俳優の窪田正孝が主演、女優の二階堂ふみがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『エール』の第12週(6/15〜6/19)が<特別企画>として主人公夫妻を取り巻く登場人物にフォーカスしたオムニバス形式の“スピンオフ週”になることが6/5、分かった。ヒロインの父(光石研)、喫茶店夫婦(野間口徹&仲里依紗)、ヒロインに大きな影響を与える世界的オペラ歌手(柴咲コウ)にスポットを当てる3つの物語。主人公が節目を迎える第11週(6月8〜6月12日)と後半に入る第13週(6月22〜6月26日)の間、全体のストーリーの区切りとなる週に、チーフ演出・吉田照幸監督が当初から企画。本筋とは趣きが変わる“異色の構成”として話題を呼びそうだ。
女優の戸田恵梨香がヒロインを務めた前作、昨年後期の朝ドラ[スカーレット]も第21週[スペシャル・サニーデイ](2月24〜2月29日)が特別編(スピンオフ週)。脚本も、この週は水橋文美江氏から、フカ先生(イッセー尾形)の2番弟子を演じた三谷昌登にバトンタッチ。カフェ[サニー]を舞台に、信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)夫妻を中心に描かれた。
[スカーレット]の特別編は回想シーンも多かったが、『エール』はほぼ新撮。主要な新キャストも3人、橋本じゅん、井上順、金子ノブアキが名を連ねており、登場人物の過去や“家族愛”をテーマに描かれる。
第12週は、音の父・安隆(光石研)があの世から帰ってくるという突飛な物語の「父、帰る」、喫茶バンブーの2人・保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の馴れ初めを描く「古本屋の恋」、環(柴咲コウ)がフランス・パリにてオペラ歌手として成功するまでを描き出す【環のパリの物語】の3編に分けられる。各ストーリーの主人公、安隆、保、環をそれぞれ支えるのが、今回初登場となる3人の登場人物だ。
第56回(6月15日[月])、第57回(6月16日[火])に放送される「父、帰る」では、音(二階堂)が幼い頃に亡くなった光石研演じる父・安隆が“一泊二日で地上に帰る権利”がもらえる宝くじに当選し、10年ぶりに「この世」に戻ってくる姿を描く。橋本じゅんは「あの世」の門番らしき存在である閻魔(えんま)様を演じる。
幽霊となった安隆と音が思い出の団子を食べるシーンや、親族にしか見えない安隆と裕一(窪田正孝)が“初対面”する場面、落ち込む梅(森七菜)に安隆が言葉を掛ける姿など“家族愛”が描かれる。
第58回(6月17日[水])の放送では、裕一と音が通う喫茶「バンブー」の店主・保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の結婚までのなれそめが明らかとなる。保が東京・神田で営んでいた古本屋を舞台に、出不精で引きこもりがちだった保が毎週木曜に古本屋現れる恵へ恋心を抱く姿が描かれる。
また、保と恵の“恋のキューピッド”として井上順演じる木下一(きのした・はじめ)と、木下の親戚の子供・佐藤久志(山崎育三郎)の子ども時代の久志(山口太幹)も登場。裕一への“大人なびた助言”も話題となった幼少期の久志が、保と恵の恋を手助けする。
第59回(6/18[水])、第60回(6/19[木])の放送では、柴咲コウ演じる双浦環がまだ駆け出しだったころ、留学中のパリでの物語。パリ在住の若手画家で、ホームパーティーで環と出会い、恋人となる金子ノブアキ演じる今村嗣人(いまむら・つぐひと)との恋模様も描かれ、パリでの当時の生活や、ともに芸術家を目指す環と今村の2人の苦悩なども描かれ、現在の“強く美しい”環となった背景も垣間見ることができる。
▽橋本じゅんコメント
連続テレビ小説「なつぞら」(2019年4月〜9月)から程なくでしたので、オファー、本当にうれしかったです!役は正直「???」でした(笑)。衣装合わせの時、僕のアイデアを採用して頂いてやっとイメージできました。約30年前、連続テレビ小説「ひらり」(1992年10月〜1993年4月)で「六甲おろし」を歌いまくる医師をやり、翌年阪神甲子園球場開幕戦で始球式を依頼され、スタンドを巻き込んで六甲おろしを大合唱した事を思い出さずにはおれません。古関メロディよ永遠なれ。
▽井上順コメント
僕は古関裕而先生に直接ごあいさつしたことがあり、先生から「存じてますよ、いつも見てますよ、がんばってくださいね」というありがたいお言葉を頂いた思い出があります。そのころの僕はザ・スパイダース解散後、ソロでがんばっているところだったので、あのとき先生からエールを頂いたことは約50年経った今でも覚えています。オファーが来たときはとてもうれしかったですね。撮影も子ども時代の久志と楽しくできました。
▽金子ノブアキ コメント
連続テレビ小説の現場は聖域。久しぶりに参加させて頂いて本当に光栄です。光と影の間に揺れる今村嗣人という男を演じます。日々の彩りに加えて頂ける様、ベストを尽くします。宜しくお願い致します。
▽制作統括・土屋勝裕コメント
・企画について
第12週はチーフ演出の吉田照幸のアイデア・作です。狙いとしては、第11週で裕一の人生で一つの節目を迎え、また物語の後半では戦争など激動の時代に突入するので、その前にちょっと遊びの週があっても良いのではないかと思い、企画しました。
主人公をとりまく人々にもそれぞれドラマがあり、そういう人たちがいてこそ、主人公のドラマがより面白くなるという考えで、誰か一人の物語ではなく、それぞれの物語ということでオムニバスになりました。
関内家の父・安隆が幽霊になって戻ってくるのは、第2週で安隆は登場してすぐ亡くなってしまうので、安隆と光子のドラマ、さらに、安隆と本役の娘たちとのドラマをもっと見たいというのが狙いです。(第2週では、子役たちとのお芝居だけでしたので、光石さんと二階堂ふみさん、松井玲奈さん、森七菜さんの共演シーンを見てみたいという狙いがありました)
保と恵については、謎のカップルですが、どういう経緯で二人は結婚したのだろうかということを視聴者も気になっているのではないかということで、二人にフォーカスをあてる回を作りました。
双浦環については、環の過去を描くことで、環が歌手としての覚悟を持って生きている理由が分かり、より環の言葉に視聴者が納得し共感できるようになると考えたからです。
・出演者起用の理由
橋本じゅんさんは、閻魔様という設定の役です。一見怖そうな、とっつきにくい感じですが、実はとってもキュートで茶目っ気があり、安隆を温かく見守っているという役が橋本さんにピッタリではないかと思い、オファーしました。
井上順さんの木下という役は、コーヒーのいれ方を保に最初に教えたという人物なので、ハイカラでセンスの良いおじさまというイメージの役で、井上順さんにピッタリだと思いました。そして、久志の親戚のおじさんということで、久志同様に蝶ネクタイが似合うキャラクターですので、その意味でも井上順さんにふさわしい役ではないかと思いました。
金子ノブアキさんに演じていたただいた今村嗣人は、フランスで修行している若手画家です。前衛的なものを生み出す荒々しい芸術家というオーラがあって、どこか精神的には屈折しているところもある嗣人をうまく表現してくれるのではと思い、金子さんにオファーしました。