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紫陽花の思い出

砂金(自宅★バンギラス♂)の父、祖母の話※ふんわり砂ソム

紫陽花は、あまり好きではなかった。出掛けてばかりで家に殆どいない、身勝手で、俺を置いて逝ってしまった母を思い出させるから。

「寂しい時は、この紫陽花を思い出すのよ」

たまに帰れば家に咲く紫陽花を俺と妹に見せて必ずそう言い聞かせていた。その紫陽花は、母が亡くなってすぐ病気で枯れた。あの人のように。

移り気という花言葉を誰かから聞いた。正に母のようだ。花に罪はないが、それでも目に入るともやもやしてしまうのだ。

「私ね、この花が好きなの」

交際を始めて間もない恋人が俺を連れて来たその場所は、溢れるように紫陽花が咲き誇っていた。

「……そうなのか」

当然だが、紫陽花と母の話は彼女に言っていない。何を動揺する事がある。彼女は恋人の自分に好きな花が咲くお気に入りの場所を教えてくれた。それが紫陽花だっただけだ。

「花言葉が面白いのよ」

彼女の言葉にドキリとした。

「移り気とか、無情とか、それと反対にね…」

その後の言葉は、信じられないものだった。

「勿論他の花だって色んな花言葉があるんだけど、ここまで正反対な花言葉がある花って無いわよね〜そんな所も魅力が……え」

知らなかった。

「ど、どうしたの?」

知らなかったよ。母さん。

「なんで泣いてるの?」

正直、どんな気持ちで俺達に紫陽花を見せていたかは分からない。でも少しだけ、あの頃と同じように、紫陽花を綺麗だと思えたよ。母さん。


「ーー彼女にプロポーズしたのもその場所だよ。知らなかった?当たり前だこっ恥ずかしい。
まあ、そことか良いんじゃないか。ちょうど見頃だし。綺麗に咲いてるだろう。
……あの娘の事、しっかり守って幸せにしてあげろよ」

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紫陽花の花言葉…『移り気』『浮気』『無情』そして『団欒』『辛抱強い強い愛情』『ひたむきな愛情』

追記に〜後書き〜
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