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2周年



『今日何の日か覚えてるか?』

『ん〜?何だっけ〜…』


俺の隣で好きなアーティストの記事が載った雑誌を読んでいる彼女は、ついこの間まで高校生だった女の子だ。

出会った頃から物ぐさで、普通の女子高生に比べて何と言うか…落ち着いている。(良く言えば、ね。)

誕生日以外は何もくれないし(バレンタインデーもスルーしてしまう)
コイツは俺の事、本当に好きなんだろうか…と少しばかり不安になる。

〜…いやいや、普通逆なんじゃないのか?
記念日すら覚えてない彼女は…


『…2周年。』


一人悶々と考えていた時、彼女は俺に向かって言った。


『覚えてたんだ』

『当たり前じゃん。…これでも彼女ですから。はい、…これ…作った』

『えっ…何これ、クッキー!?』


今まで一切手作りのプレゼントなんてくれなかったもんだから、一気にテンションが上がって、彼女に抱き着いた。


『暑いー。そんなに喜ばないでよー』

『馬鹿!!お前、この2年間、俺に一度も手作りのものくれなかったじゃんか!そりゃーテンション上がるわ!!』

『う…だって…私不器用だから…お菓子とか上手く作れなくて…』


珍しく彼女はとっても素直に俺の胸に身体を預けてきた


黒くて長い艶やかな髪が揺れている。

その髪を指で弄んだ


『大好きだ…お前の事』

『う、ん…………私も』


顔を真っ赤にして最後に(好き)と小さい声で言った彼女が

この上なく愛しいと思えて来て仕方ない。


また来年も、再来年も、ずーっと先まで一緒に居て、この他愛ない幸せを味わっていたい…。






END
2009.03.11
second anniversary *
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graduation

3月は、別れの月。

ー…だけれど私達にとってははじまりの月…ー





校門の前に咲く桜の花びらがちらちらと舞う。

その中でみんなは惜別のときに涙する。

もう明日からこの学校に通えなくなる……。

そう思うと悲しくなるというのに……

一人だけは違った。





生徒も先生もみんな校門の前にいて、最後に先生と写真をとる人もいれば、抱き合って泣いている人もいる。


静まり返った校舎内に、ぱたぱたと一人の足音が響き渡る。


ある教室の前で止まった。




"理科準備室"




扉をあける。


『…先生…!私、やっと卒業したよ……!』


ひとり理科準備室にいる葉山先生は私が扉を開けるとほぼ同時に立ち上がった


『あー、惟那…いい加減待ちくたびれとったわー。…卒業おめでとう。』


この瞬間をどれほど待ち望んでいたのだろうか。

あたしが葉山先生に告白してから1年と少しが経った。

告白した当時、葉山先生は、付き合ってもいいが、あたしに対してある条件を課していた。


『お前が卒業するまで、俺に授業以外話かけたらあかんで』…と。


とても厳しい条件だったが、1年と少しの間、あたしは耐えた。(あとはメールでのやり取りだけしか許されなかったし、本当に頑張った!自分。)


『…先生どうしてここまでしたの?』


あたしはこの間、不安で仕方なかった。


葉山先生は、あたしと付き合うのが本当は嫌で、この条件だったら、きっと守れなくてあきらめるだろうとでも思ったのかな…?!などと思って不安で仕方なかった。


『……俺は、おまえと盛んに話をしているところを他の奴らに見られたりでもしたら、勘ぐる奴が現れるかもしれんと思って仕方なくこー言う条件を課したんや。もしも噂にでもなって校長に呼び出し…何てことにでもなったら、流石の俺でもお前を守れんやろ』

『えっ……』


だけど、その不安は今解決された。


先生は、あたしのことをちゃんと好きでいてくれていた……うれしくて。


涙がこぼれてきた。


『…わーってると思うけど、お前のこと、好きやで』

『せっ…せんせ……っ』


先生は、こぼれてくる涙を舌ですくい、そっと唇に自分の唇を重ねた。




『3月は、別れの月やけど…俺達はいま始まったばかりやな』


そう言ってあたしの大好きな笑顔で、あたしだけに見せてくれる笑顔で、あたしを抱き締めたのだった。




そう、あたし達は本当の意味で始まったばかり。

漸く街中で手を繋いで歩いていても誰にも咎められない、
教師と生徒ではなく、男女になったのだ。





END
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巡り会い

『櫻咲くん?!』

『……ー!結野先生』

真夜中だというのに未だ静まらない
ネオン輝く夜の街で 再会したのは
中学生の時の担任であり、当時憧れであった結野綺由先生であった。

あれから数年経って 俺は大学を無事卒業し、来月からは社会人となる。


『こんな時間に何をしていたの?ー……もう夜中の1時よ』

『先生、俺だってもう社会人ですよ』


櫻咲君が卒業してからもう何年も経ってるのね、と柔らかく微笑んだ。


……あの時とかわらない笑顔で




『……先生、呑んでるんですか…酒臭いです』

『んふふ〜よくわかったわねえ〜3件友達とハシゴしたの』


結野先生はそう言って俺の肩に手をのせた。


『あんまり呑み過ぎると身体に悪いです』

『普段はこんなに呑まないわよ〜……今日は特別』


そういって先生は俺の腕を引いて、今まで俺達生徒に見せたことがない切ない表情をした


『…ー櫻咲君、もう社会人になるならいいわよね……私にちょっと付き合ってよ』


えー…そんないきなり…
もう真夜中の1時を回っているんですけれど……


だがあの頃どんな時でも笑顔でいた優しい先生が酔い潰れそうな勢いで酒を呑んでいるのを見て、ただ事ではないと感じ付き合うことにした。







眠らない街・新宿であるだけに、開いている店は何件もあった。




『ジントニックお願い。…ー龍史君は?』

『あっと……じゃあ同じ物で』

『かしこまりました』



先生に初めて名前で呼ばれたので、驚いてしまった。

あの頃ただ憧れであった先生が目の前に しかも学校ではなく、洒落たバーに一緒にいる。

先生は口を開いた。


『ねぇ、櫻咲君……話、聴いてくれる?』

『いいですけど……どうしたんですか』

『私、10年位結婚を前提に付き合ってた彼に浮気されて、振られたのよね……』



え……



あの頃、皆の憧れの的だった先生が長く付き合っていた彼に浮気されて振られた…

先生が振られた事依然に
彼がいた事にショックを受けた。


『もう私だって30越えてるし…こんな私を貰ってくれる人なんているわけないじゃない…』


そう言って髪をかきあげた。

もはや彼女の見せる表情は先生ではなく女であった。

酔い潰れそうな勢いでお酒を呑んでいる彼女は、
顔を火照らせて泣きそうな表情を見せた。


『……先生を戴いてもいいですか?俺でよければ』



俺がそう言うと、先生は俺を見て一瞬目を見開いたが、微笑んだ。



『櫻咲君が私の事、貰ってくれるの?』

『先生がよければ』

『………携帯番号教えて?』

『いいですよ。…明日には忘れているかも知れませんから……先生が。』

『ふふ…元教え子が告白してきたんだもの。そう簡単に忘れないわ……』


2人で少し呑んだ後、先生は帰り際に俺に言った。


『貴方は変わったわね……頭はよかったけれど無口で、行動に移そうとしなかったもの……』


先生はあの頃、俺が先生が好きだった事を気付いていたらしい。


『また明日、ね』


そう言って先生は、笑顔でタクシーに乗り込んで帰っていった。





END
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夏休み

真夏の痛い紫外線も暑い太陽の熱も降り注ぐ


夏 休 み …







世間はもう夏休み一色で
道行くカップルも高校生位の若者が多い

そんな人々と3年前のまだ学生だった自分の姿を重ねる







『楽しかったー!!来年も夏になったら水族館行ってー映画観てー…』

『来年は海にも行こう』

『そうだね』



そう言って手を繋ぎ直し歩き出す



来年も二人でいることを期待して

街の雑踏の中を二人で歩いた…







『…あれからもう3年も経つんだ』


あの時二人で手を繋いで歩いた街も何も変わっていない


ただ 隣に君がいないだけ




『有休とって海にでもいこっかな…』




あの時守れなかった約束を守りに



君は今何処に居るだろう




END
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ヤキモチ彼女。

私の彼はいわゆるお笑い芸人。

最近は漫才とかをやってるお笑い番組だけではなく、バラエティー番組にも出ていて、そこそこ売れている方だと思う。

…それに彼は顔が格好良くて、背も高くて歌も上手くて頭もいい。

たいていのことはそつなくこなしちゃう

だからファンも多い訳で…




『今日のサイン会も、すごい人一杯だったね』

『そやなー。今回は年代がバラバラでマダム達も多かったなー…。ホンマ俺、最近人気急上昇中やな。』

『………。うん』


彼の人気が上がるのはとても嬉しいことで、
それによって彼の仕事が増えるのだって喜ばしいこと。

頭では理解しててもやっぱり…彼女としては他の沢山の女性ファンにたやすく笑顔を振りまいてるのを見たら…いらついてくる。

というか…


『なんや、お前。さっきからむくれて。あ、もしかして妬いとるのかー?俺がモテモテやから『違うって!!!』


この男は…。
人がヤキモチを妬いている姿を見てニヤニヤしやがって…


『まーしゃーないやろ、あくまで仕事やからな。』

『別に妬いてないって!!自意識過剰!!』

『そーやってイライラしてるときはヤキモチ妬いとるってことぐらい解ってるで!何年一緒に居ると思ってるねん!』


そんな私を分析しだした彼は私を後ろからぎゅーっと抱き締めて頭を撫でてきたのだった


『こーやってしたら大人しくなることもな』


そう言って彼は悪気もなくニコッと笑顔を見せてくる。

…あーもう。…ヤキモチを妬いてたことなんて一瞬にして吹っ飛んだ。

彼がこうしてくれる時が一番幸せだから…。

例えどんなに忙しい時でも、マメに私に会いに来てくれて。どんなに疲れていても私に笑顔をくれて。

本当はすごい愛されているって解ってるのに……。いつも試してしまう


『…ごめん…』

『別にいーんよ。そーやってたまーに可愛く素直になってくれれば…まあ、どんなお前でも好きなのは変わらんけど。』

本当はいつも素直にならなくちゃって思ってる。彼の優しさに甘えているから…

だから、もっと素直になって、可愛い気のある女の子になって、彼がくれるよりももっと!愛情を返したい。

そして彼を支えられるようになりたい。





END
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