馴染みの店なので勝手に動き回る僕に浮竹は呆れてるみたいだった。


「あ、こっちのは包んであげるから決めたら教えてね」
『………』

京楽はただ単にサボりに来たわけでも、菓子目当てに此処を訪れているわけでもなかった。


何年付き合っても、未だ知らない京楽に出会うことがある。

それは俺が今まで見逃していただけなのか、それとも京楽が他人に見せないだけなのか………。



だから

だから俺は、こいつから目が離せないんだな………。







「そいじゃ、そろそろおいとまするよ!

またね〜vV」


僕は「僕の大猫ちゃん」に軽くハグして七緒ちゃんへのお土産を持って浮竹と外に出る


「いやぁ、長く付き合わせちゃったねぇ」

いつもの感じに謝った

「あ、これあげる。奥から貰ってきたから。」

僕はタッパーみたいなやつを浮竹に渡した

なんだこれ?と見てるので軽く応える


「梅干しの蜂蜜で浸けたやつだって。
わけて貰っちゃった

君の好きな味だ」

僕は

君のことはだいたい知ってるからね

『ほう、こんな物まで扱ってるのか』

俺は両手でその包みを受け取った。


「いや。それは大猫ちゃんの日常食だよ。でも食べていいからね」

家に滅多に帰らない京楽が、家のように寛ぎ、家族のように出迎えられ接する―――あの菓子処は京楽の心の帰る場所なのだと、またしても言葉ではなくやりとりで教えられた。





僕はのんびり歩く

隣を歩くのがよく発作起こす人だからとかではなく、これが僕のペースだから


浮竹と歩くためにあるペースだから


「そっちの隊の子にお店勧めといてよ♪
美味しいからさ♪

作ってくれてるのもあんなに美人だしね」

浮竹は僕の言葉に笑った

「なんだい?美人よりかわいいタイプが好きなんだっけか?」
僕も微笑みながら浮竹に問う


『相変わらずだな』

相変わらず、女の子の話で焦点をぼかす。

お前が外見だけで女の子を判断なんかしていないと、十分にわかっている俺にさえ、そうやって共犯を強いる。