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雪に埋もれる(Zenius)

 雪に埋もれる。振り返れば、さきほどつけたはずの自分の足跡が、一瞬にして消えていた。自分がどこにいるかも、どれだけ歩いたかも、もうわからない。歩き疲れたが、足を止めたら最後、そこから動けなくなるだろう。ヴァニッシャーは白い息を吐き出して、どうにか足を進める。
 ヴァニッシャーには、目的があった。使命があった。それ以上に、それらを終わらせて、もう一度逢いたい人たちがいた。できることなら、すべて叶えたいと願っていたが、このままではひとつも叶わない。それらを叶えたいという気持ちだけが彼を動かす。
 そして、やっと見つけたのは、小さな芽だった。極寒だというのに、雪の中から顔を覗かせていて、不思議と力強さを覚えるそうなものだった。ヴァニッシャーはそれが枯れないようにと、手で周りを覆ってはみるものの、どちらかというと、覆うことで自分が生き永らえるような心地さえした。
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