頬にぽたりと雫が落ちた。赤いそれは、行き場を失って首筋へと垂れる。二つの穴は今しがた穿たれたばかりなのに、既に塞がりつつあった。青年はだるそうに起き上がろうとするが、眩暈を起こして再びベッドへと倒れ込む。掠れた謝罪の声が頭上から降った。

「……ごめん」
「…泣きそうな顔」
「………、ごめん」


抑えられない生への衝動に一番絶望しているのは彼自身なのだと、気付いたのはいつのことだったか。素直にそんな彼のことを寂しいと思った。それが和らげてあげたいという気持ちに変わったのは、随分遠い日のことだったように思う。腕を伸ばして、頬を撫でた。視線が合う。そっと頬にキスが落とされた。

「好きなんだ」
「知ってる」
「…お前が、俺のことを恨んでいても」
「……バカだな、お前は」

震えた腕できつく抱き締められて、ロイズは小さく笑った。背中に腕を回して、あやすように撫でてやる。少し身体が離されたかと思うと、青と緑の瞳と視線がかち合った。

「いつか、」
「……ああ」

それ以上の言葉は必要ないと言わんばかりに、ロイズの瞳が閉じられる。もう幾度となく聞いた言葉だった。