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ハツコイ

あの時から一体何度目の夏を迎えたのだろう

仕事場からすこし離れた駐車場に車を停め足速に目的地に向かう

草を刈ったばかりなのか
蒸された風に運ばれ緑の青臭い匂いがつんと鼻についた

夏が来たという証拠だろう
最期に貴方に逢ったのも丁度同じ季節

わたしの中ではあの夏で
ずっと時間が止まっている
あの夏を思い浮かべると

やはり後悔してしまうのだ…







『明日は寝坊するなよ!!臨海学校なんだからなっ』

『もう先生〜さすがの私でも遅刻しないよー!!』


学生だった頃、毎日遅刻して毎日授業もサボっていた私に
クラスにも馴染めないでいつも高慢な態度を取っていた私に
どの先生も諦めていたのに

担任だったあの先生だけは
私をどうにかしようと私と面と向かって話してくれた


初めてだった


先生が私なんかのために
クラスに馴染めるよう配慮してくれたり
先生方にも『素直になれないだけで、本当はいい子なんです』と言ってくれたり



本当に嬉しかった



本当は『ありがとう』って伝えたかった

だけど照れくさくっていつも
喉を通らないで終わる声




それなのに




『…担任の先生、なんですが…今病院から電話があって…』




嘘だ 嘘でしょう?
だって 昨日まであんなに元気だったじゃない
昨日だっていつもの笑顔で




私はただその場に呆然と立ち尽くした




温い風が長い前髪を靡かせた

違う ただ前髪が目に入っただけ
前髪が目に入って痛いから涙が出ただけ



『先…生』



私は先生に『ありがとう』すら言ってないのに
それと
もう一つ…

好きでした

伝えられずに終わってしまった淡き初恋に


小さかった頃に聞いた話を重ねた


"初恋は実らない"


という




あの頃と何等変わらない生温い風と

大人になってしまった私



だけど今も変わらないのは



もう世界中何処を探してもいない彼を求めていること

どうしてこんなにも彼に執着しているのかわからない

ただ彼が


こんな私をすこしでも守ろうとしてくれたこと


やっぱりわすれない。
わすれられない






END
20090505
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