クロスオーバーとやらで、黒子とべるぜなんですが、
・私はむっくん派の古市派なので、二人が一緒に居たらそれだけで美味しいんじゃないかという発想から出来てます。
そんな出会いを書いてみた感じです。
・時系列はむっくんサイドは陽泉vs誠凛、古市サイドは修学旅行後〜姫川編前辺り。
・時系列意外も捏造設定含みます
・メイン二人以外は基本的に空気です。空気じゃないのが居たら、キャラが濃いだけです。
・コネタの筈がくっそ長くなったんで、ページ数多いですさーせん。
・唐突に終わる仕様
「あー…失敗した。」
聖石がある隣の地区では何だったかスポーツがやってるらしい。その賑わいが此方にも伝わり、序でに聖石の同じ部活でも燃えているとかなんとか。
―――なんだっけ…。不良校には縁がねーから忘れるわ。
まぁ、そんなこんな観戦客で稼ごうと街が盛り上がっているらしく、色んな物が見れると聞いて足を踏み入れた。
なのだが、残念な事に街は試合生中継だったらしい。家電屋の前で人が輪を作り、街路樹の麓では携帯を見てガードレールに寄り掛かる人もいる。
わああっと観戦者が盛り上がりの声を上げる。
「……すげぇ、健全な熱気だな…」
そんな呟きを溢して、日常が非日常過ぎて感覚が麻痺しているのだと、改めて思った。
赤子を拾った幼馴染みに巻き込まれ、その幼馴染みは喧嘩好きで典型的な不良で馬鹿で。付き合うがままで居たら、校舎を壊し、他校に間借りし、また校舎を壊し。そして今は取り敢えず悪魔との戦いも落ち着いた、旅行も行った。しかし何処へ言っても不良は付き物なので、平穏がないのだ。
そうやって思考して、街の"普通"な空気を噛み締めていると、試合終了の笛があらゆる機器から何重にもなって響いた。
―――おお…すげぇなあ…
「…りん…対…せん!結果は……」
歩いていると自然に聞こえる試合結果の声。
不意に、肩をポンッと叩かれて振り返った。
「やぁ……君、男鹿のツレだよね?」
隣の地区なのに――――いま正に試合結果が出て良い感じの空気が町中に溢れてたと言うのに。全く似つかわしくない姿の男が三人程、其処に居た。
さあーっと血の気が引いて、速攻逃げ出した。
「人違いですから!!」
ダッシュ、とにかくダッシュだ。
街中、しかもそんな空気じゃないのに、後ろから男に追い掛けられ走る男とか、注目の的過ぎて恥ずか死するわ!!
とにかくがむしゃらに走り、走り、何処か知らんが立ち止まって見たら、何かの武道館前だった。
「っ…はぁ…はぁ…!」
男鹿がさっさと帰ったから気分転換しに来たのに、全く持って気分は最悪だ。
しかも、全力疾走してきて壁に手を付いてる男が居ても、武道館からちらほら出てくる人はこれといって気にする様子がない。
―――ああ、そうか。試合、やってたんだっけ。
はぁーっと息を吐き、取り敢えず安全だろうから武道館の敷地の中へ入る。
人が居ない方へと歩いて行くと自販機と椅子が現れ、取り敢えず飲み物を買ってそこで息を吐いた。
何やら曲がり角辺りが騒がしいので、そろりと歩いて其処を離れる。何やら日常茶飯事的に聞く喧嘩してるらしい声なのだが、巻き込まれたくはない。
随分歩いて辿り着いたもう一つの休息所で、冷たいお茶を飲んだ。
―――あー…生き返るー…
喧嘩には巻き込まれたくないし、走った所為で身体が火照っているから熱を冷ましたかったし、其処で大人しくしていた。
そんなにしない内に、回りは静寂に包まれた。
「……あー、くそ、」
なんか腹減ったなぁ…なんて思いながら、カバンを引き寄せてさっき買ったばっかりのポテチの袋を開けた―――ら。
目の前に誰かがしゃがみこみ、此方を見上げていた。
「……」
「……」
いや、此方を見上げているのではない。ポテチを、物凄く、凝視していた。
良く見ると、しゃがんで居てもとても大きい。東条先輩くらいだろうか。
「あ……えと、」
掛ける言葉を選ぼうとするも、キラキラキラキラと余りにも目を光らせて居るものだから、てしてしと椅子の隣を叩いた。
首を傾げて、でものっそり立ち上がり、ちょこんと隣に座った。
―――でけぇー…、城山先輩くらいは有るのか…
見上げると、やっぱりポテチの袋を見ていたから、袋ごと差し出した。
すると、俺とポテチを交互に見るものだから、つい笑ってしまう。
「はははっ…いいッスよ、食べてください!」
「いいの?」
「いーですよ…っ」
余りにも、まてをされた犬のようにジッとしているから、袋を持たせた。
すると袋に手を突っ込み、彼は幸せそうに目を細める。
何か可愛いなぁ…と、思いながら全体的に紫の彼を見ていると、目元が赤いのに気付いた。
―――そう言えば、さっき…試合結果が出てたっけ。
興味なくて、なんの試合だか聞き漏らして居たが、彼の着ているユニホームを見てみるも、学校名らしきロゴしか書いてない。
ジッと見てみると、半袖では無さそうだった。襟がついていないし、袖の膨らみがない。
首を捻り、ここ最近世間で騒がれているスポーツと、この身長を照らし合わせるとバスケだろうかという推測を出した。
もくもくとポテチを食べているのは、好きなものだからであり、ヤケ食いでは無いのが雰囲気で解る。
―――ああ、もう立ち直ってるのか。
慰めの言葉を掛けて欲しいタイプでは無さげ。正直要らぬ心配だろう。
それでも気付いてしまった事で妙に気を使いそうになる前に、また一つカバンからお菓子を出したら。
「っ……それは、まいう棒の兄弟、んまい棒じゃん…!」
ポテチ片手に、彼は更に目をキラキラさせた。
もう一つポテチを出し、んまい棒を数種類取り出す。
そして、尋ねた。
「…食べる?」
「食べるし!」
「飲み物は?」
「ジュース。」
るんるんと鼻歌でも歌い出しそうに袋を開ける姿にアホの幼馴染みが被って見えて、世話を焼かずにいられない損な性分を発揮してると気付いたのは―――ジュースを買ってからだった。
―――アレ、何してんだ俺。
けど、振り返って彼の姿をみたら何も言えなくなってしまった。
「此方はもんじゃ焼き…此方はサラミ…此方はピザ…まだあるとか…悩むしー。」
全部食べれば良いのに、どれから食べるかを真剣に悩んでいた。
でかい癖に、随分可愛い事をするもんだ。
また笑いが込み上げてきて、ふはっと息を溢した。
「っふ…くく…、そんな、悩まなくても。」
「えー、大問題だし。」
「大問題か、それなら仕方ないですよね。…はい、ジュース。」
差し出せば、彼は一度お菓子もポテチも置いて、ジュースを受け取った。
「ありがとー」なんてのんびりした喋りに、子供っぽさが滲み出ていて何か知らんが可愛い。
俺も椅子に彼と向き合って座り直し、んまい棒を一本鞄から取り出して齧った。
「あー……どうすっかなぁ、」
「んー?」
「や、俺の幼馴染みがとんでもなく暴れん坊で、そこら中に敵作ってて…んで、そんな敵から逃げてきたんですけど、」
駅まで帰れる自身ないしなぁ…、と呟きを溢す。
んまい棒を咥えたまま、彼は視線を動かす事もなく「んー…」と、小さく唸りサクサクとスナックを齧る音だけを響かせる。
「ああ…すいません、愚痴なんか溢して。……俺は古市貴之です。貴方は?」
んまい棒をもう一本差し出し、ジュースを飲んでいる彼に尋ねた。
きょとりと此方を見て、んまい棒を受け取りながら、彼は笑った。
「オレは、紫原敦…さっきの試合見てなかった…?」
「あー、すんません。俺、スポーツとは遠いところで生きてるんで…」
そう言って、言葉を濁す。
けど、彼はこてんっと首を傾げた。
もっと解りやすい言い方…と、思いながら説明してみる。
「ぶっちゃけ、追っかけから逃げて来ただけなんですよ。んで、武道館なら…不健全な青少年は入り込まないかなーって…ははは。」
言った後で、普通は理解出来ねーよ…と気付き、溜め息を飲み込んだ。勿論、紫原…さんは頭の上に疑問符を付けていた。
その巨体なら、さっきまでの試合、大活躍だったのではないだろうか。
「…バスケとか、やらないし、知らない感じ?」
「はい…」
首を斜めに傾けたまま尋ねられ、頷く。なんか可愛いとか思うのは、本当になんでだろう。
首の角度を元に戻して、紫さんはポテチを一枚齧る。
「ふーん。ふる…、いち…、たか…、…たかちん!たかちんは、スポーツしないの?」
思わず、へ?とすっとんきょうな声を上げる。
聞いた紫原さん自身もアレ?と不思議そうな顔をしていた。しかも多分、自分でも何で聞いたか解ってない感じだ。
「…まぁ、しないッスね…ホント俺、変わった学校にいるんで。」
「え……うん、」
「あ、別に運動しない訳じゃないですよ?!」
走り込みなら多分、運動部と勝負張れるかもしれない。負けるだろうけど。
男馬鹿ほどの体力と怪力だったらバスケとか出来るだろうが、俺は上から下まで平均値だし。
うんうん一人で唸っていると、紫原さんはきょとりと俺を見ていた。ハッとなって、視線を斜め上に反らし、再び彼に視線を戻した。
「うーんと…そう、俺は帰宅部なんスよ!」
「帰宅部…?んー、まぁ確かにそれっぽい。」
「でしょう?」
納得させる事に成功して、よっしゃと心の中でガッツポーズなんて決めた。
紫原さんは、そんな俺を上から下まで眺めながら、んまい棒の袋をあける。
「うーん…たかちん、わたあめみたいな頭だし、ミルクキャンディみたいに白いし、目は飴玉みたいだし…スポーツはしなさそう。」
「それって貶してます…?」
「けなしてないよー?」
――――そんなこんな、暫くお菓子を二人で広げて話していると、普通の会話が久しくて楽しいから盛り上がってしまった。最近、男鹿とも話とかしないし。
サク、とお菓子を齧り、紫原さんは次に何を食べるかを選んでいた。――――ら、俺の後ろの方から声が掛かった。
「…アツシッ!」
「んぁ?室ちんじゃーん。頭どーしたの?」
「ああ、ちょっとぶつけて冷やしてるだけさ。」
ヒラヒラ手を振られ、室ちんと呼ばれた彼は此方にきた。振り返り見ると、頭に包帯を巻いた謎のイケメンが居るではないか。
そんなイケメンは紫原さんと話しながら俺をちらりと見て、紫原さんの手元を見て、納得したように笑みを浮かべた。
と言うか、なんか周りが騒がしくなって来ていないだろうかと思って居ると、イケメンに声をかけられた。
「…えっと、キミは?」
「あ…俺は」
たまたま此処に来ただけなんです…なんて言葉は、二方向からの大声に遮られた。
「見付けたぞ、紫原ッ!」
「むっくん居たーっ」
「紫原、やっと見つけたのだよ…!!」
「火神くん、居ました!」
「やっと見付かったか!」
「あ、黒子っちー!居たッスか!?」
わぁっと…カラフルな人がいっぱい集まってきた。
俺含め、誰一人色が被らない奇跡。
―――ってか、平均身長たけぇ…!!
そして、全員バスケ選手なのだろう、良い体躯をしている。一人は、他の人に比べたら大分細いが。
「…あ?なんだお前。」
「い、いえ…俺は、」
「…お菓子?」
言い澱むと、ガングロ(?)の人と濃い赤髪の人に変なもんを見る目で見られて、まさか誘拐みたいな、変質者的な目で見られてるのかと慌てて立ち上がる。
子供が心配な人には、子供の言うことが一番―――って事で、紫原さんに助けを求めた。
「むっ…紫原さん、保護者がこんなに居るなら先に言って下さいよっ」
「ん?」
「ほっ…ほご…、」
「…保護者、ですか。」
緑の人と、水色の人がそう言って居るのを後目に紫原さんを見れば、ん?あれ?ほごしゃー?と、疑問符だらけになっている。
―――なんかデジャヴ!!発言ミスみたいな…!
でもアレだろ、こんな大人数で探してるとか絶対保護者的な立ち位置の人らだろ!
「此方騒がしいし、此方じゃねっ?」
「言われなくても、解ってるアル。」
「…ってか、もう荷物持ってきた方が良いんじゃね?!」
「あんなでかいのに見付からないって凄いわよね…」
「…お、発見。」
―――何か、何て言うか保護者いっぱいキター!ってか、一体何人でこの会場探し回ってんだよ!!
いっそのこと愕然としていると、紫原さんに裾を引かれた。紫原さんを見れば、んまい棒を差し出している。
「たかちん、食べないの…?」
周りが、一斉に脱力して呆然と此方を見て固まったのには、ちょっと同意したい。
「…いや、どうぞ食べて下さい。」
脱力して、ついつい紫原さんの頭を撫でた。軽く目を瞑って、戸惑った様に此方を見る紫原さんは、何故かはにかむ。
「たかちんの手、温かいしー…おかーさんみたい。」
「……おかーさんて、紫原っち、相手男。」
「ああ、すいません…癖で。」
「おかーさん発言スルーかよ!」
「ってか、癖とか!」
ツッコミがいっぱい居て、何だか騒がしいが、紫原さんもそれが普通な様で気にしていないらしい。
けど、ふと後ろに居たイケメンさん達を見て、口を開いた。
「ところで皆、いつの間に制服に着替えたんだし。」
空気が冷え固まり、ふるふると皆さんの肩が震えた。
「控え室退室時間になってもお前が戻って来ねーから探しに来たんだよ…!!」
言い方は各々だが、全員がそう叫んだ。
―――あれ、俺、道草食わせちゃったかなー…
デカイ人間ばっかの空間で、そんなことをのんびり思った。