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Scrap


「俺は気違いでお前は気がふれたか」
最高の皮肉だなと気狂いに笑った
相思相愛だ。

薄い背中に腕を回し愛を貪る生活がもう二月続いている。ろくでなしの彼はあらゆる事象を呪い忌み嫌う。だから好きだのお願いだのそんな台詞は言えなかった。それでも時たま機嫌の良いときには膝に乗せた頭を固い手指が目陰をさして、無意味な嘆息を織り交ぜ名前を囁いてみたりして。一つにはなれない肉体。粘液と瞬きの交わり(融合したら寒いからだね)意義を問わない生活。幸福だった。

気性の荒い彼に合わせた趣向で連日連夜猿みたいにまぐわって、体は悲鳴を上げていたが止めるつもりは毛頭なかった。一日と離れられない依存の関係を結んだのは僕の方だと思っていたが、セルフ軟禁状態に置かれ暴力を振るう生活、彼を好んだのが僕だけならこの関係はもっと早くに破綻していた事だろうから、やはり相思相愛だったのだろうと

床に額を擦り付け、穴を差し出す僕の上でくぐもった呼吸が繰り返される。グラインドに合わせ息を接ぐ。肌寒い室内に肉を混ぜる音が立ち、お構いなしの熱に浮かされた口からはあられもないものが零れる、相変わらずの一日だった。








差し出された手に傷。腕の爪痕、指の裂傷、肘は、ぶつけた、のか
日焼けしない膚に纏わり付くテープを乱暴に引きはがす。奴は少し顔をしかめた。
絆創膏のしたの治癒していく不確かな肉の繋ぎ目、蒸れて湿った一際の白さは生まれ落ちる未熟児の息をしない石膏の創りそこなったホルマリンから干からびた
満身創痍の体「、を見て喜んでるの」無意識に釣り上がる口角に触れて顰め面に浮かぶ不服の二文字。床と仲良しのお前から向けられる叱責するような眼差しを受け、沸き上がる充足感。包帯の継ぎ目に爪を掛け綻んだ下から顕れる壊れた皮膚に胸が空く。止せと言いつつ両手を下ろすだけのお前に飛び付いてこめかみを重ねた。
覚えのない膏肓を覆い潰すだけの被虐心


(脆弱なからだを塞ぐ肉と筋骨だけ)

その指





君が好きでその異常な熱が好きで
けれど僕らから生まれるものは何も無く、僕らは擦り減るばかりで、人づての些細な出来事に触れる度馬鹿らしくも仮想に胸を痛めた。どうせ何かを得ようとしても叶わないのだと。誰に言われた訳でもないのにはっきりと刻み込まれていた。周り等お構いなしに唇を合わせる。ガラス越しの雨垂れが泣いている視界のようだった

「色気違い」囁かれると耳がほてった。舌を差し込まれていよいよ震えが脊髄を抜ける。まるでプログラムされたような型通りの出会いだった

周囲の事を忘れたら倦んだ心が落ち着くような気がして。「君を殺すよ」鈍い痛みが頬を襲って壁に縋った。彼は嗤って、僕も笑って、肺を塞ぐ蟠りが解け、彼の傍から離れられなくった。望み通りだった。
卑俗な人の群れともう二度と関わらずに済むなら尤もだ。傷付くもの振り払うのもうんざりしていた。それなのにまた誰かに関わり此処で嘆く。傷付くとわかっているくせに期待を込めてしまう。彼は言及しなかったが馬鹿だと目が物語っていた。しかしその都度彼も苛立ちを募らせているのが僅かな喜びだなんて死んでも言えない

「俺が連れてってやるよ」

彼の背中で泣きながらあまりに鉱物的な彼の肌に餓えた。






[携帯変更の為メモリ預。後で片付けます]


Door


さいしょのころお前はずっと泣いてて何してもこんな風にいつまでも際限なく流れた涸れたら止むのか涸れても終わらないんじゃないか覆いかぶさるときの頬や項に滴るそれは熱くてぼやぼやしてるうちに喉やら胸の中にまで伝い落ちるのを止める義理はなくて緩やかに肌を滑るようでむずかゆい欝陶しいだから床に打ち付けた肩甲骨の浮かぶ背中隆起する鳩尾左手で庇った顔の端からぽたりと流れたものが髪を濡らす床の上で冷たくなるのが
愛してると囁いた口が頬を吸い腹を辿って太腿に落ちるその先を望まないわけではないが爪先へ踞る背中に頭を垂れた不幸に酔うな思うほど悪くないんだろお前は心酔してるだけの感受性のかけらもない独善者であることを自覚し誤魔化す卑屈なこの世界にお誂え向きのこれだから不幸好きはへどが出るあかいのはその肉の下と口の中だけで十分過ぎる赤世界が塞ぐ寸での俄な命の叫び
軽々しいものを安売りするこいつだって本気で口にしちゃいないことくらい言葉を知らないだけでまさか言葉に落とせない存在を表現できやしないからそこら中に転がる愛にそれを託した空っぽのそれに俺は殺されたと
冴えた精神にのしかかる何倍もの重力にされるがままうなだれる。肩にかかるしとやかな重み、熱い雫、馨しい地堕落の匂い。生温い指先を被う透ける爪の形を思い出して、あの爪を一枚一枚剥がしてピルケースに収める音を想像しかけた。カルシウムの残骸。あの圧迫感が此処に遺るような錯覚。錯覚。
無いものは望めない、と嘲るように傍目も振らず遠ざかる。   を自慢する子供ように自尊と侮蔑を混ぜ合わせた視線の先にあるのが自分だということ。口にせずともそれをさしたのがお前だということ。(此処を刺せと掴んだ掌が今は扉に掛かって世界の外側へ吸い込まれていく)
出てくる言葉はにべもなく俺が与えるものは毛程もなくてお前から授かったものは受け取る端から捨てていて
(これを言葉にすれば、)
光の刺激を受け続けた眼球のしとやかな痛み。固く瞼をつぶし枯渇と飢餓の欠落感を思い出す
(足りないもの、と認識するあまさ)
毒され    

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