バレンタインデー…それは女の子が好きな男性にチョコと一緒に愛を贈る日。
男子も女子も一年で一番ドキドキする日だ。
そして、ここにもドキドキしながらその日を迎えた者が一人。
「…よし。」
時刻は午前8時。場所はとある高校の通学路。小さな公園の入り口で、その少女は一人気合いを入れていた。
背丈はおよそ140センチ。長い髪を二つに分けて結っている。クリッとした目が印象的な可愛らしい顔は寒さのせいかほっぺたが赤くなっていた。
その手には小さな紙包み。中身はチョコだ。赤いランドセルの背中が心なしかウキウキしてみえる。
「お。今日は俺より早くきたのか、さっちゃん。」
後ろから声をかけられ、少女の肩がビクン、と跳ねる。
「明良さん?!いつからそこに?!」
慌ててチョコを隠しながら、少女は振り返った。
ドンッ!
勢いよく振り返ったため、ランドセルが声をかけた男にぶつかる。
「ご、ごめんなさい!!」
よろけた男に片手を差し出す少女。しかし、所詮は小学生の力。当然男を支えられるわけもなく。
「あっ…。」
逆に少女自身がよろけてしまう。
「よっ、と。」
男は一歩後ろにさがっただけで踏みとどまり、少女をそのまま抱きとめる。
少女は自分の顔が熱くなるのを感じていた。
“ど、どうしよ!”
赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、少女はうつむく。そんな彼女の反応に男は首をかしげた。
「どうしたの?さっちゃん。」
うつむいたまま動かない少女の肩に手を置いて、男はしゃがみこんで少女の顔を見る。
“今、言うチャンス?!言わなきゃ!!”
少女は真っ赤な顔で男を見つめ、おもむろに隠していたチョコを差し出した。
「?…それ、俺に?」
少女の手の中の包みを見つめ、男が問いかける。少女は恥ずかしそうにコクンとうなずいた。
「今日、バレンタインデーだから…。」
小さい声で少女が言う。
「…そっかぁ。ありがとな、さっちゃん。」
男はにっこり笑って、少女の頭を撫でる。そして少女からチョコを受取ると、大切に食べるよと言って鞄にしまった。
「こんなに寒い中、待っててくれたんだな。顔、真っ赤になるくらい。」
男は優しくそう言う。
顔が赤いのは寒さのせいだけではないが、少女はただ黙って微笑んでいた。
「おっと、いけね。さっちゃん、そろそろ行かないと遅刻するよ。」
腕時計を見た男が、そう言う。学校はすぐ近くだが、走らなければ間に合わないくらいの時間だった。
「それは明良さんも一緒でしょ?」
くすっと笑って少女が言う。
「だな。じゃあ二人で走ろうか!」
男も朗らかに笑い、二人は一緒に走り出した。
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さてさて。バレンタインデー企画。年の差恋愛です。
とりあえず今日のうちに出来て良かった〜。
ま、わかりやすく言うと小学生女子×高校生男子ですね。
淡い初恋の香りがしますねぇ。
え、自分で言うなって?(笑)
とにかく、書けて良かったです。読んでくれた方に最大級の愛と感謝を。
2010年2月14日 坂本密名