あまりにも多すぎて、それって幸せなんだと思う
キミとの出会い、小学校から帰って居間に入ったら小さいキミが母さんの腕枕で眠っていた
顎を撫でると寝ちゃうんだって、抱っこしたくて仕方なくて、おっかなびっくり抱かせてもらったのを覚えてる
ねえ、オレはお前のモノだったよね
なのに、いつからかお前が素っ気なくなったのは、莉緒がいたからなのかもしれないね
都合良く、オレが一番好きな頃ばかり思い出してしまう、お前がオレに一番懐いていた頃を
家脱走して、結局下の階のベランダで見つかった時の事、弟が迎えに行っても出てこなかったのに、オレが行ったら出てきてくれたね、アロウおいでって言ったら痩せた体で歩いてきてくれたよね
母さんに苛められる(ふり)すると鳴きながら助けにきてくれたよね
一時期はオレの手からしか食べない程の甘ったれだったよね、皿とオレ交互に見てずっと待ってたのを覚えてる
結構何してもされるがままで、シャツ着せてみたり帽子被せてみたり、フック式のイヤホンつけたりとかしてた、そういう写真も残ってて、愛しくてやっぱり悲しい
台所にいると、食べ物狙ってずっと足元にいた君がいない
テーブルの下で伸びて寝ていた君がいない
夕飯時にまとわりついてくる君がいない
どこをさがしても呼んでも君がいないんだって泣き出したらきりがない
思い出って残酷な言葉でも素敵な言葉でもあって、どうしたって過去でしかなくて、もう今に君はいないわけで
もう一週間たったっていうから、線香あげてお骨を抱いた。軽くて、固くて冷たくて悲しくて辛い
片足の骨が真っ黒だったのって弱っていたのかな、とか思い出す、で覚えていたいから残すために書く。オレが着てた、お気に入りのシャツでくるんで一緒に焼いた、あの柔らかかった体も忘れたくない
並べられた骨の中、頭蓋骨を見た時に、あの綺麗なオリーブはもうなくなっていてあの時にいやという程君の死を納得してしまった
何をしても何を見てもお前の思い出がたくさんでさ、たとえば
お風呂で膝の上に乗せてあげると大人しく洗われてくれたこと
トイレで今トイレットペーパーが入ってるカゴはアロウが小さい頃にお気に入りだったベッドだったこと
台所で手かけてベーコン待ってたこと
カメラ向けるとこっちを向くよな、自分が一番可愛いって解ってるコだった
二段ベッドがあった時、柵と棚よじ登ってきたアロウを布団の中に抱き込んで一緒に寝た時とか
現時点で人生の半分にお前がずっといたのに、いなくなってしまって、それをオレは解ってしまって
思い出すって言い方、もう過去ってことなのがすげー嫌、でもあまりにも浮かぶものが多すぎてテレビのCMですら切なくて思考が停止する
君とお別れして一週間が過ぎるけど、いまでもうまく息ができなくなるよ
後悔なんて自分まで関わるものだから、今はアロウだけに感情むけていたいからしたくないけど、やっぱり後悔してしまう事が多いよ、ごめんって言葉が溢れると止まらない
愛してるって最後にいってあげたのだっていつか解らない
君が一番可愛いかったのに、オレが見取れなかったのが無念で仕方ないんだよ
赤い、ハートの飾りと鈴がついたチェックの首輪が、オレが選んだ首輪が見つからない
悲しいって愛しいって悔しいって
本当に全部書き出すには多すぎてきりがないんだ
愛してるというオヤスミという、名前を呼ぶ、今にいなくてもここにいるから、ただ抱きしめて生きていくから本当に、安らかに眠っていると信じています
愛しいアロウ、ずっと想い続けるからね
オヤスミね