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ラブアンドジャスティス13(閲覧注意/CM)

『ねえユンホ君、』

『あん?』

なんて瑞々しい肌なんだろう。
お風呂上りのしっとり感が残っている。
それだけこの子の肌は若くて吸収力があるんだ。
この子の脳もそう。
ヒントを上げるとどんどん吸収して広げていく。
生徒としても、とても魅力的な子だ。


そんな肌に口付けを。


『初めての子は、どんな子だったの。』

やっぱり、知りたい。
僕よりも先に彼を知った人のこと。

『なんだっていいじゃん、』

彼は、ふいと顔を逸らして赤くなる。
唇を拗ねさせる。

『ううん、知りたい。』

腹筋も、お臍の周りも、汗すら弾くようなきめ細やかな肌。
その上を唇で滑っているのが、とても心地よかった。

『っ、』

肌が跳ねる。

『教えて、』

少しずつ下がって、彼の足の間に辿り着く。
彼のものを目の前にする。

ここはすこぶる順調に育ったようだ。

不思議なもので、僕だって男の子を相手になんかしたことがないのに既に慣れてしまっている気がする。
彼と裸の付き合いだってなかったのにね。

なんでかな。

『知りたい。今日は僕が教えて貰う側でも、いいんじゃないかな、』

大きくなったそれを、指でなぞってみる。
自分のものに触れてどんなものかは知っているけれど、他人のものってまず触らない。
だから人のものを触って得る感触というものは、実に不思議なものだった。

見上げると、彼の巨大なそれと、恥じらって唇を噛む可愛らしい顔。
巨大なそれと、顔が一向に一致しないレベル。

『ダメ?』

唇とか寄せてみる、積極的な僕。
信じられないよね、男の子のそれに触れているだなんて。

でもね、不思議なものは続くわけで、嫌だなって思わない。
きっと今日一日で彼に振り回され過ぎちゃっておかしくなっているんだ。


本当に、今日だけで何度ドキドキさせられただろう。

高校生の、男の子に。



『同じクラスの、どうでもいいやつだよ、』


どうでもいいやつ。

なんだそれは。
好きだった子ではないのか。

『お前と付き合うのに、なんの経験もないのはマズいから、とりあえず、その、』

とりあえず、済ませるだけ済ませたのか。




そうすると。

彼が僕に見せてきた、さも女の子なんて足りてて初体験がいつなのかなんて忘れた。
みたいな雰囲気は作っていたということか。

まったくもって恐れ入るばかりだ。

けれど、
一つ啄くとこんなにも脆く可愛い部分を見せてくる。

可愛い真実が現れた。

しかし、初体験はそんなに最近のことだったなんてね。

その不器用でひねくれた、そして恐ろしく可愛らしい純情。

そんなふうに感じるのは僕だけだったとしても、
それは僕が彼を好きだという証拠だろう。

この子に魅せられている。
そういうことの現れ。
酔っている。

それでいいと、思えてしまうほどに。


『ユンホ君、ありがとう、』

『なんでだヨ、』

『なんとなく、ふふ、』

『わけわかんねぇし、』



僕が女の子だったら。
いや、あんまり考えたくないけれど。

ううん、こうだ。
僕がされるとしたら、どんなことをされたいか。
そう考える。

僕だって男の子相手は初めてなのだ。

僕がしてあげられることを考える。


『ユンホ君、ヘタクソかもしれないけど、許してね。』

されて気持ちよかったことを思い出す。

『いや、ていうか、』

なにさ。
僕がするのは不満か。
聞く耳は、持たない。

僕がその気になっているんだから、今のうち。
次はないかもしれないんだから。
お互いにイヤになっちゃうかもしれないことだって、可能性として有り得なくはないもの。


『ちょ、おま、』

『ん、』

彼のものを口に含む。
言いようがない味がする。
舌触りとか、温度とか。
そしてやっぱり、大きい気がする。

『んふぅ、』

どうだったかな。
どうされたんだっけな。
ちょっと遠い記憶を呼び起こす。
歯を立てないって、どういうことだったんだろう。
彼のものに歯を触れさせなければいいのかな。
ううん、よくわからない。
女の子って、すごいね。

『う、っ、』

頭上から彼の声が降ってくる。
彼の様子を見ようと思って一度口から出して見上げてみる。
すると彼は困ったように眉を寄せて浅い呼吸を繰り返していた。

『ごめん、変だった?』

代わりに彼の天辺を撫でてやる。
ぬるぬるとしていて、光っていた。
そしてそのぬるぬるがまた濃くなる。

『ちげえよ、』
『ユンホ君?』

今度は怒ったように歯を食いしばった。
かと思うと眉の力を抜く。

『やべえ、』
『え?』

彼を撫でる手を止めようとする。

『いい、もう、いい、』
『なんで、』

まだほんの少し舐めただけだ。

『うるっせえよ、やべえんだよ、』
『お、』

つまりそれは、もうイッてしまうということか。

それなら、やめてあげない。
どうせ一回ぐらいで終わるような若さではないのだろう。

『ユンホ君、覚悟しなさい、』
『あ、ばかっ、』

大人の意地を見せてやろうと思う。

再び彼の大きくなったものを頬張る。
さっきよりもまた大きくなったかもしれない。
唇だけで彼を包むように滑る。

『ああ、』

可愛い声だ。
余裕がなくて、焦っている声。

『ん、ふ、』

しかし、本当に大きいな。
こんなものが体内に入るとか、女の子でもしんどいんじゃないだろうか。

『はあ、おっきいね、』
『うっせぇ、あ、』

口の中もどろどろだ。
イッてしまえばいいのに。
なかなかに、しぶといな。

『ねえ、気持ちいい?』

口に入りきらない分、下から天辺にかけてゆっくりと舐めあげる。
ちらりと彼の顔を見ると、またぎゅっと目を閉じて、そしてあの唇から少しだけ空気を吐き出したらしい。
こんな時も美しいんだ、この子は。

恐ろしいね。

ドキドキするよ。

ユンホ君。

言えないから、心の中で気持ちを込めて呼んでみる。

『ん、』

音にするのなら、ぬうっと音を立てていたに違いない。
彼の全てを口から出そうとする際になかなかに距離を使っているようだった。

『ぐ、このっ、』

『あっ、』

口から出し終わった時、また怒ったような顔をした彼に突き飛ばされてそのまま布団の上に倒された。

『ゆんっ、』

次の瞬間には足を大きく開かされている。
彼は肩で息をしながら僕を見下ろしていた。

『お前誰かにしたことあんだろっ、』

『お?』

そして彼はあのボトルを握りしめるように掴み取る。
逆さして僕の股間に乱暴に垂らし始めた。

冷たい。

『初めてじゃねえだろ、めっちゃうまいじゃんっ、』

疑われているのか。
心外だな。

ボタボタと重たい液体が落ちてくる。

垂らしすぎてはいないだろうか。
ドロドロになったそこは膜に覆われているような感覚だ。
指が当てられたことに気づかなかった。

『ないよ、ないからね。』

他に誰かにしたことを否定だけした。
そしたら指が入ってきた。
入口は入り切らなかった液体で更にドロドロとしている。

明日絶対にシーツを交換する人に怒られるんじゃないかな。

『う、』

指が直ぐ出ていった。
そしてアレが、やってくる。

『ちょ、』

彼は今、聞く耳を持っていないらしい。

『あ、ムリっ、』

指一本入れただけですぐに引っこ抜き、そして自分の膨れ上がったものを押し込んできた。
滑りだけは十分にあるから、入ってきてしまう。
メリメリと、開いたことがない筋肉が動いている。

『あ、ああっ、』

なんだこの漫画みたいな痛みは。
この液体を使っても痛いことには変わりないのか。

結局彼の初めての相手のことも教えて貰えてないし、
なんだか疑われているし、
ちゃんと痛いし、
なんだか僕だって怒りたくなってきた。

けれど、


『もう、あんなの誰かにしてやるとか、許さねえから、』


勘違いされているけれど、

この酷く身勝手な支配力が、

なんとも心地いいのは、

僕がどうしようもないところまで落ちてしまったということなのか。



『お前はもう、俺のもんなんだよっ、』



わかってるよ。


わかってる。


だから貴方を、

だから貴方に、

僕で気持ちよくなってもらいたかった。

それだけだったのに。


不器用な子だ。


でもね、ユンホ君。

年下と年上の温度差は、
二人で一緒に消化していけたらいいね。



とりあえず、優しくして。

僕もするから。

痛くしないで。

逃げないから。





さあ、僕の体で大人になって。























続く|ΦゝΦ)

ラブアンドジャスティス12(閲覧注意/CM)

お酒も勧められたけれど、彼が飲めないのに飲みたいとはやっぱり思わなかった。
未成年の前だもの。
それで酔ってしまったりなんかしてしまったら、自分が自分を嫌になるだろ。
彼も飲めばいいのにっていうけれど、初めて泊まった家でそこまで図々しくなんてしたくない。
後でやっぱり、自分が自分を嫌になりそうで。

しかし、彼はこんなものを食べて生きているのかと思うと言葉にならない。
刺身にも天ぷらにも化けた河豚は美味しかった。
ああ、これで本当に何かあったら僕はいくら支払って責任を取らなくちゃいけなくなるのか。
考えると恐ろしいから思考を止めておいた。

それでもこじんまりとして、けれど綺麗に掃除がされている洗面台で並んで歯を磨いていると、同棲したらこんな感じなのだろうかと栓のないことを思ったものだ。

こんな暮らしをしている子が、こちらの生活水準に合わせて生活するなんて考えられないのだが。

とりあえずまた色々と余計なことを考えてしまいそうだから、肉厚な河豚の天ぷらを思い出すことにする。
塩で食べる天ぷらはなんて美味しいのだろう。
今は歯磨き粉の味しかしないのだが。

「遠い未来」

そして彼の言葉を思い出す。

「俺の遠い未来まで、お前を絶対連れていくから。」

ものすごい力があるよね。
若いから、何言ってんのって思っちゃうところもあるけど。

若いから、力があるよね。
熱いよね。
激しいよね。
僕にはない温度だ。

この子なら、決めたのことはどんなことでも成し遂げてしまうんじゃないかなって、思っちゃう。

怖い。
素敵過ぎて、今から怖い。
この子がどんな大人になるのか、眩暈がしそうなくらい怖い。


『つ、』

冷たい。
なんだなんだと慌てて意識を現実に戻すと、彼がビチャビチャと音を立てて口を濯いでいる。

『ちょ、うんほくん、』

歯ブラシを咥えながらだから変な呼び方になってしまった。
蛇口の勢いを緩くして、備えてあるタオルで辺りを拭いた。
そして肩にかけてた僕のタオルで水滴が跳ねまくった彼の顔を拭く。

『へへ、』

へへ、じゃ、ないよ。
もう。
前言撤回。
このまま大人になったら別な意味で要介護だよ。
歩く度にいろんなものが乱れていくかもしれない。


二人で部屋に戻ると、これまた綺麗に部屋が直されていて旅館以上の待遇だ。

なんだか一日がとても長い。

ベッドの傍に敷かれた布団に座ると、彼は部屋を出ていった。

そのまま倒れ込んで横になってみる。

するとまた、彼の言葉が蘇るのだ。



「俺が男見せてやるから、黙って俺についてこい。」


すごいよね。
すごいエネルギーだよね。
これで発電したらあと十年は電気が賄えるのではないか。
そのくらい、衝撃的だった。

そんな言葉を自分が結婚相手に言うならまだしも、
まさか年下の同性に言われるとは露ほども思わなかった。

そしてそんな言葉に、心が震えて頷いているとも、思わなかった。

嬉しいだなんて思うなんて。


思い出すと、よくわからないけど泣きたくなる。

すべてにおいて、もう、何がどうなっているのかわからない。

結局僕は彼のなんなのだ。

彼氏か。

彼氏。

そうか、彼氏か。


『チャンミン、』

『うわっ!』

布団の上で全部の毛が直毛になったような驚き。
この子は本当に心臓に悪い。

『なんだよ、エロいこと考えてたんだろ、』
『ちが、』

体を反転させると白い歯を見せて笑う彼が居た。
その顔がまた、可愛いんだ。
そして僕は反撃ができないまま溜まり込む。
彼は僕の布団の上に座ってきた。

『どこにいってたの、』
『ん、適当に寝るからもう誰も来るなよって言ってきた、』

あからさま過ぎる。

まあ、男女のお泊まりだったらそうなるけれど、家庭教師が泊まりに来た程度では周りの大人達はそうとは思わないかもしれない。

なんだっていい。

どうせ今夜からは逃れられないのだ。


頭の中でまたブツクサと考えていると、唇に柔らかいものがやってきた。

彼の唇だった。

歯磨きの後の、キスだった。

彼はそのまま僕の肩を掴み、布団の上に押し倒してくる。

ああ、もう、逃げられない。

僕の上に乗って、真上からキスがやってくる。
本当に上手だなって、やっぱり思う。
溶かされる。
目を閉じて、委ねる。

吸って、離れて、追われて、取られる。

彼は僕を追い詰めるようにして口内を潤す。
酸素の残量を忘れてしまうくらい、夢中にさせる。
離れた際に見える間近で見る彼の顔もまた、可愛くて。



『いいんだよな、お前がいいって、言ったんだよな。』

それは、寝る前になったら抱かれてもいいってことだろう。
確かに言ってしまった。
あのままあの時致していたら大変なことになっていたのだ。

言ってしまった。
けれど、仕方ないなというより、まあ、いいかなというところまで思えるようになった。

男の人となんかしたことはないけど、
それ以上に、
僕の気持ちが彼に傾いているということなのだろう。

『はい、』

返事をしたら、またキスをくれた。





『ここ、使ったことって、』
『あるわけないじゃないですか、』

浴衣を捲りあげて、足の間を指さしてくる。
こういうがさつなところはまだまだ要成長だろう。

『へへ、』

そして何故喜ぶのかわからない。

『一番、貰い。』

嬉しそうにそういうと、彼はある場所に手を伸ばした。

『脱げよ、』

思うよ。
僕だったら女の子にする時は脱がしてあげるね。
もう、この子は。
なんとなく恥ずかしくて、浴衣はきたままだ。
下着だけ外すとなんとも緩い反応を示していた。

彼は何かのボトルを手にしている。

『足、開いて、』

この子は自分で脱いだり開いたりするって相手の恥ずかしさを全く知らないのか。
セックスのテクニックだけで渡り歩いて来たのか。
可愛くない。
気遣いだってテクニックのひとつなんだぞ。
なんて言うともう部屋から一生出られない気がして言えやしないのだが。

仕方がないから足を開く。

『もっと、見えねえし、』

見るとか言うな。
ダメだ、この子に世の中の女の子を任せられない。
相当ドM体質でないとやっていけないのではないか。

足を大きく開くと、その間に彼が顔を寄せるように近づく。
僕はもうその様子を見ていられなかった。
顔を逸らして目を閉じた。
更に枕を引き寄せてそこに顔を押し付ける。

『ひっ、』

視界を遮ったことがいけないのか、よかったのか。
急に足の間に冷たいものが当てられた。
いや、垂らされたのか。

『あ、わっ、』

出ていくばかりの器官に何かが入っていく。
ぬるぬるとした感触がとても強い。
冷たい。

『どう、痛い?』

『いや、びっくりしたけど、痛くは、ない、かな、』

ちらりと枕の影から視線を覗かせて見ても角度的に彼の姿は捕らえられなかった。
遮ったことが裏目に出たか。

『あ、ああっ、』

そんなことを考えていたら、ブチュブチュとおまり美しくない音が響いた。
何かを押し込まれている。
多少の圧迫感を感じる。

痛いとか言うよりは、なにか、変。

今までに味わったことがない感触だ。

ていうか、いきなりお尻にいくのか。
もっとこう、しっとりと抱き合って気持ちを高めあっていくとかないのか。

それが夕飯前のあれだとしたら、ダメかもしれない。
彼への教育が必要かもしれない。

『ん、んんんっ』

中に入ってきたものが動いた。

『痛い?』

『...痛く、ない、けど、』

また枕から少しばかり覗かせると、今度は彼が覗き込んできて目が合った。

『ゆんほくん、』
『あん?』

今、自分がどんな顔をしているのかはわからない。

『いきなり、なの?』
『なにが、』

彼が手を舐めた。
もったりと垂れる雫を舐めた。
あの舌がそれを舐めとる。

不覚にも、きゅんとした。

『あんだよ、』

『うん、...いきなり、いれちゃうの?』

すると彼は瞬間的に顔を赤くさせた。
薄暗くてもよくわかる赤面度数。



『だって、俺だって男は初めてだし、』

うん、それはなんとなくわかってたけど。

『一回しただけだしっ』

なんだって?




その回数に驚いたというより、
それじゃあ今までのあのキスのセンスはなんだというのだ。

逆にそれまでのどうしようもない具合は酷く納得はできた。

けれど、僕に負けない部分をセックスと言い張った(照れてたけど)あれもなんだったのだ。


なんだろうな。

初体験が済んでしまえばもう一人前な気持ちでいられたということか。
わからなくもないけど。
いつまでも童貞かしら、なんて思っていた昔の自分も居たわけだし。


プロポーズはできちゃうけど、セックスは二回目っていう。
この、アンバランスな具合にまた眩暈がしそうだ。


唇を突き出して黙る顔も、また可愛い。


それとね、


貴方の貴重な初体験の相手になった女の子に少しヤキモチ妬いちゃうよ。



『ユンホくん、』


『......、』



『ユンホくんの初めて、僕が貰いたかったな。』

『そんなもの見せられっかよ、』


そうじゃないの。
そんなものだから、見たいの。

好きな人の初めてだもの。

『僕だって男の人とは初めてだよ。』

『俺だって、そうだし、』

まさか僕がこっち側だとは思わなかったけれど。

『ねえ、』

『あんだよっ、』

そんな顔しないで。


『ゆんほくん、やさしくしてね、』

『...、』


やり直し。

お互いに大好きなんだから、
お互いに好きって思いながらやり直してみようよ。


『キスして、やさしく、いっぱいして、』


虎の子から子犬のような顔になった彼もまた、可愛いものだ。






キスが始まると、また大人の彼が顔を覗かせる。


一進。

一退。

そしてまた、一進。



やるって決めたのなら、僕だって今夜は逃げないから。



貴方の二回目を、
たくさん気持ちを込めて、


僕にください。






















13に続く‖Φ_ゝΦ)

ステイウィズミー15(閲覧注意/U)

押し倒して、それからはもう止まらない。

チャンミンの長い腕は俺の背に絡みつき、名前を呼んで目元を濡らす。
喉を震わせて鳴いて、そして自ら濡らして俺を飲み込んでいく。
男の中でも稀有な肉体の持ち主だと思う。
そんな体に翻弄されることは、幸せなことだとも思ったわけだが。


『ああ、』

部屋に充満した甘い喘ぎ。
この交わりがなにものでもなく、ただの恋人同士のものだということを思うと堪らなくなるのだった。
初めて抱いた時は「買わされた」ようなもので、二度目は払い過ぎた分だと言って金銭のやり取りはなかったものの、「買ったうち」に入っていたものだ。
その時点ですでに互いのなかに、互いがいたのだ。
だから俺達は三度目がなかった。
常連にはなれずに終わったのだった。

『んん、ユンホ、ああ、』

悩ましげに眉を寄せる。
唇を噛んで声を閉じ込め、そして耐えきれずに吐息を漏らす。

『はああっ、』

痙攣を起こしているかのように、肢体が震える。
その震えに声が乗る。
仰け反った背筋と首筋。
その角度が高くなった時、白く果てる。

『やだ、まだ、』

それでも終わろうとしない。
この繰り返しも何度目だろうか。
細い体にはとんでもない性欲が潜んでいたらしい。

『ユンホ、』

そんなふうに呼ばれて応えないではいられない。

『きもちいい、』

それはもう、今夜だけでもたくさん耳にした。

『きもちいいよ、ゆんほ、』

この男は、男を喜ばせることがうまい。
稼いできただけあるのだが、それともまた少し違う。

『あ、ああ、やだ、まだおわらないでねっ、』

離さない。
終わりに向かわせない。
俺の欲を引き出すのがとても上手い。
ぐらぐらとした欲のなかにある、もっと深い欲に手を伸ばしてくる。

『ゆんほっ、こんどは、なかに、』

暗闇のなかのその煌めきは、
涙なのか、汗なのか。

『あ、あああ、いやだっ、なかでしてっ、』

中でしようが外でしようが、俺達がどうなってしまうわけでもないというのに。

この男は。

どうしてこうも俺を煽る。

『いや、や、や、あああっ』

嫌なら腰を振るな、
喘ぐな、
甘えるな、
求めるな、
煽るな。

『いく、いくいくっ、ゆん、』

手のひらで求めてくるな。

それを愛だと、思わずにはいられないだろう。

『んんんんんっ』

それが愛だと思っているけれど。

『ゆんほっあああんっ』

俺達は犬か。
着床しないのがいけない。
だから延々と腰を振るしかできないのだ。



体と体の間には、

紛れもないなにかがあるからこその行為だが。


金じゃない。

今度は愛だと、言いきれる。


与える方も、与えられるんだ。
与えられたから、与えるのだ。
与えられたいから、与えてみるのだ。


『いくぅっ、』


いくな。


この夜は、いう必要がない。


色んな意味で、必要がない。



『いっ、く、あああ――――』




好きなだけいったらいい。














長い一日がようやく終わる。

最後に目覚めてからちょうど一日が経ってしまうのではないだろうか。

汗くさく、獣臭いまま、狭い寝台の上で大人二人が横たわっている。

すっかり落ち着いた呼吸器たち。
汗も引いて外気の冷たさを感じる。

上掛けを引っ張って二人でさらに寄り添って、長い長い睫毛を横から見つめることになる。
大きな瞳を守るための睫毛だ。
明らかに俺とは違う造り。
それだけで愛おしく感じられるから困ったものだ。

『ユンホ、』

疲れきって、でも穏やかで、そして優しい声だった。

『お願いがあります。』

眠たそうで、でも煌めいて、そして強い瞳で見つめてくる。

『やっぱり、僕を買って欲しい。』

横に線を引いたようなその唇が言う。

『今度は何が欲しいんだ、』

そしてその唇は、少しだけ緩んで微笑んだ。

『うん、』

上唇を噛んで、睫毛を伏せて、照れて笑う。

『僕をあげるから、全部、ぜんぶぜんぶ、あげるから、』

また、手と手を重ねる。
上掛けの下で、手のひらを合わせるようにして重ねる。

絡める。

握り合う。

『貴方の未来に、連れてって。』

ゆっくりと瞼を閉じて、開く。
閉じた際に水気を連れてきたようだった。

目尻が花咲く。

淡く、儚く、そしてこの世のなによりも、美しく。

『ゼロに戻れたの。だから、今度はまた歩き方を考えなくちゃいけないの。』

連れてきた水気は涙になって寝具にこぼれた。

『僕はここにきた、半分は僕の足で。』

雨水が蒸留されていくように。
そして源泉から滾滾と湧くように。

この夜で、いや、この明け方に世界中で一番美しい涙が産まれる。

『半分は、やっぱり貴方に導かれた。』

絡めた指先が震えていた。
寒いからじゃない。
この震えは、心の震えだ。

『ねえ、ユンホ、僕の一生は貴方に捧げる。』

魂の震え。

『僕は貴方を選んだことが、なによりも大事なの。』

夜が震える。

『貴方を選んだことが、僕の人生の答えの半分だ。』

朝に震える。

『だから、だからね、』

手を握り直す。
その震えを、もっと感じたくて。

『なんでもするから、貴方の未来に連れてって。』

また、娼夫のようなことを言う。

『僕を買って。なんでもする、僕の一生をあげるから、お願い、ユンホ、』

どこまでも、俺を煽る。

『お願い、』

俺の人生最大の欲を引き出す。



『チャンミン、』

泣き崩れていた。
感情が昂ってしまったのだろう。

可愛いものだ。

『世話をされたい、』

従順な部下か。

『誘われたい、』

紫色の誘惑か。

『添い遂げたい。』

心は咲くか。

『そういうもの、全部全部、お前にぶつけたい。』

魂は鳴るか。

『そしてお前と剣と、運命を共にしたい。』

共鳴。

『いくな。』

共存。

『そばにいろ。』

共闘。

『お前はもう、俺のものだ。』

これらを何と言うか、考えた。




『返事は?』

『はい、』


考えたら、満たされた。

勝手にこの男の道を作ってしまったことを詫びようとさえ考えてもいたのに。


『愛してる。』

『...はい、』

謝れそうにない。
謝りたい気持ちなんて、消えてしまった。


『もう、どこにもいかなくていい、』

『はい。』


決めつけられて、喜んでいるのだから。

これが成立しない関係だとしたら、

それは共犯。



『ここにいろ。』

『はい、』


『いったら一生、許さない。』

『はい。』




これらを何と言うか、考えた。

そう、


運命の共同。





この体、運命共同体。




















ステイウィズミー





本編完

ステイウィズミー7(閲覧注意/U)

「好きな人にするみたいに、」


つまりそれは、

恋人とするように自分は抱かれたいということか。

開かれた足は細く、けれど美しく締まっている。
絡めた指と手はそのままに、足の間に入り暫し唇や首を食んでやった。

『ちょっと乱暴なんだね、』

誰かと比較したことなんてないから、自分から与える口付けがどの程度のものなのかなんて知らない。

『でも、優しい。』

優しくなんかない。
乱暴だと言ったくせに。
よくわからない男だ。

『わかるよ、貴方はちゃんと優しい。』

それは誰かと比べているということか。

『ふあっ、』

少しだけ悔しくなって、肌に歯を立ててやった。
薄闇の部屋の中、湿る目元が光った。

『もっと、』

絡めた手に力が入る。
力を入れて、強請ってくる。
唇から離れて、胸に降りた。
小さいけれど硬く尖らせる胸のそこに噛み付く。

『く、ん、』

吸い付く。

『あ、やぁ、』

嬲る。

『はあっ、』

濡れたものを押し付けて声を上げてくる。
胸はとくに感度がいいようだ。

濡れたもの同士を擦り付ける。
チャンミンはこの薄闇のなかでも頬を染めて唇を噛み締めて見せた。

『最初の日も思ったけど、…大きいんだね、』

それについては同僚同士の間でもふざけ合いながら比べたものだ。
だから自分がどれ程のものかは知っている。
擦り付けているチャンミンのものよりも大きい。

『ふふ、嬉しい。』

自慢するようなことでもないのだが、喜ばれると悪い気はしないものだ。

体を反転させる。
俺が下になり、チャンミンを上に乗せる。

『くぅっ、』

背中を浮かせて唇を胸に寄せる。
そしてまた、胸を噛む。
押し付け合うものがぬるぬると音を立てる。
押し付けてくるのはチャンミンだった。
擦り付けて、腰を揺らしてくる。
強請るように、欲しがるように。

『んふ、ん、』

背筋を反らして、体を震わせて、甘くした声を漏らす。

さらに片方の胸には指を這わせる。
突起を摘んで、力を入れてやる。

『あああ、』

とことん胸に弱いようだ。
喉を震わせて鳴く。

『あ、ユ、…ホ、』

腰を揺らし、さらに後方で擦り付けるようにしてきた。
俺を中へと導くように。
誘うように。
腰を揺すって音を立ててくる。

『ん、』

腰を揺らしながら俺を見下ろしてくる。
見下ろして、目を閉じて、唇で鳴く。
濡れて奏でる。
手が伸びてきた。
股ぐらに手を下ろして俺を掴んでくる。
そして濡れるそこにあてがうのだ。

『ごめんね、待てない。』

チャンミンはそう謝ってくると、前戯もそこそこに手で支えたそれを押し込み、腰を静かに下ろしてきた。

慣れている。

力まずにすんなりと俺を受け入れようとする。

受け入れる。

『ああああ、』

溜息に乗せたような声だった。
そんなふうに形成されたが如く、全てを飲み込んでいった。
俺の方が余裕がない。
強い何かにまた、苛まれる。

『すご、い、』

嬉しそうに体を震わせる。
睫毛も、唇も、指先も。

『……、ねえ、』

肩の先も震えていた。

『好きな人は、いるの?』

いたら同僚と色街にだって来なかった。
少なくとも、特定の存在がいるのだとしたらこんなところには来ない。
その存在以外に受け入れることは有り得ない。

『いや、いない。』

いないと否定して、少しだけ違和感を感じた。

『そう、ふふ、』

嬉しそうにされる意味も、よくわからない。

チャンミンはまだ動かずに、咥えたそこを楽しむように「中でだけ」動いた。
内壁を締めたり緩めたりして楽しんでいるのだ。

慣れている。

だから、訊いたんだ。

『好きなのか。』

この仕事が。
付け加えるのを忘れてしまったが。

『うん、』

訊いたつもりの趣旨での返答だったことにする。

『好きだったわけじゃないけど、これは好き。』

返答の趣旨が追えなかった。
咥えたまま、腰を揺すってきたから。
一瞬で大きな快楽を見た気がした。

『あなたのこれは、とてもすき。』

揺する度に吸い取られる。
全てを。
吸着する力がとても強い。





『すき。』




その声に、改めてチャンミンの姿を下から見上げた。
背筋を逸らして顎を上に向け、そして目を閉じていた。

美しいと思った。

胸が鳴るということを、今知った気がした。







『おれも、』






この男のなかが好きだ。
今までのどんなものよりも、好きなのだろう。

好きだ。

この男の、この体が。


『すきだよ、ゆんほ、』


好きだ。

この男の、この声が。


『すきなの、ゆんほ、』


好きだ。

この男の、この瞳が。




『好きだ、チャンミン、』



『すき、ゆんほ、すきだよ、』




悔しいと思ったこと。
嬉しいと思ったこと。
好きだと思ったこと。

そのひとつひとつの理由と、
根底にあるひとつひとつがなんなのかを、

探そうとして、

諦めた。

けれどまた、思ったんだ。


俺に会えなかった悔しさの理由、
俺に会えて嬉しいと感じた理由、
俺に向けて今好きだと言った理由、

知りたいと思ったんだ。


『チャンミン、』


美しい肢体が揺れる。
汗ばんだ肌が薄闇の中で煌めく。


互いの素性も知らない関係だ。

それでも知りたい。
だから知りたい。

身の上のひとつも知らない。
それなのに惹かれるのは何故なのか。

好きだと感じられるのは、何故なのか。


『ゆん、…は、あ、んんっ』

寝台が軋む。
自ら揺すり動く。
気持ちいい。
だが、まだ足りない。

『あっ、』

二度目の反転だ。
一度抜いて、チャンミンの体を下に敷く。
それから引き寄せて足の間に入り直す。

『やっ、あ、ああああっ、』

少し、強引に。

『あ、は、』

背筋が浮いて、胸が高く起つ。
胸の上にある粒が、緊張しきってこぼれ落ちそうだった。
舐めてやりたいと思った。

こじ開けた足の間から中心に向けて突き刺す。


止まらなかった。
心に熱を持って、衝動に任せ動く。
無心だけれど、その心にはもう、組み敷いたこの男がいる。

売り買いする関係だけに、心を燃やしてしまった。

『ゆん、っ、んんんっ』

長い足で俺の背を抱くように押し付けてくる。
器用なものだ。




『いや、あ、いくっ、』



何度でも行ったらいい。

何度でも連れ戻してやろう。

何度でも言ったらいい。

何度でも返してやろう。



『いく、いくいくっ、』


『っ、ああっ、』







一度果ててしまえば、あとは枯れるまで勃たせてまた始まるだけだ。
そこにはもう、恥じらいもなにもない。

互いにしたい姿で求めあった。

貪る。

勃てたそれを、貪る。

嬲る。

けれど、心は燃やして。

光は灯して。

最初に惹かれた光。

瞳の、光。

今は快感と歓喜に湿られせて光らせているけれど。

その光ときらめきをずっとずっと見ていたくて、
俺は朝が来るまでこの男を求め続けた。



朝には行かなくてはいけない。

戻らなくてはいけない。

甘い朝はきっと少ない。











息も絶え絶え。

その少ない朝がやってくる。

『すき。』

『ああ、』

色んなものに塗れた身体を献身的に拭ってくる。

『本当に好き。』

『ああ、』

背中を拭っている中で、手を止める。

『ユンホ、行かないで。』

『…行くよ、勤めがある。』

背中に唇を寄せてくる。
顔は見えない。

『また来てって、言いたくないから。』

『どうして、』

手を、胸に回して背後から抱きしめてくる。
こういう場面は、得意じゃない。

『お金での関係だけでは、本当の好きだって、きっと信じて貰えない。』

『…、』

改めて言われると、頷ける自分も、頷けない自分も、どちらも居るようだった。

けれど、会えるのはきっとここだけではない。




『チャンミン。』

『はい。』

涙で震えているけれど、素直な返事だった。

『たぶん、会えるよ。』

『どこで、』

あそこで。
お前と出逢うべきものが静かに待っているあの店で。

『すぐに解るさ。』

『イヤ、今知りたい。』

しがみついてくる腕をそっと剥がす。

『チャンミン、』

『…、』

今度は少しだけ、聞き分けがない空気を含ませていた。



『俺は約束を違えない。』

『…、』

基本的には、誰とも。

けれど、お前とは、必ず。

『今度は明るい時間に会おう。』

そのうち気付く筈だ。





帯刀する。
城に戻る為に。

背中に、
剣に、

チャンミンの視線を感じていた。


『また会おう。』

『…、』


拗ねている。
求めあっても、不確かな関係でしか朝を迎えなかったから。

仕方がないな。




扉の前で振り返る。

『チャンミン。』

『…、』



『この夜は、好きな相手を抱いたんだ。』

『っ…、』



『ちゃんと会いたいと思って、抱きたいと思った相手を、抱いたんだ。』

『…、』



『また会える。』

『…、』





『必ず会える。』

『…、』




『きっと、夜よりも早く。』

『…、』





『愛しあうのは、きっとそれからがいい。』







寝台の上、座っているけど立ち尽くすような佇まいをしていた気がする。


部屋を出た。

このまま仕事につく。

そしてまた、抜けられる機会を見つけてあの店に向かうのだ。

きっとそこに、互いを繋げるものがあるから。







確かなことは、

好きになった男を抱いた夜だということだった。

















8につづく。

ステイウィズミー6(U)

あの夜に来た時と同じ部屋だった。
特に何も無い、致す為だけの割り当てられたような部屋。
そのままの理由の部屋なのだろうが。

『今夜は、なにか飲む?』

『ああ、』

チャンミンは微笑むとやはりあの琥珀色の酒を器に二つ注いだ。
チャンミンが背中を向けたまま話しかけてきた。

『あの日はついてないなって、思ったの、貴方と目があったのに、話せなかったあの日。』

項が見える。

『貴方のような人はここには滅多に来ない。』

そんなふうに言われると、やはり俺のような身分で、俺のような年齢の男が滅多に来ないから、惜しいことをしたというだけのことなのだろうかと考える。
自分がまともな人間かと問われればその全てに肯けるかどうかはわからない。
だが、それなりに志を持って生きていると思っている。

人を人だと思って、生きている。

だから目の前のこの男にもただの娼夫ではなく人として対峙したい。

たとえ買うことになったとしても。

『やっぱりこんなところに来るような人じゃないなって、最初の夜に思ったの。』

器を二つ持って、寝台に座ってくる。
隣合って座った。

『だから二度目に貴方を見たあの夜、とっても悔しかった。』

それでも唇は微笑んでいた。
悔しさを越えた後の微笑みなのだろう。

『次はもう会えないんだろうなって、』

そう言って、器を煽り喉を鳴らした。

顎を戻して吐いた息は、たっぷりと酒気を含み、そして熱を孕んでいた。

『だから…、嬉しい。』


何故、嬉しい。
会えないと思っていた。
けれどまた、会うことができた。
だから嬉しい。

何故、嬉しい。

会えたから嬉しいのは、何故だ。

会えないことに悔しいと感じた根底にある感情はなんだと言うのだ。
嬉しいと思う根本的な部分は、なんなのだ。

兄のところで飲んだ分で、既に酔ってしまっているのかもしれない。

チャンミンはまた喉を鳴らして、そして器を空にした。

長い睫毛をしっとりとさせて、どこかを見つめる。

『あまり誰かに固執したり、執着したりしないけれど、あの日は本当に悔しいなって、思ったの。』

いつもと違った男に抱かれる機会を失ったから、悔しいのか。

そうだろう。
それ以外に何がある。
刹那の間に考え込んだ自分が滑稽だ。

この男は、娼夫なのだから。


『お金とか、そんなんじゃなくて、こんなに素敵な人といられるって、いいなって思って。』


どこまでが、仕事としての言葉なのか。
疑いしあ持てないのは、俺がこの男に興味を深く持ってしまっているからだろう。
俺の方が悔しくなっているのではないだろうか。

これだけ滑稽になれるのは、やはりこの男を愛してしまったからなのか。

愛してしまった。

その事実そのものが滑稽だ。

何を根拠に。
何に惹かれた。

瞳だ。
唇だ。
声だ。
指だ。

不確かな情報の集まりに関心が集中する。


注いで渡された器の中を、一気に飲み干す。
その拍子に一筋分を零し、乱暴に拭った。
やはり俺は酔っているのだ。


とりあえず抱いてみようと思った。
剣のことも、この男のなかに残っていた俺自身のことも、考えているだけではただ朝を迎えるだけだ。
抱いてみてまた考える。

買ったのだ。
この体を。
だから抱くのだ。

きっと気持ちはその後についてくる。

互いの気持ちが、ついてくる。




『あっ、』

寝台に細い体を倒す。
二つの器が転がって、やがて音が消える。

何度も蘇るあの声が出てくる唇を塞ぎ、両手を掴んで貪る。
押し倒して、貪る。

二人分の酒の味がする。
唾液がそのもののようだ。

『足りたのか?』
『え?』

捕らえた手首がいつの間にか手のひらを合わせるようにして絡んでいた。
寝台に押し付けたまま、手と手を絡ませている。

『あの夜は、あれで、足りたのか?』
『お金?』

『ああ、』

唾液を飲み込み、ほんの一瞬の間ができた。

『…僕を二回買えた額だった。』
『そうか、』

足りないよりはいい。
生きる瞳に余裕ができる足しになったらそれでいい。

こんなこと、聞くつもりもなかったのだが。

『ねえ、』

口付けはそれでも続いた。
まるでそれだけでもいいというように。
俺も、この男も。

『今夜は、要らない。』
『何を、』

唾液の匂いがした。
人間の匂いだ。
不確かなものを抱え合う者同士の匂いだ。

『二回分、貰ったから。』
『今夜も買うさ、』

そのつもりでしか、なかったのだから。
するもしないも、どちらでもかまわない。
もう一度向かいあえれば、その時間を買ったと思って支払うだけだ。

『ううん、要らない。』
『欲しいだろう、』

その為に体を売っているのだろう。

『今夜は、要らない。』

強さをここで感じるとは思わなかった。
存外融通がきかない男かもしれない。

『ねえ、そのかわり、』
『…、』

目と目を見る。
睫毛が長いことを改めて知ったような気がした。

『今夜は、好きな人にするみたいに、して欲しい。』

何をどうしたら、そんな抱き方をできるのか教えて欲しいぐらいだ。
これまでに心を通わせて抱いていたはずだった者達が思い出せなかった。
目の前のこの男しか、出てこない。
現在進行形であるこの男しか目に映らず、
そして記憶にも出てこない。


『ユンホ、』

そんな声で呼ぶな。

『お願い、』

愛してしまった人を、抱くことにしかならなくなるではないか。

現在進行形の、目の前の男を。

愛してしまったとしか思えなくなるではないか。








『チャンミン、』





『はい、』


また、くだらないこと言ってしまうところだった。


体を売る者に、何故売るのかなど、訊いてしまうところだった。


昼の顔は、なんなのだと、訊いてしまうところだった。


欲しがっているものを、訊いてしまうところだった。



絡めた指はやはり、同じ痕だった。

この指には、あの華奢な剣が良く似合うはずだ。

武人として話をしたいと願っていたのに。

愛するように抱くことに切り替わってしまった。

愛してしまったような気分で接することしか出来なくなってしまった。



『愛されたいなら、すべて忘れろ。』



買われるような人間だということも。
ここが何処かということも。

今までの客も。

すべて。


『はい。』


俺の中に残していった強さと美しさだけを持て。


『ユンホ、』


耳元での囁き。


『優しいんだね。』


これを優しさとは言わない。
この男は大きな勘違いをしている。


『嬉しい。』


何かのために、瞳を強くもったまま体を売り、

金ではない何かを選び、夜を駆ける。


本能を愛だと勘違いした男の言うことに従い、

嬉しいと呟いて目元を湿らす。


その心は、なんだと言うのだ。




『売っちゃったら、もう、終わりだと思ってた。』










『恋なんて、愛なんて、出来ないんだって、思ってた。』




それは夜を歩くことを、後悔していたということなのか。

それではあの瞳の強さを、なんだと言うのだ。

あまり俺を惑わすな。



『どちらにしても、自分で生きたかったから。』



どちらとは、何と何を指すのだ。



『強くいることを、形にしたかった。』


今ある強さは、なんだというのだ。


『大丈夫、貴方を知ったら、きっと強くいられる。』


俺の何を知るというのだ。


『だから、抱いて欲しいの。』


完全なる独り言だろう。
よくわからない。
それでは納得ができない。

けれど、抱くしかない。


手ぶらでは帰れない。



『ユンホ、』



再び重ねられる唇。

欲しかった唇。

蘇り続けたこの唇。

俺を苛む、魅惑の唇。




『やり直すための力を、僕に下さい。』





ひとつひとつの言葉の意味を聞かせてくれるまで、
俺はお前を求め続けなくてはならなくなる。



すべてを知ることができるまでに、


何度お前を抱けばいい。


その答えを、俺に売ってくれるのか。











すらりとした、細い足が開かれる。





今夜の俺は、この間に入り込むことしかできない。

答えを聞くよりも先に、ここに入らなくてはならない。





知れば知るほど、俺を苛み、そして悩ませる。


愛が買えるのなら、どんなに楽になれただろう。

















7に続く
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