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モノクロ11

『……先輩?』
『っ!?』
気がつくと目の前に黒田の顔があった。
黒縁眼鏡越しにジイっと見つめられる。
その視線が何故かすごく恥ずかしくて、思わずバッと顔を逸らしてしまった。
『なんだよ、ジロジロみんなバカ』
悪態をつくと黒田はだってー…と呟いた。
『先輩何だかぼんやりしてないですか?大丈夫ですか?』
黒田は心配そうな声に、ジリジリと頬が焼ける感覚がする。…なんだこれは。
『…ちょっと寝不足なだけだよ』
顔を逸らしたまま一言呟くと、またそんな不摂生してー、と黒田がプリプリ言った。
それを見た野田が『まーた始まったよ、夫婦漫才!』とゲラゲラ笑った。
『その呼び方やめてくださいよ!』と黒田が応戦する。
黒田の視線が外れて少しホッとする。

白石は自分の頬に手を当てた。まだ熱い。
こんなやり取り、今に始まったことじゃない。むしろ日常茶飯事だ。
おかしい、どうして今こんなに黒田の顔を直視出来ない?

その時、教室の戸がガラリと開いた。
大きな封筒を入ってきたのは新聞部唯一の女性部員、木村明里だった。
『あっ、き、木村さん!』
黒田はパアッと顔を上げた。木村はキッと黒田を見据えて言った。
『黒田君、来月号の校内新聞の原稿だけど、誤植があったわよ』
木村は大きな封筒から原稿を取り出した。黒田は『ええっ!』と慌ててかけよる。
『どっ、どこに!?』
『こことここ。もう、毎月なんやかんやあるんだから、気をつけてよね!』
黒田は『すみません…』尻尾と耳がうなだれた犬のようにしゅんと小さくなった。
『まーまーいいじゃん、大した誤植じゃないしさ!』
『メチャクチャ言わないでください、野戸部長』
木村はキッと野戸を睨んだ。
『いいですか、私たちは真実を正しい言葉で全校生徒に伝える義務があります。適当は困るんです。』
ふぅ、と溜息を吐きながら木村は言った。
『全く…白石先輩だけですよ、真面目で丁寧な人は』
俺もちゃんとやってるぞー!と野戸が抗議したが、『部長は仕事は出来るけど、そもそも遅刻が多すぎです』と一蹴されていた。

黒田はまだしょんぼりとうなだれていた。
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