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フユモノガタリ(閲覧注意/U)

『寝た?』

『うん、寝た。』


山も、ケモノも、うちの子も眠っている。
真冬の山の中。
しんしんとした真白の世界に住んでいる。

眠る山。
眠る森。
眠る木々。

春を待って、眠っている。

俺達の周りにいるあのケモノも、冬場はやはり眠るようだ。
姿を見せる日がぐっと少なくなる。

でも、居るよ。
俺達を、うちの子を、うちの人たちを、村を、見守っていてくれている。

俺のチャンミンを、守ってくれている。


『寒い、先輩、足、寒くないの?』

寝るときは寒くても裸足だ。
なんにも着たくないぐらいだ。
チャンミンだって寝るときは裸足になるくせに。

『へいき、まだ若いから、』
『はいはい、』

そして、しっ、って怒られる。
せっかく眠ったうちの子が、起きてしまうから。

俺の部屋は子供にはちょっと寒いから、母屋のほうに寝かせている。
そして母屋で一緒に寝たりもする。
でも、今日は母屋に預けてチャンミンと二人で夜を過ごそうと思ってた。

裸足にサンダルで雪で埋め尽くされた庭を横切る。
さすがに冷たくて、思わず笑ってた。

明日の朝は、親子で雪だるまを作ろうか。
俺と、チャンミンの顔を作って。
うちの子の顔も作って。







暖めておいた離れの俺の部屋。
満足気に頷くチャンミンは、寒さで赤くなった頬を上機嫌にさせていた。
そんな上機嫌な頬に、俺の頬も上向きなご機嫌になるんだけどネ。

『おまたせ。』

そいうこと。

『ん、』

今夜は、そういうこと。


二人目の話が出て、回数がなんとなく増えた気がする。
意識してないわけじゃない。
まあ、意識してもできないものはできないんだけど。

わかってる。

わかってるさ、そんなこと。

あの子を迎えてから、むしろより強く感じているさ。
自分達からはどうやったって作り出せないということは。

でも、体は感じて反応するものらしい。
ほんとだヨ、反応してるんだ。
だから、交わりたくなるんだ。
互いに交わってなにかを得ようとしているってことだ。
物理的にはなにも作れないけれど、二人でなにかを求めているから、交わることに行きついてるんだ。

『ねえ、明日も見て回るんでしょう?』

『うん、』

山をね、木をね、見て回るんだ。
深くは入り込めないけどネ。
面倒みないといけない若い木もあってサ。

『いいの?』

『いいの、』

したいの。
するの。

腕を掴んで、引き寄せて、もう、体をまさぐる。

『せっかちだな、』

ふふ、ってあの笑い方が耳朶を掠めた。

『ほら、寒いからネ、』
『さっきは若いからって言ったくせに、』

押したり引いたり、笑いながら意味もなく体を触りあう。
中学生みたいな、手と手の戯れ。
笑いあって、舌を出して、拾って、拾われる、舌先の戯れ。

吸いあって、
頬っぺたまで舐め回して、
首まで進んで、
鼻から声を出して、
天井まで音を響かせている。

キスだけで、夜を越えられそうなくらいに。

今だけは、ガキみたいに触りあうこと楽しんで。

『ふふ、硬くなった。』
『そっちもネ、』

触れ慣れたその形をなぞるように指を動かす。
互いへの思いで大きく大きく、ずっしりと膨らませる。

布一枚のなかに押し込められているそれらを出してやって、また、触れあう。

唇も舌もまだ遊ばせたまま、手では飛び出したそれに触れて戯れて。
握り直して刺激にかえて。
漏らす吐息を少し濡らす。

『あ、やだ、強くしないで、』
『でも、いいんだろ?』

うん、て頷く顔は楽しそうだった。
それからまた、大きくさせる。
形よりも、思いの方が膨らんでしまうけれど。

『は、ん、』

途切れ途切れに声が漏れるようになった。
チャンミンはよく濡れる体をしている。
それが役割だというぐらいに。
俺に反応するということが、そういうことだと主張するように。

『あっ、』

鼻にかかるような、高い声。
いつもそうだけど、同じ声は絶対出さないんじゃないかな。

その時その時で、交わる気持ちも楽しみ方も違うから。
ケモノの皆さんが入ってきたり、そうじゃなかったりも、したから。
今もう、入ってこなくなったけれど。

うちの子を迎えてから、白い鱗に包まれることはなかった。

だから、

変わらないのは、求めるのが互いの存在だけだ。
満足するのも、足りないと怒れるのも、互いの存在でだけ。

『あ、…うう、』

うっとりと、でも苦しそうに眉を寄せる。

『気持ちいい?』

聞くと、顎だけ揺らして応えてくれた。
そのあとに、唇だけで笑ってくれる。
だから、もっと気持ちよくさせたいじゃん?

いつもは、チャンミンがしてくれる。
手で、口で、丹念に気持ちを込めて、尽くしてくれる。
だから今日は俺からしてやろうと思ってサ。

唇同士のキスを名残惜しんで一度離し、膝と膝に手と手を置いて足の間を開かせる。
一度は恥じらって、閉じようとする。

『なに、寒いノ?』
『ばか、』

見下ろして、
見下ろされて、
互いに見つめあって、
笑いあって。

俺の方がゆっくりと下降して、割った足の間に顔を埋める。

『ふ、んんん、』

俺の二の腕に、手を添えてきて指先に力を込める。
くすぐったそうに、気持ち良さそうに、耐えるんだ。
こういう時のチャンミンの手つきが、とても好きだ。
俺では、普通の男では絶対しないようなしなやかさがあると思う。
しなやか、違うかな、言ったら怒るから言わないけど、少し女の子っぽい気がする。

立ち上がったそれをゆっくり遊んでやる。
痛そうに張りつめて震えているのがわかる。
二の腕では不安定で、肩に手を滑らせてきた。
そしてまた、俺にしがみつく。
中指が伸びて、そして小指が浮く。
これがチャンミンという無意識の、個性。

『いい、んっ、あ、』

喉が反って、声が上擦る。

『ああっ、うんんっ、』

身を捩って、俺からの舌の遊びに耐えている。
声に同調して溢れるように濡らしてくる。

『やだ、ねえっ、』

余裕がない声。
それでもねだる甘い声。
折り畳んだ長い足。
反応する度に揺れて膝が動く。

肩に、腕に、チャンミンの指が食い込む。

まだ、終わらせてやらない。

俺の指をチャンミンの胸へもっていく。
また、まさぐる。
ちょんと乗った、胸の粒。
指の腹で潰してやる。

『あぁんっ』

今度は逆。
胸を吸ってやって、下を指で潰してやる。
下、チャンミンのそれ。
それの、先っぽ。
次々と濡れてくる先を指の腹で押してやる。

『ユノっいやだっ、いやだぁっ、』

肩から手が離れて、親指を噛む。
声を殺そうとするけど、殺しきれない。
甘い声はひたすらに漏れる。
胸の小さい粒も、取れてしまいそうなくらいに硬くなっている。
上も、下も、張りつめて苦しそうにしている。

『やだ、イッちゃ、』

体を強張らせてすべてを一度止めようとする。
本当にイキかねない。

くっつけていた体を一度離して、チャンミンは布団の上で居佇まいを正した。
呼吸を乱しながら唇を噛んで、頬は上気させたままで。

後ろ手をついて、自分からゆっくりと折った足の間を開く。

『ごめん、もう、入れて、』

『せっかちだネ、』

同じようなこと、さっき言われなかったかな、俺。
大きな目は開いているのに、眉は寄って下がりぎみになる。
唇は呼吸のために半開きで、睫毛は濡れてるんだ。

きゅっと搾るようにして閉じているそこに、指をあてる。
押し込む。

『んっ、』

やだって言う前に、キスして言葉を塞ぐ。

キスして、キスして、キスして、しつこいぐらいに続ける。
唇が空いていれば、キスを続ける。
しつこいって言われてもいいから。
どうせチャンミンは、応えてくれるんだから。

人差し指を飲み込ませる。
それから、中指も入れてしまう。
先に入れた人差し指が奥に当たって、その瞬間にチャンミンの体が大きく震えた。

『う、ううんっ、ん、』

時々べろべろと顎や唇から溢れだしたものを舐めとる。
また、頬も舐める。
耳と、首も。
それからまた、唇に戻る。
順は変わるけれど、ぐるぐると、唇が降りる場所を変えていく。
だいじなものを、だいじにする、犬とか猫みたいに。

指を抜いて、唇を離して、ほんの少しだけ見つめあう瞬間。

どちらからともなく笑って、またキスをする。

ぴたりとあてて、押し込んで、息を吐いて。

『あぁ、ふ、んふ、』

見えないけど、押し込んだ分のなにかがそこから溢れてくる。
全部入ると、チャンミンの指が俺のどこかを探してさ迷いだす。

『はぁ、うんん、』

目と目をあわせて。
何に頷いているのかわからないけど、頷いて。
笑って、また、キスをして。
さ迷っていた手を落ち着かせる。
俺の脇の下に腕を通して、背中から肩を抱き締めてくれる。
体が密着する体勢になったから、もっと深く押し込むことになる。

『あ……』

全部全部入り終わると、二人で息を吐いて力を抜く。
深く細く息を出した。

うっとりと、チャンミンの濡れた睫毛が上に開く。
見上げてくれる目は、いつだって綺麗だ。

『いくヨ、』
『うん、』

そんなふうに合図をする時も、くしゃくしゃの顔で笑ってくれるんだ。
しっかりと俺の背を抱いて、目を閉じる。
俺はチャンミンの首筋に降りて、チャンミンは俺の耳元に降りる。
唇がね。

ゆっくり動き出すと、気持ち良さそうに息を漏らしてくれる。
互いに少しせっかちだったけど、もしかしたらいつだってこんなものなのかもしれない。

だってこの瞬間が、互いに一番好きなんじゃないかなって思うから。

一緒になって、
一緒に繋がって、
一緒に視線を交わして、
一緒に合図して、

気持ちよすぎない瞬間だから、
お互いを一番感じあえる。

ゆっくり、ゆっくり、チャンミンの中で擦るように動く。
耳元で短く、甘くした声と息を漏らしてくる。

『きもちいい?』

ベタなことしか、聞いてやれない。

『うん、』

でも、満足げに答えてくれる。

『きもちいいよ、ユノ、』

ほら、うちのチャンミンはいいやつだ。
きちんと、俺を立ててくれる、いいやつだ。
人の目がなくても、あっても、不器用に立ててくれるんだ。

しっかりと腕も手も落ち着かせていたのに、気持ちよくなってくるとそれらをふらふらとさせハジマッタ。

肩甲骨に置いたり、また肩を抱いたり、腰に降りてきたり。

『あっ、あっ、あっ、』

顔の位置も、喉が反って頬をシーツに押し付けている。

手が、俺の腕に降りてくる。
やっぱり小指は浮いて、人差し指と中指を伸ばして、力を込めてくる。
耐えてくる。

動きを一度止めて、チャンミンの体も一緒に起こす。

『後ろからいい?』
『うん、』

好きなんだよね、俺、後ろからするの。
独占欲とか支配欲が強い証拠だって、笑って言われたことがある。
その通りだけどネ。
チャンミンを独占したいし、チャンミンとの夜は支配したい。
この閉ざされた山と村では、しているも同然だけど。

でも、あの子がいるとチャンミンか俺かのどちらかは必然的にかかりきりになる。
それはそれで幸せなこと。

そしてこんなふうに、一対一だけで向かい合える日は、この上なく幸せだとも思う。

『んぁああ、あ、あぁ、』

四つん這いにさせて、肩を落とさせて、尻を開いて、また押し込む。

後ろから見下ろしてると、チャンミンの横顔は喜んでくれていた。
シーツを掴んで、また、圧迫感に耐えるように目を閉じる。

俺だって、気持ちいい。
のたうち回れるなら、全身で喜びたい。

あの白いケモノのように、
お前のなかで這うように、
舞うように、
支配してやりたいと思うよ。

『チャンミン、』

もうあの白い世界は見えないけどさ、俺達は俺達で呼びあってこうしてるんだよネ。

『気持ちいい?』

キスばっかりしつこくしたり、
後ろからしたがったり、
こんなふうに何度も何度もきいたりして、
自分のことをけっこう湿っぽいヤツかも、なんて思うけど、

『うん、きもちいい、すごく、いいっ、』

きちんと反応してくれるチャンミンも、チャンミンだ。

打ちつけていると、速度がどんなものかわからなくなってくる。

早いのか、
遅いのか、
ゆるいのか、
きついのか。

でも、気持ち良さそうによがってくれているかな、これぐらいでいいのかな、とかネ。

浅い呼吸が二つ、バラバラに聞こえる。

そんな中でチャンミンを見下ろすと、ほんのりと赤くした、桜色の目尻が見える。



白に、赤い目が乗って、桜色の点が落ちる。

俺が惚れた、チャンミンの姿。

もう赤い目はないけれど、赤に守られているチャンミンはいる。

桜は咲くよ。

『いいっいいっ、ゆのッ』

山にも、

『あぁあっ、あ、あ、』

ここにも、

『イクイクイクっ』

そう、チャンミンの、ここにも、心にも。

もちろん、俺の中にもネ。





当然、一度で終わるはずもなく。
高まる度に交じりあった。
真冬でも、汗まみれになるくらいに。

外のように、真白のモノを、吐き出して。

できもしないもののために、息吹くなにかをまだ夢見て。


白い白い、真冬のなかで、

それでも必ず咲いてくれる、

この山の桜のように、

俺達のなかにも咲いてくれるなにかを待っている。






朝が来たら、雪だるま。

丸くできたら、顔を三つ。

いや、四つ、五つ、

そう、もう、この村全部の顔を作ればいい。

まだまだ冬は、長いから。




春がきたら、またなにかが、芽吹くかな。


































おわり。

ヨウモノB(閲覧注意/U)

絡まったまま動かなかった。
俺たちの中にいる、白いヤツら。
時々首だけが動き、絡まって繋がったまま動かない。
なかなかにグロテスクだ。

なんて考えていたら二匹で睨むようにこちらを見てくる。
意識まで読んでいやがるらしい。

ぐったりと横たわるチャンミンの体を起こして互いの体を互いの支えにする。

『大丈夫か?』

うんと、頷くけど、すぐに否定した。
俺も同じ。
大丈夫だけど、ダメらしい。
まだ、ダメなようだ。
まだぐるぐると吐き出せないモノが多く残っている。

後ろから絡まったヤツが紅い舌を出して俺を見てくる。
クソ重たい俺の腕が動く。
ああ、やな感じ。
お前俺のこと動かしてるだろ。
お前だって酔ってるくせに。
チャンミンの体をうつ伏せにゆっくりと倒す。
その背中に覆い被せるように俺の体も後を追う。
背中から抱いて、チャンミンや足の間にそっと指を潜り込ませる。
背後から、入れるために。
まったくもって人体の不思議ってやつだな。
中指をすんなり飲み込む。
ちょっと気持ち良さそうな声まで上げて。

もういいや、入れちゃおうと、思った。

いつかみたいに、チャンミンの片足を上げて。
二つの体を横にして後ろからぬっと入れてやる。

『んぁ、あ……はぁ…』

顎を突き出すようにして喉を反らしてくる。
うっとりと声を漏らしてくると、こちらもさらに煽られる。
こういう為にある器官じゃないのに。
ここまでくると、人体の不思議というよりお山の不思議にすら思える。
白いヤツらといい、チャンミンとの出会いといい、体の具合といい、
…俺たちの望むモノといい。
本当にお伽噺の中にいるみたいだ。
押し込むだけ、どこまでも入っていってしまいそうな感覚。
ずぶずぶと奥の奥へと飲み込まれていく。

『あぁあ、あ、はぁ、』

反らされた喉から声が漏れる。
首筋から汗が流れ落ちたのがわかる。
お前の脇の下に腕を回して肩を抱く。
もう片方の腕は窮屈そうに反ったお前の生殖器を捕まえている。

俺といる限り、役目を果たせない、モノ。

『く、…の、…ゆの、』

俺が奪った、お前の性別上の権利。

『んん、ぁ、ゆのっ、』

その代わり、その運命はちゃんと担うから。

『ゆのっ、ユノ、ダメだっ、』

何が?

ーーユノのバカーー

何だって?

ーーそんなふうに一度も思ったことなんか、ナイのに!ーー




チャンミンの声が色んなところから聞こえてくる。
白いヤツらは相変わらず絡まったままこちらを探るように見ている。
ああ、それも白いヤツらのせいなのかナ。
お前らが、流してくるんだろ?
チャンミンの声を。

『違うよ、ユノっ』

どっちが外と内の声だろう。

フイ、と白いヤツの片方がかぶりを振る。
まただ。
また、動かされている。
握ったチャンミンの生殖器に与える動き共に腰を突き上げる。

『あぁっ、ユノ、違うの、』

深く突き刺した場所が酷く濡れる。
入り口から溢れたモノが無様な音を立てている。
握ったモノも飛沫を撒き散らしている。
繋がったまま、チャンミンは俺に何かを訴えようとしている。
聞かなきゃ。
けれど動かされている俺の体は動きを止められなかった。
ああ、わかんナイ。
動かされているからなのか、気持ちいいから止まらないのか。
どっち?
ごめん、チャンミン。
ごめん。

『はぁ、…あ、もうっ、キミたち、』

ーーみんな、話を聞いてよっーー

チャンミンが怒った。
酔っぱらってるのは俺もお前も変わらない。
けれど抗うように尻をすぼめて、ソレを掴む手を止めてくる。

やっと俺の動きも止まった。
繋がったままではいるけど。

『僕は、これでいいと思ってる。』

外側の声だ、ちゃんと、喉を通って唇から出ている声。
俺の耳に直接入ってくる声。

『奪ったとか、奪われたとか、そんなんじゃなくて、』

訴えるために喉がまた反らされる。
ぎゅっと瞑った目から色んな涙がこぼれてる。
もったいないから、舐めてみた。
大丈夫、ちゃんと聞いてるよ。

『僕は、僕の役目は、っ…』

嗚咽で言葉を遅らせる。
大丈夫、ゆっくりでいい。

『権利とか、そんなんじゃなくて、』

訴える横顔はとてもきれいで、やっぱり舐めていた。

『僕は、ユノが求めてくれる形の僕でいることが、僕の役目なんだっ』

なんだよ、俺次第かよ。
どんだけ俺は偉いのサ。
これも、聞こえてる?

『…聞こえてるよ、ユノ、』

じゃあ、泣かないで、ごめんネ。

白いヤツらが二匹で見ている。

『ユノのために生きられるなら、』

言わされているんじゃないよネ。

『それが僕の求める僕なんだ、』

大丈夫、これはチャンミンの意思なんだ。



そっか。
じゃあ、聞いて欲しい、チャンミン。
お前らも。


『チャンミン、』
『はい、』

グズグズと、鼻を鳴らしてべそをかく。
繋がったまま、できるだけチャンミンの体を優しく抱き締め直す。
包む。
心も、記憶も。
俺が包む。

『お前の記憶がなくなったこと、俺のせいだったらいい。』

そんなふうにすら、思う。
あんなふうに、チャンミン、お前が言いきってくれたから。

お前が俺のために生きようとするのなら、そんなふうに思うんだ。

『お前って人間を、俺のために再構築させようとしていたとしたら、』

そう、俺のために、俺とお前をひとつにさせるために失くさせたのだとしたら。
それならそれで、いいと思ってしまったんだ。
今。

『ひとつにさせるために、二度もゼロにナニかがそうさせたのなら、』

鼻先同士がぶつかる。

『どこかで失くしてきたモノと心のかわりに、』

体の線が消えていくような感覚。

『お前に降りかかるすべてを引き受ける。』

俺たちの肌に浮かぶ鱗を重ねあう。

『俺のこれからすべてをかけて守ろうと思うよ。』

それが俺の役目なんだ。

『聞こえた?』

届いた?

『うん、聞こえた、届いたよ、ユノ』

だから、

『失くした事実は俺を恨め。』

そのかわり、

『増えたモノと、芽生えたモノには、』

俺と一緒に、

『よろこんで欲しいって、思うんだ。』

俺を愛してくれるのならば。

『届いた?』

失くした代価は、俺がすべてをかけて担うよ。

『うん、』

俺はお前を求めないことなんか、ない。

『うん、』

俺はお前が、俺を求め続けてくれること、求める。

『うん、』

欲しい?

『うん、』

俺たちの、

『うん、』

もうひとつのナニか。

『欲しい。』

ーー欲しいよ、ユノ、欲しい。ーー






白い世界が緞帳のように降りてきて、また広がる。
もったりとして、重苦しい。

今夜が最高に濃くて、黄みがかってさえいる気がする。

薄かったものが、体を重ねるごとに、物語が進む度に濃くなってきた。
一枚一枚、乳白色の幕が重ねられてきたみたいに。


始まってしまったお伽噺。
今まだ、その途中。
いや、終わろうとしているのかもしれない。

それは素面の時に考えるヨ。




ひとつになって、融合する。
タネを残す。
植え付ける。

行為だけでも、俺たちの望む想いだけでも残そうと思ったんだ。

だから俺たちは交わる。

まったく意味がないことも、ない気がしてきた。



『ユノ、あぁ、あっあっあっ、』

残すために動き出した。
お前を抱く腕に、お前の手が重ねられて、そこからまた体同士が線を無くす。


孕む?
うん、孕む。

ほんとに?
さあ。

なんだよ、それ。
ふふふ、

できたらいい。
そうだね、

覚悟はもう、あるから。
うん。





残すために、放つ。
それを受け止めるために、許す。


ぐらぐらの意識と体は、朝日を感じるまでまぐわった。

白いヤツの片方が、腹を艶かしく淡く光らせるのを遠くに感じながら。


なんだよ、自慢かよ。


言ったところで、意識が飛んだんだ。






でも、今となっては悪い気分じゃない。



チャンミンの、すべてがようやく腕のなかに来てくれたような気がして。












マウモノ4(閲覧注意/CM)

半端に脱がされた白い装束。
貴方の指が焦ってきっと半端に脱がしたんだ。

肌が粟立つ。
貴方の赤い舌が、僕の平らな胸を這っている。
ぬらぬらと、なにかの動きを真似るように。
唇に捕らわれて、強く吸われた。
小さな、でも、強く立ち上がった胸の粒を。

『あはぁっ、』

すでに体が震えただけで汗が流れる。
どのくらいの時間を踊って意識を白いモノに明け渡していたのかわからない。

汗と、唾液と、涙と、粘膜が体内から溢れてくる。
今の僕の体は異常だ。
肌が冷えたり熱くなったり忙しい。

爪を立てられる。
吸われていた胸の辺りに爪をたてられて赤い痕を刻まれる。
『痛、いっ、んん、ん、』
痛いのかな、気持ちいいのかな。
僕の声は気持ち良さそうだった。
異常だ。
爪が降下していく。
腹筋の溝を通過して、脇腹で止まった。
関節が直角に間がって、爪が肌に食い込む。
『ひッ、あ、』
ぐっと力が入れられて、赤い線を引かれていく。
『ぁあ、ん、う、』
目を閉じれば涙が溢れ、
歯を食い縛れば唾液が落ちる。
体が震えると、僕の生殖器がどろりと熱く何かを生む。
触れられているだけなのに。


『チャンミン、』

爪が僕のどうしようもないそれに降り立つ。
今、この異常な状態で爪を立てられたら。
怖くて目を開けられなかった。
でも、容赦はされなかった。
怖れていたままのことを、貴方はしてくれた。
爪が真ん中の溝に突き刺さる。
酷い、酷い、酷い!

『ああぁっ!』

筋を深くするように動かしてくる。
この瞬間は、声にならなかった。
代わりに貴方の無慈悲な指を白い粘液でたっぷりと濡らしていた。
謝らない、絶対に。
けれど、恍惚の笑み。

貴方も、
僕も。

白く汚れた指を、貴方の赤い舌が僕の目の前で舐めて見せる。
舐めて、魅せる。
舌の動きに、僕は喉を鳴らした。

そんなふうに、僕を舐めてもらいたい。

懇願。
哀願。

この浅ましい欲望を、実現して欲しくて唇を噛む。
手首から肘にかけて落ちる、白い筋。
腕を上げて、僕を見ながらまた舐めて見せる。

『う、』

喉から手が出るほど、という言葉がよくわかる気がした。
欲しい。
して欲しい。
舐めて欲しい。

『言えばいいのに、ほら、』



言いたい。

『どうされたいのか、言ってみろよ。』

きっと、物欲しそう以上に浅ましく貴方を見ている。
言わないと、貴方も僕も満足できないって、わかってる。
わかってる。


『そうやって俺のこと焦らすつもり?』

違う、焦らしているのはそっちのほうだ。
酷い。
でも、嬉しいって、悦んでる誰かがいる。
いっそ僕の中の誰かが言ってくれたらいいんだ。

『はやく、』

急かす声と同時に、貴方の親指の腹で撫でられる。
ぐりぐりと、円を描きながら、撫でられる。
それはそれで気持ちよくて、腰が動いてしまいそうになる。
そしたらすぐに指が離れて、虚しくなる。
せつなくなる。

もう、ダメだ。

『ユノ、口でして、』

まだ、ダメみたい。
貴方の唇が、ダメって笑ってる。
腹が立つ。

『っ、…ユノの口で、して欲しい、』

『してっ、早くっ、』

『早く、も、我慢できないッ』


こうして段々と、貴方の言いなりの体になっていくのだろうか。
のぞむところだ。
だって貴方はそんな僕を見てよろこぶのだから。


『あっあ、あ、あぁっ』
直接的な刺激が急に体を走った。
貴方の唇と舌が這っている。
包まれて、吸われている。
強く強く吸われて、すごくよかった。
気持ちよかった。
きっと今の僕の顔は、よろこんでいる顔でしかない。
惚けていると思う。
腰が動いてしまう。
もっときもちよくして欲しくて、きもちよくなりたくて、
動いてしまう。
貴方が出す音と、僕が動くから出る音で、部屋のなかがびしょびしょに濡れる。
バカになっている。
でも、こうしていたかったんだ。
二週間、本当に辛かったんだ。
だから二週間、今度は貴方とこうしていたいくらい。

『ユノっ、ユノっあぁ、ユノっ』

またダメだ、我慢できない。
僕の腰の動きと、貴方の唇の強さが重なる。
比例する。
吸い上げられて、飲み込まれる。
熱いものが込み上げてきて、貴方の口のなかに放つ。

僕の体は異常だ。

まだ、貴方を求めて膨れ上がっている。
脈を打っている。

目も、唇も、貴方を求めて卑しく見つめているに違いない。

目の前の白く汚れた口が笑った。


『チャンミン、』

名前を呼ばれるだけで放ってしまいそうだ。

『蛇の交尾はとっても長いんだ。』

言ってる意味はよく分からなかった。

『しばらく外に出してやれないと思う、ごめんな。』

やっぱり意味はよく分からなかった。

でもね、多分今の僕はそれを望んでいる。

僕の唇もきっと笑っている。


赤い赤い舌で唇を舐めながら。


異常な体の反応を、よろこんでいる。












次も、こんなかな…(*´-`)イイゾ!って方、押してやってください…↓
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