【尽くしてさしあげなさい。】
そう言われてきた。
今になって思うんだけど、僕がこの行為の手順だとかなんだっていうもの教えられた時から、
僕という存在はあの国から出ていくものだったんじゃないかな。
兄二人が外から迎え入れるために女性を吟味し、
僕があの国で勢力を持たないように、
僕が誰かに従属するような形で外に出す構想ができていたんじゃないかな。
女性相手にだってさせられたけれど、
圧倒的に男性へしてあげるための行為のほうが多かった。
嫁ぎ先が決まった時、僕は抗った。
拒んだ。
どんな人かは知っていた。
何度かあの国に出向いてきて顔も合わせたことがあった。
父のように歳も離れていて、下心が顔に出ていたような印象しかない。
その人との話が決まってから、躾役からの行為はさらに増えた。
だからもっと、拒んだ。
兄二人に、拒んだことが知れた。
父の前で、正式に外に出ることを拒んだ。
父は何も言わなかった。
けれど、兄二人は激怒した。
兄二人のなかで、未来の構想図ができあがっていたのだろう。
その頃だった。
大人の体を奪われたのは。
嫁ぎ先の意向だったようだ。
拒んだのに。
拒んだから。
もっと楯突いたら、追い出された。
剣を翳して。
人まで使って、僕をないものにしようとした。
そこまで兄だった人に疎まれていたんだと、逃げながら、
そしてユノに助けられてからも思ったっけ。
星読みたちになにかを盛られたらしい。
いつから盛られてたのかな。
考えても、どうしようもないのだけれど。
『こっち向いて、』
回想してしまっていた。
今、一通り楽しんで、ユノの腕のなかで漂っていたところだった。
『怖い顔してたヨ、』
『ごめん、ちょっと夢見てた。』
そうそう、長い長い、あんまりよくない夢。
『代わってやりたいんだけど、』
ダメ絶対、そんなの、イヤだ。
僕の過去にユノを当てはめても、どう考えたって最初の選択から噛み合わないとも思うけど。
ユノはユノの意思で最初から動いていただろう。
『代わってくれちゃってたら、出逢えなかった。』
『うん、』
汗でぐしゃぐしゃの髪を抱いて撫でてくれる。
『代わってもらうよりね、』
『うん、』
僕が話しているのに、また深い口付けを与えてくれる。
湿った吐息が、鼻先にもかかる。
『過去の上に立てるように、』
『…うん、』
噛みつかれるような、
でも舐めて癒やそうともしてくれるような、
そんな口付け。
『一緒にいてほしいんだ。』
『うん。』
力強い返事だったの。
たった一音に近いような返事だったけれど、長い長い過去をその音だけで消してくれるような返事だったの。
尽くしてあげたい。
そんな人に。
こんな人に。
ユノ、貴方に。
僕の体全部、全部で、尽くしてあげたい。
そんなふうに尽くしてあげられるのは、
僕にとってもう、この人しかいないから。
熱くて長くて濡れっぱなしの口付けで、
僕の体はまたどろどろだった。
どれだけこの人に反応し続けるのだろう。
もうユノにしか機能しないからさ、いいんだけれど。
『まだ、いい?』
『うん、』
『腹、減ってない?』
『お腹は、空いてる。』
『いい?して、いい?』
『うん、して、』
この人の体から、どれほどの白いものが出てくるのだろう。
大きさは違えど同じ男だ。
それでも大きな大きな違いがある気がするよ。
彼を前にして足を開くことに抵抗がまったく感じなくなった。
恥ずかしさはずいぶん前に消えてなくなってしまった気がする。
あるのは、見てほしい欲求。
開いたら開いた分だけ、ユノはまた膨らませてくれるから。
僕を見て、白いものを湧かせるみたい。
前戯もなしですぐに、彼は僕のなかに入ってくる。
入ってくると、さっき出された白いものがたっぷりと溢れてくる。
割って開いた蜂の巣から溢れる蜜のように、
揺らめく炎の下から流れ落ちる蝋のように、
僕の足の間からたっぷりと流れ落ちてくる。
僕の足を開いて、
その間に押し込んで、
僕のことを見下ろして、
僕のぺったんこの上にあるものを摘まんでくる。
さっきも摘ままれて、ちょっと痛かったんだ。
今度摘ままれたら、
ちょっと気持ちよくて、ちょっと困った。
癖になる、的な感じ。
摘ままれたところが、赤くなってちょっと伸びた気がするよ。
戻らなかったら、どうしよう。
どうもしないけど。
ユノがいいなら、それでいい。
ダメかな。
ふふ。
撃ち込まれたことなんかないけど、巨大な大砲で攻撃されたみたいな衝撃。
一撃が、それくらいに大きい。
この人はなんでも頑張りすぎるところが、こんなところにも出てくる。
もう、この衝撃と圧迫感でしか満たされない。
ユノ以外では、物足りなくて満たされないんじゃないかな。
『後ろからいい?』
なんとでもしてくれてかまわないんだけどな。
『うん、』
僕の軽い体は、くるりとひっくり返された。
肩が寝台について、後ろのほうが上がっている状態。
ユノの大きな手で、こっちもぺったんこのものを掴まれて開かれる。
ああ、これはちょっと恥ずかしいかもしれない。
それで、ほら、また、撃ち込まれる。
『はぁあ、』
押し込まれた分だけ、口から空気が出ていくみたいだ。
声と一緒に。
『全部入る、』
なんてことを言うの。
わかってるって、もう。
全部入ってきている。
わかってるよ。
『入った、』
もう、この人は。
そしてはしゃぐように、ぶつけてくる。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。
痛くないけど、苦しくて、ツラいけど。
『ああぁっ、』
真っ直ぐに僕の一番スゴいところ届いてくる。
一番熱くて触れちゃいけないところに遠慮なくぶつかってくる。
『あ、あ、あ、』
腕をね、掴まれる。
両腕を掴まれて、ユノのほうへ腕を引っ張られる。
肩が寝台から浮く。
そして相変わらず後ろから激しく叩くように打ちつけられている。
大破する理性。
いや、もう、している。
惜しいなって、思うの。
僕がもう少し厚みのある体だったら、ユノももう少し楽しいじゃないかなって。
完全なる歓喜ではない。
まだ。
『あ、あぁ、あ、』
拘束されるように、僕の腕は捕らえられたままだ。
僕の完全に膨らんでいるけれど、完全な大きさではないそれが可哀想にだらしなく泣いている。
下げていたい頭をあげると、胸が大きく反って引き寄せられた。
泣いてしまった僕のそれが、大きく揺れた。
大きく、ないんだけどね。
繋がったまま、背中に彼の胸がくっついた。
お互いにくっついたまま膝で立っている。
『見ないで、』
大きくないそれを、後ろから覗かれている。
別にもう、恥ずかしいとかは無いんだけど。
理性もぶち破かれてるから。
『可愛い、』
ユノのは、全然かわいくない大きさだ。
繋がったまま、僕のだけが飛び出していて、今度はそれを掴まれる。
一番大きくしているはずなのに、彼の手のひらに収まってしまう。
それだけはちょっと恥ずかしかった。
同じ性別のものとして。
仕方がないことだけど。
『大きくなりたい、もとに、戻りたいよ、』
上下にゆっくりと擦られる。
手を動かされる度に、可哀想なそれは敷布を濡らしていく。
『どうして、』
『んん、ぁ、だって』
『今のままでも、俺はかまわない。』
『やだ、あ、あん、』
『ツラくなるなら、無理に戻らなくてもいい、』
『今が、…不釣り合いでツラいんだ、ぁ、ひぁ、』
『ごめん、』
『なん、で、ぁああ、もうっ、あ、』
謝られると、もっとツラいよ、ユノ。
でも、言えなかった。
追い詰められる。
気持ちよくて、死んじゃいそうだった。
放たれた時に、放ってしまった。
それから、体の芯も一緒に抜けてしまったように、彼の胸に全部の体重がかかってしまう。
膝でも立っていられなくて、背中からた倒れこむ。
彼の大きすぎたものも抜けていって、本当に体の中が空っぽになった感じがしたの。
でも、色んなもので満たされている。
ちゃぷちゃぷと、
白濁のなかで、
意識が微睡むみたいに。
ふふ。
『ゆの、』
『なに?』
『あやまられると、こまるよ、』
『うん、』
多分、今日はもう、これで終わり。
僕の小さくて狭い体がそう訴えている。
『ごめんねは、こっちがいいたいくらい。』
『なんで、』
『ものたりないんじゃないかって、』
『バカだネ、』
バカだもん。
言おうとして、
笑おうとして、
でも、出来なかった。
笑うための筋肉が動いてくれない。
『俺がしたいこと、』
『うん、』
『チャンミンと、』
『うん、』
『一緒に出した答えに向かうこと。』
『…ん、うん、』
人ひとりとして見られたことが、あったかな。
こんなふうに、誰かに同じものを求められることって、あったかな。
同じもののために、
願ってもらったり、
請われたり、
今まで求められたことが、あったかな。
全部全部、
ユノ、
貴方がしてくれたから気づいたことばかりだ。
全部全部、
貴方が初めての部分を僕に与えてくれる。
『ツラくなった時のために、俺がいるから。』
『うん、』
僕は、
貴方がツラくなった時に、
泣いてくれるくらい引きずり出せるくらいになりたい。
この胸と胸で契った、
胸と胸を繋いだ糸を、
しっかりと手繰り寄せて、
貴方のすべてを、
抱き締めてあげられるくらいに。
そんなふうに、
体も心も、
貴方に尽くして生きてみたい。