スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

第2話(下)

前日借りたままになっていた晴斗は、日本刀型ブレードを返しに本部へ。そこで気になっていた仮面の女隊員と顔合わせするのだが。


晴斗はぎこちなかった。相手は仮面姿の女性隊員。正直、どこを見て話したらいいのかさっぱりわからない。

よく「目を見て話しなさい」と言うが、彼女の場合は仮面の目が黒いレンズゆえにどこか目を合わせにくいというか…。


話を切り出したのは鼎だった。
「緊張しているのか?無理して目を合わせなくていい。見苦しい姿ですまないな…。話しづらいだろう。初対面だとよく言われるんだ」

見苦しい姿…あの仮面のことか?


「い、いえそんな…。俺、そんなに緊張してます?」
「ガッチガチだぞ」

ガッチガチ!?いきなりストレートに言ったよ、この人!

晴斗は緊張しながらも鼎にブレードを渡す。鼎は受け取った。
「ブレードを丁寧に保管していたのか。ありがとう」

声が少し優しくなってる…。鼎は早速布をほどき、ブレードを鞘に納めた。
晴斗は思い切って聞いてみた。

「あ…あの、名前を聞きたいんですけど…いいですか?」
「私か?『紀柳院鼎』だ。私も気になっていたんだよ。名前を教えてくれないか?」
「あ…『暁晴斗』です」
「『暁』…そうか…ありがとな」


今の反応は一体?
この人、鼎っていうのか…。話し方は冷淡だけども、どこか優しさはある気がする。やっぱり初めて会った気がしない。顔がわかればいいのに…。


「いきなりこんなこと聞いてすいません。なんで仮面、着けてるんですか…」
「知りたいのか…。止めておけ。お前にはわからない…」


急に冷酷な言い方になった。なんで?


晴斗はモヤモヤしていた。

鼎さんの仮面の理由が気になるところだが、部屋にいきなり眼鏡・白衣の男がノーノックで乱入してきた。

空気読めよ…。


「お取り込み中、すまんな〜。鼎の仮面の理由はそっとしといてくれ。晴斗、お前地雷踏んでるぞ」

なんだこのやけに馴れ馴れしい男は!?


「悪い悪い。自己紹介遅れたわ。俺、宇崎幾馬っていうの。本部司令兼、研究室長」


晴斗は「えぇっ!?」というリアクションを見せる。
こいつが本部司令?なんかすげーふざけてる、ちゃらんぽらんにしか見えないけど…。

イメージした司令とは全然違う…。


「晴斗。この際だから本部見学していくか?もしかしてお前とはまた関わるかもしれないからね」

また関わるかもしれない?


「鼎、さっきのことは忘れて晴斗を案内してくれないか」
「了解した」

なんかさっきから鼎さんの声が少し怖いのだが…。気のせいか?
やっぱり地雷踏んだせい?


鼎は淡々と本部を案内していく。
「ここが司令室だ」

すごい!これが本部中枢なの!?
晴斗は目を輝かせていた。

しばらく2人で館内を見ているうちにだんだん慣れてきたのか、晴斗は鼎に謝った。
「鼎さん、ごめんなさい。地雷踏んだこと…気にしてますよね?」
「お前…まだ気にしていたのか。いずれお前と一緒に任務をこなすかもしれないというのに」


えっ!?どういうわけだ!?何言ってるのかわかんないよ〜。

「室長は晴斗を見込んでいるみたいなんだ。本部にお前をわざわざ呼んだ…来るようにしたのも室長。晴斗、メギドはまたやってくる。力を貸してくれないか」


力を貸す?


「そのうちわかってくるとは思うよ。組織のこと、怪人のこと、隊員のことをな」
「鼎さんのこともそのうちわかる?」
「…知りたいのなら、力を貸すんだな」

力を貸すのはいいけど、どうやって協力しろと!?
なんか鼎さん、声が明るくなったような気がする。心なしか顔も明るく見える。仮面に表情なんてないのに…。



鼎の案内でトレーニングルームへ来た。そこには宇崎が。
「暁晴斗。隊員の素質があるかどうかの体力テストを受けてくれ。なーに簡単なもんだよ」
宇崎は学校でやる体力テストを改造したものを用意していた。晴斗はなぜか芋っぽいジャージに着替えさせられた。

なんでジャージ!?ダサっ!

「文句言うなよ〜。晴斗はダイヤの原石かもしれないんだ。学校でやる体力テストみたいなもんだから、な?」
晴斗は仕方なしに受けることに。次々受けていく中で、宇崎はあることに気づく。

暁晴斗は天然タフ野郎ってとこかな。身体能力も高いが持久力もある…。素質は十分だ。


宇崎はある木刀を晴斗に渡した。
「この木刀で目の前にある人形を思い切って叩き切ってくれ。これはい草で出来たものを木に巻きつけているだけだ」
「これで何がわかるんですか?」
「怪人を倒せるだけの威力があるかどうか。この木刀はただの木刀じゃないんだぞ〜?斬れないけど、すげーもんなのよ。自信作だぞ?」

自慢かいっ!


晴斗は宇崎にイラッとしながらも木刀でダミー人形に斬りかかる。人形は真っ二つに斬れた。

これには鼎も驚きを見せていた。
あの木刀は斬れないはず…!なんなんだ、こいつは…!



体力テストは無事終了。晴斗は芋ジャージから解放されて安心してる。
「ジャージダサすぎだよ、なにこれ…。うちの高校はもっとマシなのに…」

そっちかーい!


鼎は晴斗を隊員用休憩所へと連れて行った。そこには自販機が並んでいる。
晴斗はスポーツドリンクを買った。鼎は缶コーヒー。

晴斗はスポーツドリンクを飲みながら鼎を横目で見た。
仮面をずらしながら器用に飲んでいる…。

「どうした?」
鼎は目線に気づいたらしい。
「いや…器用だなって…」
「色々と事情があるんだよ。私が人前で素顔になれない理由がな」

鼎は缶コーヒーを飲み終えたのか、ずらした仮面を元に戻す。晴斗は一瞬、何か見てはいけないものを見た気がした。


今のは一体?なんか火傷の跡…みたいなものがあった気が…。まさかなー。
それも範囲が広い気がした…。まさか鼎さんの仮面の理由って…。顔の火傷の跡…なんだろうか…?

ほんの数秒だったのでまだわからないが…。


休憩中、晴斗は鼎をなんとなく見ていた。首筋にも火傷の跡らしきものが残っている。
まさかそんなわけ…。あの黒手袋が比較的薄手なのは日常的動作を使いやすくするためなんだろうけど、どうしても気になってしまう…。



俺は「紀柳院鼎」という、仮面の隊員についてますます気になり始めていた…。


そして本部で体力テストの結果と独自の戦闘テスト結果から、隊員の素質があると伝えられてしまう。

どうなるんだ、俺の高校生活。隊員の道は考えてもいなかった。
今のところ怪人はまだ少ないが、鼎さんに「力を貸してくれないか」と言われてしまった以上…なんだか退けない。


紀柳院鼎についてはもう少し、調べる必要がありそうな感じがする…。
仮面にも表情があるんだな…。角度や陰影のせいなんだろうが、鼎さんは自然に見えるんだよ…。

第2話(上)

前回までのあらすじ。学校にて成り行きで怪人を倒してしまった暁晴斗は、仮面の女隊員が妙に気になってしまう。隊員撤収後、晴斗は彼女の武器を返し忘れていた―。


晴斗は結局、その日本刀型ブレードを布でぐるぐる巻きにして家に持ち帰るしかなかった。鞘は彼女の元にあるため刀は剥き出し。さすがにヤバいので、仕方なく布でぐるぐる巻きにしたわけで。
晴斗は自室に日本刀のある光景に違和感がかなりあった。違和感しかない。


うっわー、一気に物騒にーっ!
…どうすりゃいいんだよ、これ。今からじゃあ遅いし、明日以降に返しに行くか?一体どこへ?

…ゼルフェノア本部…だよなぁ…。


晴斗は夕飯時、なんとなく昔隊員だった陽一に聞いてみることに。

「晴斗、どうしたんだ?深刻そうな顔して」
「父さん、今から言うこと信じてくれる?」
「言ってみなさい」

晴斗はなんとか今日あったことを伝えた。
「なるほどね。晴斗、じゃあその隊員さんを助けたんだな。ご飯終わってからその刀を持ってきてくれないか?もしかしたら父さんわかるかもしれないし、本部にも連絡しておくよ。返しに行きますーって」

あれ?父さん隊員辞めたはずなのになんで連絡先知ってんの?

「晴斗、今『なんで辞めたのに連絡先知ってんの!?』…と思っただろ。大人には大人の事情があるの。いいから食べなさい。冷めちゃうよ〜」

「…うん」



夕食後。晴斗は自室から例の日本刀型ブレードを持ってきた。布でぐるぐる巻きにした状態で。
陽一はソファーに座り、早速布をほどいてみる。科学的に作られた日本刀型ブレードだが、見た目は日本刀そのもの。

「…晴斗。この刀の持ち主、どういう人だったか覚えてるか?」
「名前はわからないけど、白い仮面を着けた女の人だった…。なんかすごい苦しそうにしてて…。俺、本能的に助けなきゃと思ってたら体が勝手に動いたんだ」


仮面の女性隊員…?

陽一と朱美は心当たりがあったが、まだ晴斗には伏せておくことにした。
晴斗にあのことを言うにはあまりにも早すぎる。時が来るのを待つんだ。


「晴斗、この刀は彼女にとっては大事なものだ。明日は土曜日だろ?返しに行こう。その前に俺が連絡しておくから、明日は晴斗1人で行ってきなさい」
「わかったよ。これ、返しに行ってくる」


陽一は丁寧に日本刀型ブレードを布でぐるぐる巻きにした。陽一はブレードを見て察した。これは宇崎が作ったものだ…。


少しして。陽一は宇崎に直接連絡する。


「…あ、もしもし。暁ですけど。幾馬?今大丈夫か?」
「お前、陽一!なになにいきなり」
電話口から無邪気な声。

「幾馬は相変わらずだなぁ。本当にお前は司令なのか?本当は知ってるんだろ、晴斗が怪人倒した件。それと成り行きで借りた日本刀型ブレードは明日、晴斗本人が本部に返しに行くからな」
「陽一も来てもいいんだよ〜。隊員辞めても臨時隊員として動けるようにしてるじゃんか」
「それは今よりも状況悪化したらの話だろ」


電話口から聞こえる声はふざけてる。本当に相手は司令なのか?晴斗は懐疑的。


なんだかんだで変なやり取りの電話は終わった。

「晴斗、明日OKだとさ。刀の持ち主も気にしているようだし、この際挨拶するんだよ。何かの縁かもしれないからね」
「うん」



ゼルフェノア本部・救護所。鼎はまだベッドの上に横たわっていた。
彩音は鼎を看ている。鼎はなんとか起き上がる。

「鼎、今日はそのまま本部に泊まりなよ。やっぱり戦闘、ちょっと無理しちゃったんだね。身体休ませた方がいいよ」
「あぁ…。それにしてもあの少年…初めて会った気がしない。名前はまだ室長からは聞いてないが…。明日になればわかるか。ブレード返しに来ると聞いたから」

そういえば鼎のブレードは、あの少年が戦闘のどさくさで借りたままになっていたんだっけ。鼎の手元には鞘しかないもんなぁ。



暁家・晴斗の部屋。晴斗はブレードを壁に立て掛ける。どうもあの仮面の隊員がちらついてしまう。


あの時、一言二言しか交わさなかったが、初めて会った感じがどうもしないのだ。前にどこかで会った気がする…。
なんなんだろう、この感じは…。


仮面で顔が見えないのがもどかしい。それにしてもなぜ彼女は仮面姿なんだろう?何か理由があるとしか思えない。人前で素顔になれない理由が…。
何気に気になったのは他にもあった。あの手袋だ。他の隊員は明らかに戦闘用の厚手の手袋か、素手で戦っているのに彼女は比較的薄手の黒手袋だった。それも手首より少し長めのもの。

ゼルフェノア隊員の制服は詰襟タイプなので肌の露出が少ないが、あの仮面の隊員はさらに少なく感じた。首しか出ていない気がする…。


なんかあの人、話し方は冷淡だったけどそんな感じはしなかったんだよなー。
もしかして俺のこと、知ってて刀を託したのかもしれない…と妄想なのかなんなのか、どんどん広がっていく。俺、ヤバい。

一体あの人は何という名前なのか?
明日になればわかる。わかるが…なんでか知りたくない気もする。あぁ、もどかしい!



ゼルフェノア本部・司令室。宇崎は独り言をぶつぶつ言ってる。


「やっぱりあの少年は陽一の息子だったわけね〜。待てよ、この際だから明日は実力見れるチャンスかもしれん。まさか学生に素質がありそうな原石がいたとはな〜」


宇崎は晴斗の学校で起きた、メギド案件の映像をリピートしていた。
この身体能力で素人って、なんか色々おかしいでしょうよ…。

明日は鼎とご対面だな、暁晴斗は…。鼎も気になっていたみたいだし。


司令室に彩音が突然入ってきた。

「ちょーっ!彩音、司令室入る時くらいはノックしなさいよ!」
「…え?しましたよ?」
彩音はぽかんとしている。

宇崎は気を取り直した。
「…で、鼎の様子は?」
「だいぶ良くなりましたね。ですが大事を取って、今日はこのまま本部に泊まります。一応私も泊まりますよ。鼎のリスクは常にありますから」
「彩音は鼎との付き合い長いもんな…」
「時折鼎は無茶しそうになるのでハラハラしますよ。…まるで私、保護者みたいじゃないですか」

鼎と彩音の関係は親友同士だが、限りなく彩音は鼎の保護者に近いがな…。色々とあって、そんな感じになっている経緯がある。


「明日もし、メギドが出ても鼎は出動させないつもりだ。鼎はどうしても身体に負荷がかかるから連続は難しい。指揮だけなら可能かもしれないが、あいつの性格的に戦いそうだしな…」
「やっぱりそうですよねー…」
彩音も微妙な表情。

「とにかく鼎にはゆっくり休んでもらうからな。少しでも回復して貰わないと…」



救護所にいる鼎は、身体を休ませるために眠ることにした。救護所の電気は既に消してある。
本部に泊まる時、鼎は常に仮面を着けた状態。寝る時も。救護所にいつ人が来るかわからないから。

普段、ゼルフェノア寮(某アパートの部屋)にいる時は寝る時仮面を外している。完全に1人になれる空間だと別だが、本部だと勝手が違うからだ。



翌日。晴斗は「ゼルフェノア本部」なる、対怪人組織の本部に刀を返しに行くことになった。
小さい頃憧れたヒーローのようなゼルフェノア隊員がいる、大元の本部。

晴斗は自転車を飛ばし、本部の前までやってきた。



やがてゼルフェノア本部前のゲートへと到着。晴斗は思わず見上げてしまう。


ゲートでけー。本部もでけー。なにこれ全てがスケールでけー!これが都心の郊外にあんの!?
隣にあるのは病院か?ここらへんで1番大きい組織直属病院なんだっけ。デ、デカイ…。

本部と病院、規模は同じくらいかパッと見、本部の方がデカイように見えるけど…。
…てか、グラウンドも学校の校庭よかでかくありません!?
ここ、演習場もあるの!?裏にちらーっと見える林と草原、あれ全て演習場!?


なんかとんでもないところに来てしまった…。

晴斗はゲート前で用件を伝えると、金属製のゲートはガシャンと音を立ててあっさり開いた。晴斗は自転車をゲート横の駐輪場に停めてある。


晴斗は緊張しながらゼルフェノア本部の出入口へと向かう。本部まで距離があるな…。ゲートから徒歩3分くらい?
正面入口はゲートから約3分ほどの距離にあった。

この時点で少し疲れてる。緊張もあるのだけども。


そうこうしているうちにようやく正面入口へと着いた。扉はあっさり開いた。
人の出入りがあるから当たり前か…。


晴斗は受付で館内地図と入館証を渡された。
隊員以外の人間は、入館証がないとさらにある扉の向こう、本部入館を許可されない仕組み。
晴斗は前日に連絡していたので、名前の照合と入館証だけで済んだ。

隊員だと隊員証をスキャン・指紋認識・顔認証するとようやく入れる。



晴斗は前日の連絡通り、ある部屋を目指す。そこに仮面の隊員がいるというのだ。
地図を見ながら、時々迷いながら例の部屋を目指した。たまに優しい隊員が場所を教えてくれたりもする。


入館してから約10分〜15分、晴斗はようやくその部屋へとたどり着いた。
部屋の扉がまるで学校の教室みたいだと感じた。ガラスは目隠しされてはいるけども。

晴斗は緊張しながらノックをする。中から「どうぞ」と冷淡な声が聞こえた。ドキドキしながら扉を開ける。そこには折り畳み式机とパイプ椅子・控えめな棚だけの質素な部屋だった。

そして中にはあの仮面の女隊員が椅子に座り、待っていた。


「昨日の…人ですよね…?か、返しに来ました…!すいません、借りたままで」

晴斗は心臓バクバクで彼女の元へと近づく。鼎は一瞬、ビクッとした。
もしかしてこの人…怖いのだろうか…。昨日の今日でまともに顔合わせするのは初めてだ、相手も緊張しているはず。


晴斗と鼎は互いに緊張しながらも、まともに顔合わせをすることとなった。



第2話(下)へ続く。

第1話(下)

放課後。なんとなくバスケ部の助っ人に行こうと体育館へ向かう晴斗に異変が起きる。
やけに体育館の方向が騒がしいのだ。晴斗はダッシュで体育館へと駆け込んだ。

そこには怪人が複数いた。戦闘員らしき怪人複数と、違う怪人が1体。体育館は悲鳴とパニックに包まれる。
体育館にいた生徒達はパニックになっていた。逃げ出そうにも恐怖で逃げ出せない生徒もいる。


「これが怪人…?」

晴斗は体育館の出入口に突っ立ったまま、呆然としていた。通学カバンを床に落とし、動けない。出入口にはパニックになった生徒達が殺到。さらにパニックになる学校。

晴斗は逃げ遅れたクラスメイトを助けようと体育館へと入る。クラスメイトは晴斗に来るなと叫んでいた。

「暁!来るな!やられるぞ!」
「うるせー!お前を助けてぇんだよ!」

晴斗はその場にあったものでなんとか怪人に対抗するも、歯が立たない。素人には無理なのか…?



いきなり場の空気が変わった。ゼルフェノアの隊員が来たんだ。白い制服の隊員達は銃で応戦してる。その中に白い仮面の女性隊員がいた。


仮面の女隊員…?
晴斗はその隊員が妙に気になった。


「彩音は生徒達を避難させろ!私はメギドを倒す!」

鼎は他の隊員とは違う装備だった。銃の他に日本刀型武器を持っている。SF的な特徴的のデザインの武器だ。
「早くこっちへ逃げて!君、何してんの!?」

彩音は生徒の避難誘導をするが、晴斗の誘導に失敗。たまにいる、怪人への恐怖で動けなくなった市民だ…。この場合は無理に誘導しても動けない。ならば庇って戦うしかない。


「鼎!ステージ付近に動けなくなった生徒がいるの。彼を庇いながら戦って!」
「了解した」

鼎はブレードを抜刀する。この日本刀型ブレードは鼎専用に作られたものだ。
彩音は時計を気にした。鼎が戦える時間は約15分…。

他の隊員達は戦闘員をなんとか銃と肉弾戦だけで倒せてはいるが、鼎が対峙したメギドは上のランクなため、銃と肉弾戦程度では倒せない。


鼎はうまくメギドを引き付けて何度も斬り込むが、装甲が厚いのかうまくいかない。
銃も巧みに使い、メギド殲滅に走るが戦闘時間という制約が邪魔をする。肉弾戦もあまり効いていないようだ。制約さえなければ…!


鼎は何度もメギド相手に果敢にも挑んでいく。ダメージはなんとか与えられてはいるが、鼎も突き飛ばされたり、蹴られたりとダメージを受けている。
晴斗はこの仮面の隊員を見ていられなかった。

彩音は彩音で時間を気にしている。
鼎の戦闘時間…残り時間、あと約10分切ってる…。早くケリをつけないと危ない…!


彩音はある決断をした。

「鼎、発動使って!攻撃力を上げればメギドは倒せるはず!」
「何言ってるんだ…彩音。発動使うとリスクが高まるだろうが!!」

晴斗はこの仮面の隊員の「リスク」というワードが引っ掛かった。見てると彼女はキツそうに見える。
時間と共に苦しそうにしているように見えるのだ。
顔は仮面でわからないのだが、明らかにかなり息切れしているし時折咳き込んでる…。


単なる消耗じゃない気がする…。この人は一体…?



メギドは鼎の隙を突き、武器を蹴飛ばした。鼎は衝撃でみぞおちに攻撃が当たったらしく吹っ飛ばされ、倒れる。
「鼎!」
彩音は叫んだ。


司令室でもこの様子を宇崎は見ていた。
「鼎のやつ、ヤバいかもなぁ…。残り時間が約5分って…」


晴斗は鼎の手から離れた日本刀型ブレードが床を滑り、自分の足元へ来たのを見た。爪先にブレードがコツンと当たった。
鼎はなんとか立ち上がろうとする。明らかに苦しそう。鼎は下を向いたまま、立て膝で晴斗に話しかけた。

「そこの少年…聞こえているか…」
「あ…あぁ…」

鼎はなんとか顔を上げ、こちらを見た。仮面って表情がないはずなのに…この人には表情があるように見える。角度のせいなんだろうけど。

晴斗は戸惑いを見せた。


「お前がそのブレードを使ってくれ。行けるはずだ」
「ちょ!?鼎!?一般市民にそれは無理なんじゃ…」

彩音はわけがわからないでいる。
いつの間にか彩音含む隊員達は戦闘員を全て殲滅していた。残りはランク上のメギド1体のみ。


晴斗は恐る恐る鼎のブレードを拾い上げる。刀身が綺麗な刀だ。重さを感じる…。
晴斗は怪人が鼎に迫るのを感じ、直感で動いた。この人は動けない。明らかに苦しそうにしてる…。顔が見えなくてもわかる…。

「よくわからないけどやってみるよ!」
晴斗はいきなりブレードを発動、赤い刀身へと発光させた。知らず知らずに攻撃力アップモードを発動させたらしい。

彩音も銃で援護に入る。
「鼎はそのままそこにいて。これ以上戦ったら死んじゃうよ…!リスクがあるんだから…。無理は禁物だよ」


晴斗は闇雲ながらに戦いながらも気になっていた。
この人の「リスク」とは一体!?


晴斗は無茶苦茶ながらもメギド相手に次々と斬り込んでいった。時には素手で殴り、蹴飛ばしている。
鼎と彩音はこの高校生に圧倒された。一般市民…だよね?この子。なんか身体能力高くないか!?


晴斗は無意識に攻撃力をさらに上げ、決定的なトドメを刺した。
素人とは思えない動きと機敏さにおののく隊員達。

彩音は後から来た救護隊に鼎を託し、撤収した。鼎は救護隊に支えられてなんとか歩けてはいる。



残されたのは晴斗1人だけ。手にはあの日本刀型ブレード。体育館は散らかっている。


しばしの沈黙。


…俺、怪人倒しちゃったの!?
あれ、さっきの人達は…いない!?いつの間に撤収したの!?

晴斗は手にある日本刀型ブレードを見つめた。これ、あの仮面の隊員さんに返さなきゃならないじゃん…。どうしよう…。


晴斗、ドキドキする。この刀…一体どうしろと!?



この戦闘で宇崎は晴斗に目をつけていた。

「あの生徒が暁晴斗ねぇ。素人とは思えないなぁー。なんなんだ、あの身体能力。彩音、鼎の様子はどうなの?」
「救護所で休んでいますよ。やっぱり身体に負荷が相当かかっていたみたいで…」
「あの生徒、近々本部に来るよ。鼎のブレードそのままなんでしょ?返しに来るはず」

「室長、こんなことあるんですか?鼎専用の武器が他人が使えるってこと…」
「…ないねぇ。だから彼が気になっているのさ。暁晴斗くんがね」



晴斗の非日常は既に始まりを告げていた。たまたまとはいえ、鼎と出会ったことによって。

第1話(上)

限りなく現代に近い世界。技術革新が進んでおり、また怪人が出現するような世界。日常的に市民は怪人に怯えるような日々を送っていた。

いわゆる雑魚怪人という名の、戦闘員レベルの怪人でも一般市民からしたら脅威。
そこで対怪人組織「特務機関ゼルフェノア」は作られた。怪人殲滅に特化した、警察でも自衛隊でもない組織。



都立某高校―。暁晴斗は運動神経だけが取り柄の高校2年生。運動部に引っ張りだこだが、部活には入ってない。
なんとなくこのありきたりな日常が嫌だった。怪人の脅威こそはあるが、まだ出現頻度も低く「隣の芝生は青い」現象が起きている。


休み時間。

「暁ー、しばらくバスケ部に助っ人来てくれよー。人手不足なんだよ〜。数日でいいからさぁ、助っ人頼むよ。ねぇ?」
クラスメイトのバスケ部の1人が晴斗を助っ人に必死に呼び込もうとする。
「バスケ?あぁいいよ」

晴斗は二つ返事をした。いまいちやる気が出ない。そろそろ部活には入っておくべきなんだけどさ…。



東京都心郊外・ゼルフェノア本部。郊外のある場所にその対怪人組織は存在する。

本部には組織直属病院が隣接しており、連絡通路で往来可能。
グラウンドと演習場まで兼ね備えた巨大施設。内部も隊員用のトレーニングルームや射撃場・道場や装備の改良などに使う研究室などがある。それとは別にゼルフェノア寮なる、アパートも存在する。


その本部の一角、とある折り畳み式机とパイプ椅子しかない質素な部屋に、組織の制服の上から白衣を羽織った眼鏡の男性が誰かと話してる。制服の色は紺で詰襟タイプ。

隊員とは違う役職者だ。
この男性こそ、現ゼルフェノア本部司令・宇崎幾馬である。研究者上がりなせいか、隊員からは「室長」呼ばわりされてるが本人は嫌ではない。


宇崎は司令でありながらも、研究室長も兼任している。
研究は趣味程度にしかやらないが、白衣のせいか「室長」という呼び名が本部に浸透してしまった。


そんな宇崎はある隊員と1対1で話をしている。
その隊員は白い詰襟タイプの制服に、右腕には赤い腕章のようなデザインが施されている。赤いデザインには組織のエンブレム。隊員の制服は白いのが特徴。


その話相手の隊員は明らかに異質だった。

宇崎は何事もないように話してるが、相手の女性隊員は白いベネチアンマスクを着けている。当然、仮面で顔は見えないので彼女は仕草などで意思表示を見せているようだった。

仮面の目に当たる部分は黒いレンズで覆われているために、さらに表情なんてわからない。
彼女は黒い薄手の手袋を履いていた。他の隊員はほとんど素手か、戦闘用の少し厚手の手袋を履くことが多い。


宇崎はそんな仮面の女性隊員と分け隔てなく会話中。


「鼎、和希はあと3週間ほど支部にいるんだとよ。小田原司令が和希を鍛えるって言っててね。その間…お前が隊員をまとめてくれないか?鼎出動の際はサポートに彩音もつけるから」

宇崎は司令とは思えないくらいにフランクな口調。フランクすぎか?
鼎と呼ばれた仮面の隊員はようやく顔を上げる。

「それは…一時的に分隊長になれと言うことか?」
「臨時でな。最近メギドが頻発してきてるだろ?和希が本部に戻るまでの間だけでいいんだ。やってくれるかい?サポートはする。お前の戦闘のリスクは十二分にわかっているからな」

鼎と呼ばれた仮面の隊員は、少し間を置いてから返事をした。
「…はい」


この仮面の女性隊員、彼女が紀柳院鼎である。鼎は部屋を出た後、不安に駆られていた。
分隊長だと!?いくら一時的だとはいえ、荷が重すぎないか!?私には戦闘時間に制限があるというのに…。御堂が本部に戻るまでの間…務まるだろうか…。



メギドというのはこの世界に頻発している怪人の総称。メギド戦闘員は複数出現する。見た目は戦隊の戦闘員っぽい。

それとは別のものがランクが上のメギドだ。こちらは様々なモチーフや能力があるとされてるが、メギドの生態に謎が多いためまだ解明されてない。



本部・休憩所。鼎を心配してやってきた隊員がいた。鼎の先輩でもあり、親友の駒澤彩音だ。

「鼎〜いたいた。どうしたの?なんかあった?」
「室長から呼び出されたよ」
「呼び出しなんて珍しい」
「一時的に分隊長やれと言われた…。御堂が戻るまでの間限定で。サポートはつけると言うが…不安だ」

鼎は彩音相手になると本音を漏らす。
「私も室長から言われたよ。『鼎のサポートよろしくな(キリッ)』って。鼎は考えすぎなんだよ。実力もあるんだし、前向きに行こうよ。鼎は1人じゃないんだよ?」
「そうだよね…」

彩音の言葉に勇気を貰ったようだった。



京都中心部郊外・ゼルフェノア支部。御堂和希は気が気じゃない。

御堂は分隊長クラスにもかかわらず、制服を着崩しているような人。基本的に半袖スタイルとラフな格好。


ゼルフェノアは戦闘しやすければ制服を着崩す・カスタムは認められている。


「…だーっ!本部大丈夫かよ!俺不在でまとまるのかー?」
「まぁまぁ、気にしなさんな。和希くんよぉ」

そう御堂に声を掛けたのは支部の分隊長クラス・囃。御堂と囃は同期なせいか、会話も砕けてる。

「早速情報が入りましたぜ。本部の臨時分隊長…お前の後輩の紀柳院がやるってさ。和希が本部に戻るまでの間限定でな」
「鼎が!?室長無茶ぶりはよせよーっ!あいつのリスクわかってんのか!?」

御堂は頭を抱えてる。御堂と鼎は先輩後輩関係にある。囃は相変わらず呑気に続ける。


「リスクわかってて選んだんだじゃないの?あえて。司令は紀柳院の実力見たいとかありそうだよな〜」
「囃はマイペースだな…。他人事だからって、おい…」


御堂は鼎のことを詳しくわかっているため、少し過保護気味。



ゼルフェノア本部。御堂から連絡が鼎に入る。

「鼎、お前絶対に戦闘中無理すんなよ!いつも通りにやればいいからな!」
「わざわざ連絡したのか、御堂…」
鼎はどこか冷めている反応。

「お前がとにかく心配なんだよ。彩音のサポート入るから大丈夫だろうけどよ…。俺はもうしばらく小田原司令にしごかれるんで、頑張ってな」

電話が切れた。


鼎はぼーっとスマホを見る。サポートも付くんだ、大丈夫だろう。一抹の不安はあるのだが…。



都立某高校ではそろそろ下校時間になろうとしていた。いつも通りの日常。ありきたりな毎日。
晴斗はバスケ部の助っ人に行こうか、そのまま帰ろうか少し迷っていた。

いつからだろう。こんなにも空虚になったのは。


12年前、悠真姉ちゃんは怪人による放火で焼け死んだ。
本当の姉のような優しい人だった。俺を弟のように可愛がってくれて…。都筑家があった場所は今は更地となっている。

もし、生きてたら悠真姉ちゃんは何歳になっていたんだろう。
犯人の怪人は未だに見つかっていない。この連続放火事件は未解決のまま、時が過ぎている。


晴斗は何をするわけでもなく、廊下からグラウンドをぼーっと眺めていた。
今は帰宅部だが、正直悩んでいる。今後のために部活には入るべきなんだろうけど…。


そういえばあの放火事件以降、父さんは数年後に隊員をいつの間にか辞めていた。何かがあったとしか思えない。今は会社員。
母さんは現在在宅ワークしてるが、あの事件のことはタブー視している。



晴斗はなんとなく体育館へ向かおうとする。なんとなく。
そこで晴斗はある恐怖と遭遇してしまう。





第1話(下)に続く。

またエアリアル


話題:ただいま
買い物から帰ってきましたー。またエアリアルを買ってしまったわ。アニメコラボに釣られてる!
ベビーチーズが安売りしてたんで、チーズ被りを避けたくてスレッタパッケージの塩味を買う…。

気分的にグエルパッケージ(チーズ味)にしたかったのだがな…。



ガンダム水星の魔女、御三家では誰が人気出るんだろ。エランあたりか?
グエル、スレッタに2連敗してますがだんだんスレッタが気になってるっぽいしな…。

シャディクの動向も気になるところですが。グエルがパワー系・エランが技巧系?なのかな、モビルスーツ。


サブキャラだとニカがなんとなく好きかもしれない。エアリアルに興味あるメカニック科の青髪の子。
チュチュは狂犬キャラだが、悪い子じゃなさそうなんだよな〜。口めっちゃ悪いけど。

チュチュはアーシアンとスペーシアンのなんやかんやで、度々学園でトラブル起こしてるってのはわかったけどさ…。


前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年11月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
アーカイブ