ソラメル…錦ちゃん宅メルティ姫、ほんのりお名前錦ちゃん宅ログナルさん
◆◇
今日、全てが決まる。この日を待ちわび、そして恐れていた。
天空に浮かぶ王国『天ツ国(あまつくに)』。この国の王位継承は、丸一日かけて行われる国民投票によって決まる。
王位継承者は一年仮初めの王として国を治め、その一年の王政で国民が王として相応しいか否かを投票するのだ。勿論、もう一年様子見が必要とされたり、他の者…例えば、第二王位継承者である私の妹のハナを薦める声もあるだろう。
私も先王の父似である妹の方が、王として相応しいかも知れないと思っている。だからこれまで、継承権の放棄をずっと考えていた。
だが仮の王として一年間、父王には及ばないだろうが、皆に王と認められるよう全力で善政を務めてきた。それは仮の王に就く前に留学先で、一人の王族の女性に出会ったからに他ならない。
留学中学んだ知識以上に、私は彼女に王族として大切な事を沢山教えてもらった。王位に前向きになった動機として不純かもしれないが、私は彼女に相応しい人間となり、隣に居続けたいと心底思ったのだ。
だから決めていた。国王になれたなら、彼女に正式にプロポーズをすると。
もしなれなかったら、その時はーー
◆◇
今日で21歳になる。朝から緊張と不安に押し潰されそうだ。只でさえあまり食べる方ではないので軽くしている朝食が、満足に喉を通らなかった。城の専属料理人のアネモネが、わざわざポタージュに作り直してくれた。身に染みる美味しさだった。
「ハナ様が帰って来られました」
午前の国務を終わらせた所で報告が入る。妹は学園を卒業し外界の大学へ入学したが、今日の為一時的に天ツ国へ戻って来たのだ。顔を合わせるのは、夏休みの帰省以来だろうか。
昔あれだけ国を抜け出し外界に遊びに行ったにも関わらず、入学して暫くはホームシックで毎日電話していたものだが、今は本人曰く、向こうで花のキャンパスライフを満喫中☆らしい。
その花のキャンパスライフ☆の間に姫として落ち着いてくれると有難い。王位継承権が彼女に移ったら、大学を卒業した後私の様に仮の女王に就かなければならないのだから。
城の大階段を降りて行くと、入り口には執事やメイドが並び姫を出迎える準備を済ませていた。
2018-6-16 21:31
シザンサス1
そして城の扉がゆっくり開き、来客を迎え入れる。
「お帰りなさいませ。ハナ様」
目に入ったのは、風邪をひかぬようにだろう、モコモコに着込み意気揚々と入って来た妹のハナではなく、その後ろから静々と付いて歩くメイドのポールでもなかった。
陽に当たり柔らかく輝く金色の長い髪、ルビーを思わせる知性と思慮深さを秘めた鮮やかな赤い瞳、冬の冷えた空気でわずかに濃く色付いた、バラ色の頬と唇。彼女は……
「皆たっだいまー!」
「ご機嫌よう、ソラ様」
「メルティ?どうしてここに……?」
夢ではない。メルティがこちらに微笑んでいる。空いた口が塞がらない。
「ふっふっふ……びっくりしたでしょー♪」
「ごめんなさい。突然お邪魔して……」
メルティの来訪に固まっていた私をにやにやしながら眺めていたハナの話によると、大分前から二人で天ツ国へ訪れる話をしていたそうだ。
その為に第三都市の姫君であるメルティは、数ヶ月前から国務を片付け時間を調整し、こちらに来る期間を数日確保したらしい。そしてメルティが来る事は、ハナによって私以外知っていたとの事だ。従者達が苦笑いしていた訳だ。
「ログさんもバリバリOKしてくれたの!」
「当初国務はお兄様が自分に任せろと言ってくれたものの、心配で……」
その『心配』の言葉は色々な意味を含んでいるのだろう。一つは短期間とはいえ離れる第三都市の事。もう一つは……兄君の事。
国交で何度かお会いしていたメルティの兄で、第三都市の国王ログナル王は、明朗快活で王としても人としても信頼できる人物だが、少々奔放な所がありハナに近いものがある。
実際彼とハナは気があうようで、ハナは第三都市でメルティのみならずログナル王とも度々遊ぶようになり、写真を送ってきた時は卒倒するかと思った。しかもログさん呼び。
「ご迷惑でしたか……?」
「……いや、嬉しいよ」
迷惑だなんてある訳ない。会いたいと思っていた、思っていたけれど……何故よりによって今日なんだ。複雑な心境を悟られたくない。メルティに向ける笑顔は引きつっていないか、気掛かりで仕方がなかった。
「お帰りなさいませ。ハナ様」
目に入ったのは、風邪をひかぬようにだろう、モコモコに着込み意気揚々と入って来た妹のハナではなく、その後ろから静々と付いて歩くメイドのポールでもなかった。
陽に当たり柔らかく輝く金色の長い髪、ルビーを思わせる知性と思慮深さを秘めた鮮やかな赤い瞳、冬の冷えた空気でわずかに濃く色付いた、バラ色の頬と唇。彼女は……
「皆たっだいまー!」
「ご機嫌よう、ソラ様」
「メルティ?どうしてここに……?」
夢ではない。メルティがこちらに微笑んでいる。空いた口が塞がらない。
「ふっふっふ……びっくりしたでしょー♪」
「ごめんなさい。突然お邪魔して……」
メルティの来訪に固まっていた私をにやにやしながら眺めていたハナの話によると、大分前から二人で天ツ国へ訪れる話をしていたそうだ。
その為に第三都市の姫君であるメルティは、数ヶ月前から国務を片付け時間を調整し、こちらに来る期間を数日確保したらしい。そしてメルティが来る事は、ハナによって私以外知っていたとの事だ。従者達が苦笑いしていた訳だ。
「ログさんもバリバリOKしてくれたの!」
「当初国務はお兄様が自分に任せろと言ってくれたものの、心配で……」
その『心配』の言葉は色々な意味を含んでいるのだろう。一つは短期間とはいえ離れる第三都市の事。もう一つは……兄君の事。
国交で何度かお会いしていたメルティの兄で、第三都市の国王ログナル王は、明朗快活で王としても人としても信頼できる人物だが、少々奔放な所がありハナに近いものがある。
実際彼とハナは気があうようで、ハナは第三都市でメルティのみならずログナル王とも度々遊ぶようになり、写真を送ってきた時は卒倒するかと思った。しかもログさん呼び。
「ご迷惑でしたか……?」
「……いや、嬉しいよ」
迷惑だなんてある訳ない。会いたいと思っていた、思っていたけれど……何故よりによって今日なんだ。複雑な心境を悟られたくない。メルティに向ける笑顔は引きつっていないか、気掛かりで仕方がなかった。
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