晴斗は鼎が言う「受け入れる覚悟」を決めたものの、内心もやもやしていた。御堂さんも同じようなことを言っていたなぁ…。
そんなもやもやから数日経過。しばらく何も起きなかったが、敵は待たない。いきなりやってくる。
市街地でメギド出現。戦闘員とソード・メギドが街を暴れまくる。今度は剣モチーフかよ!?
剣ってどういうこっちゃ!?
晴斗達は現場に到着。なんとなくいつものメンバーが固まりつつある。今回は晴斗・鼎・御堂。彩音は援護。
御堂は早速指示を出す。
「相手は剣モチーフの怪人だ、ここは刀剣がメイン武器のやつがいい。…てなわけで晴斗・鼎、お前らが前衛で行け。俺らは戦闘員倒すから」
「了解した」
「前衛って、そういう意味なの…」
晴斗、理解がいまいち追いついてない。
鼎は早速抜刀、いきなり先制攻撃をする。
ソード・メギドは楽しそう。ソード・メギドは女怪人だった。
「あなたと戦えて嬉しいわ。たくさん斬り刻んであげる」
「黙れ、大人しくやられとけ!」
鼎はギリギリと迫る。鼎vsソード・メギドのつばぜり合いが発生。互いに譲らない展開。
晴斗は攻撃出来る隙がない!
御堂と彩音は確実に戦闘員を倒していた。御堂は銃で殴りつつ、蹴りを加えたり裏拳したり。彩音も戦闘員の武器を強奪したり、それを利用したり時折間接技を仕掛けたり。
彩音は肉弾戦は苦手だが、間接技は得意。戦闘員の武器を利用することが多い。
御堂は交戦中の鼎をチラ見する。鼎はメギドとつばぜり合いしてやがる…。
あいつは戦闘時間が限られている。長引いたら終わりだ…。
鼎は焦りを見せ始めていた。先制攻撃こそは上手くいったが、そこから先がうまくいかない…!
ソード・メギドはしてやったりと思っている。
「この程度なの?仮面の隊員さん」
鼎は無言。言い返したら相手の思うつぼだから。つばぜり合い→時折激しい剣戟、にらみ合いが続く。
晴斗は攻撃しようにもタイミングがなかなかつかめない。
鼎は晴斗に言った。
「私のことはいいから攻撃しろ」
「でも鼎さん巻き込んじゃうって!」
鼎は息切れし始めていた。戦闘開始から約7分経過。鼎からしたら微妙なライン。
「いいから攻撃しろ!」
鼎は必死に叫んでいた。晴斗は決心し、助走をつけ少しずつダッシュ。そして踏み切り、勢いよくジャンプ→ソード・メギドに狙いを定め、鉈を振りかぶって攻撃を叩きつけた!
ソード・メギドは不意討ちにやられた。メギドのターゲットは晴斗へと変わる。鼎はその隙になんとか離れようとするが、ソード・メギドは鼎も巻き添えにする気らしい。
「少年。この女を救えるかな?」
「てめー卑怯だぞ!」
晴斗、怒る。
「卑怯で悪いかねぇ。我らはヴィランゆえ」
このメギド、自分が悪役なのを自覚している…。
鼎はメギドの腕の剣を突きつけられている。そんな状況にもかかわらず、晴斗に言う余裕があった。
「私のことはいいから殲滅しろ」
いつも通りの冷淡な鼎。晴斗は感情的になっていた。
「そんなこと出来るわけないよ!鼎さん巻き添えなんて…絶対に嫌だから!俺…ずっとヒーローに憧れていたんだ…。ここ(ゼルフェノア)に来れて良かったと思ったのに。…鼎さんそんなこと言わないでよ!」
鼎は晴斗の言葉に目を覚ましたようだった。私がゼルフェノアに入った理由と似ている…。
鼎はメギドの腕の剣をなんとか振り切り、再びブレードで攻撃。
御堂はかなり焦っていた。鼎の時間がない!
そんな御堂をよそに2人はソード・メギドの両腕の剣をぶった斬る。メギドの剣は折れた。
武器をなくしたソード・メギドは一気に劣勢になる。
晴斗と鼎はアイコンタクトをとった。一気にケリをつけようと。
晴斗は鉈に気を込めた。御堂は東雲の真の威力を知ることとなる。
鼎はブレードを発動させる。刀身が赤く発光する、攻撃力アップモードだ。
御堂はヒヤヒヤした。発動なんて使ってしまったら、鼎の消耗が激しくなっちまうだろ!身体の負荷も倍になるってのによ…。
2人はほぼ同時にソード・メギドに強力な攻撃を畳み掛けた。
晴斗の鉈から発した気のせいか、鼎の発動効果なのか辺りは激しい衝撃波に包まれる。
とどめを刺したのは鼎だった。
戦闘後。鼎は発動で消耗していたらしく、救護隊に運ばれていった。命に別状ないが、かなり苦しそうにしてる。
晴斗は鼎の様子に茫然とする。御堂は優しく声を掛けた。
「晴斗。鼎は消耗が激しかっただけだ。ただ…発動を使ったせいで身体の負荷は倍になっちまったがな」
「発動って…あの刀が光ったやつ…ですか?」
「そうだ。あいつは戦闘時間に制限があるんだよ。室長が鼎を守るために制限を作った。あいつは約15分しか戦えない」
晴斗は「え…」というような顔をしてる。
「じゃあ戦闘時間が過ぎてしまったら、鼎さんはどうなるんですか…」
「死のリスクが高まる。だから鼎には戦闘制限があるんだよ…」
「鼎さんの『リスク』や『負荷』って一体なんなんですか?なんでそんなにも鼎さんはハイリスクなの…。仮面の理由と関係あるの…?」
「そのうち本人から言うと思うから、それまで待っていればいい。鼎も心の整理があるからな。お前に言う準備がな」
今日の御堂さんはやけに優しい。だから御堂さんは戦闘中、あんなにも焦っていたのか。
鼎さんの戦闘制限が迫っていたから…。死のリスクが高まるから…。だからしょっちゅう「無茶するな」と言っていたんだ…。
ゼルフェノア本部・救護所。彩音は救護隊と共に先に本部へと戻っていた。
ベッドの上には鼎が横たわっている。まだ苦しそうだ…。
「鼎…なんで発動使ったのよ…」
鼎は彩音を見る。厳密には仮面のせいで、彩音をなんとなく見たようにしか見えないが。
「晴斗のおかげで目が…覚めた…。私がゼルフェノアに入った理由も晴斗と同じだったから…。それを私は忘れかけていた…」
「晴斗くんはヒーローに憧れていたって言ってたけど、晴斗くんの場合はヒーローはお父さんのことだよね。元ゼルフェノア隊員だったって聞いたから」
「…私の場合は彩音だった。彩音がきっかけでゼルフェノアを知り…戦うことを決意したから…。でも最初の頃は私は復讐に駆られていた…」
「あの頃の鼎は殺伐としていたよね…。復讐に取りつかれていたんだもの。今は憑き物が取れて良かった…」
「晴斗に感謝するしかない…」
彩音は鼎の様子を手慣れた様子で見ている。彩音は鼎の手を触る。
「鼎、ゆっくり休んでね。下手に発動は使っちゃダメだよ。大切なもの、これ以上失いたくたいんでしょう?」
「もうたくさんだ。これ以上、辛い思いはしたくはない…」
彩音は救護所を出ようとしたが、一言言ってから出た。
「ゆっくり身体を休ませてね。鼎の身体は悲鳴を上げているからさ…。じゃあ私は帰るね。おやすみ」
彩音は帰り際に部屋の電気を消してくれた。鼎は自分のこの状態に時折泣きそうになる。この身体が憎い…。
いくら自分を守るためとはいえ、室長からは戦闘時間に制限がつけられている。
こんな状態でよく生きていられたよな…。
司令室。宇崎は支部の小田原司令とリモートで会話していた。
小田原司令は強面でサングラス、ガタイのいい叩き上げの司令。研究員上がりの宇崎とは真逆のタイプ。
だが小田原司令はその怖そうな見かけによらず、可愛いものが好きというギャップの持ち主。手芸が得意なのも意外だが。
「宇崎。暁の様子はどうだ?」
「もうね、メキメキと成長してますよ。鼎と会ったことがトリガーになったみたいで」
「…紀柳院か。そうだ宇崎、長官から例のシミュレーション怪人装置、近々本部と支部に設置するそうだ」
宇崎は「またかよ」みたいな反応をしてる。
「長官、自ら開発するの好きですよね〜。変態の領域ですよ。あそこまで来るとさぁ」
小田原、思わず突っ込む。
「宇崎、お前…その長官の後輩だろうが。お前が言うなすぎるぞ」
「そうでした〜」
宇崎はモニターに映る小田原がチクチク縫っているのが気になってしまった。
あれはたぶん、ぬいぐるみかマスコットを作ってるな…。
第6話(下)へ続く。