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プライマルラブ―アライブ1―(閲覧注意/U)

ラブアンドジャスティス14(閲覧注意/CM)

『あ、あああ、動か、ぐ、いれぇ、』

自分から出た声が何語なのか、なんの意味があるのか、さっぱりわからない。

それぐらい凄い。

すべての女の子に土下座したくなる気分だった。

『ばか、力入れんなっ、』

バカって言ったな。
後でみていろ、なんて思う余裕すらない。
開拓じゃない。
これは開墾だ。
彼のもので乱暴に掘られる。

そう、まさに、掘るという言葉がぴったりだ。
どんどん掘られて僕の裏側まで穴が空いてしまうのではないか。

『い、たぁ、いっ、』

女の子が痛いって言ったら、大抵の男は一度止めるだろう。
けれど脱童貞したての高校生が、男を相手にして痛がっている様子を見てもそんな気遣いができるはずもなく。

そもそも、気遣いもなにも僕のことが見ていないのではないかと思う。
自分しか見えていない。

仕方ない。
仕方ないさ。

僕だって、彼が高校生だからそう思えるのだろう。
これが同じ歳の頃の男だったのなら、無理だと押し退けて帰っていたかもしれない。

『ゆん、ほっ、く…や、』

どこまで入ったのだろう。
自分ではよく解らない。

『や、やさしく、して、』

痛くしないで欲しい。
もういやだって、あまり思わせないで欲しい。

『おねがいっ、』

僕にいやだって言われて、いやな思いをするのはこの子だから。
それでケンカになったりするとかも、いやだ。
この子とケンカをしたら、きっと心の方がもっと痛い。

『わかってるって、でも、』

わかってる。
僕だってわかってる。
彼は彼なりに自制しようとも思ってくれているはずだって。
けれど彼も慣れない刺激(彼が気持ちいいのか痛いのかはわからないけど)で余裕がないのだ。

『ゆんほく、んんっ、』

彼は押し入ってくる。
引いて押してくる具合からすると、行き着くところまでは辿りついたのかもしれない。

ムチャムチャとイヤな音が股の間から聞こえてくる。

『あ、わかった、』

なんだその数学が解けた時のような声は。

『ちょっと、お前腰上げろ、』
『へ?』

おまけに僕は間抜けな声しかでない。
彼は僕の尻を開くように掴み天井に向けて広げるように角度を変えた。

『おら、』
『はああっ、』

掘られる。
ずぶずぶと大胆に彼が入ってくる。
真っ直ぐに打ち込まれる。
彼が言う角度が、僕の「穴」と彼の「杭」にぴったりはまる角度だったようだ。

『どう?痛い?』
『い、…ん、』

痛いかと言われて改めて考えると、そうでもない。
苦しいけれどさっきのような痛みはない。

そして彼はまた腰を引いた。

『あんっ、』

引かれる、つまり抜かれる瞬間がとても怖い。
怖いというか、未知すぎる。
予測がつかない。
入れられる時の痛いかもしれないという先入観が覚悟みたいなものを作ってくれるけれど、抜かれる時のあの油断したところに与えられるものに揺さぶられるのだ。
抜かれる時の快感のようなものがある。
その快感を予測しきれなくて困るのだ。
不意を突かれる。

『どう?』

彼の唇は少しだけ笑っていた。
彼は彼で気持ちいいのかもしれない。

『うん、痛くは、ない、かな、』

答えると、彼は嬉しそうに、そして楽しそうに唇の角度を急にしていったのだった。

彼は押しては引く動きを繰り返す。
やっぱり押すよりも引く時の方がゾクゾクするものがある。

『俺うまくねえ?』

知ったことか、と突っぱねて言ってやりたくなる。
問題が解けたから、もうその全てを会得したような気分でいるのか。

下から上に抉るような動きをしてくる。
その動きのせいで、僕のなかで彼のものが擦られるような動きになるのだ。
そうやって擦られる瞬間がたまらない。
それが気持ちいいということなのかは解らない。
けれど、確かに何かがものすごい。
そしてやっぱり引いていく瞬間がとんでもない。
恐ろしい。
ああ、引かれる瞬間が気持ちいいとは言えるかもしれない。

言わないけれど。

言ったら最後だ。
この子は付け上がるだろう。

『おい、どうなんだよ、』

そんなこと言われても。
僕は僕でいっぱいいっぱいだ。
余裕なんてない。
痛くなくても余裕はない。
気持ちいい瞬間とかいって大変なんだ。

『おい、』
『や、だめっ、いま、だめっ、』

話しかけないで欲しい。
話しかけるか、動くかどちらかだけでお願いしたい。

抉られる。
もっていかれる。

気持ちいい。

『チャンミン、』
『ああ、らめ…、』

僕の中が明らかに広がってしまっている。
広がったところが彼のサイズを覚えようとする。
彼に触れる部分が、彼をもっと欲するように疼いてくる。

気持ちいいって、こういうことなのか。

『急にめっちゃよくなった、』
『言わ、ない、れっ、』

僕の中が馴染んできたということは、彼は気持ちよくなってきているのかもしれない。
動きが慣れてきたようだった。
僕は一向にこの不思議な状態から慣れない。

気持ちはいいのかもしれないけど。

初めてでお尻で気持ちいいというのは、なんだか悔しい気もするのだが。

『ちゃんと立ってんじゃん、』
『も、言わない、でっ、』

恥ずかしくて死んでしまいそうだ。

『なあ、気持ちいい?』

見下ろされているのもなんだか恥ずかしくて悔しくて、僕は腕を持ち上げて顔を覆った。

『おい、』
『や、きか、ない、れっ、』

相変わらず足の間から嫌な音がしてる。
聞きたくないけど耳に入ってくる。

そして彼は動きを小刻みにしてきたようだ。
それがまた、気持ちいいような気がする。
絶え間なくいいところを突っつかれているような感じだ。

『へへ、』

また、笑ったな。
悔しい。
気持ちいいだなんて、ドキドキしてしまうだなんて。
それって期待もしてしまっているということなのではないのか。
いやだ、考えるのはやめよう。
考えると恥ずかしくて今夜は眠れなくなりそうだ。

『わっ、』

急に体の向きが反転した。
そして彼が抜けていた。
どういうことなのか確かめようと後ろを振り向こうとしたら、また彼が入ってきた。

『あああ、』

そう、僕はうつ伏せになっていた。
そしてお尻だけが彼の方に突き出している。
間もなく彼は入ってきて、また穴に杭が打ち込まれたというわけだった。

後ろから、深く、深く。

『やべ、深え、』

お尻いっぱいに、そしてお腹いっぱいに、彼の存在を感じる。
ぴったりと僕のなかにくっついて、居座っている。
図々しく、堂々と。

僕のなかを支配している。

そして後ろからも攻めてくる。
突いてくる。
すっかり慣れたような腰つきで。

その学習能力には本当に恐れ入るばかりだ。

僕に勝てるもの。
貴方はそれをセックスだと言ったのは、あながち間違いでも嘘でもないかもしれない。

勉強だってわからない。
彼は解けることを快感としているような気もするもの。
自分で切り開くとか、見つけ出すとか、探し出すということに喜びを感じる人だよね。

いいよ、勝てなくてもいい。
負けてもいい。

貴方がそれでまた笑ってくれるのなら。
その喜びを僕で感じてくれているのなら、それでもいい。

そう思う。



『気持ちいい?』

しつこい男子の典型的な台詞だぞ。

『うん、』

それに答えてしまう僕も僕だけれど。

『へへ、』

顔は見えないけれど、きっと可愛い顔をして笑ったのだろう。


ああ、悔しい。



ああ。



それでも、





キモチイイ。
















それから彼は僕のなかで果てた。
一度では終わらず、復習に燃える若い体に付き合わされることになる。

いやだ、若いって。
無駄なエネルギーだ。
それにこの子のしつこい性癖も絶対加算されている。

終わったのが何時だったのか、わからない。

起きるのが怖いよ。
お家の人たちになんて言うのさ。

何も言わせないのだろうけど。




ああ。

僕はなんという夜を過ごしてしまったのだ。



高校生のくせに大人に向かって腕枕をしてくれてしまっている。
僕が甘えないと許さない、みたいな雰囲気だった。

この子の成長が怖いよ。


その支配力と可愛らしさに、人生が持っていかれてしまいそうだ。













続く。

ラブアンドジャスティス13(閲覧注意/CM)

『ねえユンホ君、』

『あん?』

なんて瑞々しい肌なんだろう。
お風呂上りのしっとり感が残っている。
それだけこの子の肌は若くて吸収力があるんだ。
この子の脳もそう。
ヒントを上げるとどんどん吸収して広げていく。
生徒としても、とても魅力的な子だ。


そんな肌に口付けを。


『初めての子は、どんな子だったの。』

やっぱり、知りたい。
僕よりも先に彼を知った人のこと。

『なんだっていいじゃん、』

彼は、ふいと顔を逸らして赤くなる。
唇を拗ねさせる。

『ううん、知りたい。』

腹筋も、お臍の周りも、汗すら弾くようなきめ細やかな肌。
その上を唇で滑っているのが、とても心地よかった。

『っ、』

肌が跳ねる。

『教えて、』

少しずつ下がって、彼の足の間に辿り着く。
彼のものを目の前にする。

ここはすこぶる順調に育ったようだ。

不思議なもので、僕だって男の子を相手になんかしたことがないのに既に慣れてしまっている気がする。
彼と裸の付き合いだってなかったのにね。

なんでかな。

『知りたい。今日は僕が教えて貰う側でも、いいんじゃないかな、』

大きくなったそれを、指でなぞってみる。
自分のものに触れてどんなものかは知っているけれど、他人のものってまず触らない。
だから人のものを触って得る感触というものは、実に不思議なものだった。

見上げると、彼の巨大なそれと、恥じらって唇を噛む可愛らしい顔。
巨大なそれと、顔が一向に一致しないレベル。

『ダメ?』

唇とか寄せてみる、積極的な僕。
信じられないよね、男の子のそれに触れているだなんて。

でもね、不思議なものは続くわけで、嫌だなって思わない。
きっと今日一日で彼に振り回され過ぎちゃっておかしくなっているんだ。


本当に、今日だけで何度ドキドキさせられただろう。

高校生の、男の子に。



『同じクラスの、どうでもいいやつだよ、』


どうでもいいやつ。

なんだそれは。
好きだった子ではないのか。

『お前と付き合うのに、なんの経験もないのはマズいから、とりあえず、その、』

とりあえず、済ませるだけ済ませたのか。




そうすると。

彼が僕に見せてきた、さも女の子なんて足りてて初体験がいつなのかなんて忘れた。
みたいな雰囲気は作っていたということか。

まったくもって恐れ入るばかりだ。

けれど、
一つ啄くとこんなにも脆く可愛い部分を見せてくる。

可愛い真実が現れた。

しかし、初体験はそんなに最近のことだったなんてね。

その不器用でひねくれた、そして恐ろしく可愛らしい純情。

そんなふうに感じるのは僕だけだったとしても、
それは僕が彼を好きだという証拠だろう。

この子に魅せられている。
そういうことの現れ。
酔っている。

それでいいと、思えてしまうほどに。


『ユンホ君、ありがとう、』

『なんでだヨ、』

『なんとなく、ふふ、』

『わけわかんねぇし、』



僕が女の子だったら。
いや、あんまり考えたくないけれど。

ううん、こうだ。
僕がされるとしたら、どんなことをされたいか。
そう考える。

僕だって男の子相手は初めてなのだ。

僕がしてあげられることを考える。


『ユンホ君、ヘタクソかもしれないけど、許してね。』

されて気持ちよかったことを思い出す。

『いや、ていうか、』

なにさ。
僕がするのは不満か。
聞く耳は、持たない。

僕がその気になっているんだから、今のうち。
次はないかもしれないんだから。
お互いにイヤになっちゃうかもしれないことだって、可能性として有り得なくはないもの。


『ちょ、おま、』

『ん、』

彼のものを口に含む。
言いようがない味がする。
舌触りとか、温度とか。
そしてやっぱり、大きい気がする。

『んふぅ、』

どうだったかな。
どうされたんだっけな。
ちょっと遠い記憶を呼び起こす。
歯を立てないって、どういうことだったんだろう。
彼のものに歯を触れさせなければいいのかな。
ううん、よくわからない。
女の子って、すごいね。

『う、っ、』

頭上から彼の声が降ってくる。
彼の様子を見ようと思って一度口から出して見上げてみる。
すると彼は困ったように眉を寄せて浅い呼吸を繰り返していた。

『ごめん、変だった?』

代わりに彼の天辺を撫でてやる。
ぬるぬるとしていて、光っていた。
そしてそのぬるぬるがまた濃くなる。

『ちげえよ、』
『ユンホ君?』

今度は怒ったように歯を食いしばった。
かと思うと眉の力を抜く。

『やべえ、』
『え?』

彼を撫でる手を止めようとする。

『いい、もう、いい、』
『なんで、』

まだほんの少し舐めただけだ。

『うるっせえよ、やべえんだよ、』
『お、』

つまりそれは、もうイッてしまうということか。

それなら、やめてあげない。
どうせ一回ぐらいで終わるような若さではないのだろう。

『ユンホ君、覚悟しなさい、』
『あ、ばかっ、』

大人の意地を見せてやろうと思う。

再び彼の大きくなったものを頬張る。
さっきよりもまた大きくなったかもしれない。
唇だけで彼を包むように滑る。

『ああ、』

可愛い声だ。
余裕がなくて、焦っている声。

『ん、ふ、』

しかし、本当に大きいな。
こんなものが体内に入るとか、女の子でもしんどいんじゃないだろうか。

『はあ、おっきいね、』
『うっせぇ、あ、』

口の中もどろどろだ。
イッてしまえばいいのに。
なかなかに、しぶといな。

『ねえ、気持ちいい?』

口に入りきらない分、下から天辺にかけてゆっくりと舐めあげる。
ちらりと彼の顔を見ると、またぎゅっと目を閉じて、そしてあの唇から少しだけ空気を吐き出したらしい。
こんな時も美しいんだ、この子は。

恐ろしいね。

ドキドキするよ。

ユンホ君。

言えないから、心の中で気持ちを込めて呼んでみる。

『ん、』

音にするのなら、ぬうっと音を立てていたに違いない。
彼の全てを口から出そうとする際になかなかに距離を使っているようだった。

『ぐ、このっ、』

『あっ、』

口から出し終わった時、また怒ったような顔をした彼に突き飛ばされてそのまま布団の上に倒された。

『ゆんっ、』

次の瞬間には足を大きく開かされている。
彼は肩で息をしながら僕を見下ろしていた。

『お前誰かにしたことあんだろっ、』

『お?』

そして彼はあのボトルを握りしめるように掴み取る。
逆さして僕の股間に乱暴に垂らし始めた。

冷たい。

『初めてじゃねえだろ、めっちゃうまいじゃんっ、』

疑われているのか。
心外だな。

ボタボタと重たい液体が落ちてくる。

垂らしすぎてはいないだろうか。
ドロドロになったそこは膜に覆われているような感覚だ。
指が当てられたことに気づかなかった。

『ないよ、ないからね。』

他に誰かにしたことを否定だけした。
そしたら指が入ってきた。
入口は入り切らなかった液体で更にドロドロとしている。

明日絶対にシーツを交換する人に怒られるんじゃないかな。

『う、』

指が直ぐ出ていった。
そしてアレが、やってくる。

『ちょ、』

彼は今、聞く耳を持っていないらしい。

『あ、ムリっ、』

指一本入れただけですぐに引っこ抜き、そして自分の膨れ上がったものを押し込んできた。
滑りだけは十分にあるから、入ってきてしまう。
メリメリと、開いたことがない筋肉が動いている。

『あ、ああっ、』

なんだこの漫画みたいな痛みは。
この液体を使っても痛いことには変わりないのか。

結局彼の初めての相手のことも教えて貰えてないし、
なんだか疑われているし、
ちゃんと痛いし、
なんだか僕だって怒りたくなってきた。

けれど、


『もう、あんなの誰かにしてやるとか、許さねえから、』


勘違いされているけれど、

この酷く身勝手な支配力が、

なんとも心地いいのは、

僕がどうしようもないところまで落ちてしまったということなのか。



『お前はもう、俺のもんなんだよっ、』



わかってるよ。


わかってる。


だから貴方を、

だから貴方に、

僕で気持ちよくなってもらいたかった。

それだけだったのに。


不器用な子だ。


でもね、ユンホ君。

年下と年上の温度差は、
二人で一緒に消化していけたらいいね。



とりあえず、優しくして。

僕もするから。

痛くしないで。

逃げないから。





さあ、僕の体で大人になって。























続く|ΦゝΦ)

ラブアンドジャスティス12(閲覧注意/CM)

お酒も勧められたけれど、彼が飲めないのに飲みたいとはやっぱり思わなかった。
未成年の前だもの。
それで酔ってしまったりなんかしてしまったら、自分が自分を嫌になるだろ。
彼も飲めばいいのにっていうけれど、初めて泊まった家でそこまで図々しくなんてしたくない。
後でやっぱり、自分が自分を嫌になりそうで。

しかし、彼はこんなものを食べて生きているのかと思うと言葉にならない。
刺身にも天ぷらにも化けた河豚は美味しかった。
ああ、これで本当に何かあったら僕はいくら支払って責任を取らなくちゃいけなくなるのか。
考えると恐ろしいから思考を止めておいた。

それでもこじんまりとして、けれど綺麗に掃除がされている洗面台で並んで歯を磨いていると、同棲したらこんな感じなのだろうかと栓のないことを思ったものだ。

こんな暮らしをしている子が、こちらの生活水準に合わせて生活するなんて考えられないのだが。

とりあえずまた色々と余計なことを考えてしまいそうだから、肉厚な河豚の天ぷらを思い出すことにする。
塩で食べる天ぷらはなんて美味しいのだろう。
今は歯磨き粉の味しかしないのだが。

「遠い未来」

そして彼の言葉を思い出す。

「俺の遠い未来まで、お前を絶対連れていくから。」

ものすごい力があるよね。
若いから、何言ってんのって思っちゃうところもあるけど。

若いから、力があるよね。
熱いよね。
激しいよね。
僕にはない温度だ。

この子なら、決めたのことはどんなことでも成し遂げてしまうんじゃないかなって、思っちゃう。

怖い。
素敵過ぎて、今から怖い。
この子がどんな大人になるのか、眩暈がしそうなくらい怖い。


『つ、』

冷たい。
なんだなんだと慌てて意識を現実に戻すと、彼がビチャビチャと音を立てて口を濯いでいる。

『ちょ、うんほくん、』

歯ブラシを咥えながらだから変な呼び方になってしまった。
蛇口の勢いを緩くして、備えてあるタオルで辺りを拭いた。
そして肩にかけてた僕のタオルで水滴が跳ねまくった彼の顔を拭く。

『へへ、』

へへ、じゃ、ないよ。
もう。
前言撤回。
このまま大人になったら別な意味で要介護だよ。
歩く度にいろんなものが乱れていくかもしれない。


二人で部屋に戻ると、これまた綺麗に部屋が直されていて旅館以上の待遇だ。

なんだか一日がとても長い。

ベッドの傍に敷かれた布団に座ると、彼は部屋を出ていった。

そのまま倒れ込んで横になってみる。

するとまた、彼の言葉が蘇るのだ。



「俺が男見せてやるから、黙って俺についてこい。」


すごいよね。
すごいエネルギーだよね。
これで発電したらあと十年は電気が賄えるのではないか。
そのくらい、衝撃的だった。

そんな言葉を自分が結婚相手に言うならまだしも、
まさか年下の同性に言われるとは露ほども思わなかった。

そしてそんな言葉に、心が震えて頷いているとも、思わなかった。

嬉しいだなんて思うなんて。


思い出すと、よくわからないけど泣きたくなる。

すべてにおいて、もう、何がどうなっているのかわからない。

結局僕は彼のなんなのだ。

彼氏か。

彼氏。

そうか、彼氏か。


『チャンミン、』

『うわっ!』

布団の上で全部の毛が直毛になったような驚き。
この子は本当に心臓に悪い。

『なんだよ、エロいこと考えてたんだろ、』
『ちが、』

体を反転させると白い歯を見せて笑う彼が居た。
その顔がまた、可愛いんだ。
そして僕は反撃ができないまま溜まり込む。
彼は僕の布団の上に座ってきた。

『どこにいってたの、』
『ん、適当に寝るからもう誰も来るなよって言ってきた、』

あからさま過ぎる。

まあ、男女のお泊まりだったらそうなるけれど、家庭教師が泊まりに来た程度では周りの大人達はそうとは思わないかもしれない。

なんだっていい。

どうせ今夜からは逃れられないのだ。


頭の中でまたブツクサと考えていると、唇に柔らかいものがやってきた。

彼の唇だった。

歯磨きの後の、キスだった。

彼はそのまま僕の肩を掴み、布団の上に押し倒してくる。

ああ、もう、逃げられない。

僕の上に乗って、真上からキスがやってくる。
本当に上手だなって、やっぱり思う。
溶かされる。
目を閉じて、委ねる。

吸って、離れて、追われて、取られる。

彼は僕を追い詰めるようにして口内を潤す。
酸素の残量を忘れてしまうくらい、夢中にさせる。
離れた際に見える間近で見る彼の顔もまた、可愛くて。



『いいんだよな、お前がいいって、言ったんだよな。』

それは、寝る前になったら抱かれてもいいってことだろう。
確かに言ってしまった。
あのままあの時致していたら大変なことになっていたのだ。

言ってしまった。
けれど、仕方ないなというより、まあ、いいかなというところまで思えるようになった。

男の人となんかしたことはないけど、
それ以上に、
僕の気持ちが彼に傾いているということなのだろう。

『はい、』

返事をしたら、またキスをくれた。





『ここ、使ったことって、』
『あるわけないじゃないですか、』

浴衣を捲りあげて、足の間を指さしてくる。
こういうがさつなところはまだまだ要成長だろう。

『へへ、』

そして何故喜ぶのかわからない。

『一番、貰い。』

嬉しそうにそういうと、彼はある場所に手を伸ばした。

『脱げよ、』

思うよ。
僕だったら女の子にする時は脱がしてあげるね。
もう、この子は。
なんとなく恥ずかしくて、浴衣はきたままだ。
下着だけ外すとなんとも緩い反応を示していた。

彼は何かのボトルを手にしている。

『足、開いて、』

この子は自分で脱いだり開いたりするって相手の恥ずかしさを全く知らないのか。
セックスのテクニックだけで渡り歩いて来たのか。
可愛くない。
気遣いだってテクニックのひとつなんだぞ。
なんて言うともう部屋から一生出られない気がして言えやしないのだが。

仕方がないから足を開く。

『もっと、見えねえし、』

見るとか言うな。
ダメだ、この子に世の中の女の子を任せられない。
相当ドM体質でないとやっていけないのではないか。

足を大きく開くと、その間に彼が顔を寄せるように近づく。
僕はもうその様子を見ていられなかった。
顔を逸らして目を閉じた。
更に枕を引き寄せてそこに顔を押し付ける。

『ひっ、』

視界を遮ったことがいけないのか、よかったのか。
急に足の間に冷たいものが当てられた。
いや、垂らされたのか。

『あ、わっ、』

出ていくばかりの器官に何かが入っていく。
ぬるぬるとした感触がとても強い。
冷たい。

『どう、痛い?』

『いや、びっくりしたけど、痛くは、ない、かな、』

ちらりと枕の影から視線を覗かせて見ても角度的に彼の姿は捕らえられなかった。
遮ったことが裏目に出たか。

『あ、ああっ、』

そんなことを考えていたら、ブチュブチュとおまり美しくない音が響いた。
何かを押し込まれている。
多少の圧迫感を感じる。

痛いとか言うよりは、なにか、変。

今までに味わったことがない感触だ。

ていうか、いきなりお尻にいくのか。
もっとこう、しっとりと抱き合って気持ちを高めあっていくとかないのか。

それが夕飯前のあれだとしたら、ダメかもしれない。
彼への教育が必要かもしれない。

『ん、んんんっ』

中に入ってきたものが動いた。

『痛い?』

『...痛く、ない、けど、』

また枕から少しばかり覗かせると、今度は彼が覗き込んできて目が合った。

『ゆんほくん、』
『あん?』

今、自分がどんな顔をしているのかはわからない。

『いきなり、なの?』
『なにが、』

彼が手を舐めた。
もったりと垂れる雫を舐めた。
あの舌がそれを舐めとる。

不覚にも、きゅんとした。

『あんだよ、』

『うん、...いきなり、いれちゃうの?』

すると彼は瞬間的に顔を赤くさせた。
薄暗くてもよくわかる赤面度数。



『だって、俺だって男は初めてだし、』

うん、それはなんとなくわかってたけど。

『一回しただけだしっ』

なんだって?




その回数に驚いたというより、
それじゃあ今までのあのキスのセンスはなんだというのだ。

逆にそれまでのどうしようもない具合は酷く納得はできた。

けれど、僕に負けない部分をセックスと言い張った(照れてたけど)あれもなんだったのだ。


なんだろうな。

初体験が済んでしまえばもう一人前な気持ちでいられたということか。
わからなくもないけど。
いつまでも童貞かしら、なんて思っていた昔の自分も居たわけだし。


プロポーズはできちゃうけど、セックスは二回目っていう。
この、アンバランスな具合にまた眩暈がしそうだ。


唇を突き出して黙る顔も、また可愛い。


それとね、


貴方の貴重な初体験の相手になった女の子に少しヤキモチ妬いちゃうよ。



『ユンホくん、』


『......、』



『ユンホくんの初めて、僕が貰いたかったな。』

『そんなもの見せられっかよ、』


そうじゃないの。
そんなものだから、見たいの。

好きな人の初めてだもの。

『僕だって男の人とは初めてだよ。』

『俺だって、そうだし、』

まさか僕がこっち側だとは思わなかったけれど。

『ねえ、』

『あんだよっ、』

そんな顔しないで。


『ゆんほくん、やさしくしてね、』

『...、』


やり直し。

お互いに大好きなんだから、
お互いに好きって思いながらやり直してみようよ。


『キスして、やさしく、いっぱいして、』


虎の子から子犬のような顔になった彼もまた、可愛いものだ。






キスが始まると、また大人の彼が顔を覗かせる。


一進。

一退。

そしてまた、一進。



やるって決めたのなら、僕だって今夜は逃げないから。



貴方の二回目を、
たくさん気持ちを込めて、


僕にください。






















13に続く‖Φ_ゝΦ)

ステイウィズミー15(閲覧注意/U)

押し倒して、それからはもう止まらない。

チャンミンの長い腕は俺の背に絡みつき、名前を呼んで目元を濡らす。
喉を震わせて鳴いて、そして自ら濡らして俺を飲み込んでいく。
男の中でも稀有な肉体の持ち主だと思う。
そんな体に翻弄されることは、幸せなことだとも思ったわけだが。


『ああ、』

部屋に充満した甘い喘ぎ。
この交わりがなにものでもなく、ただの恋人同士のものだということを思うと堪らなくなるのだった。
初めて抱いた時は「買わされた」ようなもので、二度目は払い過ぎた分だと言って金銭のやり取りはなかったものの、「買ったうち」に入っていたものだ。
その時点ですでに互いのなかに、互いがいたのだ。
だから俺達は三度目がなかった。
常連にはなれずに終わったのだった。

『んん、ユンホ、ああ、』

悩ましげに眉を寄せる。
唇を噛んで声を閉じ込め、そして耐えきれずに吐息を漏らす。

『はああっ、』

痙攣を起こしているかのように、肢体が震える。
その震えに声が乗る。
仰け反った背筋と首筋。
その角度が高くなった時、白く果てる。

『やだ、まだ、』

それでも終わろうとしない。
この繰り返しも何度目だろうか。
細い体にはとんでもない性欲が潜んでいたらしい。

『ユンホ、』

そんなふうに呼ばれて応えないではいられない。

『きもちいい、』

それはもう、今夜だけでもたくさん耳にした。

『きもちいいよ、ゆんほ、』

この男は、男を喜ばせることがうまい。
稼いできただけあるのだが、それともまた少し違う。

『あ、ああ、やだ、まだおわらないでねっ、』

離さない。
終わりに向かわせない。
俺の欲を引き出すのがとても上手い。
ぐらぐらとした欲のなかにある、もっと深い欲に手を伸ばしてくる。

『ゆんほっ、こんどは、なかに、』

暗闇のなかのその煌めきは、
涙なのか、汗なのか。

『あ、あああ、いやだっ、なかでしてっ、』

中でしようが外でしようが、俺達がどうなってしまうわけでもないというのに。

この男は。

どうしてこうも俺を煽る。

『いや、や、や、あああっ』

嫌なら腰を振るな、
喘ぐな、
甘えるな、
求めるな、
煽るな。

『いく、いくいくっ、ゆん、』

手のひらで求めてくるな。

それを愛だと、思わずにはいられないだろう。

『んんんんんっ』

それが愛だと思っているけれど。

『ゆんほっあああんっ』

俺達は犬か。
着床しないのがいけない。
だから延々と腰を振るしかできないのだ。



体と体の間には、

紛れもないなにかがあるからこその行為だが。


金じゃない。

今度は愛だと、言いきれる。


与える方も、与えられるんだ。
与えられたから、与えるのだ。
与えられたいから、与えてみるのだ。


『いくぅっ、』


いくな。


この夜は、いう必要がない。


色んな意味で、必要がない。



『いっ、く、あああ――――』




好きなだけいったらいい。














長い一日がようやく終わる。

最後に目覚めてからちょうど一日が経ってしまうのではないだろうか。

汗くさく、獣臭いまま、狭い寝台の上で大人二人が横たわっている。

すっかり落ち着いた呼吸器たち。
汗も引いて外気の冷たさを感じる。

上掛けを引っ張って二人でさらに寄り添って、長い長い睫毛を横から見つめることになる。
大きな瞳を守るための睫毛だ。
明らかに俺とは違う造り。
それだけで愛おしく感じられるから困ったものだ。

『ユンホ、』

疲れきって、でも穏やかで、そして優しい声だった。

『お願いがあります。』

眠たそうで、でも煌めいて、そして強い瞳で見つめてくる。

『やっぱり、僕を買って欲しい。』

横に線を引いたようなその唇が言う。

『今度は何が欲しいんだ、』

そしてその唇は、少しだけ緩んで微笑んだ。

『うん、』

上唇を噛んで、睫毛を伏せて、照れて笑う。

『僕をあげるから、全部、ぜんぶぜんぶ、あげるから、』

また、手と手を重ねる。
上掛けの下で、手のひらを合わせるようにして重ねる。

絡める。

握り合う。

『貴方の未来に、連れてって。』

ゆっくりと瞼を閉じて、開く。
閉じた際に水気を連れてきたようだった。

目尻が花咲く。

淡く、儚く、そしてこの世のなによりも、美しく。

『ゼロに戻れたの。だから、今度はまた歩き方を考えなくちゃいけないの。』

連れてきた水気は涙になって寝具にこぼれた。

『僕はここにきた、半分は僕の足で。』

雨水が蒸留されていくように。
そして源泉から滾滾と湧くように。

この夜で、いや、この明け方に世界中で一番美しい涙が産まれる。

『半分は、やっぱり貴方に導かれた。』

絡めた指先が震えていた。
寒いからじゃない。
この震えは、心の震えだ。

『ねえ、ユンホ、僕の一生は貴方に捧げる。』

魂の震え。

『僕は貴方を選んだことが、なによりも大事なの。』

夜が震える。

『貴方を選んだことが、僕の人生の答えの半分だ。』

朝に震える。

『だから、だからね、』

手を握り直す。
その震えを、もっと感じたくて。

『なんでもするから、貴方の未来に連れてって。』

また、娼夫のようなことを言う。

『僕を買って。なんでもする、僕の一生をあげるから、お願い、ユンホ、』

どこまでも、俺を煽る。

『お願い、』

俺の人生最大の欲を引き出す。



『チャンミン、』

泣き崩れていた。
感情が昂ってしまったのだろう。

可愛いものだ。

『世話をされたい、』

従順な部下か。

『誘われたい、』

紫色の誘惑か。

『添い遂げたい。』

心は咲くか。

『そういうもの、全部全部、お前にぶつけたい。』

魂は鳴るか。

『そしてお前と剣と、運命を共にしたい。』

共鳴。

『いくな。』

共存。

『そばにいろ。』

共闘。

『お前はもう、俺のものだ。』

これらを何と言うか、考えた。




『返事は?』

『はい、』


考えたら、満たされた。

勝手にこの男の道を作ってしまったことを詫びようとさえ考えてもいたのに。


『愛してる。』

『...はい、』

謝れそうにない。
謝りたい気持ちなんて、消えてしまった。


『もう、どこにもいかなくていい、』

『はい。』


決めつけられて、喜んでいるのだから。

これが成立しない関係だとしたら、

それは共犯。



『ここにいろ。』

『はい、』


『いったら一生、許さない。』

『はい。』




これらを何と言うか、考えた。

そう、


運命の共同。





この体、運命共同体。




















ステイウィズミー





本編完