斗はふと、あることに気づく。
いつぞやに彩音さんが言ってた鼎さんの「リスク」って、この「身体の負荷」のことなんだろうか?
鼎は仮面をずらし、器用にスポーツドリンクを飲んでいた。晴斗は仮面の下が気になるせいか、横目で鼎をつい見てしまう。
鼎は晴斗の視線を感じていた。
「晴斗。どうした?」
デジャブなのか?前もこんなやり取りがあったような。
「い、いや…なんでもないよ…」
鼎は晴斗をじっと見た…ような気がした。明らかに鼎さんはこちらを見ている。目を逸らせない…。
あの仮面の黒いレンズの向こう側、どんな眼をしているのか…わからないからなぁ。
鼎は数瞬、晴斗を見た後仮面を元の位置に戻す。
晴斗は僅かに見えた仮面の下をはっきりと見てしまった。
晴斗と鼎の距離が近いせいもあったのだが、あったけど…。
あれは…どう見ても火傷の跡。首筋のものも火傷の跡だ…。
鼎さんが仮面の理由って…。
帰り際、晴斗は鼎が本部近くのゼルフェノア寮に住んでいると知る。
「晴斗、お前はそろそろ帰れ。明日も学校なんだろう?」
「そうだよ」
「言っておくが、ゼルフェノアは部活じゃない。肝に命じておけ。あと毎回命懸けだ。わかっているのか?」
「か…鼎さん、わかったよ…」
言い方は冷淡で圧を感じるけど、どこか優しさを感じた。鼎さんなりの優しさなんだろうか…。どこか不器用な、そんな優しさ。
鼎は帰宅後、複雑な気持ちになっていた。顔の火傷の跡…晴斗に見られたかもしれない…。
…いや、わかっていた。いずれにせよ、いつかはあのことを晴斗に明かさなければならないことを。
鼎の心は少しずつ、揺らぎ始めていた。