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サイレンス


あ の感覚が 恋しく て
彼に触れたが叶わなかった


冬は越せないだろう。
先の事を考えた時点で、それは避けられない必然性を持っているような気になる。
少なくとも彼は頓着していない様子だ。
無関心、疲労感。
日常だった。
抱きしめたくなる孤独な日常だった。
時計の針は四十五度に折れ曲がり、柔らかく畳まれた彼の腕のようだった。

 どうしてどこへもいけないの
黒ずんだ眦へ触れて、細かな睫毛の感触を指の背に察した時、擦り切れた獣は生身の人間に変換される。
意識の所在も掴めない虚ろな瞼の内側に入り込むことばかりを考えていた。
彼の中にどれだけの居場所があるのか、同一相似色素を持っているのか、肩に埋める吐息の意味、『指輪を棄てろ』、楽園、僕の名前を知っているのか、


ただ、此処は不易なばかりで、
居心地の良さが救いだった。
もうすぐ秋になる。

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