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式神使いさんの2

一個前の記事の続き。
同じく夢小説に等しいので要素に注意お願いします。






「───ただいま。」
「あっ、お帰りなさい。どしたん、後ろのは。随分がっちりホールドやん?」
「逃げないって言っても離してくれないんですー。」
「…言っても逃げそうだけど。」
「流石に車から飛び降りる趣味はないですね。」

そして、私を小脇に抱えたままの獅土さんは小さく笑った。

「で、黒鴉に入るんだよね?」
「えっ、入りませんけど。」
「大人しく連れてこられたんだから、入るよね?」
「入りません。協力はしますけど。」

大人しくさせられて連れてこられたというのに、随分酷い言いようだ。
そしてまぁ、入るつもりはないので嘘は言っていない。

「………獅土さん、珍しく強気ですね…」
「おとなしい状態なのに珍しいよね…」
「(なんかこじれてそうやけどな…)」

ひそひそ離しの向こうで「まぁ、いいか」と烏丸さんが呟いたのを聞きながら、漸く降ろして糸をほどいて貰う。そして獅土さんから距離を置いた。

「その露骨なのは傷付くなぁ。」
「獅土さん結構怒ってそうなので。」
「…どうだろうね?」

あからさまに不機嫌なのがわかる。取り敢えず憤りが過ぎていつもの状態なのかもしれないなと内心苦い顔をしてしまう。周りに目を向けると、どうやら此処に居るのは、一部式神使い達のようだ。坊っちゃんの姿も見当たらない。
その中でふと、るかちゃんと視線がかち合った。

「で、なんで入んねーんだ?」
「結局、終月に加担したからね。レベル4に建築構造の製図が有るのを突き止めたのは私だから。」

ピクリ、尋ねて来たるかちゃんの眉間に皺が寄る。
そりゃあ、ああなった原因は此処にいるんだから、しょうがない。

「最初からスパイだった訳だよ。まぁ、父のお陰であっさり入れたけど。」
「その割には、お前が入ってから随分間があったように思うが?」
「ぐぬっ……仕方ないじゃん、なんやかんや誰かしらぴったりくっついてくるんだもん!!」

思わず本音を漏らせば、るかちゃんが口元を緩めた。

「おいおい…とんだスパイだな。遊び呆けてんのか?」
「、向こうさんにも同じ事を言われたよ…。」

「ちょっとー、遊んでるのは構わないけど、尻尾くらいは掴めないのー?」とは、彼が時折溢していた言葉。
若干目が笑っていなかったのが困るくらいなのに、それほどまでに誰かしらいたのだ。

「そーかよ、んで?テメェが出した負傷者は?」
「知りません!」
「0だよ。俺と遊んで力尽きたからね。」

ぽふぽふと私の頭を撫でて獅土さんは言う。やけに絡んでくるのはさておき。はて、そんなつもりは無かったのだが。
るかちゃんは頬杖を付きながら、興味無さげに此方を見て言った。

「じゃあ、良いんじゃねーか?」
「はい?」
「テメーは、心から終月に賛同したのか?」

そう問われて、首を横に振った。
別に終月の皆が特別好きだったとは言わない。寧ろ、連れ出してくれた茫と金巻にしか私は気を許した覚えはないくらいだ。

「それはないね。内二人の人柄にだけ。かといって止める気も無かったわけだけど。」
「止められたら、お前は生きてねーよ。」

そう言って笑うるかちゃんに、ああ、と少し納得する。遅かれ早かれ、ああなっていたのは察したらしい。

「まぁ、でも。参加しない。協力者の立場で居させてください。これは私のけじめだから。」

そう言って苦笑いすると、烏丸さんが少しだけ困った顔をした。

「んーとな?情報は流せんし、名探偵サマ居らんと虚霊かどうかは解らんけどええんか?」
「ああ、大丈夫。このアクセサリーが教えてくれる。」

そう言ってみると、ん、と一部が止まった。

「そう言えば、それ。誰の?」
「……ホローラビットの。」
「……本人のか?」
「うん。」

口をつぐんだが、内何人かが引いているのはわかって苦い顔をする。

「良いじゃん、なにも残らなかったんだから。……金巻くんの私物も、どっか行っちゃったし。」

二人とも、居なくなってしまった。
警察を覗いた際に見た報告書に、会えないことを知って口を噛み締めたのは良い思い出だ。

「まぁ、取り敢えず坊っちゃんにはよろしく。気が向いたら寄るよ。」

そう言って踵を返し、ドアに向かおうと歩を進める前に襟首を引かれた。
そしてその後ろから声が上がる。

「ちょお待ち。」
「なんですか。」
「GHOSTのデバイスないやろ?これ渡しとくわ。」

そう言って渡されたバッジに、少し口を閉ざす。

「そっか、ケータイ彼処に落としてきたーのか。」

言われて見れば、通信機器など持ち歩いて居なかった。
地図を便りにひたすら辿っていくのを繰り返してたから、体力はついたように思う。

「じゃあ、一応。」
「んで、此処から帰すための条件があるんやけど。誰かしらに所在は教えておくんやで?自宅近辺から離れる時は絶対や。破ったらここ引きずり込むからな。」
「………あのですね、一応あくまで協力者だと。」
「君居ないと煩いのが数人居るんやわ。俺も協力者の所在は掴んでおきたいしなぁ?」

ニヤニヤしながら言うので首を傾げたが、襟首を掴む存在かな、と少し検討をつけて「わかりました」とだけ言った。

「威勢はええのに、ほんま素直やないなぁ。」
「…素直だと思いますが?!」
「まぁ、比較的なぁ?」

ニヤ付いている烏丸さんに口をへの字にしかけたが、ふいっと顔を反らして襟首を掴む手を軽く引いた。
まぁ、離れないのだけど。

「ちょっと、離してください。」
「んー、どこ行くの?」
「自宅ですけど。」
「じゃあ俺も。」
「なんで?!」

ぐいーっと手を引かれて、困った顔で回りに助けを求めるけど、残念ながら誰も助けに入らず見送られた。


「アレ助けたらなに言われんだろうな。」
「なんも言わんけど、目付きヤバくなりそうやな。」
「まぁ、あの後、結構滅入ってましたからね。」




取り敢えず自宅に帰ると、誰も居なかったものの、今でも生活していそうなくらい綺麗な状態だった。恐らく、あの事件の後に協会で働いていた女中達だろう。父の恩恵は未だに残っているようだ。
綺麗に整えられたリビングは、少しも埃っぽくなくて、もしかしたらさっきまで居たのかもしれない。
取り敢えずお湯を沸かそうとポットを確認すると、やはりこれも使われているようでお湯が沸いていた。

「お茶で良いですか?」
「構わないよ。」

棚にある茶葉を確認すると、やはり賞味期限はまだ先だ。
急須を出して、湯飲みもだして。そうしたら、後ろに立った彼に焦れたように手を掴まれた。

「…なんですか?」
「お茶とか良いから、話がしたいんだけど。」

心配性と言うか、彼自身の庇護欲に火を点けてしまった様で。それがまだ燻ったままであるのは、此方が応答しないからだろう。
少し罪悪感は有るが、そもそも構わないと言った彼らの神経を少しばかり疑うが、確かに協会内にいる間和気藹々とした彼らは此方を何かと連れ回していたり絡んできたり。
彼もそのタイプだったと思う。

「…私が飲みたいです。」
「…君って本当にマイペースだよね。」
「それは獅土さんには言われたくないような。」

困った様に言うと、う…と彼は少し唸った。
取り敢えず手は離してくれたので、茶葉を入れた急須にお湯を注ぐ。

「俺は、黒鴉に入って欲しかったんだけど。」
「そう言って、また第三勢力と手を組んでいたらどうするんですか?」
「あはは、今度の相手は虚霊だよ?どう利用するって言うの?」

まぁ、あの後じーさんが彼らに見付かったので有れば、多分──。というわけで、彼処が閉じてしまった今、終月としての血はこの髪の持ち主で途絶えている。
つまり、現状に於いては彼らを操れる向こう側の世界の人間はもういないと言うわけだ。

「───そうですね、終月とはまた少し思想が違う、向こう側の世界の人間なら可能じゃないですか?」
「そうそう溢れているかな、そういう人間。」
「まぁ、顔を出すと迫害を受けてきた、そんな感じもなくはなかったですけど。」

あの"ハク"が喋るし好意的だしで異例だった訳であり、普通はそういう存在なのだ、そもそもが。
まぁ邪な感情を抱いた者がいて、悔恨が残ったんでしょうね。そういって、話している間に淹れたお茶を片方差し出した。

「まぁ、実際のところ、フリーですけど。どうぞ。」
「…ありがとう。」

受け取る時は大人しいのだから本当に良くわからない。
でも、何処かむっすりしたままなのは、良くわかった。

「獅土さんは、自分が気にかけている存在には目の届くところにいて欲しいタイプなんですね。」
「…解ってるなら、これ以上俺に心配かけさせないで。」

思わぬ返しに、返す言葉が浮かばない。皮肉を言うには少し、無神経が過ぎないか。
彼は優しいから、きっと真剣に考えてくれてるんだろうと思うし。

「…私は、どちらでもない方が私が動きやすいです。」
「……どういう意味?」
「私の気持ちが未だに中途半端なので、多分、居ても迷惑がかかるだけだから。」

仲間にも、名誉にも。
それは、申し訳ない程に後に響くと思うし、知っているもには確実に良い顔をしないだろう。

「…迷惑、が何を意味するかはわからないけど……そうだね、取り敢えず姿を眩まさなければ良いよ。次居なくなって見つけたら、あそこの組織に住ますから。」
「……それは、ちょっと。」
「でしょ?」

にこりと笑むから、本気度が凄い、といえば良いのだろうか、兎に角真剣な様だ。ちょっと怖い。

「改めて、宜しくね。」
「……えっと、はい……よろしく、です。」

まぁ、それだけ心配かけたんだと思ったら、仕方ないかな、差し出された手を握り返した。





──────────
二度も目の前から消えて、しかも毎度年単位で見付からないから余計に心臓に悪い存在だと言う自覚はないです(まぁ、追々自覚します。)

式神使いさん

二個前の記事の子です。
またもや書きたいところだけ。
最終章の協会が崩壊した辺りになります。

夢小説に等しいので、読むときはそこだけ注意お願いします。
獅土さん、どうなんだろうね、これ。(個人的に重度のシスコンに見えるんだよなぁ)
因みにこの時点では水月は金巻くんが頭ヘリックスしたの知りません。



あったかい時間はほどなくして崩れた。
終月側が動き出したのだ。
緊急態勢と、協会本部への襲撃。
私たちは本部へと向かい、幾つかのチームに分かれ、そして───いざ捜索を始めてようというタイミングで私は腹を括って、後ろから方々に散る仲間に向かって虚霊を仕向けた。
自らは一に乗って、悠々としながら。

「──お前も加勢しろ、水月!!」
「あァ?」
「──煩いなー、私はあの子にしかつかないっつってんじゃん。」

男の肩に降り、壱の中から上着を取り出した。
袖に腕を通しながら、その場に居るメンバーに笑いかける。

「じゃあ、誰が相手になる?」
「っ水月、お前…」
「うん、終月側、だねー。金巻くん、連れて来たかったなー………そしたら、もっとマガツヒと遊んであげたのに。」

言いながら、渡されていたマガツヒを2体、側に居た虚霊を媒介に孵化させる。でも──どうしようもない焦りが腹の内を巡っていた。
此方に来てからこの計画は知らされて居ない。ただ、地下へ行く話を聞いていただけだ。
クシナダの刃が見えて飛び上がり、再び壱に乗る。マガツヒを───そう思い、指を、視線を動かした瞬間、潰されたマガツヒの一方が見えて。突き刺さるクシナダの刃に、苦笑いする。

「……何時からだよ。」
「んー…あの日、私も死んだんですよ。だから、私は着いて行ったんです。空っぽなんです。ほら、余所見してると危ないですよー?」

そう言って、スッと後ろに下がる。敵と認識されるなり、一部協会員が此方に攻撃を仕掛けてくるのを避けると、近くに居た他の協会員に向かう。それを獅土さんが防いで、そして向かってくる終月の兵を薙いだ。
そして一方でまだ私に向かって降り注ぐ攻撃をそこら辺の虚霊共を手繰り寄せて防ぐと、直ぐ様近辺の虚霊を次の駒にして散開させる。

「ふざけんな───おい水月!!全部終わったら戻ってこい!!」

誰でもない彼にそう言われて、ふるりと首を振るう。
終月の兵は破砕されていく。そしてマガツヒも。

「戻りません…!!」

攻撃してきた協会員へ威嚇程度の攻撃をする。
ちょっと虚霊を仕向けるだけの、簡単な動作。そもそも彼にはバレているのだ、この憑力の底が。つまり私が虚霊をほぼ防御にしか使ってないのも、獅土さんに攻撃を集中させているのも、きっと。
やがて跡形もなくなった終月の兵に、此方も大分減って来て、虚霊を拾う時には大半の協会員は避難済みで、ほっとしたのも束の間。
視界が白くもやがかって来る。
───終わる……
そう思い、退こうとした瞬間。空中に浮いた瓦礫を渡って来たのだろう、獅土さんに腕を掴まれた。

「おら、帰んぞ。」
「なんで、」
「ほぼ防御しかしてねーじゃねぇか、バレバレなんだよ。」

グッと腕を引かれると、りんねが鈴に戻り、ポケットに入って来た。
数人の協会員達が此方を見て、疑心暗鬼な顔をしていて。それに構わず獅土さんが外の白み始めた空間にクシナダを出すと、グッと私の腕を引いて乗せ、他の協会員達に乗るように促す。
けれどふと手が離れた時に頭の中を過る存在。
───深獄が開いて……そうしたら、あの子は?一人じゃないだろうか。足手まといだとか今はどうでも良い、行かないと。
クシナダが上がろうとした瞬間だった。私はそこから降りる。
頭上から驚く声が聞こえて、答える。

「…っおい?!」
「ごめんなさい、やっぱりいけません!!」
「は、」
「私が、着いてなきゃ…っ」

そう言って、深獄へ繋がる狭間の回廊へと落ちて行った。




落ちた先、そこは既に静まって居て、即座に白い髪を探す。すると直ぐ側に寝転んでいた。
声を掛けようと近付き、直ぐに察する。
虚霊と下半身が交わったままのどちらともつかない姿で、目を閉じることもなく転がって居たから。
そっと手を伸ばして、目蓋を降ろす。既に呼気はしていない彼だったものに涙を溢した。
終月を名乗るだけで迫害されてきた一族。けれど、この子はまるであの翁の操り人形だった。好きに生きている様で、一族に縛られた一人の子供。
私はそういう意味では昔から家紋や一族という括りが好きじゃなかった。何より、自らが自由に動けない…と、思い知らされてからは外と関わるのをやめたくらいだ。
それを拾い上げたのはこの子だった訳だが。

「…なんで死ぬんだよ、ばか……」

その頭を抱き寄せて、まだ少し温かい身体に、堪えきれず涙を溢した。最後に会ったのは、何時だっただろう。
スーツの上着を脱いで身体に掛けてやる。
その時不意に、遠くの暗闇が僅かに光り、そしてそこから溢れ出ていた虚霊が途切れた。
───嘉神くんか、
ぼんやり眺めていると、ここから離れた場所で黒い影が上昇し、遥か上空へと飛んでいく。その内、裂け目の向こうに行くと、見えなくなった。

「──このままここにいて良いかな?」

独り言を呟くと、虚霊の光がふわふわと此方に集まって来ているのに気付いた。
どうやら、彼に集まって来ているらしい。
それはきっと彼の身体を乗っ取ろうとしているのではと感付いて、りんねを呼ぶ。

「──モドルゾ。」
「茫ちゃんからこのまま虚霊取って。」
「融合シテイル、ムチャイウナ。」
「ううん、出来るよ。じゃなかったら、壱で噛み砕いていい。渡さない、こいつらなんかに。」

そう言うと、りんねは無言でコダマを噛ませた。すると、ずるりとコダマは離れた。りんねも少し驚いている。

「ね、ねぇ。式神って、元はこういう厄落としなんだよね?」
「ソウダナ。」
「ねぇ、りんね、上に戻ってこの子を」
「コレハ此処へ置イテイケ。」
「でも……っ」

りんねが口を閉じるから、此方も考えてしまう。そこでふと、長い髪が目についた。

「、ちょっと待って。」

懐にあったゴムに手を伸ばし、そっと彼の髪に触れる。一房手に取りキツく縛って、バラけない様に数センチ上で切る。
普段の自分ならおかしいと思うその行動を、りんねはなにも言わず見ながら側に居てくれた。
終わると、りんねの方に振り返る。

「りんね、戻ろ。」
「そこの瓦礫の上に乗れ。」
「?ここ?」

小首を傾げながら、言う場所に乗る。
りんねがふわりと光った。

「それ、手放すな。」
「えっ、当たり前。っと、」

少しふらついて、ぺたんと瓦礫の上に膝をつく。

「───悪いな、ここでお別れだ。まだここが残っていたら、こい。」
「へ、りん」
「壱!」

ぶわ、と足場が光り───私は物凄いスピードで上空へと打ち上げられた。
その速度に耐えきれない瓦礫の端が、時折崩れて。
その先、虚霊の群れに突っ込んだ。空間の裂け目だ。すると先程切った髪が急に光り出す。
虚霊の群れは消え、私は抱き上げられた。

「ふーん、寝たと思ったら。すぐ起こされたね。まさかの君に。」
「へ、え……なんで、」
「なんでだろうね。さて、ご好意に甘えてあちらに戻ろう。……閉じたんだろう?協会戻る?」

そう訪ねられて。首を横に振るった。
戻った裂け目の入り口は誰もおらず、瓦礫でできた真っ暗で洞窟のような空間をちらほら泳ぐ虚霊が居た。それらは淡い光りを発し、恐らく地上までの道を照らしているのだろう、ふわふわ、ゆうらりとただただ長い道を作っている。

「少し頭冷やしてから……それから、考えるよ。」
「…ふぅん。まぁ、ボクは詳しいこと、知らないけど。」

言いながら、彼はふうわり浮かぶ虚霊を一匹捕まえる。
くしゃりと握ると、その光は消えた。

「…じーさんところ、行く?」
「今は君が居なきゃなにも出来ないのに、戻る意味ある?完全に閉じてしまった裂け目を開くのも容易じゃない。ましてや、黒髪の彼女は一族の生き残り、とか言うわけでも無さそうだからね、行き来する方法も知らなそうだ。」

クスクス笑いながら、一匹、また一匹捕まえては虚霊を消していく。
段々と彼の方に集まってくるのを見ながら、小さく相槌を打った。

「……そっか。ん、とりあえず、地上に出よっか。」
「この先、虚霊の行く道別れてるよ?」
「あー、あちらさんが出た道じゃなきゃ良いんだけど。」
「………」

光を集め、彼はじっと手を見た。
やがて歩き出す。

「行こう、こっち。」

虚霊に触れながら、彼は道を突き進んで行った。
意外と光自体は襲っては来ないらしい。
そのまま辿って行くと、その内地上の明かりが見えてきて。
ふと、彼が振り向いた。

「良いんだね?」
「うん。…晒した以上、戻る理由もないし。」
「…そう。」

りんねも、居ないし。
目を伏せ、それから顔を上げると、ぐいっと襟首を引かれて、首を傾げる。

「…大丈夫。誰か通っただけ。」

ひそりと囁いて少し間を置いて彼から表に出た。そして手招いて、私にコートのフードを被らせるなり抱き上げ、即座にその場を離れる。
暫く道を行くと、まだ協会周りには虚霊が彷徨いて居た。

「……サイノカミ、飲まれたのかな?」
「設置場所が崩れただろうからね。」
「そっか……無くなっちゃったんだ、協会。」
「…少し休めば?ボクはまだ動いて居られそうだし。」
「……珍しい。」
「そんな気分なんだよ。」
「…じゃあ、お願いします。」

言いながら、目を伏せる。そして気絶するように、意識を手放した。




追記───→
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神喰い2にくそハマった


ギル可愛いですギル!
あとハルさんが好きすぎる


おっさんトークにでもするつもりで書いたハル+主♀………のつもりが、なんか色々間違った上にやっぱりギルが可愛いだけの没稿を友人にあげたところ、没稿じゃねえだろと言われたので上げてみる
ギル→←主♀っぽい




「……ハルさんってさあ、足フェチです?」
「…ん?」

グラスを傾けて、隣を見ながら首も傾ける。
ハルさんはグラスを煽りながら此方を横目で見て、飲み干すなり問いに答えた。

「間違ってねえな。見えるのも良いし、隠れてるのも良いし、シンプルなのも良い。」
「ははぁ、どっちかって言ったら太もも大好きな訳ですか。」

へらりと笑って、チラリとラウンジを見回す。
この場に居る皆の内、聞こえたらしい数名が固まって居るのが見える。

「お、解ってくれるぅ?」
「そうですねー、肉付きが良くても良くなくても魅惑的ですからねー。」
「そーそー、しかも包み込んでくれる柔らかさがある。」

この辺で既に、カウンターの私達の回りから大体の人は移動した。

「どうでもいいですけど、ニーソって結構温かいですね。寒冷地任務は素足じゃ結構寒くて。」
「お、目覚めた?」
「自分の絶対領域は見たいとは思いませんね。」

神機振ってる身ですから、ユノちゃんやシプレみたいな柔らかさは無いですし。
チビ、と舐めるようにお酒を飲んで、だいぶアルコールの味を受け付けなくなって来たなと、100%オレンジで薄める。

「―――そう?かなりスタイルは良いと思うが。」
「…まあ、自慢じゃないですけど、腹が弛むとかいったことは特に無いですよ?だけどこう…きっちり引き締まってるのではなく、もう少し、こう………そう、ナナがニーソ履いたら多分私の理想の柔らかさなんですよっ」

解ります?食い込みです、食い込み具合なんです。
熱く語り、紙とペンを取り出し絶対領域と肉の食い込みを描く。

「ここの食い込み、ほんの少し柔らかさを強調する事が重要で。」
「おお…お前解ってるなぁ。」
「私は理想にちょっと遠くて、やっぱり観賞派ですね。」

ふに、と自分の太ももをつついてむーと口を尖らせると、ハルさんが横からつついて来た。

「………」
「………」

何とも言えない光景になったところで、ガッと後ろから回された腕に身体を引かれた。

「何してんスか!」
「太ももの柔らかさを確認?」
「ニーソの食い込みが理想と違うって話をしてた。」

だらりと腕を下げて割り込んできたギルに体重を預けながら、椅子に乗ったままの足をふらふら揺らす。
ギルは「はあ?」と言いつつ下を見て数秒足らず、ぼあっと顔を真っ赤にした。そして瞬時に顔を反らす。

「…青いねぇ。」
「ッ…」
「ハルさんが手慣れすぎなんですよぉ。」

「それもそうかー」と笑うハルさんは落書きの紙を拐って席を立った。
去り際、名残惜しげに太股を見つめながら。

「…ハルさんマジ足フェチ。」
「何言ってんだアンタは。」

はああ…と溜め息を吐くギルが、何時までこのままで居るんだろうなーと思いながらそっとしておくことにした。



「―――ハルオミ隊長。」
「お、シエルちゃん珍しい。どうした?」
「今後、此方の隊長に手を出したら―――覚えておいてください。」


「………うーん、やっぱ青いねぇ。」



シエルさんは主人公の嫁か旦那か私にはわかりません

ふわふわわたあめ

クロスオーバーとやらで、黒子とべるぜなんですが、

・私はむっくん派の古市派なので、二人が一緒に居たらそれだけで美味しいんじゃないかという発想から出来てます。
そんな出会いを書いてみた感じです。
・時系列はむっくんサイドは陽泉vs誠凛、古市サイドは修学旅行後〜姫川編前辺り。
・時系列意外も捏造設定含みます
・メイン二人以外は基本的に空気です。空気じゃないのが居たら、キャラが濃いだけです。
・コネタの筈がくっそ長くなったんで、ページ数多いですさーせん。
・唐突に終わる仕様






「あー…失敗した。」

聖石がある隣の地区では何だったかスポーツがやってるらしい。その賑わいが此方にも伝わり、序でに聖石の同じ部活でも燃えているとかなんとか。
―――なんだっけ…。不良校には縁がねーから忘れるわ。
まぁ、そんなこんな観戦客で稼ごうと街が盛り上がっているらしく、色んな物が見れると聞いて足を踏み入れた。
なのだが、残念な事に街は試合生中継だったらしい。家電屋の前で人が輪を作り、街路樹の麓では携帯を見てガードレールに寄り掛かる人もいる。
わああっと観戦者が盛り上がりの声を上げる。

「……すげぇ、健全な熱気だな…」

そんな呟きを溢して、日常が非日常過ぎて感覚が麻痺しているのだと、改めて思った。
赤子を拾った幼馴染みに巻き込まれ、その幼馴染みは喧嘩好きで典型的な不良で馬鹿で。付き合うがままで居たら、校舎を壊し、他校に間借りし、また校舎を壊し。そして今は取り敢えず悪魔との戦いも落ち着いた、旅行も行った。しかし何処へ言っても不良は付き物なので、平穏がないのだ。
そうやって思考して、街の"普通"な空気を噛み締めていると、試合終了の笛があらゆる機器から何重にもなって響いた。
―――おお…すげぇなあ…

「…りん…対…せん!結果は……」

歩いていると自然に聞こえる試合結果の声。
不意に、肩をポンッと叩かれて振り返った。

「やぁ……君、男鹿のツレだよね?」

隣の地区なのに――――いま正に試合結果が出て良い感じの空気が町中に溢れてたと言うのに。全く似つかわしくない姿の男が三人程、其処に居た。
さあーっと血の気が引いて、速攻逃げ出した。

「人違いですから!!」

ダッシュ、とにかくダッシュだ。
街中、しかもそんな空気じゃないのに、後ろから男に追い掛けられ走る男とか、注目の的過ぎて恥ずか死するわ!!
とにかくがむしゃらに走り、走り、何処か知らんが立ち止まって見たら、何かの武道館前だった。

「っ…はぁ…はぁ…!」

男鹿がさっさと帰ったから気分転換しに来たのに、全く持って気分は最悪だ。
しかも、全力疾走してきて壁に手を付いてる男が居ても、武道館からちらほら出てくる人はこれといって気にする様子がない。
―――ああ、そうか。試合、やってたんだっけ。
はぁーっと息を吐き、取り敢えず安全だろうから武道館の敷地の中へ入る。
人が居ない方へと歩いて行くと自販機と椅子が現れ、取り敢えず飲み物を買ってそこで息を吐いた。
何やら曲がり角辺りが騒がしいので、そろりと歩いて其処を離れる。何やら日常茶飯事的に聞く喧嘩してるらしい声なのだが、巻き込まれたくはない。
随分歩いて辿り着いたもう一つの休息所で、冷たいお茶を飲んだ。
―――あー…生き返るー…
喧嘩には巻き込まれたくないし、走った所為で身体が火照っているから熱を冷ましたかったし、其処で大人しくしていた。
そんなにしない内に、回りは静寂に包まれた。

「……あー、くそ、」

なんか腹減ったなぁ…なんて思いながら、カバンを引き寄せてさっき買ったばっかりのポテチの袋を開けた―――ら。
目の前に誰かがしゃがみこみ、此方を見上げていた。

「……」
「……」

いや、此方を見上げているのではない。ポテチを、物凄く、凝視していた。
良く見ると、しゃがんで居てもとても大きい。東条先輩くらいだろうか。

「あ……えと、」

掛ける言葉を選ぼうとするも、キラキラキラキラと余りにも目を光らせて居るものだから、てしてしと椅子の隣を叩いた。
首を傾げて、でものっそり立ち上がり、ちょこんと隣に座った。
―――でけぇー…、城山先輩くらいは有るのか…
見上げると、やっぱりポテチの袋を見ていたから、袋ごと差し出した。
すると、俺とポテチを交互に見るものだから、つい笑ってしまう。

「はははっ…いいッスよ、食べてください!」
「いいの?」
「いーですよ…っ」

余りにも、まてをされた犬のようにジッとしているから、袋を持たせた。
すると袋に手を突っ込み、彼は幸せそうに目を細める。
何か可愛いなぁ…と、思いながら全体的に紫の彼を見ていると、目元が赤いのに気付いた。
―――そう言えば、さっき…試合結果が出てたっけ。
興味なくて、なんの試合だか聞き漏らして居たが、彼の着ているユニホームを見てみるも、学校名らしきロゴしか書いてない。
ジッと見てみると、半袖では無さそうだった。襟がついていないし、袖の膨らみがない。
首を捻り、ここ最近世間で騒がれているスポーツと、この身長を照らし合わせるとバスケだろうかという推測を出した。
もくもくとポテチを食べているのは、好きなものだからであり、ヤケ食いでは無いのが雰囲気で解る。
―――ああ、もう立ち直ってるのか。
慰めの言葉を掛けて欲しいタイプでは無さげ。正直要らぬ心配だろう。
それでも気付いてしまった事で妙に気を使いそうになる前に、また一つカバンからお菓子を出したら。

「っ……それは、まいう棒の兄弟、んまい棒じゃん…!」

ポテチ片手に、彼は更に目をキラキラさせた。
もう一つポテチを出し、んまい棒を数種類取り出す。
そして、尋ねた。

「…食べる?」
「食べるし!」
「飲み物は?」
「ジュース。」

るんるんと鼻歌でも歌い出しそうに袋を開ける姿にアホの幼馴染みが被って見えて、世話を焼かずにいられない損な性分を発揮してると気付いたのは―――ジュースを買ってからだった。
―――アレ、何してんだ俺。
けど、振り返って彼の姿をみたら何も言えなくなってしまった。

「此方はもんじゃ焼き…此方はサラミ…此方はピザ…まだあるとか…悩むしー。」

全部食べれば良いのに、どれから食べるかを真剣に悩んでいた。
でかい癖に、随分可愛い事をするもんだ。
また笑いが込み上げてきて、ふはっと息を溢した。

「っふ…くく…、そんな、悩まなくても。」
「えー、大問題だし。」
「大問題か、それなら仕方ないですよね。…はい、ジュース。」

差し出せば、彼は一度お菓子もポテチも置いて、ジュースを受け取った。
「ありがとー」なんてのんびりした喋りに、子供っぽさが滲み出ていて何か知らんが可愛い。
俺も椅子に彼と向き合って座り直し、んまい棒を一本鞄から取り出して齧った。

「あー……どうすっかなぁ、」
「んー?」
「や、俺の幼馴染みがとんでもなく暴れん坊で、そこら中に敵作ってて…んで、そんな敵から逃げてきたんですけど、」

駅まで帰れる自身ないしなぁ…、と呟きを溢す。
んまい棒を咥えたまま、彼は視線を動かす事もなく「んー…」と、小さく唸りサクサクとスナックを齧る音だけを響かせる。
「ああ…すいません、愚痴なんか溢して。……俺は古市貴之です。貴方は?」

んまい棒をもう一本差し出し、ジュースを飲んでいる彼に尋ねた。
きょとりと此方を見て、んまい棒を受け取りながら、彼は笑った。

「オレは、紫原敦…さっきの試合見てなかった…?」
「あー、すんません。俺、スポーツとは遠いところで生きてるんで…」

そう言って、言葉を濁す。
けど、彼はこてんっと首を傾げた。
もっと解りやすい言い方…と、思いながら説明してみる。

「ぶっちゃけ、追っかけから逃げて来ただけなんですよ。んで、武道館なら…不健全な青少年は入り込まないかなーって…ははは。」

言った後で、普通は理解出来ねーよ…と気付き、溜め息を飲み込んだ。勿論、紫原…さんは頭の上に疑問符を付けていた。
その巨体なら、さっきまでの試合、大活躍だったのではないだろうか。

「…バスケとか、やらないし、知らない感じ?」
「はい…」

首を斜めに傾けたまま尋ねられ、頷く。なんか可愛いとか思うのは、本当になんでだろう。
首の角度を元に戻して、紫さんはポテチを一枚齧る。

「ふーん。ふる…、いち…、たか…、…たかちん!たかちんは、スポーツしないの?」

思わず、へ?とすっとんきょうな声を上げる。
聞いた紫原さん自身もアレ?と不思議そうな顔をしていた。しかも多分、自分でも何で聞いたか解ってない感じだ。

「…まぁ、しないッスね…ホント俺、変わった学校にいるんで。」
「え……うん、」
「あ、別に運動しない訳じゃないですよ?!」

走り込みなら多分、運動部と勝負張れるかもしれない。負けるだろうけど。
男馬鹿ほどの体力と怪力だったらバスケとか出来るだろうが、俺は上から下まで平均値だし。
うんうん一人で唸っていると、紫原さんはきょとりと俺を見ていた。ハッとなって、視線を斜め上に反らし、再び彼に視線を戻した。

「うーんと…そう、俺は帰宅部なんスよ!」
「帰宅部…?んー、まぁ確かにそれっぽい。」
「でしょう?」

納得させる事に成功して、よっしゃと心の中でガッツポーズなんて決めた。
紫原さんは、そんな俺を上から下まで眺めながら、んまい棒の袋をあける。

「うーん…たかちん、わたあめみたいな頭だし、ミルクキャンディみたいに白いし、目は飴玉みたいだし…スポーツはしなさそう。」
「それって貶してます…?」
「けなしてないよー?」


――――そんなこんな、暫くお菓子を二人で広げて話していると、普通の会話が久しくて楽しいから盛り上がってしまった。最近、男鹿とも話とかしないし。
サク、とお菓子を齧り、紫原さんは次に何を食べるかを選んでいた。――――ら、俺の後ろの方から声が掛かった。

「…アツシッ!」
「んぁ?室ちんじゃーん。頭どーしたの?」
「ああ、ちょっとぶつけて冷やしてるだけさ。」

ヒラヒラ手を振られ、室ちんと呼ばれた彼は此方にきた。振り返り見ると、頭に包帯を巻いた謎のイケメンが居るではないか。
そんなイケメンは紫原さんと話しながら俺をちらりと見て、紫原さんの手元を見て、納得したように笑みを浮かべた。
と言うか、なんか周りが騒がしくなって来ていないだろうかと思って居ると、イケメンに声をかけられた。

「…えっと、キミは?」
「あ…俺は」

たまたま此処に来ただけなんです…なんて言葉は、二方向からの大声に遮られた。

「見付けたぞ、紫原ッ!」
「むっくん居たーっ」
「紫原、やっと見つけたのだよ…!!」
「火神くん、居ました!」
「やっと見付かったか!」
「あ、黒子っちー!居たッスか!?」

わぁっと…カラフルな人がいっぱい集まってきた。
俺含め、誰一人色が被らない奇跡。
―――ってか、平均身長たけぇ…!!
そして、全員バスケ選手なのだろう、良い体躯をしている。一人は、他の人に比べたら大分細いが。

「…あ?なんだお前。」
「い、いえ…俺は、」
「…お菓子?」

言い澱むと、ガングロ(?)の人と濃い赤髪の人に変なもんを見る目で見られて、まさか誘拐みたいな、変質者的な目で見られてるのかと慌てて立ち上がる。
子供が心配な人には、子供の言うことが一番―――って事で、紫原さんに助けを求めた。

「むっ…紫原さん、保護者がこんなに居るなら先に言って下さいよっ」
「ん?」
「ほっ…ほご…、」
「…保護者、ですか。」

緑の人と、水色の人がそう言って居るのを後目に紫原さんを見れば、ん?あれ?ほごしゃー?と、疑問符だらけになっている。
―――なんかデジャヴ!!発言ミスみたいな…!
でもアレだろ、こんな大人数で探してるとか絶対保護者的な立ち位置の人らだろ!

「此方騒がしいし、此方じゃねっ?」
「言われなくても、解ってるアル。」
「…ってか、もう荷物持ってきた方が良いんじゃね?!」
「あんなでかいのに見付からないって凄いわよね…」
「…お、発見。」

―――何か、何て言うか保護者いっぱいキター!ってか、一体何人でこの会場探し回ってんだよ!!
いっそのこと愕然としていると、紫原さんに裾を引かれた。紫原さんを見れば、んまい棒を差し出している。

「たかちん、食べないの…?」

周りが、一斉に脱力して呆然と此方を見て固まったのには、ちょっと同意したい。

「…いや、どうぞ食べて下さい。」

脱力して、ついつい紫原さんの頭を撫でた。軽く目を瞑って、戸惑った様に此方を見る紫原さんは、何故かはにかむ。

「たかちんの手、温かいしー…おかーさんみたい。」
「……おかーさんて、紫原っち、相手男。」
「ああ、すいません…癖で。」
「おかーさん発言スルーかよ!」
「ってか、癖とか!」

ツッコミがいっぱい居て、何だか騒がしいが、紫原さんもそれが普通な様で気にしていないらしい。
けど、ふと後ろに居たイケメンさん達を見て、口を開いた。

「ところで皆、いつの間に制服に着替えたんだし。」

空気が冷え固まり、ふるふると皆さんの肩が震えた。

「控え室退室時間になってもお前が戻って来ねーから探しに来たんだよ…!!」

言い方は各々だが、全員がそう叫んだ。
―――あれ、俺、道草食わせちゃったかなー…
デカイ人間ばっかの空間で、そんなことをのんびり思った。
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久々にトリユリでも

本誌で鳳さんもユーリも出てきたのにまだ最新号買えてない悔しいぃ!!
って思いを胸に、フラグ!って盛り上がってみた私得なコネタをば。

※意書き←
・会話やらに流されて手を出せないまま、隙を突かれてトリさんとウィルマさん逃がしちゃった設定。(でも、今のサーシャさんは会話をぶった切って、先に捕獲を考えそうなんだよねー。戦闘中に喋れば良い思考。)
・トリさんがなんかテンション高い
・サーシャくんとか筆頭に周りが色々可哀想です。





「は?死人が生き返った?」

紅茶を入れて、一息吐こうと椅子に腰掛けた途端に、PCからコール音。
覗いてみれば見覚えのあるチャンネルコードで、何かとイヤホン受話ボタンを押す。―――と、PCのスピーカーから少々焦りを含んだ声がした。
『鳳榊一郎<フィエーニクス>が現れた』と、開口一番にそう言ってくれたもので、冒頭に至る。
冗談じゃないのは承知の上で、小さく笑う。

「随分、死人が出歩いてますねぇ。」
「《ああ―――》」
「《なんや知らんが、"神成計画"言うて、シスターの姉ちゃん連れて逃げて行ったで。》」

頷くサーシャも、そう告げる藤臣くんも、画面に映る他の三人も苦い顔をしていた。
おおよそ、手出しも録に出来ずに逃がしてしまったのだろう。この様子だと、まだリジーには何も言って無さそうだが―――。
ふ、と息を吐いた途端。顎に手が回り、グイッと引かれて上を向かされた。

「はは、久し振り?」

そう言った人物は、今まさに話していた存在で、つい苦い顔をする。
取り敢えず、顎を掴む手を離させようと手首を掴んだ。しかし、彼の手首を引いても離れない。ビクともしないとか恐ろしい。
画面の向こうで声がしなくなったのは仕方無い。シリアスモードまっしぐらの最中でいきなり話題の人が現れたのでは、絶句するのは当然だろう。

「―――鳳さん。空気読んで下さい。離して下さい。」
「ははは、なんでだい?」
「何でも何も、あなたは今敵対組織の人間なんですがね?」

正論を述べつつ、離れない手をグイグイ引っ張る。現状はぐぎぎぎ…といった感じだが。
以前同様、相変わらずの馬鹿力である。

「《っ――――鳳!?》」
「《アンタ、なんで其処にッ》」

画面の向こうが騒がしくなる。が、彼はそんなことお構い無しで、頭を下げて来た。
慌てて手を滑り込ませて、彼の口を塞ぐ。

「なに、しようとしてるんです?」
「《そんな対応してる場合か!!》」

サーシャからツッコミが来るも、さっきから抵抗はしているのだが。
ビクともしない。鍛え方が違うとでもいうのか。

「いや、抵抗はしてるんですけどね。この人、馬鹿力で―――――!?」

べろん、と手を舐め上げられ、ビクッと肩を跳ねさせる。―――と、その隙を突いて後ろに引かれて倒され、床へダイブする。
直ぐ様上半身を起こし、見上げた。

「いった、何する……、」

ら、画面の前に座る彼がいて、口に人差し指を当てられる。
静かに、ということだろう。

「―――やぁ、昨晩振りかな。」
「《鳳、貴様其処で何を》」
「ちょっと、彼を借りるよ。」
「《ユーリをどうするつもりだ。》」
「なぁに、一杯引っ掛けに来ただけさ。直ぐに返すよ。」

その言葉を最後に、彼はぷつりと通信を切った。
そして、しゃがんで私を見るなり笑った。

「死人が目の前にいても、あんまり驚かないね。」
「まぁ…驚いてますけど。」

こり、とこめかみを引っ掻いて、"彼女"もこうやって普通に生きてるのだろうなとのんびり考える。
テレサが彼女自信だと確信した通りに、この鳳榊一郎は確かに彼だと納得した。言動も、仕草も、その瞳も―――生前の彼と何一つ変わりない。
そっと彼の温かい頬をなぞって、つい微笑う。

「禁忌を犯したのは誰か知りませんけど。――ふふ、昨日の今日で此処に来ますか、普通?」
「サーシャくん達を見たら、なんだか懐かしくてね。ちょっと覗きに来るタイミングをしくったけど。」

言いながら、頬を撫でて彼は笑った。
そのままゆっくり顔が近付いて来て、唇が重なる。つい数ヶ月前に喪った筈の熱が其処に確かに在った。
―――夢を見ているような気分って、この事ですかね…?
一度離れて見つめ合う。今は言葉は要らない気がして、どちらからともなく口付けた。
幾度か角度を変えて短いキスを降らせ、彼は私の後頭部に手を回した。髪を弄り、項、首裏と薬指でなぞり、弄ぶ。
びくりと身体を揺らして薄く口を開けば、舌が口腔へと入って来た。

「ふ、…ん…」

彼の服を掴み、蹂躙の様な愛撫を受け止めながら薄く目を開いて、びくりと固まった。
視線の先の人物はPCから上半身飛び出して、わなわなと顔を真っ赤にして震えていた。

「あ…アンタら……ホモっ…」
「ん?ああ、"皇女"の…」

言いながら、振り向く事も無く人の祭服に手を掛ける。ファスナーのスライダーを下げる手を掴み阻止するも、まるで手を添えているかの様に開いて行く。
―――なんでですかね、私こんなに力なかったかな?
まぁ、やっぱりぐぎぎぎ…な状態ではあるが。一応彼も結構力押ししているのだが。
服の中に手を滑り込ませて来るから、ちょっと息を飲んで彼を見た。――――のは、失敗だった。
無感情に鈍く光る昏い色をした眼に、引きつった笑みを口元に浮かべる。

「華さん。ホモって報告してもいいので、戻って下さい。早く。」
「は…?」
「早く。」

マグダラの力を使いこなしてきたなぁ…とか、そういう場合ではない。
この人はプライベートへの干渉には、意外と短気で沸点が低いのだ。
そもそも華さん自体、こんな偵察は嫌だろうし。と、思いながら華さんに向けていた視線を彼に戻せば、身体が宙へ浮いた。
正しくは、抱き上げられたのだが。

「上に行こうか。」
「…はい。」

笑ってはいるが、全く平和じゃない空気で、あー…と額に手を当てた。

「……お手柔らかにお願いします。」
「…どうだろうね?」

返答に苦い顔をすると同時、部屋の外へと出た。



「―――カーチャ様…」

ちょっと引いたが、でもなんかいけないものを見てしまった背徳感から来る興奮に、口元に笑みを浮かべながら華はカーチャに話し掛けた。

「あら、意外と早かったわね。やっぱり追い返されたかしら?」
「いえ…濃厚なホモでした…」

流石に予想外だったか、カーチャが固まった。
ガターンッと藤臣が椅子を倒しながら起立する。

「ホモ?!あの神父とフィエーニクス!?ないわあぁ…ッ」

顔真っ青な藤臣に、察しの悪いサーシャが「ホモってなんだ…?」と首を傾げる。
華が、ああ…と頷いてゲイの事だと教える。
勿論青ざめるサーシャ。

「まぁ…アンタとエドガーみたいなもんよ、ジャンルとしては。」
「……エドガーとはそんな関係を築いていない…」

額に手を当てながら、一応あの場に居なかった藤臣にも解るように否定した。
カーチャはそれを見て、フ…と小さく笑う。

「馬鹿ね、例えよ。ま、華みたいなのが居る位だし?有りじゃないのかしら…」

どっちかって言ったら同性愛者のカーチャは、そう言って笑った。
ぶっちゃけどうでもいい話の様だ。

「まぁ、ユーリが口を滑らす事はないし、鳳も根掘り葉掘り聞くことはないんじゃないかしら。」

あの鳳がいた期間の前後共に、ユーリの情報は変わらぬ性能であったし。あの時の鳳は元々は戦場を駆けていただけあって、こちらの攻撃の分析やらも自らで行っていた。
と、カーチャは思う。

「仕事とプライベートはきっちり分けるタイプね。」
「…ああ、アイツと鳳の事だからな。それは解っている。」
「……おぅふ…」

そんな、意外とのんびりしてる三人の側で固まったままのテレサの肩に、ぽんっと華は手を置いた。

「リジーには言えないな。」
「…えぇ。」

華の台詞に、テレサはつい苦笑した。




「…ユーリ、最大の失態が有るんだけど。」
「…は……い?」
「リジーに伝わらないかな。」
「あぁ…、大丈夫…ですよ、」
「そう?」
「そのくらいの、区別は…ん…、」
「うーん…随分成長したみたいだね。」
「っふ……そろそろ、動いて…、」
「ああ…ごめんね。ちょっと、無粋だったね。」
「ちょっとじゃ、っ…!」
「はは、ユーリがこんなに素直なのも珍しいね…?しっかりお相手しないとかな。」
「ッぁ……、」
「嫌がっても逃がさないよ。」




プライベート上では、鬼畜全開のトリさんしか想像出来ない。超強欲なの。
そんなトリさんに虐げられるのも慣れて受け入れて、尚且つ言いたいことは言うユーリ。
そんな鳳ユリどっかに落ちてないかしら(笑)


そんで、なんやかんやリジーには純粋なままでいて欲しい皆はだんまりを決め込みます。
そういや、弼とリジーって知り合いじゃないんだよなぁ。原作の方。
リジーは今は大会に出ないで、ずっとまふゆの世話してるし。
まぁ、もしかしたらどこかで会ってるかもしれませんが。

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