「…明る…まぶし」

久しいと言うのだろうか、主君を失いあたしの世界から太陽が消えた。

空を見ることを無とされた世界で命が保ってしまったために死の続きをいつまでも引きずり続けているあたしに


この生きている世界は久しいのだろうか


「…」月は見てるから青空が久しいのか


「…」振り向いたら


凄く蒼かった。澄んでる。

「…」海?

水と空の境界



潮の香りが気持ちよく

「…ふうん」

…孤独だった


あたしには闇しかない闇しかない世界は続き続け

その世界しか闇しか居場所もない。


綺麗な世界に感情はなかった


それだけ思って



耳に入る音を認識した

「…エスパーダ喰おうって?雑魚のくせに」

もう十刃はないけどさ。


悲痛な叫びは後ろからあたしに向かってくる


振り向いたら…叫びは止んだ

止まっていた

「……」殺したか。ああ、こいつらは魂葬だっけ。


ハデなのがいた。

死神なのは間違いなく。明るい色のついた着物のをはおっていた。

「……」


向こうもこちらも向いた

眼があうだろう。





 かわいいコだな


目が合った瞬間、ボクが思わず考えてしまったこと。


それは花びらのような女の子のこと。


口許を萼のような衿で隠し、腰から下は俯いた花のような衣装。


花びらのような女の子だった。



花ではなく、花びら


ボクのこの感性が、誰にわかるだろうか。




破面相手に何を考えているんだと言われそうだけど。


かわいいコなのには変わりなかったんだよね。




ボクに、殺気はない。

勿論気を抜いたりはしていないけれど、

こんなかわいいコにどうやって敵意を抱こうかと悩んだんだよね。






「……」


相手は刀をあろうことか鞘に戻した。

斬るつもりも無いのだろう

あたしは見据えていた。

話かけるつもりもない。

眼が気に入らないと思ったから


優しそうで気に入らないと

死神のくせに

「…」





彼女の眼に、嫌悪の色が見えた。

敵なのに
という、嫌悪。


敵なのに
何故、この場で斬魄刀を鞘に収めるのだという嫌悪。



虚自体が、心の闇に囚われた者。

だから疑惑や不信や憎悪や嫌悪といった感情は簡単に抱いていることはわかっていた。



けどねえ…

かわいいコじゃないの。




斬魄刀を収めたボクに、これ幸いと戦いを仕向けても来ないんだよね。





「…」いいや、行こう。

別に死神に会いに来たわけでも殺しに来たわけでも海が見たかったわけでも空が見たかったわけでもない


お茶を買いに出てきたのだ。


「…バイバイ」

死神にも聞こえただろうけど、あたしはここで止まってたからこそ眺められた景色に告げて歩きだした



「あ、ねえ。待ってよ」



バイバイだなんて、礼儀正しい破面じゃないの。







思った通り、ボクが話しかけたら彼女は足を止めた。



驚かさないよう、ゆるりゆるりと近づいて行った。



逃げることも無視する様子もない。