バンエルティア号の厨房から香ばしくてほんのり甘いにおいがただよっている。
(うまく焼けますように……)
そんな願いをこめながら
セネルはパン焼き窯を見つめていた。
-クリスマスプレゼント-
(よし…いい感じだ。)
見ているうちにこんがり焼き上がっていくパンの数々。
その形はサンタやトナカイやベルなど、クリスマス一色で、焼き色は同じだけどとても華やかな気がした。
「すごいですね!セネルさん!
とってもおいしそうだし、かわいいです*」
隣で家事をしていたリリスが言ってくれた。
「いや、リリスほどじゃないさ。」
「何言ってるんですか!パン作りってすごく難しいんですよ!
それを難無くこなしてるんですから!セネルさんは。尊敬しますよ!」
「あっ、ありがとう。」
あまりにもほめられて少しこそばゆい感じがしたけど、悪い気分はしなかった。
「と・こ・ろ・で!
そのパンは誰にあげるんですかあ♪?」
「!!!べっ、別に誰だっていいだろ!」
「あ〜!ってことは誰かにあげるってことですね♪」
図星をつかれてなんだか恥ずかしくなってきた。
「もういい!!この話は終わりだ!」
オレはバスケットにパンをつめこんで駆け足で厨房を出た。
「まあ、大体誰かはわかってるんですけどねー♪」
このとき、リリスは少し小悪魔な顔をしていた。
(勢いで飛び出してきたけど、どうやって渡せばいいんだろう?)
バスケットを持って甲板に出てきたオレは無計画だった。
でも、あいつはいつも甲板でたたずんでる気がしたから……
(やっぱり…いないのかな……)
一通り辺りを見回したが、甲板には誰もいなかった。
(寒いな……)
雪が降ってる上に風も強い。
だんだん身体が震えてきた。
(もう…いいかな……)
オレは渡すのをあきらめかけていた。
そんなとき、不意に後ろから温もりを感じた。
「こんなところにいたのか。お姫様。」
「ゆっ、ゆゆユーリ!?//」
オレは後ろから抱きしめられていた。
うれしいけど、恥ずかしい。
「なんでここに?」
「いや…腹へったからさ。お前のパンが食いてーなって思ってさ。」
「そっか…じゃあ、これ一緒に食べないか?」
「おっ!ほんとかよ!ありがとな!」
「いや…どうってことない。」
大好きなあなたに
小さなクリスマスプレゼント
*
追記は後書きです!