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朝の光が弾けて視界が赤く染まった。
呆気なさに鼻白んだ俺の背中に爪痕を感じて寝返りを打った。冷たい朝の、折れかけの羽根を閉じた天使がうずくまっている。




………

夢をみていた。自分じゃない夢だ。
あなたの上がった睫毛を見るときゅんとするよ。
胸が疼く。と告げれば彼の抱く[頭の弱い]印象が多少は払拭されたかもしれない。そう気付いた時には既によく回る口は女子学生のような擬音をはいた後で、確かめたその人は聞いているのかどうか定められない顔で黒い壁を横目に捕らえているだけだった。

「すべておわったらデートしよう」
戯れでもなく真正面から見据えられると、柔らかな表情はなく、快感と無垢を一緒くたにしてしまう子供のような瞳をしたその人の。いつかのしとやかな獣の気配がそこにあった。吹き出しそうになったコーヒーを嚥下した後から苦みや焦げた香が鼻へ抜けた。
「それから帰ってキスをしよう」
「順序が逆じゃないですか」
「今更、こだわることかな」
泣き出しそうな苦笑いを口に乗せ、宮城さん、と独り言のように呟いた。





馬鹿な俺でもすぐわかる。あんたが好きなのは俺じゃない。
愛するものを諦めたりしないだろ。
「愛しながら絶望するのは止めろ」
最前列の観客達は初を望んだ。あの躯に相応しい数だけ、愛した。薄い色のライトに照らされ、笑いながら、実は寂しくて仕方ないと言わんばかりの目をしていた。壊れ物にでもなって仕舞ったようで、捕まえた手の甲を頬に当て、夢中で口付けた。顳みから頬を、輪郭を確かめるように包み、どうしよう愛したい、彼を庇う薄い膜に爪を立て、中身をぶちまけながら俺の弟が好きだろうと言って彼を抱きたい衝動に駆られた。腕を回した背中はあの夜見たそれの予想より薄かった。




細い足首に嵌めたウッドアンクレットは青刺だった。
赤茶けた髪を乱雑に乾かす飛沫でバスルームからリビングまでの間に道が出来ていた。濡れた為か二ヶ月前に当てたパーマで髪がうねっている。指先で摘み上げてくるくると絡めるとうねりあっさりと渦を巻いた。
「似合ってる」
「どうも」
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