御堂との約2週間の特訓で、なんとか対怪人用鉈・東雲を難なく使いこなせるレベルまで来た晴斗。

宇崎はこの2人、意外と気が合うんじゃ?…と見ている。



その日、登校時間に怪人出現との知らせが届いた。晴斗は自転車を飛ばし、現場へ。登校時間だったので高校の制服姿。


現場にいち早く着いたのは御堂だけ。御堂はカスタム銃「だけ」でメギドと戦ってる。
晴斗は御堂の銃の扱いに驚いた。あれ…対怪人用の銃じゃないのか。通常の銃で怪人と戦う御堂さんって…。

御堂は晴斗をチラ見。
「特訓の成果を見せる時が来たな!晴斗っ!」
晴斗は慌てて鉈を出す。刀身に巻きついている布をほどいた。御堂は銃撃をわざとやめ、晴斗に攻撃のチャンスを与える。

「早く攻撃しねーとやられるぞ」
晴斗はなんだかもやもやしながらも東雲でメギドに攻撃を加える。御堂との特訓のせいか、動きが軽やかになり鉈の攻撃は重くなる。


晴斗もびっくりしていた。正しい使い方をすればこんなにも攻撃力が上がるのかと。晴斗は特訓がてら肉弾戦のいろはも習っていた。


怪人の攻撃に屈することなく、晴斗は飛び蹴りを加えたり振りかぶって鉈を叩きつける攻撃をする。明らかに手応えがある。

応援に鼎も来た。鼎は御堂の制止を振り切って日本刀型ブレードを抜刀。
「バカ!鼎やめろ!無茶すんなっ!!」


鼎はダッシュし、思いっきり2段蹴りを喰らわせる。怪人は怯んだ。御堂はにやけた。
来たか、鼎得意の蹴り攻撃…。鼎は肉弾戦でパンチは苦手だが、キックに特化している。


さらに鼎はブレードで斬りつけ、叩きつけた!
ほんの数分だったが、鼎の攻撃はかなり効果的だったらしい。

「晴斗。早くとどめを刺せ!」


鼎は晴斗に誘導した。今の一連の鼎さんの攻撃は俺にチャンスを与えるためだった…?
晴斗はうおおおと言いながら東雲で一気にぶったぎった。怪人は爆散した。


晴斗は心地よい疲れを感じた。まさか朝から戦闘になるとはな〜。


一方の鼎は時間帯が良くなかったのか、コンディションが悪かったのか調子悪そう。御堂は鼎を気にかける。

「鼎…ったく、無茶すんなって言っただろうが!お前の身体は並みの人間と違って常に負荷がかかってる。あのせいでな…」

鼎は消耗したのか、ずっと下を向いたまま。
髪の毛で隠れて目元が見えないが、そもそも仮面を着けてるので顔は見えてない。よく見ると息切れしてるようにも見える。


「御堂…余計なことを言うな…」
「負荷がかかってるのは本当のことだろうが!」
「少しは黙っててくれないか…。私だってなりたくてこうなったわけじゃない!」

さっきから言ってる「負荷」って一体なんのことなんだ?鼎さんが感情を露にするなんて…。
なんだか鼎さん、声が泣きそうになってた…。


鼎は少しして落ち着いたのか、ブレードをしまい立ち去ろうとする。
晴斗は鼎に恐る恐る声を掛けてしまう。


「鼎さん…。『負荷』って何?教えてよ…。仮面の理由も…知りたいのに」
鼎は少しだけ振り替える。僅かに仮面が見えた。

「まだお前に教える気にはなれない。晴斗の覚悟は出来ているのか?受け入れられる覚悟をだ。…覚悟があるのならば…私は話そうと思う。今日ではない、後日…」


鼎は立ち去った。背中がどこか寂しげなのが気になる。孤独感…なんだろうか…。


鼎が立ち去った後。晴斗は複雑な表情のまま、固まってる。御堂は晴斗にはっきりと言った。

「言っておくが鼎の仮面の理由はお前にとってはキツいかもしれない。それでもいいのか?」
「…受け入れる覚悟は出来たよ」



その後の晴斗は授業が全然頭に入らなかった。
受け入れられる覚悟は出来たものの、なんだか怖い。鼎さんの仮面の理由…一体なんだろう…。

それにあんなにも感情的な鼎さん、初めて見た…。
御堂さんが言ってた通り、ああ見えて意外と繊細なのかな…と。



放課後。その日の晴斗は朝のこともあり、本部に行く気になれなかった。一時隊員なので、別に毎日来る必要性はないけれども。

その日の晴斗は珍しくストレート帰宅。



ゼルフェノア本部。御堂は晴斗が来ていないことに気づいた。今日は来ないと感じていた。
晴斗にはちょっと言い過ぎたかなー…。それよりも鼎が心配だ。あいつ…ついにカミングアウトを決めたのか…。


鼎からしたらあのことをずっと隠すのは辛いし、しんどい。
重荷になっていたならば、少しでも楽にしてあげたいが…。だけどこれは鼎も辛いのではなかろうか…。


何も出来ないのがもどかしい…。


御堂は1人、トレーニングルームへと向かった。
そしてサンドバッグにパンチをひたすら繰り出す。半分八つ当たりみたいになってしまっている。

「くっそー!」


御堂も複雑だった。鼎の事情を知っているだけに…。


鼎は宇崎に告げ、早々と帰ってしまう。

「鼎…お前、大丈夫か?」
宇崎はなんとか引き留めようとするが、様子がおかしい。
「今日はひとりにさせてくれ…。ひとりに…なりたいから…」

声が弱々しい。朝の出来事が関係してるのは確かだが、鼎がまさかカミングアウトを決めたなんてな…。
精神的に来たのかもしれない…。


彩音は御堂と宇崎から鼎が帰ったと聞かされる。宇崎は彩音に聞いた。

「彩音、最近何かなかったか?鼎についてだよ」
「…鼎は私に相談してきました。…あのことをずっと隠すのが辛いって、1人で抱えこんでたんです。それてかなり悩んでいたみたいで…。あと晴斗くんのこと、気にしていました」


やっぱりか。鼎は晴斗を知っているが故の悩みだ。
だが晴斗は鼎の正体を知らない。すれ違うのも無理もない…。
晴斗は鼎を見た時に初めて会った気がしないと感じていたらしい。あのことを知ればそのカラクリがわかる…。



暁家。晴斗は自室に籠り、もやもやしていた。


鼎さんが言ってた「なりたくてなったわけじゃない」ってどういうことなんだろうか…。
あんなにも感情的になっていたってことは、仮面の理由と関係してるのかな…。

やっぱりなんというか…鼎さんとはどこかで会っている気がしてならない。
顔は仮面に隠れて見えないけど、あの感じ…。あの空気感…。



考えれば考えるほど、もやもやがループする。
鼎さんは後日教えると言ってたが、なんだか知るのが怖いのも半分ある。


どう見てもあの仮面は飾りには見えない。身体の一部にしか見えないのだ。

わざわざ日常用兼戦闘用のベネチアンマスクを作ったということは、込み入った事情がありそうで…。
あの仮面を改良したの、室長だって聞いたな。組織がわざわざ隊員1人をサポートするほどって、絶対何かあるとしか…。

彩音さんも言ってたな。鼎さんにはサポートが必要とかいうあれ。仮面の理由と関係しているんだろうか…。