ドアの閉まる音が聞こえた瞬間、白石はその場に崩れ落ちた。
……ごめん、黒田。
黒田は、純粋に後輩として自分を心配してくれていただけだ。
その好意を、ただの先輩として受け取る事の出来ない自分。
黒田に何かをしてもらう度、黒田に優しくされる度。
黒田を独り占めしたいと、誰にも渡したくないと思ってしまう。
自分の想いが叶うなんて思ってない、なんて言い訳しながら、きっとどこかで期待していた。
いつか、黒田も自分の事を好きになってくれるんじゃないか、と思っていた。
……そんな事、ある訳ないのに。
だから、これ以上関わり合いたくない。
優しくされたくない。
期待したくない。
そんな自分勝手な理由で黒田を突き放した。
木村の為、なんて嘘だ。
ただ、自分が傷つく事から逃げたんだ。
白石は、携帯を取り出して、アドレス帳を開いた。
ある人物の名前を表示させる。
『米沢瑞樹』
米沢は、きっと賭博の件について何か知っているのだろう。
その情報を得たら、自分は部活を辞めよう。
元々部活引退まで残り少ない。
野戸も、きっと止めはしないだろう。
部活という共通点さえなくなれば、きっと黒田とは顔を合わせなくなる。
黒田、ごめん。
3年前と同じ、逃げる事しか出来ない自分を自嘲しながら、白石は米沢にメールを送った。