私は文庫カバーを付けたまま読む派なんですが。

読み終えた後。

カバーを外して表紙を見て、非常に感嘆しました。

由良が、落ちて行く吉野さんの手をとる絵。


深いお話でした。

例えば、現代文の後付け解釈など。

共感しました。


この本の面白いところは…現在から過去、過去から現在という前・後編に別れているところです。

時期が逆になっている、それでいて違和感も無い。


推理小説みたいなワクワク感、なのにそれほど真相にたどり着くまでが長くは無くて。

読みやすかったです。


加えて言うならば。

もし、この前後が入れ替わっていたなら。

きっとこの話はこれ程までに、心に染みる事は無かったでしょう。

すごい本です。


ハッピーエンドでは無いですが。

由良が明確に、個性的なキャラで描かれているからこそ、しっくりくるのだと思います。


でも、入院した由良と、落ちた吉野さんの心情は描写が無く…

そこがまた良いのかも知れません。


良い事があった話ではないのに。

読み終えた後、穏やかな気持ちになれる本は久々でした。


それでも。

やっぱり深く、少しばかり重かった。

まるで。

心臓を緩く掴まれているかの様な、圧迫感があったのは…否めません。


けれども。

良い、哀しいお話でした。