季節はとっくに冬になりつつあるのにまだ香る、
夏服に染み付いたあの人の香水
短期間、とある有名予備校の講習会に通っていた。
受験戦争に折れそうな心に鞭を打つように
もっと精神的に強くならなくては、と。
そこの授業は学校の弛んだ授業とは全く違って
教師のやる気と熱気に押されっぱなしの授業だった
積極的に質問も聞きに行った
…そこのとある男性講師の一人と親密になった
彼は背が高く、一緒に並ぶと身長差が気になる、と意味のわからないことを理由にしてすたすたといつも私の二、三歩前を歩いていた
…彼は照れていた。
本当は身長差ではなく年齢差がかなりのネックだったんだろう
そんな大きな身体でそんなちっぽけなことを気にするんだもん、
ちょっとかわいいな、と思ってしまった
そんなところも好きだった
いつも出掛けるときは彼の車で
彼は街より海を好んだ
彼の助手席は心地好かった
無言でドライブになったとしてもその空間ですら愛しかった
彼の香水の匂いが移るほど近く長く一緒にいた
永遠なんてものこの世にはないってことはわかっていた筈なのに
ずっと続いてほしいと願ってしまった
もう彼はいないけれど
この空から私のこと、見守ってくれてるかしら
END