の、感想です。これは久々に面白かった本。以下、ネタバレが多い上に長いです。



真昼なのに昏い部屋/江國香織


まず、私が江國さんの小説を読むのは二回目です。一度目は、読書感想文の課題だったので、まあそのために読んだのですが、そのときはとくに何も感じなかった作品でした。(読んだのは「つめたいよるに」)
さて、ではなぜ「真昼なのに昏い部屋」を読もうと思ったかというと、ツイッターで感想のツイートを読んだからです。140字でそこまで魅力を感じたわけではないのですが、古本屋に行ったら一発で見つけてしまったので、これはもう買うしかないと(笑)

江國さんはとにかく、文章が美しいです。柔らかで静かで穏やか。文体をあえて敬語調、そして三人称語りにしているのは、客観的な視点を持ちつつ登場人物それぞれの心情を語るためなのでは、と思います。本文からの引用をすると、


もしも美弥子さんが、何か、ーーたとえばなぐさめ、称賛、女性として、自分に魅力も価値もあるということの確認、あるいはもっと単純に、肌と肌、吐息と吐息による会話ーーを求めているとしたらどうでしょう。


ただ単に「セックスしたいと思っているとしたらどうでしょう」よりよっぽど素敵ですよね。この一文にウオオオと感動しました。
また、この本はざっくり言うと不倫の話なのですが、不倫という言葉の意味とは裏腹にそんな重さを一切感じさせません。本文中でやたらと用いられる「清潔」という言葉は、主人公美弥子さんの人柄と、その背徳的な行為への美弥子さん自身の印象を表しているのではないでしょうか。

このお話で、私の中の不倫像が完全に崩れました。不倫は悪いことで、それは確かにそうですが、そこには悪い人はいないということを強く感じました。悪い人だから不倫をするのではなく、好きな人ができたから好きだと言った。その結果不倫になってしまった。その気持ち自体は悪くない。という感じです。

うん。面白かった。

追記はラストに関わる話ですので読む気のない方だけどうぞ。