スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

第4話(上)

暁晴斗が契約書にサインをし、高校生ながら対怪人組織の隊員となってから何日か過ぎた。学生は一時隊員扱い。
晴斗はまあまあ本部や隊員達に慣れてきたのだが、まだ対怪人組織の現実を知らないでいる。今までのはほんの一部に過ぎない。



ゼルフェノア寮。本部近くのアパートを組織が借り上げている。隊員用のアパートは2LDK。
隊員は常に命懸けなので待遇がいいらしい。


鼎はその組織寮に住んでいた。

ある朝、鼎はいつも通り起き→ベッド横の棚の上にある白い仮面を着け、髪をとかし前髪を直す。
鼎からしたら仮面は身体の一部。鼎はようやく立ち上がると急に不安が襲ってきた。

まだ朝なのであの黒手袋は履いていない。鼎の手には火傷の跡がちらほら見える。これでもだいぶ目立たなくなった方だ。


晴斗が私の本当の姿を知ったら、正体を知ったら…ショックを受けるかもしれない…。今は言わないでおこう――。
晴斗はこの環境に慣れる必要がある。それと契約書の真の意味をまだ知らない。無理もないか。彼はまだ高校生だ。


鼎は淡々と制服に着替え、黒手袋を履き、玄関でショートブーツを履いてから部屋の鍵をかけ→本部へと向かう。鼎は寮から徒歩で通勤している。
それだけ本部と寮は近い距離にある。



朝の本部は静かだった。ゼルフェノアは基本的にシフト制。

「おはようございます。室長」
「…お、鼎。どうしたんだ?なんか元気ないように見えるけど」
宇崎は鼎がどこか寂しげに見えたらしい。

「…なんでもない」


宇崎は鼎に関してはかなり慎重に接してる。仮面の隊員という、前例のない隊員ということもあるが…。
とにかく鼎相手だと仮面で表情が見えないぶん、コミュニケーションを取ることが難しいのだ。

鼎は鼎なりに声の抑揚やトーン、仕草や仮面の角度によってなんとか意思表示している。わけありで素顔が見えないなりに努力しているのだ。
司令の宇崎・親友の彩音・先輩の御堂はそれを理解している。


鼎の仮面の理由を知っている隊員は多いが、彼女にとってはデリケートなものなので宇崎・彩音・御堂以外は積極的に話そうとはしない。
晴斗はまだ日が浅いので、うっかり聞いてしまう可能性がある。

現に晴斗は鼎と顔合わせした日、鼎の地雷を踏んでいた。



放課後の時間帯。晴斗は自転車を飛ばして本部にやってきた。部活感覚。
晴斗は部活感覚で来ているが、まだ戦闘経験も少ないためかわかっていない。

とにかく晴斗は隊員達と仲良くなろうとしていた。



隊員用休憩所。晴斗は鼎・彩音以外の隊員とも打ち解けているようだった。
晴斗に優しく話しかけてきたのは桐谷。ベテラン隊員で、物腰が柔らかいマイペースな男性隊員だ。

「晴斗くん、ここに慣れてきましたか?」
「なんとなく慣れてきたけど、いまいち実感なくて…」

桐谷は温かい紅茶を飲んでいる。紅茶が好きらしく、のほほんとしてる。
なんというか、見た目からして紳士っぽいのと話し方のせいか、とてもじゃないが隊員には見えない。桐谷さんって…戦うよなぁ。白い制服に赤い腕章デザイン…戦闘隊員だ。


「そのうちわかってきますから。急いだらいけませんよ」
「桐谷。地方任務から帰ってきたのか」
鼎が桐谷に話し掛ける。

「大した任務じゃなかったですが、単独任務は寂しいものですねぇ〜」
「相変わらずマイペースだな」
「鼎さんだって通常通りじゃないですか。晴斗くんが来てから少し変わったような気がしますが、気のせいですかね?」
「さぁな」

鼎はやんわりとはぐらかす。桐谷は鼎の正体を知らない隊員。鼎の正体を知る隊員はほんの数人しかいない。司令の宇崎は知っている。…というか、組織の上層部は知っている。


休憩所にまた1人、隊員が来た。小柄な女性隊員だが、話し方にかなり癖がある。時任だ。
「暁くん、元気ー?部活感覚でここへ来たらダメだよ。君はまだ全然わかってない!これは遊びじゃないのだよっ!」

時任、どや顔で人差し指を晴斗に指している。「犯人はお前だ!」…的なアクションで。


鼎と桐谷は慣れっこなせいか、スルー。
時任はとにかく癖が強い。実力はあるのに普段はなんだか残念な感じ…。ちなみに本人は至って真面目。
時任はお菓子をぼりぼり食べていた。糖分補給と言いながら。



そんなゆる〜い雰囲気の休憩所に、アラートがけたたましく鳴り響く。

館内放送が流れた。
「市街地にメギドが出現したが、情報不足で敵の姿がわからない!どうやらスピード型みたいだ!今すぐ司令室へ来い!」

館内放送は宇崎自らしていた。
アラートは隊員への通信・または隊員へスマホで連絡・館内放送のどれかが多く、館内放送は珍しい。しかも司令自身が放送してるのはレア。


晴斗・鼎・桐谷・時任は司令室に来た。少ししてから彩音も合流。
宇崎はメインモニターを見せた。

「怪人は1体。現在猛スピードで市街地を移動中。ただ、こいつは何の能力があるのかさっぱりわからない!わからんのだーっ!」
「…で、どうしろと?」

鼎は冷静に聞く。

「現地付近の隊員数名に一部街を封鎖した。このメギドを食い止めるためだ。お前らにやって欲しいことはただひとつ!この暴走メギドを止めろ!そしてぶっ倒せ!!わかったな!!」


も…ものすごく、わかりやすい…。要はこの暴走怪人を止めろと。でもどうやって?


「桐谷。お前の出番だぞ。あと、バイクで霧人も合流するから安心せい」
霧人って隊員のことなのか?

「晴斗、今回お前の出番はないかもな。ゼルフェノアの現実、よーく見ておけ。…と、言うわけで彩音は晴斗をよろしくな」
「了解しました」
「鼎は戦闘大丈夫だろう。今回の怪人は鼎からしたらリスクが浅いからな」
「わかっている」


そんなこんなで暴走怪人を止める任務に晴斗は同行するハメに。



本部・駐車場。そこには組織の車両がいくつもあるが、桐谷はある車の運転席にスタンバイしていた。

「運転ならこの私(わたくし)に任せないな。晴斗くん、君は見ているだけでいっぱいいっぱいかもしれませんよ。彩音さん、晴斗くんを頼みますね。鼎さんと時任さんは装備の準備OKですか?」

時任は元気いっぱいに返事をする。
「出来てまーす!」
遠足かいっ!
「準備はいつでも出来ているぞ」

鼎さんと時任さんの温度差が激しすぎる…。なんなんだ、この組織…。これが通常なの!?


晴斗を乗せた車は暴走怪人を追って出発する。



某市街地。暴走怪人は猛スピードで走り抜けていく。


次々と現地にいる隊員から通信が入る中、ようやく怪人の姿を見たが…遠いし速い!
時任は双眼鏡を覗く。

「きりやん、あの怪人…まるでアクセル全開の車ってか…なんだろう。暴走機関車みたいだね」
「私もそう思いましたよ。あれはまるで暴走機関車ですね」

時任はナチュラルに桐谷のことを「きりやん」と呼んでる。フレンドリーだな。


彩音が叫ぶ。
「敵、前方に捉えたよ!攻撃しますか!?」
「行っちゃって下さい」

鼎と時任は窓を開け、窓からそれぞれ銃を出し、発砲。2人はギリギリしながら攻撃するが全然当たらない。

「相手のスピードが速すぎる!桐谷、もっと飛ばせないか!?」
「御安い御用です。鼎さん、さぁアクセル全開で行きますよ!」


桐谷はアクセルをさらに踏んだ。晴斗は状況についていけてない。
これ、アクション映画のカーチェイスじゃねぇか!?

ものすごく揺れる…。この状況で平然と銃撃してる鼎さん達、すごすぎだろ!?
これがゼルフェノア隊員なの!?プロじゃん!

※晴斗以外は全員その手のプロです



敵も勘づいたのか、後方に攻撃してきた。いきなり煙幕!?
だが桐谷はアクション映画ばりのドラテクで煙幕をクリアする。
「煙幕で撒こうなんて甘いですよ」

桐谷さんの口調が少し変わった?なんか楽しそうにしてる…。


晴斗はカーチェイスの激しい揺れに「うぎゃあああああ!」…と叫んでいた。
いくら怪人を止めるとはいえ、ここまでとは…。ゼルフェノア、すげぇよ…。


晴斗は今回同行しただけだが、鼎さんがまるで動じてない。仮面で視界が狭いはずなのに、死角がないように見える。

桐谷はカーナビと通信から、そろそろバイクで合流する「霧人」を車を飛ばしながら待っていた。
「霧人さん、そろそろですか?」
「次の交差点で落ち合おう」
「了解です」


霧人という隊員はそろそろ合流するようだ。やがて次の交差点が見えてきた。
赤いバイクが組織の車両に接近する。そこにはライダーススーツに赤いヘルメットの男性が。

「桐谷さん、合流成功ですね。では俺はやつを引き付けます」
「ではこちらは鼎さんと時任さんで攻撃しますが…当たるでしょうか」
「きりやん、何言ってんのさ。何のためのハイエースだよ。ライフルあるんでしょ?」
「ライフルも積んでますよ。あえてハイエースにしたのは武器を大量に積めるからですからね。今回は飛び道具多めですよ」


ライフルで怪人を狙う気か?飛び道具多めって?


時任は銃からライフルに持ち替えた。鼎はボウガン。

霧人主導のもと、暴走怪人停止作戦は開始された。





第4話(下)に続く。

メンタル的にはいいのか?


話題:ひとりごと
脳内メモリをアウトプット…という名目で誰得小説を書き始めたところ→没頭出来るものが出来たせいか、髪の毛抜く癖がびっくりするほど沈静化してる。

なぜにもっと早くやらなかったのか…。
自己満でも誰得でもいいから、メモリを放出(妄想垂れ流し?)すべきだったんだ。



明日はおかんが休みなので、必然的に起きる時間帯が遅くなる=今日寝る時間帯もちょっと遅くずれる…が、テレビが壊滅的につまらない。

たまにBGMがわりにテレビを流している時がありますが。音がないとなんか無理だー。
そういや間違って記事消した時は無音だった。



4話を上げれそうですが、時間帯がヤバいかも。

夜はボタン押し間違えミスが勃発しやすいので、危険だと判明しました。デンジャラスタイム突入か!?


個人的に午前10時以降〜午後が書きやすい…かも。頭がスッキリしているせいかな?



とりあえず目指すは10話です。序盤だけはとりあえず終わらせたい。
4話以降は名前ありの隊員が次々出てくるよ〜。夢日記に出てきた隊員をブラッシュアップしたんで、こいつがここにいるとかある。

名前なしのモブ隊員は初っぱなから出ていましたが。


ブラッシュアップしてわかったのが、序盤から支部の囃が1話から出ていたこと…。登場めっちゃ早い。
支部の分隊長クラスなんで、囃の出番があるんだよなぁ。しかも御堂と同期ですし。

ブラッシュアップしたら御堂と囃が同期になりました。引き算でキャラ被りした一部は消えている…。
ほとんど本編に影響ないけども。メインはあくまでも晴斗と鼎なので。

第3話(下)

廃工場で突如出現した薔薇型怪人と戦闘員。鼎は敵の罠にハマり、蔓の餌食となってしまう。鼎の弱点は仮面であることが露呈したこの戦いに晴斗は到着、交戦するが――。



晴斗はこの状況に内心パニクっていた。落ち着け、落ち着くんだ。
先に鼎さんを助けないとどう見ても危ない。怪人はその後でもいいだろ!


晴斗は再びダッシュし、今度はハイキックを入れさらに鉈で怪人の体に叩きつける。こいつを怯ませないと鼎さんを助けられない!
この太い蔓、鉈で切れるのか!?ええーい!やってみるしかない!

鼎さんの時間がないんだ!迷ってられるかよっ!


晴斗は必死に鉈で蔓を切るがなかなか切れない。

「いくらやっても無駄だよ、ガキが」
「てめー!」

ローズ・メギドは突如、体の薔薇を使い花びらで攻撃する。視界が遮られるっ!



この様子を幹部2人は高見の見物をしていた。

「ローズ・メギド、なかなかやるじゃない。ゼルフェノアの仮面の女に目をつけるなんてね。彼女、弱点が見えてるもの。どうぞやられて下さいて言ってるようなものよ」
「鐡様、まだですかねぇ」



一方、廃工場。晴斗は思いっきりジャンプし、鉈で斬りかかった。メギドは不意討ちを喰らう。
その隙に蔓の切断に入った。こいつの体から蔓を切れば…!


晴斗は敵から容赦ない攻撃を受けてるにもかかわらず、鉈で攻撃しつつなんとか鼎に絡みついた蔓の切断に成功する。
「彩音さん!鼎さんを頼みます!」
「晴斗くん、わかった」

彩音は蔓の餌食となった鼎の顔に巻きついた蔓を掻き分ける。ようやく顔全体が見えた。鼎はかなり苦しそう。


「晴斗くん、これ使って!」

彩音は自分の銃をぶん投げた。晴斗は使えるかなんてわからないまま、銃を受け取り、構えた。
ダメだ…撃てない。だが、こいつを倒さないとさらに被害が広がってしまう。晴斗は銃で殴ることにした。

銃で殴る攻撃は予想外に効いたのか、ローズ・メギドはダメージを受けている。さらに晴斗は鉈で攻撃を畳み掛ける。鉈の扱いはもう慣れた。

「許さねぇー!」
晴斗は八つ当たりに近い攻撃をしていく。晴斗は苦しそうにしている鼎の姿がちらついてしまっていた。
なんで、なんでこうなるんだよ!鼎さんは何もしてないのになんでターゲットに…。


晴斗はかなり消耗していたが、一気に鉈で叩き斬り、さらには回し蹴りやパンチをしてローズ・メギドを倒した。
倒した後、晴斗はなぜか泣きそうになっていた。



彩音は鼎の介抱をしていた。鼎を寝かせ、体に絡みついた蔓を外し、呼吸しているか確認をする。
鼎は酸欠を起こし、気を失っていた。彩音は人前で鼎の仮面を外すわけにはいかないと判断→携帯用酸素吸入器を使うことにした。

これはアスリートが使うようなタイプの携帯用酸素吸入器だ。持ち運びしやすいので彩音は鼎の緊急用に携帯している。


彩音は手慣れた様子で鼎の仮面に酸素吸入器を当て、酸素吸入する。少しして、鼎は気がついたらしかった。
「彩音…?」
「良かった…気がついた…」


晴斗も2人の元へと来た。なんとなく、鼎に使った酸素吸入器が気になっていた。

「彩音さん、それは…?」
「これは鼎用の携帯用酸素吸入器。鼎はわけあって、人前では仮面を外せないから必要なの。晴斗くんも見たよね…。鼎の仮面…呼吸穴が1ヶ所しかないの。鼎は常にハイリスクで戦ってる。酸欠のリスクも高いのよ、どうしても。だから私達のサポートが必要なんだ」

常にハイリスクで戦ってる!?
でもなんで人前では仮面を外せないんだ?やっぱり何か理由があるんだ…。



晴斗は鉈を見つめた。なんかこの鉈、ただの鉈じゃない…。対怪人用って、こんなにも斬れるのかよ!?



鼎はなんとか起き上がり、彩音と話している。そこそこ回復したらしい。晴斗は安堵した。良かった…。



そんな戦闘後、突如空気が張りつめる。場の空気がピリついてるのだ。

全身黒づくめの黒いロングコートにピアス・首筋から左頬に刺青を入れたガラの悪そうな男性が現れたのだ。
その男性は背が高く、目立つ。男はフードを目深に被っていた。


その男性はいきなり晴斗に近寄った。耳元で囁く。ねっとりとした話し方。

「お前、なかなか筋があるじゃねぇか。あんたにメギドを倒せるか、俺の計画達成が先か…見ものだな。楽しみだよ」


なんなんだ、この薄気味悪い黒づくめの男は…。
鼎はまだ完全に回復したわけではないが、彩音に支えられて立っている。鼎は男に思わず聞いた。

「貴様は一体何者だ!?…人間じゃないだろ…」
「ご名答だな、仮面の女。いや…紀柳院鼎。俺はメギドを統べる者・鐡だよ」


メギドを統べる者…?鐡…?


この男、つまり…えーと…ラスボスですか!?
ラスボス認識でいいのか!?自分から「統べる者」って言ってるし!?

人間の姿こそはしているが、メギドとかいう怪人かよ…。つまりこれって、鐡とかいうやつに因縁つけられた!?


鐡はニタァと笑うと姿を消した。あの消え方は人間には出来ない。



ゼルフェノア本部。宇崎もこの様子をモニター越しに見ていた。

「メギドを統べる者・鐡…。こりゃあ緊急会議しないとマズイな。しかし、なんで暁晴斗に急接近したのかわからんな…」



ローズ・メギド戦から数日後。晴斗は契約書を再び持ってきた鼎と会う。
晴斗は戦うと決めたのか、ゼルフェノア契約書にサインした。

どうやら晴斗は苦しむ鼎の姿と鐡と遭遇したことにより、戦う決意をしたようだった。


晴斗はいつの間にか鼎のことを「鼎さん」と呼んでいた。
彩音さんから聞いた鼎さんの話…常にハイリスクで戦ってると聞いてから戦うしかないと感じた。

あの仮面は後に彩音経由で日常用兼戦闘用、市販のものではなく彼女専用に改良された軽くて頑丈なものだと聞いた。
だから場合によっては、酸欠や過呼吸のリスクがあるという。それで鼎と関わりが強い隊員は携帯用酸素吸入器を持ち歩いてるという。



晴斗は高校生ながら、ゼルフェノア隊員(一時隊員)という二足のわらじを履くこととなった。
本部は晴斗が契約書にサインした時点で、既に学校に話をつけていたらしい。

学生の隊員は一時隊員という扱いになるらしく、制服は支給されない。武器と隊員証は支給されるのだが。



晴斗は何もなければ放課後、ゼルフェノア本部に顔を出すようになる。
鼎や彩音以外の隊員とも、少しずつ親交を強めていくことになるのだが。

やっぱり気になっていたのは鼎だった。なんでわざわざハイリスクな戦いを彼女はしているのか?
仮面の理由がものすごく気になる。そのうちわかるのかな…。


第3話(上)

暁晴斗が成り行きで怪人を倒してから数日後の某高校。晴斗のクラスではバスケ部のクラスメイトがお礼をしてきた。

「暁、あの時俺を助けてくれてありがとな。暁はヒーローの素質あるんじゃないの?戦ってたじゃん」
「あれは成り行きで…」
「いつでも助っ人、待ってるぞ」

クラスメイトは肩を軽く叩きながら席へと戻った。



それからさらに数日後、日曜日。晴斗が成り行きで怪人を倒してから約1週間経過していた。
暁家にインターホンが鳴る。まだ午前中。晴斗は寝ぼけながら玄関に出た。


扉を開けるとそこには鼎ともう1人、女性隊員がいる。誰だ?
鼎は晴斗を見るなり開口一番、ある書類を見せながら言った。

「本部司令の代理で来た。暁晴斗、ゼルフェノアの契約書にサインをして欲しい。期間を与えるからすぐに返事はしなくてもいいそうだ」


け…契約書ォ!?一気に目が覚めた。
晴斗は鼎が見せた書類をじっくりと見た。確かにあの、「特務機関ゼルフェノア」の契約書だ。


「いきなりすぎません?紀柳院さん。…と、えーと隣の隊員さんは一体誰ですか?」

晴斗は鼎の隣にいる女性隊員に聞いてみる。
晴斗はあの騒動以降、顔合わせで緊張したとはいえ馴れ馴れしく鼎のことをいきなり名前で呼んでしまい、「顔は見えないが明らかに年上だよな…。名字呼びが妥当だろう」と呼び方を変えていた。


彩音は答えた。

「申し遅れました、鼎の先輩…いや親友か…の駒澤彩音です。今回は鼎の付き添いで来ました。彩音でいいよ」
「彩音さん、これ…どういうことなの?」
「室長が君のことを見込んでいるんだけど、急に返事しろってったって無理でしょ?だから期間を与えようとなったのよ。鼎、『あれ』晴斗くんに渡してね」

鼎はうなずくとバッグの中から何か武器のようなものを取り出した。
鉈…?刀身は布で巻かれているが刀身が大きめの鉈にしか見えない…。


鼎は淡々と伝える。

「返事はまだでいいが、室長からこれを一応受け取っておけとの言伝てだ。対怪人用のなまくら・『東雲』だ。初心者向けのものだぞ。見た目は鉈だが、怪人相手にしか効かない。対怪人用装備は人間や動物には無害だ」

鼎さんの口調は冷淡で独特だ。少し古風な言い回しをするらしい。
対怪人用装備って、本当に怪人にしか効かないんだぁ…。人間や動物には無害って。銃は当たると痛そうだが。


晴斗は恐る恐る鉈を受け取った。晴斗は気になっていたことを聞いてみた。

「なんで家わかったの…?」
鼎は即答。
「学校でのお前の戦闘データから室長が住所をサーチし、割り出した。言っておくが、契約書や東雲に文句があるなら室長に直接言え。これも任務なんだよ」

鼎さんの言い方は冷淡だよな〜。仮面補正で余計に冷たく見える。
ゼルフェノアって、事務的な任務もあるんだ…。ヒーローの裏側を垣間見た気がする。


彩音は鼎に耳打ちした。鼎は晴斗に一言、言って暁家を後にした。
「また契約書持ってくるからな。それまでに考えておくんだな」



晴斗は鼎から受け取った対怪人用の鉈を見つめる。受け取ってしまった…!
…てか、契約書…サインしたら俺は隊員になれるのか!?あぁ悩む。確かに小さい頃からヒーローには憧れていた。いたのだが…契約したらどうなるの?

晴斗は理解が追いつかないでいる。



東京都心郊外・ゼルフェノア本部。司令室では宇崎が鼎と彩音と話してる。

「予想通りの反応だな。ズブの素人がいきなり怪人倒したら、そりゃあ理解なんて追いつかないって。しかも相手は高校生だ。当たり前の反応だろ?…な、鼎。お前もそうだったんだからな。5年前か…。鼎が彩音を素人なのに助けたのは」
「あの時はやられた彩音を見ていられなかったんだ…。今でもはっきり覚えている…。銃の感触を」



5年前―。当時の鼎はこの時はまだ、組織には入っていない。

突如市街地に出現した怪人の襲撃に巻き込まれた鼎は、目の前で親友の彩音が攻撃を受けて動けないところを目撃してしまう。彩音は必死に叫ぶ。
「鼎!早く逃げて!!」

鼎は動けなかった。体が硬直して動きたいのに、動けない。
恐怖と戦いながら、本来なら素人が使えない仕様の対怪人用の銃を使い、鼎は彩音を狙うメギドに一発撃ったのである。メギドは怯み、その隙に別の隊員が殲滅した。

鼎の手はガクガクと震えている。弾は命中した。


この件以降、鼎はゼルフェノアに入ることを決意する。鼎がゼルフェノアに入ったのは4年前。



京都中心部郊外・ゼルフェノア支部。御堂が本部に戻るまで約2週間ある。御堂と囃は呑気に会話。

「室長のやつ、成り行きでメギドを倒した高校生をスカウトする気なのかねぇ〜。『暁晴斗』っていうんだっけか。そのガキ」
「和希〜。見てもいないやつをいきなりガキ呼ばわりすんのは良くないぞ〜。もしかしたらとんでもない逸材かもしれないじゃん」

「囃、お前なぁ…」
御堂はめんどくさそう。



ゼルフェノア本部。宇崎と鼎・彩音の会話はまだ続いてる。

「鼎、お前…暁晴斗が気になってる…って、まぁ当然か。あの時ブレードを託したのも、わかっててやったんだろ」
「そうだが」
「やっぱり宿命なのかねぇ…。宿命っていうか、なんていうか」



某廃工場。そこにはメギド戦闘員複数と植物系メギドが。よく見ると幹部らしき男女もいる。彼らは人間態。
男性は陰のあるイケメン、女性は妖艶な美女。美男美女。


「鐡様はまだかしら〜」
「鐡様は今回ゼルフェノア潰しの様子見に来るんだっけ?珍しいよな、わざわざ来るなんてさ」
男性は冷めた態度。

「メギド使って人間の生体エネルギーを奪う身にもなれってんだよ。鐡様のことだからヤバい計画立ててるだろうしな」
「前回の『アイアン・メギド』は調子狂わされたわね。素人に倒されちゃうんだもん。今回は『ローズ・メギド』に働いてもらうわよ。あの蔓は強力だからね…」

幹部2人はローズ・メギドと戦闘員と野に放った。周囲はパニックに包まれる。幹部2人はメギドだけを残し、姿を消した。



ゼルフェノア本部。アラートがけたたましく鳴る。
宇崎はメインモニターを見た。さらにサブモニターで地図を出し、場所を確認。

「鼎!彩音!今すぐ出動しろ!メギドが出現した!場所は廃工場付近」
「了解!」

鼎と彩音、それと隊員3人は現場へと急行した。



暁家。晴斗はなぜか胸騒ぎがした。この武器を受け取ってから、なんでだろう…怪人の出現場所がちらつくのだ。そういう仕様なのかはわからないが、どうも気になる。

晴斗はいてもたってもいられず、急いで自転車を飛ばす。鉈も持って。


なんだか嫌な感じがするんだよなー…。なんなんだろ、この胸騒ぎは…。



某廃工場周辺。ローズ・メギドと戦闘員は人間の生体エネルギーを奪うべく動いていた。
そこに鼎達隊員が到着。

「蔓をぶち切るかしていち早く市民を解放させるんだ!避難もさせろ!」
鼎は指示を出す。隊員達は銃を使い、人々に巻きついた蔓をなんとか切り避難させつつ、戦闘員と交戦中。


彩音と鼎はローズ・メギドと対峙。
「お前がやったのか…」

鼎は抜刀の体勢に、彩音は銃を構える。ローズ・メギドは嘲笑いながら体から蔓を展開。彩音はなんとか銃で蔓を切るが、鼎は仮面故に視界が狭いことが仇になってしまう。

「鼎!蔓が…!早く切らないとマズイよ!!」
彩音は援護に出ようとしたが、鼎の体は蔓に巻きついかれてしまい、身動きが取れない。
鼎はなんとかもがいている。

マズイ。鼎の弱点は仮面だ…。あのベネチアンマスクは日常用兼戦闘用だけど、呼吸穴が1ヶ所・鼻の穴しかない。
もしそれが塞がれようもんなら、鼎は間違いなく酸欠を起こしてしまう。早く助けないと…!


鼎は必死にブレードを抜刀しようとしたが、手が届かない。これでは使えないではないか!

彩音は鼎がだんだん蔓に包まれる様を見るしかなかった…。やがて腕の自由が効かなくなり、蔓は鼎の顔を覆いかけている。鼎は必死に叫ぶ。

「彩音!撃て!このままでは…酸欠を起こしてしまう…。その前になんとか…なんとかしてくれ…」


鼎に巻きついた蔓は仮面の呼吸穴に達し、蔓の動きは停止した。
「せいぜい苦しむがいい。仮面の女」

ローズ・メギドは喋れるらしく、鼎をギリギリと苦しめる。蔓は鼎の体を締め付けた。
メギドから蔓を切ればいいのだが、あの蔓は他のものと違って太い。銃では簡単に切れそうにないし、相手は植物系。メギドの体に鮮やかな赤い薔薇があるのも引っ掛かる。


鼎が蔓の餌食にされてから約2分経過。鼎はなんとか仮面内部の空間の空気を使い、かろうじて呼吸していたがだんだん苦しそうにしている。酸素が足りなくなってきたんだ…。

彩音は迷っていた。銃で向かうとしてもメギドの餌食になる可能性もある。ここは肉弾戦で行くか?
とにかく鼎に残された時間は少ない。酸欠起こされたら鼎は戦闘どころじゃなくなる…。早く助けなきゃ…。


そんな中、晴斗は自転車で到着した。晴斗は無我夢中で鉈の布をふりほどいた。


「晴斗くん!」
彩音は安堵したようだった。
晴斗はメギドを見るなり、嫌な感じがした。あの蔓に巻きつかれた人って…鼎さん!?
鼎の腕はだらりとしていて、明らかに動けないのがわかる。



鼎は晴斗を見る余裕すらもだんだんなくなっていた。かろうじて晴斗を見た。そして呟く。
「やはり…来たか…」

鼎は明らかに酸欠起こす寸前まで来ている。かなりゼイゼイ言ってる。苦しさで意識が遠退きそう。


晴斗はダッシュでローズ・メギドに強烈なドロップキックを喰らわせた。メギドは一瞬怯む。
鼎さんを助けるにはあの蔓をどうにかしないとならないな…。


晴斗は鼎を横目に見た。かなり苦しそうにしてる。蔓が仮面の呼吸穴を塞いでるんだ。
晴斗はがむしゃらに鼎に接近し、顔の周りに絡みついた蔓を掻き分けようと必死。

「鼎さん、絶対助けるから!」
鼎は気を失いかけていた。目の前に必死になっている晴斗の姿が見える。

「晴斗…」
鼎の声は弱々しい。


敵は容赦なかった。必死に蔓を掻き分ける晴斗の妨害をしてきたのだ。晴斗は怒りに満ちていた。

対怪人用の鉈・東雲でいきなりメギドに攻撃する。攻撃はめちゃくちゃだが、いち早く鼎を助けたかった。


鼎は明らかに気を失いかけている。なぜか彼女の仮面は勝手に外してはいけない気がした。
晴斗は鉈の使い方を知らず知らずのうちにマスターしていた。闇雲にやってはいけない。

この切迫した状況で晴斗は確実に成長を見せ始めていた。


彩音達も戦闘員と交戦中。戦闘員は怪人ランク最弱だが、数で攻めてくる。
彩音達はローズ・メギドに攻撃している晴斗を援護しながら、戦闘員を倒してる。

問題はやはり、あの薔薇野郎…。
鼎に残された時間は僅かになりかけていた。





第3話(下)へ続く。

そりゃ凹むよ…


話題:おはようございます。
昨日の拍手2個ありがとうございます。昨夜、小説(3話 上)書いてたらいいとこまで行ったのに、ボタンを押し間違えて記事を消してしまい→凹んだ。

まだガラケーなのですよ。


寝る前に書くのはよろしくないなと思った。
ボタン押し間違えでクリアボタンで全消しって、凹むぞ…。



そのせいか、なんかうなされた気がする。昨夜、腹壊したせいもありますが…。

おかんが買ってきた黒にんにく、1粒食べてしばらくしてからお腹ギュルギュルになりまして…。
黒にんにく自体は見かけによらず、フルーティーで美味しいのですが(臭いも控えめ)1日1粒だけと制限があるのだ。

にんにくって何かの成分が強いから、お腹壊しやすいんだっけ。おかん曰く、仰天ニュースでもにんにくのやつをやっていたそうな…。気をつけよう。



今日こそ3話を上げたい。4話まで行けそうか?
3話はこの際なんで、書き直せるからいいか…。


やっぱり設定カテゴリー作った方が良さそうだなぁ。まだ保留ですよ。
フリーページを作り、小説の注意事項を書いておくべきか…。これも保留にしてる。文章が稚拙であれですし(特に戦闘パート)、初心者丸出しなので。


まぁ…自己満でやっているようなものですが。まとめたかったんだよー。

前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年11月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
アーカイブ