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ヨウモノB(閲覧注意/U)

絡まったまま動かなかった。
俺たちの中にいる、白いヤツら。
時々首だけが動き、絡まって繋がったまま動かない。
なかなかにグロテスクだ。

なんて考えていたら二匹で睨むようにこちらを見てくる。
意識まで読んでいやがるらしい。

ぐったりと横たわるチャンミンの体を起こして互いの体を互いの支えにする。

『大丈夫か?』

うんと、頷くけど、すぐに否定した。
俺も同じ。
大丈夫だけど、ダメらしい。
まだ、ダメなようだ。
まだぐるぐると吐き出せないモノが多く残っている。

後ろから絡まったヤツが紅い舌を出して俺を見てくる。
クソ重たい俺の腕が動く。
ああ、やな感じ。
お前俺のこと動かしてるだろ。
お前だって酔ってるくせに。
チャンミンの体をうつ伏せにゆっくりと倒す。
その背中に覆い被せるように俺の体も後を追う。
背中から抱いて、チャンミンや足の間にそっと指を潜り込ませる。
背後から、入れるために。
まったくもって人体の不思議ってやつだな。
中指をすんなり飲み込む。
ちょっと気持ち良さそうな声まで上げて。

もういいや、入れちゃおうと、思った。

いつかみたいに、チャンミンの片足を上げて。
二つの体を横にして後ろからぬっと入れてやる。

『んぁ、あ……はぁ…』

顎を突き出すようにして喉を反らしてくる。
うっとりと声を漏らしてくると、こちらもさらに煽られる。
こういう為にある器官じゃないのに。
ここまでくると、人体の不思議というよりお山の不思議にすら思える。
白いヤツらといい、チャンミンとの出会いといい、体の具合といい、
…俺たちの望むモノといい。
本当にお伽噺の中にいるみたいだ。
押し込むだけ、どこまでも入っていってしまいそうな感覚。
ずぶずぶと奥の奥へと飲み込まれていく。

『あぁあ、あ、はぁ、』

反らされた喉から声が漏れる。
首筋から汗が流れ落ちたのがわかる。
お前の脇の下に腕を回して肩を抱く。
もう片方の腕は窮屈そうに反ったお前の生殖器を捕まえている。

俺といる限り、役目を果たせない、モノ。

『く、…の、…ゆの、』

俺が奪った、お前の性別上の権利。

『んん、ぁ、ゆのっ、』

その代わり、その運命はちゃんと担うから。

『ゆのっ、ユノ、ダメだっ、』

何が?

ーーユノのバカーー

何だって?

ーーそんなふうに一度も思ったことなんか、ナイのに!ーー




チャンミンの声が色んなところから聞こえてくる。
白いヤツらは相変わらず絡まったままこちらを探るように見ている。
ああ、それも白いヤツらのせいなのかナ。
お前らが、流してくるんだろ?
チャンミンの声を。

『違うよ、ユノっ』

どっちが外と内の声だろう。

フイ、と白いヤツの片方がかぶりを振る。
まただ。
また、動かされている。
握ったチャンミンの生殖器に与える動き共に腰を突き上げる。

『あぁっ、ユノ、違うの、』

深く突き刺した場所が酷く濡れる。
入り口から溢れたモノが無様な音を立てている。
握ったモノも飛沫を撒き散らしている。
繋がったまま、チャンミンは俺に何かを訴えようとしている。
聞かなきゃ。
けれど動かされている俺の体は動きを止められなかった。
ああ、わかんナイ。
動かされているからなのか、気持ちいいから止まらないのか。
どっち?
ごめん、チャンミン。
ごめん。

『はぁ、…あ、もうっ、キミたち、』

ーーみんな、話を聞いてよっーー

チャンミンが怒った。
酔っぱらってるのは俺もお前も変わらない。
けれど抗うように尻をすぼめて、ソレを掴む手を止めてくる。

やっと俺の動きも止まった。
繋がったままではいるけど。

『僕は、これでいいと思ってる。』

外側の声だ、ちゃんと、喉を通って唇から出ている声。
俺の耳に直接入ってくる声。

『奪ったとか、奪われたとか、そんなんじゃなくて、』

訴えるために喉がまた反らされる。
ぎゅっと瞑った目から色んな涙がこぼれてる。
もったいないから、舐めてみた。
大丈夫、ちゃんと聞いてるよ。

『僕は、僕の役目は、っ…』

嗚咽で言葉を遅らせる。
大丈夫、ゆっくりでいい。

『権利とか、そんなんじゃなくて、』

訴える横顔はとてもきれいで、やっぱり舐めていた。

『僕は、ユノが求めてくれる形の僕でいることが、僕の役目なんだっ』

なんだよ、俺次第かよ。
どんだけ俺は偉いのサ。
これも、聞こえてる?

『…聞こえてるよ、ユノ、』

じゃあ、泣かないで、ごめんネ。

白いヤツらが二匹で見ている。

『ユノのために生きられるなら、』

言わされているんじゃないよネ。

『それが僕の求める僕なんだ、』

大丈夫、これはチャンミンの意思なんだ。



そっか。
じゃあ、聞いて欲しい、チャンミン。
お前らも。


『チャンミン、』
『はい、』

グズグズと、鼻を鳴らしてべそをかく。
繋がったまま、できるだけチャンミンの体を優しく抱き締め直す。
包む。
心も、記憶も。
俺が包む。

『お前の記憶がなくなったこと、俺のせいだったらいい。』

そんなふうにすら、思う。
あんなふうに、チャンミン、お前が言いきってくれたから。

お前が俺のために生きようとするのなら、そんなふうに思うんだ。

『お前って人間を、俺のために再構築させようとしていたとしたら、』

そう、俺のために、俺とお前をひとつにさせるために失くさせたのだとしたら。
それならそれで、いいと思ってしまったんだ。
今。

『ひとつにさせるために、二度もゼロにナニかがそうさせたのなら、』

鼻先同士がぶつかる。

『どこかで失くしてきたモノと心のかわりに、』

体の線が消えていくような感覚。

『お前に降りかかるすべてを引き受ける。』

俺たちの肌に浮かぶ鱗を重ねあう。

『俺のこれからすべてをかけて守ろうと思うよ。』

それが俺の役目なんだ。

『聞こえた?』

届いた?

『うん、聞こえた、届いたよ、ユノ』

だから、

『失くした事実は俺を恨め。』

そのかわり、

『増えたモノと、芽生えたモノには、』

俺と一緒に、

『よろこんで欲しいって、思うんだ。』

俺を愛してくれるのならば。

『届いた?』

失くした代価は、俺がすべてをかけて担うよ。

『うん、』

俺はお前を求めないことなんか、ない。

『うん、』

俺はお前が、俺を求め続けてくれること、求める。

『うん、』

欲しい?

『うん、』

俺たちの、

『うん、』

もうひとつのナニか。

『欲しい。』

ーー欲しいよ、ユノ、欲しい。ーー






白い世界が緞帳のように降りてきて、また広がる。
もったりとして、重苦しい。

今夜が最高に濃くて、黄みがかってさえいる気がする。

薄かったものが、体を重ねるごとに、物語が進む度に濃くなってきた。
一枚一枚、乳白色の幕が重ねられてきたみたいに。


始まってしまったお伽噺。
今まだ、その途中。
いや、終わろうとしているのかもしれない。

それは素面の時に考えるヨ。




ひとつになって、融合する。
タネを残す。
植え付ける。

行為だけでも、俺たちの望む想いだけでも残そうと思ったんだ。

だから俺たちは交わる。

まったく意味がないことも、ない気がしてきた。



『ユノ、あぁ、あっあっあっ、』

残すために動き出した。
お前を抱く腕に、お前の手が重ねられて、そこからまた体同士が線を無くす。


孕む?
うん、孕む。

ほんとに?
さあ。

なんだよ、それ。
ふふふ、

できたらいい。
そうだね、

覚悟はもう、あるから。
うん。





残すために、放つ。
それを受け止めるために、許す。


ぐらぐらの意識と体は、朝日を感じるまでまぐわった。

白いヤツの片方が、腹を艶かしく淡く光らせるのを遠くに感じながら。


なんだよ、自慢かよ。


言ったところで、意識が飛んだんだ。






でも、今となっては悪い気分じゃない。



チャンミンの、すべてがようやく腕のなかに来てくれたような気がして。












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