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大切なあの人へ2017

真奈都…恋人に花鞠の飾りが付いたブレスレット、弟に紅色のニット帽

ブレイ…木箱に入ったプリザーブドフラワー

駆里…恋人にローズクオーツのブローチ

聖火…あの子に手編みのオレンジのカーディガン

水青…恋人に夫婦茶碗ならぬ夫夫茶碗

ソラ…恋人にステンドグラスの万華鏡

ハビエル…恋人にタンポポの刺繍が入った細身の黒手袋

日射…恋人にいつも付けてる髪飾りによく似た花のペンダント

智…恋人にチューリップの花のシルバーペンダント

小冬…彼にリンゴのケーキと黒の耳あて

ブロンセ…恋人に青いベロアのハイヒール

ドロップと千幸…友達にストロースターで作ったストラップ

ラズ…友達にらでゅれの花びらチーク

真義とアンジュ…友達と兄に手作りのアイシングクッキー

空斬…友達に雪の結晶が出来る温度計

李…友達にイチオシの演歌CDと白と赤チェックのCDケース

儚…友達にペンダント入れる用ピンクのマカロンポーチ

寿々…友達に鞠の形のピンクッション

荒野…友達にサングラス




First yellow 5



いっけね。久々にガッツリ運動して説明聞いてたら、眠くなっちまった。こういう時って良い感じに、心地よくなるよな〜!

気が付けば眼鏡の姉ちゃんが怖い目で俺を見ている。口は笑ってるけど目だけ笑ってない。やべえ。

『聞いてたって!フレイムテイルって何でも屋!』

慌ててアピールする。真奈都の視線も地味に痛い。

『あー…それって強い奴と戦えたりするか?』
『内容によってはするわよ』
『じゃあ入る!』
『え』

あっさり決めた俺に真奈都が驚いた。なんというか、こいつ正気か?って顔をしている。まあ分からんでもないが、俺は自慢じゃないが難しい事を考えるのは苦手だ。だから基本自分の直感や気持ちで物事を決める。強い相手と戦えて、金も貰えるなら悪くないと思ったのだ。その代わり

『だが俺は自分の信念を曲げるような事は、死んでもやらねえ』

はっきりと伝えた。

『分かったわ。では宜しくお願いします』

あっさりと返して姉ちゃんは真奈都を見た。未だに迷う真奈都に

『…貴方にも悪い話ではないわ。フレイムテイルで働けば、

弟さんの情報も手に入るかも知れないわよ。協力しても良いわ』

"弟"という言葉に、真奈都の顔が変わった。こいつと会って間もないが、初めて見せる表情だ。そんな顔するんだな。少しだけ俯き、迷いを振り切るように首を振った後

『………入ります』

姉ちゃんにそう言った。

『決まりね。ではボスを紹介するわ…那月、お待たせしました』

ボス?一番偉い奴って事だよな?てっきりこの姉ちゃんかと思ってたぞ?姉ちゃんが一つのドアに向かうとゆっくりと開く。そこに立っていたのは

『アレ?』『キミは…』

『こ、この度は募集に応募してくださり、有難うございました』

『この方がフレイムテイルのボス、並びに燃え盛るしっぽのオーナーの那月(なづき)です』

チラシ配ってたチビっ子だった。え?マジで?

『因みに私は彼の補佐兼保護者兼燃え盛るしっぽの店長を務めるわ。雅(みやび)よ』

これから宜しく、と姉ちゃん…雅はにっこりと笑った。

この日俺と真奈都は、裏の世界に足を踏み入れる事になったとか、信じられないだろ?

▽▼
ファーストイエロー…黄色いゼラニウムの品種名。花言葉は『予期せぬ出会い』
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First yellow 4


鉄球から命からがら逃れた後も、落とし穴が出現したり壁が迫ってきたり…山程のトラップを回避出来たのは奇跡でしかない。本当に勘弁して欲しい。

『いや〜からくり屋敷思い出したぜ!』

ブレイさんはケロッとした様子で、豪快に笑い飛ばしている。いつの間にか他の人達は皆トラップにやられ、俺達二人だけになってしまった。

『どうやって、ここから脱出を…』
『あれ使えば良いんじゃね?』

ブレイさんが指差す方を見ると、そこにはエレベーターのドアがあった。

トラップが気掛かりで乗るのを躊躇したが、エレベーター以外は完全に行き止まりで乗るしか選択肢は無かった。

乗ったエレベーターは、罠だらけの地下から相当上まで上昇した気がする。降りた階はお好み焼き屋とも、先程まで逃げ回った地下とも雰囲気が変わり、会社のオフィスのようだった。

部屋は電気が点いておらず、ガラス窓から街の明かりが入ってくる。この街に来てから夜が早くやってくる感覚だ。

『残ったのは二人か…まあ、こんなものね』

窓を背に佇んでいたのは、あの女性だ。手に持つ書類と、俺達を品定めするように二人を見比べている。

『試験の様子を見せてもらったけど、二人共良い動きだったし…流石かんとーリーグ殿堂入り経験者と、じょーと御三家の有力候補者だっただけあるわね?』

女性がにこりと笑顔を向けた。ブレイさんは俺を見て『そうなのか!?すげえな!』と普通に感動している。いやリーグ殿堂入りの方が何倍もすごいぞ?強い筈だ…だがそれよりも、履歴書は渡していないし、渡してたにしても記入はしない昔の事を、何故この女性が知っているのか。

『面接する前に全員の経歴は調べさせてもらっているわ』

こちらの考えを見透かすように女性は言葉を続けた。嫌な汗が伝う。

『貴方達以外も結構良い経歴の持ち主だったけどね〜…ブレイクス・シーンハート、火燈真奈都。お好み焼き屋燃え盛るしっぽ___もとい、"フレイムテイル"の採用試験に合格とさせてもらうわ』
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First yellow 3

チラシを拾い終え、少年は律儀に一際深く頭を下げた。黒いフードから金髪が覗く。そして俺よりも深みのある赤い瞳をこちらに向けると

『も、もしご迷惑でなかったら…』

そう言っておずおずと手渡されたチラシに目を通す。

[お好み焼き屋『燃え盛るしっぽ』オープンスタッフ募集!]

賄い有り、制服貸与、住み込み可…中々の好条件が並ぶ。しかも

『すげえなこの時給!』

ブレイさんに激しく同意した。詳しい金額は差し控えるが、チラシには個人経営の飲食店にしてはかなりの高額が書かれていたのだ。

余程の高級店なのか?尋ねようと少年に視線を戻したが、

いつのまにか少年は姿が見えなくなっていた。

『これ電話してからが良いのか?』

ブレイさんが行く気満々になっている。些か不安を感じたが……


お好み焼き屋はボロいビルの一階にあった。真奈都が小さい立て看板に店の名前書いてるの見つけてなかったら、素通りしてたな!

思っていたよりフツーな店の中に入ると、同じバイト希望だろう。チビっ子からもらったのと同じチラシを持った奴らが十数人居た。何人か腕っ節良さそうな奴もいる。手合わせしてえ!

『お待たせしました』

店の奥から姉ちゃんが出てきた。金髪のポニーテールにTシャツとズボン、店の名前が書いたエプロンをしている。メガネ越しに見えるのは赤い目だ。そういえばチビっ子もそうだったな。親子か?

『面接は来た順ですか?』
『マジでこの額金くれるんだな?』

先に来てた奴らの質問に姉ちゃんはにこやかに答えた。

『いえ、皆さんにはこちらの用意した試験をまとめて受けてもらいます。そしてこの額の給料をお支払いするかは、こちらの望む働きが出来るか、です』

姉ちゃんが言い終わった直後、俺達の足元の床が抜けた。まあ、落ちるわな!!
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First yellow 2

『___良いヨ!食堂が人足りなくてネ〜手伝ってくれるならタダで泊まってOKヨ!』

宿屋のおっさんは真奈都の宿泊を快くOKしてくれた。前にこの宿に泊まった奴に、お金がない時宿の雑用をすれば一泊分チャラにしてくれると教えて貰ったのだ。

『ただ悪いけど、毎年貸切で泊まる旅一座が今度来るから、部屋貸せるのは来週までネ』

『充分です…有難うございます』

丁寧に頭を下げる真奈都。こいつなら来週までに働く所を見つけるのは難しくないだろう。

『そっちのロン毛の兄ちゃんもヨ〜』

俺を指差す宿屋のおっさん。

『あー平気平気!そんな長居するつもりねえし!』

修行の旅に立ち寄っただけだ。また新しい場所へ旅立つまで……とこの時は思ってたんだけどなあ。


目の前が真っ暗な中、必死に、手探りで這いずり回る様だった。

十五歳から働かせてもらっていた工場の閉鎖が決まり、家の事情を知る工場長さんが、知り合いという別の大きな工場を紹介してくれた。遠いが何倍も立派で、給料や待遇も格段に良くなるだろうと。

地元を出発する日、友人や近所の人達が食べ物やお金をカンパしてくれた。父の墓や母の面倒は皆で見るからと言ってくれた。親身になってくれる人達ばかりで、本当は離れたくなかった。でも母の入院費や奨学金を自分で払い続ける為に、仕方なかった。
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