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その指

その指差し出された手に傷。腕の爪痕、指の裂傷、肘は、ぶつけた、のか
日焼けしない膚に纏わり付くテープを乱暴に引きはがす。奴は少し眉を潜めた。
絆創膏のしたで治癒していく肉の繋ぎ目、蒸れて湿った一際の白さは生まれ落ちる未熟児の息をしない石膏の創りそこなったホルマリンから干からびた満身創痍の体
「、を見て喜んでるの」
無意識に釣り上がる口角に触れて顰め面に浮かぶ不服の二文字。床と仲良しのお前から向けられる叱責するような眼差し。沸き上がる充足感。包帯の継ぎ目に爪を掛け綻んだ下から顕れる壊れた皮膚の地腫れに充足される。
止せと言いつつ両手を下ろすだけのお前に飛び付いてこめかみを重ねた。
覚えのない膏肓を覆い潰すだけの被虐心

(脆弱なからだを塞ぐ肉と筋骨だけ)



その指

小さい頃の夢と今の夢


暖かい空気に包まれて
目を開けた先に先生の横顔がある。ぼんやりと見ていると書物に目を落とす先生がこちらを向いた。やあ、おはよう。柔らかい表情で眼鏡を外した

「いい夢を見れたかい」

小豆色の布をレンズに宛てる。一連の仕種が心地よくてとろりと瞼を落とす。
昔の事です。カーペットの生毛の感触を頬に擦りつける。指を沈めるのはほぼ同時で

「あなたに強く迫っていました」

滑稽ですね、体を立ち上げ縮こまっていた両肩を鳴らす。相変わらず先生の眼差しは穏やかに向けられていて前髪の隙間から笑ってみせた。
先生は何も言わない。
節の目立つ手から眼鏡を取って耳にかけた。

「その頃コレに憧れていました」

屈託なく口に乗せ縁を持ち上げる。まだ先だよ、と目を細めた。


title-Joy

もしドラえもんがいたら

 子供服ってみたことある?
 すごく軽くて生地はタオルみたいにやわらいんだよ。知ってる?靴なんてこんな小さくて、手の平に収まるくらい。これなら履かなくても同じじゃないかってくらい小さいんだ。まるでミニチュアみたい。あの小さな穴に体が納まるんだと思うとちょっときゅんとしない?今の変な話じゃないからね。
すぐ大きくなるんだからなんでもいいって思うけど、本当にいくらあっても困らないよきっと。
 でもそれをいうならあんなものが人の体に納まることも信じられないよね。人の中にさらに人を入れて育てるんだから異様に変わりないか、どんな感じなんだろうね。僕らはきっと知らず仕舞いなんでしょうね


ふざけて彼の腹に耳を当てた。鼓動が布越しに伝わる。腰に縋るように頭を擦り付け没頭していると指が髪を梳いた。空しさに気が付いたが気付いていない振りをして腹部を撫でた。棒立ちの彼に膝付いた僕は沈黙を壊す言葉を手当たり次第に出し続ける。静寂の中で胎児を想像したら黙っていられなかった。

子供服の肌触りを知ってその小ささにきゅんとしてもその感覚だけは教えることも味わう機会も分からず仕舞いなんでしょうね、ごめんなさい

title-Joy

一番古い記憶


「お前べそかいて追い掛けて来て今にも落ちそうだったから、船の先ぎりぎりから手ェ振ってやったんだよ」
「んで、」
「落ちた」
「馬っ鹿だぁー」
「お前が[いかないで]って」
「違ぇよ、[俺まだ乗ってないよ]って」


(言ったんだよ)


title-Joy
[同]

寝言


ねぇ、甘ったるい声色が袖を引いて下を向いた先の甘ったれた面が鼻に付く
「抱いてくれるなら肋ごと潰してくれてもいいよ」
冷えた足先に唇の感触。温かった
「テメェ潰すのに背筋が何kg必要か計算しろ」
抜け殻ぶったマゾヒストの相手なんざ面倒臭ぇ。どれだけ疵を刔ったところで快感なら潰しても潰しきれねぇんだろうよ


title-Joy
[同]