文字起こし2時間!

見えざるミライの透魔探索記!子世代編最終回!!
『泡沫の記憶、果てぬ黎明』

…これは私が憶えている、最後の世界の話、私を忘れた世界の話。
歌姫の子は独り、戦地へと赴く。ただ一つ、その命を贄として。子どもたちはもう追いつけない。彼のために刀を振るう事もない。
もうすぐ水底に沈んでしまうだろう。共に戦った仲間の顔が。

幾度も呼んだ、その名が…

転移の水晶玉の力で、透魔王国で初めて会った場所に戻ってきたカンナ達。
紛い物でも構わない。でもシグレの力になれない…今の自分たちに何ができる?
シノノメは今からでも間に合うかもしれないと、ロウラン城へ走ると言い出す。キサラギがいうには、何人にかに分かれ、別々の道を探すという策だが、戦力を分散させてはならない。最悪の場合、無駄死にになるだろうとジークベルトは反対。
もう…シグレが消えるのを待つしかないの…?!
そこでカンナが思い出した。
『記憶は時に人の命に匹敵する。だから代償として成り立つ』
『記憶と何かを秤にかけるような事があれば、その時は何に代えても、失いたくない方を選んでほしい』あの時は何の事かわからなかったが、今はわかる。
つまり、シグレの命とみんなの記憶、この両方を秤にかけた場合、失いたくない方を選ぶとしたら…間違いなくシグレの命。つまりみんなの記憶がシグレの命の代わりになる。
だが、今思い出してしまっては意味がない。あの時思い出してれば、シグレを止められたのに…!
オフェリアは父から貰ったスターライトクオーツに願いを込める。実は、ソレイユも父から貰った剣に括ってあったようだ。もしかしたら何かに役に立つかも…。
そこでエポニーヌは、それが転移の水晶玉だと見抜く。フォレオに見てもらった結果、色、形、両方を取ってもシグレが持っていた物と同じだが、シグレが持っていた物より小さく、内包された魔力も少ない。これでは全員であの場所に戻るのは不可能。
転移は一度きり。実験すらも叶わない。
でも、小さな可能性を、大きな希望に賭けたい。信じる力が、奇跡を起こすなら…シグレを助けられるなら…!!
そこに現れた、謎の少女。二つの水晶玉の力を増幅させ、全員の転移を可能にすると。

それが彼女の、最後の力だと

場所は変わって、ロウラン城、ハイドラの玉座。そして対面を果たすハイドラとシグレ。ハイドラはどの世界の『シグレ』も障壁を抜けられずにいたが、ここまでたどり着いたシグレはシグレではなく、初代透魔王・リュウレイだと言う。
しかし、リュウレイではない、シグレだ。本当のリュウレイはとうの昔にいなくなっている。本当のハイドラも、もういない。今そこにいるハイドラは、狂ってしまっている。
しかし、ハイドラは狂っていないと否認。狂っているのは人間だと言う。
自分が力を与えたのに、あんなに信じあっていたのに、自分のただ一つの間違いすら、許してはくれなかった。自分を蔑み。迫害し、退き、排除しようとしていた。
シグレはそんなことはないのではないかと。誰か一人でも自分を信じていた人はいるのではないかと問う。
ハイドラはそんな者はいない。仮にいたとしても、もう思い出せない。あるのは憎しみと絶望だけだと言う。
更に続ける。深淵に沈むような重い心、自分を忘れ笑い合う人間。人の繁栄は自分のお陰ののに、何故自分だけ苦しまねばならない?
だからって、世界を弄んでいい理由にはならない!
ハイドラは、人間は自分の都合で、自分の大恩を忘れる外道な生き物だと蔑む。
そもそも人間の営みは、竜あってのもの。だと言うのに、どうして自分だけが苦しまねばならない?どうして自分だけが死ななければならない?どうして人間が繁栄して自分が死ぬ…何故…。
その悲痛な叫びに、シグレは言葉を詰まらせる。
ハイドラは、自分とシグレとで、新たな透魔王国を作ろうと言う。もうすぐ見つかる、自分とシグレの理想の地…人の繁栄により、この世界は穢されている。それ故に、あらゆる異界や星界を全ての『自分』とともに探していたが、どこにも自分の『透魔王国』は無かった。
この世界の人間は、自分を裏切った。しかし、幾多の可能性の中に、そうではない可能性がきっとある。人間が刃向わず、刀が自分を貫かない世界。
しかし、どの世界もダメだった。他の世界へ干渉しても、どの世界も違う。例え何千回と繰り返そうと、同じ事。ハイドラの『透魔王国』は、どこにもない。
ハイドラは諦めない。自分とシグレがいれば、まだ穢されてない世界があれば、新しい国を、人と竜がともに生きる国をまた作れると。
そんな事はできない。もうハイドラは狂っている。戻れないところまで来ている。この世界が最後だ。ハイドラにとっても、シグレにとっても…。
いつかハイドラがリュウレイに教えた歌で、全てを取り戻す!例え死より辛い苦しみが待っていても、世界を、仲間を、ハイドラを救えるのなら!
その歌を歌えば、アクア同様、苦しみの中を彷徨う事になる。
シグレは、死より辛い悲しみは覚悟の上だ。その命で、全てを終わらせる。
シグレが歌を歌おうとしたその時、止めに入ったカンナ達、どうやら間に合ったようだ。オフェリアとソレイユの転移の水晶玉、信じる力、そしてリリスの力でここまで来れた。
シノノメ、ジークベルトの剣と刀が通じない。かなりの強敵。
それにミライは殺さずに生かしてある。もうハイドラには、彼しかいない。
ハイドラは分かり合えると思っていたのに、どの世界も、シグレも、所詮は出来損ないだと言って消え去る。
シグレはどうしてカンナ達がここに来たのか、何故自分の邪魔をしたのか激怒するが、カンナ達は見つけた。自分たちにできる事。
カンナ達は自分の記憶を代償にすれば、シグレが死なずに済むのだと知った。シグレはここで本当の事を話した。
ハイドラを倒す歌の代償は、術者の命か、それに匹敵する量の人間の記憶。だとしても、元の世界の記憶はもう朧げ、使えるのはここの世界に来てからの記憶。それでも構わない。仲間が助かるなら。
今そこにいるシグレは、みんなが知っているシグレじゃない。情をかける必要はない。それなら代償を払わずにみんな助かるのに。世界が戻るのもそうだが、シグレが助かるのが…シグレが凄く大事だ!
でも、シグレは記憶の価値を軽視しすぎているという。みんなの記憶がどれだけ大切か知っている。秘境では自分の力でなんとかした事なんてない、友達もたくさんはいない。秘境を出てからは全てが新鮮だった。自分と同い年の仲間がいて、戦って、自分にしかできない事を見つけられた。大切な思い出を…数々の思い出を…忘れたくない。シグレの心からの悲しみの声。
守りたい。みんなの記憶を、その中でしか出会えない人たちを。だから言えなかった『みんなの記憶をください』など。
ここで会った大切な仲間を、忘れてはいけない人とも出会ったから…。
ここにいるみんなは、別々の異界から来た者。ここにいるみんなの事は、カンナ達にとって初めて一緒に戦った仲間の事は記憶の中にしか存在しない。記憶を渡せば、それを忘れてしまう。全員死ぬ事と変わらない。シグレ一人が死ぬよりずっと残酷。
でも、それは違う!誰かの犠牲がある記憶なんて要らない!今目の前にいる…シグレ…あなたを守りたい…!!
みんな、覚悟は決めている。もし生きていれば、きっとまた会える。
みんなが嫌な奴だったら、シグレはみんなの事覚えたまま死ねたけど、みんな優しすぎた。
そしてシグレも覚悟を決めた。みんなの記憶を代償にすると。
さあ、向かおう!ハイドラのいる場所へ!


長いから後編に続く!
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