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エゴイストの後悔

付き合って初めてのクリスマス休暇のことだった。アイオロスのクリスマス休暇とは実にフリーダムで、寮も関係なしに様々なことをして暇を潰す。授業をする訳にもいかず、かといって自習する気も起きず、向こう見ずな友人たちと雪の中クィディッチに興じたり、誰が一番多いデザートを食べられるかなどというくだらない競争をしたりと、実に無意味で有意義なバカンスを満喫していた。

幸運なことにルームメイトは全員帰省しており、夜中にこっそり温かい紅茶と買い込んだお菓子を持ち寄り、タオルケットに包まって明け方まで話すのが日課だった。しかしリラは恋人である先生の部屋でほとんどの時間を過ごしているため、大概はリオと二人きりだ。


クリスマス・イヴの日、ファリオンで一日中デートした後大広間で食事をして、寮でだらだら過ごしていた。友人の枕を二つ程拝借して位置を高くし、もたれかかりながら新聞をめくる。同じようにして本を読んでいたリオが突然立ち上がり、既に閉じられた本を置いた。首を傾げながらそちらを見ると何か言いたげな表情で、俺がぽんぽんと膝を叩くと素直に寄ってきた。たまに見せるこういう素直なところが可愛いと思う。思わず、何も考えずにキスをした。腕が背中に回される。この状況は非常にまずい。

リオとそんな雰囲気になることは多々あったが、その度に回避してきた。彼女は自分より年下だし、汚してしまう恐怖は欲望を遥かに上回っていたからだ。しかし幾ら綺麗事を並べようと所詮は男で、女だ。

「ん……っ!」

胸元を弱々しく叩かれて我に返ると、リオは苦しそうに眉根を寄せていた。一度唇を離したが、すぐにキスをする。驚いたような目は今度は閉じられない。そのままニットのワンピースのチャックに手を掛けた。

「なあ、どこまで許してくれる?」
「…ユーティン…?」

ぼうっとした瞳で名前を呼ばれて、啄ばむように何度もキスをした。ひとつ動作を進めるごとにリオの反応を見る。いつもとは違う艶やかな表情に理性が削られていく。そうさせたのは自分のくせに、段々抑制できなくなっていくのを感じた。

「…怖い?」
「う、ん。でも、ユーティンなら大丈夫」
「可愛いこと言わないで、余裕無くなる。」

痛かったらすぐに言って、と念を押してから少しずつ、すぐに止められるように進む。息を呑むのは聞こえないフリをした。キスをして紛らわそうとするが痛いものは痛いらしく、次第に涙が浮かび始める。

「痛い?」
「へいき、…だから」
「爪立てていいよ。背中」
「ひ、あ、ッ」

痛みに顔を歪めるリオを見て、心の一部が氷を落としたように急激に冷えるのを感じた。こんな思いをさせてまで自分の欲望をぶつけていいのかという疑問が脳内を廻る。入ってきたときと同様に後退して、震える身体を抱きしめた。

「無理させて、ごめんな」

涙を拭って目元にキスをする。彼女が何とも言えない表情で抱き締め返した。



エゴイストの後悔
(信頼も自信も急降下)




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【未来】マイハッピーエンディング

今日は愛妻の誕生日だ。彼女の好みは熟知してると言っても過言ではないが、たまには趣向を変えてみるのも悪くない。子供が寝付いたらとっておきのワインを開けてお祝いしようか。プレゼントは喜んでくれるだろうか。
そんなことを考えながら歩いているとあっという間に家の近くの通りまで来た。マンションを出てマイホームに移り住んだのは記憶に新しく、ちょっとしたイングリッシュガーデンは自分で言うのも何だが、なかなか趣味がいい。

リラにも言われたが、俺は家族に甘いらしい。むしろ甘くせずにはいられないと言いたい。

「パパ!ママ、パパ帰ってきたよ!!」
「おかえりなさい、お父さん」

どたどたと走る音が聞こえたと思ったら、すぐに玄関が開く。飛びついてきたのは愛息子と愛娘。

「ちゃんと良い子にしてたか?」
「うん!パパ、プレゼント買った!?」

神妙な顔つきで声を顰めるローズに、何だか自分の小さい頃を見ているようだと思った。一方、ローズより六歳年上のヴォルフラムは年の割には大人びていて、俺よりもクレアに似ているのではないかと思うことが多々ある。しかし家族想いの良い子で、近所の女の子からモテているのだとリオが言っていた。これは将来有望に違いない。

「おかえりなさい、ユーティン」
「ただいま」

笑顔で出迎える妻の腰を抱いてキスすると、リオは真っ赤になって「子供の前だよ!」と反論する。可愛いなぁ。

「パパ、ローズにもちゅーして!」
「可愛いなぁ。ヴォルフもこっちおいで」
「僕はこどもじゃな」
「来なさい」

二人を思い切り抱き締めてキスをし、これでもかと言うくらいに頬をすり寄せた。楽しそうに笑ってリオがキッチンに消える。彼女の誕生日なのに料理を作らせてしまって非常に申し訳ない。俺の要望でローズと一緒にケーキまで焼いてもらった。ヴォルフラムには庭のバラを何本か詰んでおくように言ってある。ささやかだが、きっと彼女も喜んでくれるだろう。



マイハッピーエンディング
(これからもずっと)


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【中世】紅い涙

両国の王子同士の譲歩と妥協により協定が結ばれた。"互いの国の姫を、相手の国に嫁に出そう"と。和解策と言えば聞こえは良いが、詰まるところ、彼女らは牽制と盾の意味合いを持った人質だった。
リクフェスティ家からは第一王女リラールが、セシル家からは第二王女フィンが抜擢され、それぞれの侍女と共に第二王子の下へ嫁ぐことに決まっていた。

協定を告げたときのリラールは酷く冷静だったが、その表情に僅かな期待と恐怖が入り混じっているのをユーティンは見逃さなかった。

「アルエ王子は優しそうな方だった。心細いだろうが、ベラもいる」
「お兄様、私…」
「すまない」

リラールが変装して街に出ていることも、その先で敵国の第一王子に恋をしていることも、ユーティンは知っていた。酷な頼みごとだと重々分かっている。それでも戦争を早く終わらせたかった。この協定が上手く成されれば膠着状態は解け、状況は大きく変わってくるだろう。

「本当に、ごめん。リラ」
「…大丈夫。私、上手くやるから」

そんな兄の気持ちも、リラールには痛いほど伝わっていた。自分に言い聞かせるようにそれだけ言うと、荷物をまとめるために部屋に戻る。既にイザベラが荷造りを始めてくれているのを知っていたが、あの場にいることは耐え切れなかった。

たとえ想いが届かなくても、彼を見られる機会は増える。
自分の夫になる王子を愛そう。それが自分の愛する国と、彼のための平和に繋がるのなら。



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【中世】慟哭、そして喪失

いつまでも続く両国の膠着状態への不満が募り、やがてそれは大きな戦争へと姿を変えた。両国の騎士隊は城の護衛の最低限を残して次々に戦場に駆り出される。まるでこれで決着をつけるとでも言うかのように激しさを増す戦場は、最早ただの地獄だった。


東西の両端、戦場から少し離れた建物に設置された観戦席ではそれぞれの国の王子と王女が事の成り行きを見守っていた、はずだった。しかし王女に護衛をつけ、自身の従者のみを連れて四人の王子は激戦地へと足を踏み入れる。王子とは言え王位継承権がある者同士、今の状態は互いにとってもデメリットしかないことは分かっている。現状を打開すべく、話し合いの場を設けたのだった。


握手と共に挨拶が交わされ、それぞれの従者は主人を守るべく四隅に立つ。数十分にも渡る話し合いの末、交渉が成立したと思われたその時。金属音が木霊した。



「クライド!」


誰の声だったか分からない。胸を貫く熱い痛みにクライドの顔が歪む。しかし相手の姿を認めると安堵したような表情に変わった。初めて剣を交えたときから叶わない想いに焦がれていたのだから。クレアに向かって口の形だけで許しを請うと、剣を突き立てる銀髪の青年を見上げる。


「俺を殺すのが君でよかった」





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Trick or Treat?


久しぶりすぎんだろ。ってことでハロウィン企画おつかれさま!
月夜でパワー補充は充分に出来たと思われます。が、物足りないと言えば物足りないので単発はちょいちょい誘います!

ユーリオssがまとまらない。しばらく悶々しながら考えます。
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