芥川賞作家・柴崎友香が2010年に発表した恋愛小説『寝ても覚めても』。第32回野間文芸新人賞を受賞するなど、忘れられないかつての恋人と、その恋人と同じ顔をした現在の恋人との間で揺れ動く女性の年月を描き、多くの女性の共感を集めた名作が、主演に東出昌大、ヒロインに唐田えりかを迎えて実写映画化される。
大阪に住む21歳の朝子は、青年・麦(バク)と運命的な恋に落ちる。しかし、彼はある日、忽然と彼女の前から姿を消してしまった。それから2年後、東京に引っ越した朝子は、麦にそっくりな顔をした男・亮平と出会う。麦のことを忘れられない朝子は亮平を避けようとするが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。戸惑いながら、朝子も亮平に惹かれていくが…。同じ顔をした、過去の“恋”と現在の“愛”が、朝子の心を揺らしていく――。
本作では、東出昌大が初めてのひとり二役に挑戦する。つかみどころのないミステリアスな自由人と、心優しい堅実で誠実、実直でやさしい会社員。タイプの異なるふたりの男をどのように演じるのかが、大きな見どころだ。
フリーターの麦は人なつっこい性格で、行動が読めず、何を考えているか分からない雰囲気で“彼女”をまどわす。
真面目な亮平は日本酒の製造会社に勤務し、安心感のある彼氏として描かれる。東出は対照的な2人を演じ、麦役ではウエーブのかかった長めの髪形、亮平役は清潔感のある短髪で魅了する。
ヒロインの朝子役には、あふれんばかりの透明感がツイッターでも話題になり、2015年よりソニー損保のCMに出演し、注目を集めた唐田えりか。ドラマ[恋仲]で女優デビューし、[貴族探偵]にゲスト出演、2016年タレントパワーランキングで“清潔感がある10代から20代の女優”部門で1位に選ばれるなど、今後が楽しみな19歳だ。NHK[ブランケット・キャッツ]に出演中だが、今回はデビュー3年目にして初のヒロイン役を獲得。本作では9年という長い月日をかけて、ふたりの男性の間で揺れ動く女心を体当たりで演じる。
メガホンをとるのは、日本映画界・若手実力派No.1の呼び声高い濱口竜介。2015年公開の約5時間を超え、30代後半にさしかかった4人の女性の日常と友情、心の機微を丁寧に描き上げた5時間越えの意欲作[ハッピーアワー]が、ロカルノ、ナント、シンガポールをはじめ数々の国際映画祭で高い評価を受け主要賞を受賞し、同作で起用した演技未経験の日本人女性4人が[第68回ロカルノ国際映画祭]で最優秀女優賞に輝く快挙を達成した。その名を世界に轟かせ、第66回芸術選奨新人賞も受賞。いま最も新作が渇望される気鋭・濱口監督が、自らが映画化を熱望した原作で、満を持して商業映画デビューを果たす。
▽東出昌大コメント
このお話を伺ったのは2年前でした。
それから、ずっとずっと首を長くして、今夏ようやっとクランクインを迎えられます。
今は嬉しくて堪りません。
不安と好奇の入り混じった複雑な想いで、台本と睨めっこしている日々を過ごしておりますが、
奇跡のような映画を作れればと思っております。
頑張りますので、楽しみに待っていて下さい。宜しくお願いします。
▽唐田えりかコメント
初めて台本を読んで泣きました。
とっても素敵な物語で、胸が苦しくなったり、温かくなったりと感情移入してしまいました。オーディションが終わってからずっと受かってますようにと願っていたので、
受かったよと聞いたときは本当に嬉しかったです!!
ですがこんな大役をやらせて頂くのは初めてなので不安や恐怖もあり、プレッシャーを感じていたのですが、東出さんに、「朝子があなたで本当に良かった」と言って頂けた瞬間に、
思わず嬉し泣きしてしまいました。
それからは私で良かったんだと自信が持てるようになりました。
素敵な方々とご一緒できるのが、既に楽しみで幸せで仕方がないです。
この作品に私の全てを、それ以上をかけます!
十代最後の夏、大恋愛します!
▽濱口竜介監督コメント
私自身が心から面白いと思っている小説の映画化、その監督を任されたことに興奮と緊張を同時に感じています。
長い企画開発中、「同じ顔を持つ二人の男を愛してしまう女」という荒唐無稽さと、緻密な生活描写を併せ持つこの小説の「面白さ」はそもそも映像化可能なのかと不安にもなりました。
そんな中、主人公の「麦 / 亮平」として東出昌大さん、「朝子」として唐田えりかさんを迎えられたことで、この小説はむしろ映像化されることをずっと待っていたのではないか、そんな心持ちになりました。
この小説とキャストの出会いを、この上ない幸運と感じています。今もリハーサルしつつも続く脚本直しの中で、
「寝ても覚めても」(タイトルがまたとても好きです)という原作の、途方もない面白さや、懐の広さを改めて感じているところです。そしてキャストの2人の存在が、私の緊張を和らげてくれています。きっと、この上なく面白い映画になるでしょう。期待してお待ちください。
▽原作・柴崎友香コメント
誰かに恋をしたとき、なぜどうしてもその人でなければならないのか。
誰かを想うとき、最後に残る強い気持ちはなにか。それを知りたくて手探りでこの小説を書きました。
今回の映画ではどんな風景が見えるのだろう。
きっとわたし自身も驚くようなことが起こる、そんな予感を持って、完成を心待ちにしています。
『寝ても覚めても』は2018年、全国にて公開。