最初に、
仕事帰りに少し遠回りをする。道中気になっていた店の近くで、そうだ何か買っていこうと考える。
適当なものを選んであの人の家へ向かう。道中もういないよと思いながら、手にした袋を傾けないように持ち直して高く映える空の下を歩くけれど
その人の家は一本道になっているから、もういないんだよ、その前をすう、と素通りして帰る。袋の中身はあの人の好きなものばかりで、自分の口に入れるつもりはなかったから直ぐには無くならない。呆然と机の上にいつまでも置いたまま、それでも世界は動いているから。酸化して融解して駄目になるのを止められないから。
もういないんだけどなあ。そうして胸にくるものをただ在るがままに感じ取り、ちょっと涙が出た