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大切なあの人へ2018

▽恋人に
真奈都…着物地のがま口ポーチ

ブレイクス…百花蜜とバラのピンブローチ

駆里…牡丹と桜の描かれた蜻蛉玉のネックレス

聖火…あの子に手編みの耳当て付きニット帽

水青…お揃いで色違いの箸

ソラ…普段使いできるお揃いのペンダント

ハビエル…シンプルな婚約指輪

日射…緑とチェックのストライプに黄色い花が付いたマフラー

智…パッチール型の小物入れ

小冬…あの人にリンゴマフィンと黒の手袋

ブロンセ…藍色のファー付きコート

更紗…水色系グラデーションカラーのタンブラー

砂金…花モチーフの銀のバレッタ

誠…深緑のマフラー(手編みだが言えない

追記へ続く!
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つらねかさね5

「さあさ皆様方。お騒がせして申し訳ございませんでした。お詫びに菓子と茶を召し上がってくださいな」

すぐに寿々さんが、店に数人いたお客様に声をかけると、子ども達が和菓子と茶を乗せた盆を運んで行った。手伝おうとすると「八重さんは拭かなきゃ!」と小夏ちゃんに言われた。そうだった……染みにならないと良いな。

手早く洋服に着替えすぐ旦那様達の部屋に向かった。

「失礼致します」
「おや八重。御苦労だったね」
「大丈夫?火傷とかしていない?」

お二人の気遣いが沁みる。

「先程はご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんでした」

土下座する私に、旦那様がふむと声を出した。

「以前から思っていたけど、八重は頭の下げ方が綺麗だよね」
「へ?」
「もう、あなたったら」

思わず顔を上げる。間抜けな声が出てしまった。奥様が言葉を続けた。

「八重は所作全体綺麗なんですよ!」

そこですか奥様。

申し訳ない気持ちで吐きそうな私に対し、お二人は普段と何ら変わりなく接してくださる。

「先程のは、君が責任を感じる事はないよ。休みなのに対応させてすまなかったね」
「いえそんな!とんでもないです……」
「……ねぇ、八重」

ゆっくりと奥様が、ある日の泣き止まない小冬ちゃんに語りかけるように私に仰った。

「あなたがお兄さんの事で責任を感じているのも、彩和家に迷惑をかけまいと堪えてくれたのは、分かっているつもりなの。

でもね。怒っていいのよ。怒っていいの!家族を、大事な人を悪く言われて、我慢しなくていいのよ」
「!……いえ、そんな……私は」

お二人は騒動の事を知っていて、その上で私と母に手を差し伸べてくださった。彩和家の皆も、家族みたいに接してくれた。だから尚更……

「〜め、迷惑を、かけたくなくて……兄の事は元々、私のせいだし……家族や、周りの人を、悲しませてしま……っ」

嗚呼あの時もそうだった。言いたい事が言えなくて、出てくるのは涙ばかり。

怒れない。私にはその資格がない。むしろ、家族の批判は全て自分が受け止めるべきだと思っていた。

兄さんはあの時何を言おうとしていたんだろう。本当は、私はそれを受け止めなければならなかったのに。

「泣いても良いと思うよ。君はよく頑張っている」

旦那様の言葉と、泣き止まない私の背をさする奥様の手が、温かかった。


「八重さんおでかけ?」「どこ行くん?」

玄関先で子ども達に声をかけられた。休日は室内で過ごす事が多い私が、二週も出かけるのは珍しいのだろう。

「人に会いに行くんだよ。少し遠いから、帰るのは遅くなるかもしれない」
「そうなんだー」「おみやげ!」「おみやげ!」「ダメだよせびっちゃー」

屈託のない笑顔が咲いて、微笑ましく思えた。

「皆良い子にしていたら、美味しいお土産買って帰ります」
「「「やったー!」」」

見送られながら、目的地に向かう電車の時間を確認し、少しだけ歩を早めた。
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つらねかさね4

彩和家は一階が店舗で二階が従業員の住まいになっており、私もそこに住まわせてもらっている。従業員用の玄関に入ると、店の方が何だか騒がしい。

「八重さん」

小声で呼ばれ側の階段を見ると、上の方で子ども達が固まっていた。

「どうかしたんですか?」
「お店にね、酔っ払ったおじさんが来たの……」
「すっごい偉そうな人なの!」
「八重さんを呼べって言ってたんだけど、寿々さんが、八重さんが帰ったら一緒にしばらく二階に居ろって……」

『いいから八重を連れて来いと行ってるんだ!』

店から聞こえた怒号に子ども達がびくりと肩を縮こませた。

『生憎八重は休みで外出しておりますので……』奥様の声だ。
『連絡すれば良いだろう!俺を誰だと思ってるんだ!!』

「お母さん……」

娘の小冬ちゃんが、店の方を見ながら泣きそうな声を出す。奥様が心配なのだ。

「ごめんよ皆」「八重さん?」

本とモモンが入った袋をそっと置き、軽く襟を整えて、店に入った。

「大変お待たせ致しました」「八重!?」

奥様や店の人達の戸惑いが痛い程伝わる。気遣いを無下にしたのは分かっている。けれど、居ても立っても居られなかった。

「おお八重!やっと来たか!」
「すみません叔父さん。わざわざお越し頂いて」

声を聞いて父方の叔父だとすぐ分かった。騒動の時怪我をして慰謝料を請求した張本人だ。赤ら顔でひどく酒臭い。

「怪我の具合はいかがですか?」
「ああ心配無用だ。今はこの通り!」

自慢げに腕を持ち上げるその姿に、父を思い出す。父もそうだったが叔父は酒癖がきわめて悪い。気が荒くなるわセクハラするわ、時には手が出る事もある。周りから常々自重するように言われているのに、この泥酔っぷりは飲める大義名分があったのだろう。

「実はなぁ、長から息子を本家次期当主にすると正式なお達しが出たんだ!」
「それはおめでとうございます。彼なら、立派な当主になる事でしょうね」

成る程。ヤケ酒よりは幾分かマシだが、あまり長居されると店に迷惑がかかる。機嫌を損ねないよう話を合わせて、帰ってもらうか別の場所に連れて行くか……

「しかし八重ぇ、お前も災難だよなぁ。あの一件が無ければ、当主はお前だったろうに」

哀れみなど微塵も感じないにやけた顔を浮かべながら言ってのけた。

「滅相もありません。自分にはとてもとても……」
「いやぁ長もお前に目をかけていたからなぁ、六連があんな事しでかさなきゃ今頃は」
「……昔の話ですので」微笑みで返した。
「本当にお前は父親と兄に似ず立派だなぁ〜そういえばお母さんは元気か?あの人も働いてるんだろう?まさか今頃汗水垂らす事になるとは思わなかったろうになぁ」

笑顔を崩さぬよう、しかし心の中で溜め息をついた。
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つらねかさね3

mblg.tv の続き

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私が彩和家で働き始めて数年後の夏。着物や商売の事を教わり、大分今の仕事にも慣れた。

母とは離れて暮らしていたけれど、旅館の仲居の仕事に就いてなんとかやっていけてるそうだ。久々に母の趣味だった押し花があしらわれた手紙が届いた時は、嬉しかった。

「八重さん、宿題教えてもらって良いですか……?」
「良いですよ」
「八重さん私もー!」
「私もー」
「俺も!全然分かんねえ!」
「ふふ、分かりました」

店の子ども達の勉強を見る事もあった。良い子達ばかりで、その姿に同じように慕ってくれていたいとこや甥姪達を思い出すが、騒動以降会う事は叶わないでいる。兄に至っては消息も掴めない。

いや、もし居場所が分かっても、きっと会わない。どうしようもない現実を思い知りたくなかった。もう私達の歩く道は、あの時違えてしまったのだと、そう考えていた。


普段休日は専ら部屋で過ごす事が多い。しかしその日は、注文していた本を受け取りにとある古書店に出向いていた。

「この配色の本じゃね」
「有難うございます」

店主のお爺さんから本を受け取る。図書館で借りた事があり、内容がとても参考になったので買いたくなったのだけれど、古い物だからか中々見つけられず、学生時代通っていたこの店に連絡すると、すぐ取り寄せてくれたのだ。

「着物、さまになっとるね。よう似合うてる」
「いえ未だ、着られている身で」

こそばゆい気持ちになった。昔は舞の時や行事等限られた時しか着物に袖を通す事はなかった。彩和家で働くようになってから、和装の勉強の為に着ていたのがいつしか着物でいる事が自然になっていた。着こなせているか自信は無いけれど。

彩和家でなければ舞踊から離れた身で着物を着るなんて、もう二度と訪れなかっただろう。

「今日和ーお爺ちゃんこれ、お裾分けのモモ……っ」

傷まぬよう箱を抱えて来店したその女性は、私を見るや驚きのあまり固まった。私は、そういえば彼女は親戚がモモン農家で、家に遊びに行くとよく振舞ってくれた事をふと思い出した。お互い話しかけたのは、ほぼ同時だった。

「ハッちゃん?」「お久しぶりです今宵(こよい)さん」
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