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ヒビコレパルフェ(閲覧注意/後編/CM)

夏休みが終わって、無事に学校からも許可が貰えたんだ。
その時は本当に嬉しかったっけ。
両親の許しを得ても、学校から貰えなければダメなものはダメだもの。

許されない仲を、どこまで世間に認めてもらえるか。
それが僕の壁のひとつひとつになるのだ。
僕と彼の間に聳(そび)えるものを、ひとつひとつ皆に頷いて貰えるように。
そしてその壁を僕が壊したり登ったりすることを、許して貰えるように。


許されたい。

彼との仲を。

認められたい。

彼との関係を。

今はまだ、許されないもののほうが多いから。


この人と、

こんなふうに、体と体を、求め合うことも。















『あ、んん、』

剥かれた体の上を彼の唇が這っている。
ドキドキするのも忘れてしまうくらい、彼は最初から全力だ。

僕ばかりにパフェを食べさせて、彼ばかり僕を食べている。

『や、待って、』

まだ、洗っていない。
秋だけれど、働いている間は二人とも汗だくだ。
彼はともかく、自分の体が汚れたままなのがとても気になる。

『どうしたの、』

聞きながらも、それでも彼の唇と舌は僕の胸を行ったりきたりしている。

『お風呂、入ってな、あぁ、』

胸を噛まれた。
僕の薄っぺらい胸に歯を立てられた。

『あぁ、あ、ひんっ、』

それから舌先で胸の天辺を舐め取られる。
それがとても気持ちよくて、すべての力が奪われてしまうのだ。

『チャンミンは、声がよく出るよネ、』

そんなこと誰かと比べたことなんかない。
自分がどんなものなのか知りたくもない。
恥ずかしいだけだ。
言わないで欲しい。

最中の彼は、意地悪だ。

『いい、このままでいい、今日は、このままのチャンミンがいい。』

そしてその意地悪に押し通されるのだ。
僕は拒めない。
跳ね返せない。
反論したら嫌われるとか、そんなんじゃなくて。
彼がそう言うのなら、それでもいいやって思ってしまうのだ。

いつだって、彼の勝ちで、僕の負け。

胸の上が軽くなる。
ふっと目の前を彼の頭部が横切ってまた消える。

『あっ、』

頭を持ち上げて探そうとすると、一瞬でそれが不可能になった。

彼の頭部は、僕の足の間にいたのだ。
視界に入る折り曲げて上げられた僕の足。

『ちょ、やああっ、』

自分の腰が浮く。
物凄い吸引力に襲われた。
その瞬間は何が起きたのかさっぱり分からなかった。

『や、らっ、ああ、あっ、』

彼にいきなり貧弱な僕のそれを食べられてしまったのだった。
悔しいけれど、もっと大人になっても彼のように発達するとは思えなかった。
そう思うと、女の子相手にはいつまでも自信が持てなかったかもしれない。

彼以外との予定はもう、ないけど。

さんざん体から胸から煽らていたので、既に僕は大きくなってしまっていた。
大きくなっていても、とても彼には敵わない。

もう、よしとするけれど。

やっぱり何をどうしても、彼と対峙していると恥ずかしくてしんじゃいそうになる毎日でしかなさそうだ。

彼の動きはひとつひとつが力強い。
口でも、指先でも、腰でも、なんでも。
時々僕は壊されてしまうんじゃないかって思う。
粉々にされて、それでも愛されてしまうんじゃないかって。

『あああっ、』

空気なんか既にない状態でぎゅっと吸われる。
そんな中で舌がまとわりつく様に這うのだ。
見たこともない生き物に襲われているような気分だ。

『やらっ、出るっ、出ちゃうっ』

胸だけでもあんなに高ぶってしまってたのに、こんなところを直接どうにかされてしまったら、さっさと達してしまうじゃないか。
こらえ性がないって、笑われてしまうんじゃないか。
そんなのイヤだ、恥ずかしい。

イヤだ。

けれど、気持ちいい。

これはどうにもならなかった。

だって、気持ちいい。

『あっあっ、ヒョンっい、』

舌と口内で揉まれる僕のそれは悲鳴を上げて喜んでいる。
でも、限界だ。

『んんあああっ、』

吸い上げられるままに、僕は吐き出した。
吐き出したのもわからないくらい、綺麗に「持っていかれた」のだった。
一滴も零さない。
彼は綺麗に僕を飲み干した。

いつもなら、テーブルにスープだってこぼすのに。

そして、放心。
強烈な快感に僕の肢体は床に投げ出して動けないでいる。
足も床に降りて、大の字で横たわっている。
足の間に液体が伝う。
それがなんなのかは、わからない。
冷たいのか暖かいのかわからない。

『ん、』

もう少しぐったりしてたかったんだけれど、足の間で何かを感じた。

『わ、あっ、』

ヌルッとしたなにかを感じた。
足の間にどんどん入ってくる。
体の内側に、入ってくる。

『あんんっ』

当たる。
すぐにどうにかなってしまうそこに、何かが当たる。
指だ。

『はっ、』

慌てて足の間を見ると彼のあの綺麗で長い中指が埋め込まれていた。
改めて見ると、とても不思議な光景だ。
長時間は見ていられなくてすぐに目を逸らした。
手で顔を覆って、恥ずかしさを消そうとする。
消えてはくれないのだけれど。


ちゅぷん、

変な音がした。

そして、

ずぶり、

重たいものが入ってくると同時に、そんな音が聞こえてきた。

また膝で折られて足を上げられる。
足の間に彼の体が入る。

『あああ、』

そして力強く、腰がぶつかってくる。
僕のなかに大きな大きな杭が入ってくる。

膝が天井に向かって立ち、股関節が大きく軋む。
腰を強く掴まれて、僕の中心に彼の鉄槌が打ち込まれる。

目の周りが、かっと熱くなった。

ダン、ダン、と音を立てて叩きつけられる。
この音は骨が言っているのだ。
ぶつけられて骨が響いている。
最初から全力をこられる。
すごい衝撃だ。

『ヌルヌルのくせに、きつい、』

変なことを言っている。
それが僕のことなのかいうことは、知らないままにしておく。

ああ、お腹が彼でいっぱいだ。
お腹のなかを工事されているような衝撃だ。

『チャンミン、やっぱすげえ、』

何がどうすごいのか、さっぱりわからない。
自分だって、すごいのに。
大きさも、テクニックも、ものすごいのに。
僕の何がいったいすごいのか、さっぱりわからない。

『よくこれだけ俺に慣れたよネ、』

そう言って彼は動きを和らげて、ゆるく前後に動き水っぽい音をわざと立ててくる。

ちゅぷ。

ちゅく。

ぷちゅ。

耳を塞ぎたくなるような音だった。

『わかる?チャンミンが濡れてるからこんなになってるんだ。』

ちゅぷ。

まだ、続いている。

くちゅん。

その音だけで鳥肌が立ちそうだ。
恥ずかしいのに、音で気持ちよくなっているだなんて。
イヤだ、そんな自分認めたくない。

『俺に馴染んだ証拠だ、』

『んあっ、』

今度は少し大振りになかを抉る。
掠る。
そこに。
彼がよく狙ってくる、僕の一番弱いところを抉ってくる。

『やらっ、』

『何がいやなの、』

一番弱いところだけを的確に抉ってくるところが厭なんだ。

『いや、あ、あ、あ、』

『へへ、』

打ち込まれる。
撃ち込まれる。
鉄槌で僕の弱いところが苛められる。
背筋も尾てい骨までビリビリしてしまっている。

こうなると、もう体の芯は破壊されてしまう。

『あ、はっ、ひょん、』

『ウン?』

一番ダメなところしか攻められないから、何が刺激なのかがわからなくなってくるのだ。

この人と「する」ということは、そういうことなのだ。

『きもち、い、』

『へへ、』

得意気に笑う彼は、眉間をちょっと寄せていた。
もしかしたら、僕で気持ちいいって感じてくれているのかもしれない。

頭の中が、クリーム状態だ。

熱が加わってドロドロだ。

甘ったるくて、気持ちいいだけの感覚。

『ひょん、』

『ウン?』

足の間が、ジュブって言った。
もう、僕の足の間は広がりきってしまっているんじゃないだろうか。

『きもちいいよ、』

『ああ、』

目を閉じる。
気持ちいいタイミングを、彼に重ねるために。







『すき、』

重ねてみたら、目からクリームが溢れてきそうだった。
へんなのって、自分に悪態をついてみる。

『ひょん、にむ、』

あそこも目も、口も、もう、全部がトロトロだ。
脊髄のなかまで、クリームになってしまっているんじゃないかな。

『すき、すきっ、すきなのっ、』

『知ってるよ、知ってる、』

小刻みに撃たれる。
その細かい振動がまた新鮮で、ドロドロが波を打ってくる。
もう、波が砕ける時が近いんだ。

僕も、彼も。

ああ、好きだ。
この寸前な瞬間が、とても好きだ。

『すきだ、すき、すき、なんですっ、』

砕ける。

来る。

『ああ、あ、ひぃいっ、』

好きだっていう気持ちが、膨れ上がる。

彼の唸り声が聞こえる。
ライオンとか、トラのような声だ。

『う、あああっ、い、ぐぅっ』

イヤだ、終わりたくない。
まだ、この最高に気持ちいいままでいたい。

でも、もうまともに言葉になってくれそうな声が出ないんだ。
言葉まで、ドロドロだ。

















『好きだ、チャンミン、』












僕のなかに、真っ白のクリームが注がれた瞬間だった。

そして僕は、真っ白のクリームを吐き出す。





彼は僕のなかに、間に、居続けた。
終わらなかった。
酸欠になるで、オーバーヒートするまで、僕達のクリームの注ぎあいは続いた。

落としたスプーンを拾えないまま、夜が進んでいく。

夜が溶けていく。

それでも夜を、駆けていく。





『ひょん、』

僕の声は、カサカサに掠れていた。

『ウン?』

今、ベッドの上で汚れたまま抱き合っている。
床から這って、二人でよじ登ったんだ。
やっぱり床だと、痛いから。

『ヒョンニム、』

『なに、どうしたの、』

彼の腕枕に、頬ずりをして、それからとても近いところにある目を見つめる。
見上げる。

『好きです、』

『知ってるヨ、』

彼は僕の頭を撫でてくれる。
何度も何度も、手をいったりきたりさせながら撫でてくれる。

『僕たち付き合ってるんですよね、』

『そうだヨ、』

誰にも言えないことだけれど、付き合ってる。
交際している。

少なくとも僕は、とても真剣に。

『ふふ、』

『なんだよ、どーしたの、』

頭をぐるっと包むように抱きしめられた。
少し苦しい。
けれど、とても嬉しい。

『ううん、またテストが近くなるなって、思って、』
『ああ、』

そうなると、ここにはバイトも来れない。
だから、こんな夜もお預けになる。

『浮気しないでね、』
『あははっ、』

そんなこと言うつもりもなかったし、
信用してないとかじゃないのに、
変なこと言ったなって、ちょっと反省した。

でも、止まらなかった。
それだけじゃ、止まらなかった。

『なんでもしてあげるから、僕だけを待っててください、』

なんでもって、なんだよって、自分に問いながら、言ってしまっていた。

やっぱり脳みそも舌も溶けてるままなんだ。
そうに違いない。
ドロドロに流れしまっているものはなかなか流れを変えられない。
だから僕のせいじゃない。

『じゃあ、』

『はい、』

彼の体が、僕の上に乗る。
ベッドが大きく軋んだ。
僕の顔に、彼の顔の影ができた。
垂直に見下ろされる。










『どんなことになっても、ヒョンについてくるって、誓って。』



どんなこと。


いいことも、


悪いことも、


きっと、そういうこと。



信じていれば、

ついていける。

連れてってくれる。

それが何処へなのかはわからないけど。

きっと絶対に僕のためにある場所だ。

そのために、この人は、彼は僕を選んでくれたのだ。



ああ、好きだ。

この人が、好きだ。

好きだ、好きだ、大好きだ。





『イェ、ヒョンニム、』






抱き合って、朝を迎える。

溶けたまま、甘い夜を越えて行く。















早朝、ベッドを抜け出して転がったままのスプーンを拾い上げる。

汚れたまま乾いてしまったパフェグラス。

思い出させる、マロンクリームの味。

僕だけに振舞われた「いいもの」。

背後では彼の優しい寝息。


幸せな甘さが、体の中に蘇る。












『好きです。』

ブランデーの香りが体の中から立ち上る。

『愛しています。』

高校生の僕が言えるような言葉じゃない。
だから、彼が眠っている時にしか言わない。

それでも今は、それで充分に満たされる。

聞かれてしまっても、否定はされないって、わかってるから。







朝も昼も、甘ったるいままでいたらいい。


そう願って、拾い上げたスプーンをそっとくわえてみる。























おわり。
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