ただ魚と戯れる古市です(笑)
17巻の落とされた設定。
―――「喰うわけねえだろっ!死ねっ!!」
口は災いの元。
見事に体現してしまった…と、水の中へ沈みながら思った。
まぁ、海水なのでその内浮かんで行くだろうと思いながら、沈むところまで沈んで行く。
と、丁度目の前のガラス越しに男鹿が見えた。
あんまりにもアホ面を晒しているから、近寄って左手をガラスに付いて指差し、「マヌケ面」と口パクしながら笑ってやる。
カチンと来たのか、「うるせぇ、てめえはなんで其処にいんだよっ」と言ってるのだろう、オレの手に重ねるようにガラスに手をついて口を動かしていた。
「――落とされちゃった。」
困った顔で口パクして返すと、男鹿はぴくりと身体を揺らした。
誰が…と、言いかけた男鹿との会話を遮るように、目の前に極彩色。色とりどりの魚が泳いで此方に来たらしい。
驚いてガラスケースから、手を離した。
途端、するりと何かが頬を撫でる。見てみれば、マンタ―――じゃない、エイが居た。
やはり眼前を通り過ぎて、おおっ!なんて感動する。
――俺、実は今凄い状況なんじゃね?!
とか思っていると、するりと足元を撫でる感覚がして、今度は身体が浮き上がった。
下を見るとジンベイザメの背なのだろう。咄嗟に足を曲げて跨がり、手をついた。
そのままカラフルな魚達が横を泳ぎ、両サイドで他のサメが泳ぐ。
どうやら回遊しながらも上に向かって居るらしいと気付いた時には、俺は水面から顔を出していた。
どのくらい振りかの酸素が肺に入って来て、少し咳き込む。
その間中は、サメが縁に近寄って留まってくれたものだから、その背を撫でた。
「お前、ちょーえらいな。」
撫でるのを止めて縁に手をつくと、サメは水槽の中へと戻って行った。
「だ、大丈夫ですか?!」
驚きに固まっていた飼育員のお姉さんが、漸く声を掛けて引き上げてくれた。
可愛かったから、笑いながら大丈夫ですとだけ答える。
「ここの魚達いい子ですね。サメって人懐っこいんですか…?」
「…え?」
間違ってない話の振り方な筈なのに、お姉さんは固まった。
そのまま、ジンベイザメに運んで来て貰った事を話せば、お姉さんは水面を覗き込んで更に固まる。
「…どうしました?」
「いえ……凄く、好かれやすいんですね。」
お姉さんの視線が水槽に釘付けだから、俺もそっちを見れば、サメやエイや小さな魚まで、上の方に来ていた。
ちょっと恐ろしい光景である。
俺は一つ、苦笑いを溢した。
古市は人外の生き物に好かれる体質だと良いな…って(笑)
男鹿さんが「あいつ人魚か…?」とか言ってる側で、ヒルダさんが「キモ…(だが、確かにアレは美しいな)」って反応だったらそれはそれで…