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おおブリbQ-2/6『ハルから始まる花』

「……」


待てと言われたから止まる。殺意も無いので振り向くこともせずに止まって待った。


「…」潮の香りに混ざって死神の匂いが届いた。


嫌いでは無い


そう感じて

やだった。



背中を向けたままの彼女に、ボクは花びらを見る。


「怒ってるの?その、仲間を…送ったこと」

退治したと言っては角が立つと思った。




「仲間なんかじゃない」

花びらの彼女はそう呟くと
漸く振り向いてくれた。





背が高いと言うのだろう。


顔を見るのに見上げる形になった。

「あたしの仲間はお前の仲間が殺したし、あたしの主君はお前らのせいであたしを置いていったからね

今のはただの知らない奴

だからあたしその行為について怒ることも許すことも無い」

死神は間を置いてすまなそうな表情をみせた。

「ごめんよ」


ずいぶん前の、おそらくこいつがやったこでは無いことを謝られた

「別にあたしは謝罪が欲しいつもりは無いけど」


あたしにとってあの日は昔では無いし死神にもあの日の傷はまだ残っているだろう。






彼女とただの虚との力の差はわかっていた。



そして、恐らく仲間だったとしても悲しむことはないだろうとも。





でもボク達が惣右介クンに天の座を明け渡さなかったことで、このコは居場所を失ってしまったのかもしれない。



だからボクは謝ったんだ。





居場所がないっていうことが、どれくらい寂しいことが、ボクは知っていたから。





「…で?」

「うん?」

「あたしが歩くの止めたのに用が無いの?

それともこんにちはとか、さようならとか、おやすみとか言えばいいの?」



たたずむ姿は花の形そのもので。

ああ、きっとこのコは悲しみから虚に堕ちたんじゃないかな。
そう思ったんだ。

整と虚は紙一重なもので、それは生と死に酷く似てるよね。
似てると言うよりも、同じ理なんだよね。


「…こんにちは、ボクは京楽。京楽春水。よろしくね」



「………何、それ?」

彼女は顎を引いて益々口許を隠し、怪訝な顔をした。



「何って、挨拶だよ?それと自己紹介」

ボクは七緒ちゃんに見せるのと変わらない表情で、彼女を見ているつもりだ。







「…」名前を名乗ったのはわかった。よろしくと言ったのだからおそらく名だ






「…」顎に手を当てて海だか空だかみて思案して


「…楽太郎?」

『待った違う全然違うような惜しいようなとりあえず違う


「…よろしくしなきゃだめ?」


スッゴい真剣な顔してそこを聞き直すの


…「漢字だよね」

『うん』

「……ファーストネームは」

『春水だよ、【春】の【水】って書くんだ』

…「あっそぅ」

今聞いたのに「別にどうでも良い」って顔しないでよー!!!』

おどける様に泣く真似をしている


「…ハリベルだ」

とりあえず名乗って、今しがた名乗られた【音】で呼びやすそうなのを選ぶ

「ハル…か」

海をもう一度横目に眺めて呟いた



『春』は漢字の説明をしただけのつもりだったが、彼女…ハリベルにはその音しか受け入れられなかったらしい。



…まぁ…………
ボクの名前なんかどうでもいい。

君が
微笑んでくれたら。



まだ、遠くを眺めているけれど
微笑んでくれたら、いいな。



おおブリbQ-1/6『ハルから始まる花』



「…明る…まぶし」

久しいと言うのだろうか、主君を失いあたしの世界から太陽が消えた。

空を見ることを無とされた世界で命が保ってしまったために死の続きをいつまでも引きずり続けているあたしに


この生きている世界は久しいのだろうか


「…」月は見てるから青空が久しいのか


「…」振り向いたら


凄く蒼かった。澄んでる。

「…」海?

水と空の境界



潮の香りが気持ちよく

「…ふうん」

…孤独だった


あたしには闇しかない闇しかない世界は続き続け

その世界しか闇しか居場所もない。


綺麗な世界に感情はなかった


それだけ思って



耳に入る音を認識した

「…エスパーダ喰おうって?雑魚のくせに」

もう十刃はないけどさ。


悲痛な叫びは後ろからあたしに向かってくる


振り向いたら…叫びは止んだ

止まっていた

「……」殺したか。ああ、こいつらは魂葬だっけ。


ハデなのがいた。

死神なのは間違いなく。明るい色のついた着物のをはおっていた。

「……」


向こうもこちらも向いた

眼があうだろう。





 かわいいコだな


目が合った瞬間、ボクが思わず考えてしまったこと。


それは花びらのような女の子のこと。


口許を萼のような衿で隠し、腰から下は俯いた花のような衣装。


花びらのような女の子だった。



花ではなく、花びら


ボクのこの感性が、誰にわかるだろうか。




破面相手に何を考えているんだと言われそうだけど。


かわいいコなのには変わりなかったんだよね。




ボクに、殺気はない。

勿論気を抜いたりはしていないけれど、

こんなかわいいコにどうやって敵意を抱こうかと悩んだんだよね。






「……」


相手は刀をあろうことか鞘に戻した。

斬るつもりも無いのだろう

あたしは見据えていた。

話かけるつもりもない。

眼が気に入らないと思ったから


優しそうで気に入らないと

死神のくせに

「…」





彼女の眼に、嫌悪の色が見えた。

敵なのに
という、嫌悪。


敵なのに
何故、この場で斬魄刀を鞘に収めるのだという嫌悪。



虚自体が、心の闇に囚われた者。

だから疑惑や不信や憎悪や嫌悪といった感情は簡単に抱いていることはわかっていた。



けどねえ…

かわいいコじゃないの。




斬魄刀を収めたボクに、これ幸いと戦いを仕向けても来ないんだよね。





「…」いいや、行こう。

別に死神に会いに来たわけでも殺しに来たわけでも海が見たかったわけでも空が見たかったわけでもない


お茶を買いに出てきたのだ。


「…バイバイ」

死神にも聞こえただろうけど、あたしはここで止まってたからこそ眺められた景色に告げて歩きだした



「あ、ねえ。待ってよ」



バイバイだなんて、礼儀正しい破面じゃないの。







思った通り、ボクが話しかけたら彼女は足を止めた。



驚かさないよう、ゆるりゆるりと近づいて行った。



逃げることも無視する様子もない。



1魂魄

おはようございます!

雪ゴテに1魂魄お預かりさせていただきました。
ありがとうございます。


実は昨日、いきなりケータイを機種変更(させられま)したので
アンケートの数値がきちんと確認できずにお礼が今になりました。


しかも画像が汚ない。

今までおしゃれなつもりだったのに、派手なけばけばしいサイト色にかなりの打撃を受けております。



皆様の愛あるコメントで、可哀相な(?)さくらをお救い下さいませ。

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