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小話〜西軍

1年365日のお題
8月20日「風鈴の音を耳にして」
西軍メンバーでほのぼの?系


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ほんの少し吹き抜ける風は生暖かく、お世辞にも気持ちいいものとは言えない。
遠くに近くに聞こえる蝉の声は、理不尽な怒りを生んでしまいそうだ。
しかし今日はいつもと何かが違う。
元親はその違和感を探して部屋を行ったり来たりしていた。

「何をしている長曾我部、目障りだ」

先ほどから同じ場所を歩いていたためその部屋にいた毛利が言う。
床に様々な紙面が広げられていること、大谷と対面しているところから、恐らく次の戦の話でもしていたのだろう。
視線すら寄越さずじっと紙面を見ている。

「こんに暑い中、よくそのように動けるものよ」

一方大谷は少し笑いを含めて言う。
全身包帯に巻かれた彼は、ほとんど裸に近い元親と比べれば確実に暑いだろうにそんな様子を少しも見せずに居る。
そんな二人を気にせずに続けて違和感の正体を探そうかと思った元親だったが、諦めて二人の間に腰を下ろした。

「して、貴様は何をしていたのだ」

再び毛利が口を開く。しかし視線は紙面の上のままだ。

「いや、なんていうかよ、何か普段と違わねえか?」

はっきりしない元親の物言いにようやく毛利の視線が元親を捕らえる。
しかしその顔は眉根を寄せ、明らかに不機嫌そうだ。
逆に元親が思わず視線をそらしてしまうほどには。

「だから、その、よ。何か違うんだよ」
「何が違う。この忌まわしい暑さも、貴様の沸いた頭も何一つ変わらぬ」
「はぁ?てめえ言わせておけば」
「一つ、上げるとするならば」

この暑さにやられてか、ちょっとしたやりとりで危うく喧嘩になりかけたところに、今まで静観していた大谷がふと思い出したように口を開いた。

「もしやとは思うが、あれではないのか」

ついっと指で示した先には今は静かに吊るされた風鈴。

「風鈴……そうか、風鈴か!」

実物を見て違和感の原因を理解した元親は一人あっさり納得する。
毛利は呆れた、と一瞥した後風鈴に目をやった。

「こんなとこでこんなもんを見れるなんてなぁ」
「趣深かろう?実はあれは三成が用意したものよ」
「へぇ、三成がねぇ……って、えぇ?!」

思いもよらぬ人名に元親は風鈴を凝視する。
そして柄を良く見ようと立ち上がり手にしようとしたが、すぐにその手を引っ込めた。
触れてはいけないものではないだろうが、何故か触れることを戸惑われたのだ。
その態度を見て大谷は声を出して笑う。

「笑うなよ……」

元親は小さくぐちたが、大谷は悪びれた様子も見せずに謝った。

「家康にしか興味ねぇと思ってたが……あの三成がねぇ」
「何、別段おかしな事なぞない。三成は毎年こうして新しい風鈴を買うてくる。まぁ三成の趣味と言うよりは、半兵衛殿との約束と言うた方が正しいか」

チリン、とその言葉に反応するように風鈴が揺れた。
先ほどまでとは遠い、どこか気持ちよくさえ感じられる風にいつしか皆黙り込んで、その音に耳を傾けていた。
そんな時。

「刑部!刑部はどこだ!」

遠くから三成の声が聞こえる。
騒がしい足音が次第に近づいてくるのがよくわかった。

「刑部、返事をしろ!」
「やれ、今日は一段と騒がしい。そのように叫ばずとも聞こえておるわ。吾はここよ、三成」

真っ直ぐこちらへ向かってきたのだろう三成は、大谷の姿を見つけると少しだけ表情を和らげたように見えたが、他人の姿を見つけると嫌そうに顔をしかめた。

「貴様ら、そこで何をしている」
「いや、少し物思いに耽っていただけさ」
「長曾我部……貴様にそのような心があったとはな」
「……さっきから好き勝手言いやがって……上等だ、表出ろや!!!」
「何を怒っているんだこの男は」
「さてな。して三成。吾に用があったのではないのか」
「……暑苦しい」

一際大きく、風鈴が音を立てた気がした。


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風鈴売りは江戸時代中期に登場したそうですが、風鈴自体はこの時代にあってもいい……よね?

お題配布先:絶対運命
http://www.geocities.jp/miayano/odai.html

小話〜仙蔵と久々知〜

「どうした?早くこちらへ来い」

正直久々知はそれ以上足を運ぶことを戸惑った。
常に誰かが居るはずの医務室に人の姿はない。
朝方担任から新野先生は出張で不在すると聞いた。
代理を任せられているだろう伊作も大方病人の元へ足を向けたのかも知れない。
それ自体それほど珍しいことではないし、久々知も一人で来たなら、否、今目の前に居る人物と一緒でなければ戸惑うことはなかったのかも知れない。

そんな久々知の心情をよそに目の前に居る人物、立花仙蔵は勝手知ったる何とやらでテキパキと必要な薬を取り出し、いつもは先生や先輩の座る位置に腰掛けた。

「早く座れ。治療が出来ないだろう?」
「…はい」

ここまで一緒に来て今更断ることも出来ず、大人しく座った。
患部を見せれば丁寧に薬を塗って簡単に包帯を巻き始める。

自分一人でも出来る治療ではあったし、最初はこの程度ならと治療するつもりもなかった。
けれどその時居合わせた仙蔵はそのままではいけないと医務室を勧め、少しためらうと何なら私がしてやろう、と共にやってきた次第だ。

特に話すことがなかったから、と言ってしまえばそうだが治療している間、その手をじっと見入ってしまった。

「あの…」

つい声が出た。視線が少しだけこちらを向く。

「何故わざわざ…」

特別仙蔵の手を煩わせるほどの怪我ではない。それこそ「行ってこい」と言葉だけでもよかったはずだった。
すると仙蔵は小さく笑った。

「なに、単なる暇つぶしだ。気にすることはない」
「しかし…」
「まぁ敢えて理由をつけるとするなら、跡をつけたくなかったから、とでも言っておこう」

そう言って少しキツメに結び目を作られ、意外に温かかった手が離れていった。少し物寂しく思った。

「久々知、お前は少し火傷を甘く見すぎだ。男だから、忍だから、多少の傷跡があってもいいという考えはやめた方がいい。文次郎のようなあからさまの男ならまだしも、お前には折角のその美貌があるんだ。使わなくても、いつでも使えるようにしておいて損はないぞ」

何気に褒めてもらっているのだろうか。
そんな印象も受けたが、仙蔵のことだ、本当にただの暇つぶしで今理由をつけたのかもしれない。
それに仙蔵の意見は確かで、跡が残ってもいいと軽く考えてもいたし、使わなくてもいつでも使えるようにしておくというのは、なるほどと素直に思った。
真意は掴めないが、久々知は仙蔵の言葉をそのまま受け取ることにした。

「立花先輩、潮江先輩の女装のこと何気にけなしていません?」
「何気に?いや、私は素直に思うぞ、あいつに女装は向かない。可愛そうなくらいにな」

お前もそう思うだろう?と同意を求められるが、後々本人に伝わっても困る。
久々知は無難に自分にはわかりかねる、とだけ言い、それよりもと感謝の意を伝えた。


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オチ?ないないそんなもの

小話〜三成と佐助〜

三成と佐助。
ちょっと険悪な二人?


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ギシッ、と三成が歩みを進めるたびに廊下は小さな悲鳴をあげた。
虫さえ眠りについた夜更け過ぎ、月明かりを頼りに三成は一人城内を歩いていた。
それはままならぬ睡眠から気を紛らわせるためだったのかもしれない。

ふと三成は足を止める。
辺りは静寂に包まれる。
三成は少しだけ視線を動かすと、口を開いた。

「そこで何をしている」

それに続く言葉はない。しかし三成ははっきりと言いきった。

「何をしていると聞いている----真田の忍」
「さすがは凶王と呼ばれる男、って言うべきかな?」

姿こそ現さぬものの、確かに聞こえたのは猿飛佐助のものだった。
三成はもう一度視線を動かし、その姿を追う。しかしさすがというべきか佐助の姿は見当たらない。大方天井裏にいるのだろうと見当は付けておく。

「真田はどうした」
「あれ?大将のこと気にしてくれんの?大丈夫、あの人ならちゃんと寝てるよ」
「…そんな主を放っておいて貴様は何をしている。私の首でも狩りに来たか」
「とんでもない。大将のために言っとくけど、あの人そういうの嫌いだから。あと一応同盟相手だし、今殺す必要はないよ」
「今…か」

鼻で笑えば佐助は「そう今は」と小さく笑って返してきた。




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このあともう少し続くつもりだったけど力尽きた。
ヤバい書けなくなっている。

小話〜三成と官兵衛〜

三成と官兵衛の日常のヒトコマ。


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「官兵衛、ここへ来い」

それは城内を休憩がてら散策しているときのことだった。
戦らしい戦もなく、三成は早く家康を殺したいと反対したがなんだかんだと大谷に宥められ、軍議でしばらくの間を休息の期間とすることと決められた。
石田の軍はその間も鍛錬などで忙しくしている者が多いようだったが、黒田にはそれに倣う必要はない。だからと言って帰省するというような選択肢もなく、また室内に篭っていても体は鈍るし、何より毛利と大谷がなんだかんだと執拗な嫌がらせをしてくるのだ。気分転換でもしていなければやっていけない。
一通り散策し終え、さて部屋に戻ろうかなどと思っている矢先だ。突然三成に呼び止められたのである。
しかも用を言いつける様子でもなく、近くへ来いと言っている。元々好かないやつであり、何をされるか分かったものではない。

「お前さんが自らここまでくればいいだろう?」
「……来いと言っている」

挙句に抜刀だ。とても人に頼むような態度ではない。口調からして命令しているのだが、それを抜きにしても酷い所業だろう。
しかし今ここで逆らうのは得策ではない。三成を倒したところで他にも敵は大勢居る。黒田は大人しく三成の側に寄った。
するとどうだろう。刀を納めた三成はじっと黒田に視線を寄越した。
少しだけ揺らいでいるがどう見ても顔を見られているようだ。
三成とは浅すぎる付き合いでもなく、けれどこのように見られることは初めてだった。
どうにも居心地が悪く、黒田は声をかけようと口を開いた。しかしそれよりも少し早く三成が言う。

「座れ」
「は?」

思わず気の抜けた声が出た。一方三成は二度言うつもりはないようで、ただじっと視線を寄越している。黒田は再び素直に従った。
胡坐を掻いて腰を下ろせば、今度は背後に回る。
そのまま首を狙うなどという手は嫌っているため、命の心配はないだろうが、三成の意図が読めずとりあえず居心地が悪いとしか言えなかった。

「ぎゃっ!」

突然頭を触られ、思わず体は飛び跳ねおかしな声が出る。
しかし触っている本人は気にしていないようで、そのままさわさわと触られている。
頭、というよりは髪の毛のようだ。房を作って確かめるように触れたり、時々軽く引かれる。
若干思い切り引っこ抜かれるのではないかと、黒田は内心気が気ではなかった。

「官兵衛」

しばらくそうしていると、三成が口を開いた。

「なぜ貴様の髪は波打っている」
「はぁ?」

今度はさすがに首を捻った。視線を向ければ三成はいたって真面目に質問をしているようだ。いつもと変わらない表情でいる。

「何をしてこんな形になった」

いよいよ持って三成の意図が読みきれずにいる。
何をしてといわれても黒田は特に何もしていない。
枷のせいで小まめに手入れが出来るわけでもなく、また穴倉で野郎ばかりに囲まれていたため人目を気にする必要もなかった。
ただ自然に伸びてきたのを軽く結っているに過ぎない。

「何を…といわれてもね。小生は何もしとらんよ」
「嘘をつくな」

ばっさりだ。何をどうすればそれだけの自信が持てるのか、黒田は逆に問いたくなる。しかしどう言われようと何もしていないものはしていないのだ。

「なんだい、凶王ともあろう奴が小生の髪に憧れてるってか」
「誰が貴様などに!私は…ッ」

何かを言いかけて三成は黙り込み、そしてきつく睨まれる。
黒田にとっては軽口をきいた程度だったのだが、三成には通じなかったようだ。慌てて別の言葉を探した。

「し、しかしなんだな。お前さんの髪は真っ直ぐだ。お前さんは気に食わんが、その髪は素直に綺麗だと思うね」

『佐吉の髪は真っ直ぐ伸びていて綺麗だね』

さして遠くないはずの記憶を三成は遠すぎる過去のように思い出す。
それはかつて尊敬をしていた人物が、眩しすぎる笑顔と共にくれた言葉だ。
怒声一つ返ってこないことに黒田はますます首を傾げた。
珍しいこともあるものだと、若干得した気分にもなる。
しかしそれは強烈な一打と共に前言撤回されることになった。

「ッ…貴様ごときがその言葉を吐くな!」
「ぃ、ってぇ!!!」

頭上高く、三成の刀が鞘ごと振り下ろされた。
それは寸分狂うことなく黒田の脳天を直撃する。
三成は怒り心頭を隠す様子もなく、ずかずかとそのまま立ち去っていった。
残された黒田は、自由ままならぬ両手で出来うる限り頭を押さえ、何故小生ばかりがこんな目に…と呟くほかなかった。


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官兵衛の癖っ毛と半兵衛の癖っ毛がなんとなく似ていると思って。書き途中に確認してみたらそうでもなかった。

小話〜三孫〜

風邪ネタ。三孫と言い張る。
ちゅー有り。


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「夏風邪は馬鹿が引くと聞いていたが、まさか貴様が、な」
「……冷やかしなら帰れ」

部屋に訪れ開口一番にそんなことを言われ、雇い主でなければ、そしてこんな状態でなければ引き金を引いていたと、孫市は思う。
朝から調子がよくないとは思ったが、どうやら無理を推して戦場に立ったのが決定打になったようだ。
途中からの記憶がない。
気付けば見慣れぬ部屋で寝かされていた。
数刻も経たないうちに倒れたのだろうと結論づける。
そうしている間に咳が出始め、体がほてり、体全体を倦怠感が襲う。
いつぶりかの典型的な風邪の症状だ。
早く治ればいいが…と思っていた矢先にいきなり三成は現れたかと思えば、冒頭の台詞だ。
自業自得とは言え腹が立つものである。

「うつけと笑いに来たか?」

正直一人にさせてくれと思った。
口を開くのも億劫だ。

「それだけの口が利けるなら大した風邪ではないな」

裏腹に三成は枕元に腰を下ろす。
そして額に乗せられた布を側にあった桶の水に浸し絞ると、綺麗に折り畳んで再び額に乗せられた。
まさかこの男がそのようなことをするとは思わず内心驚いた。

「……戦はどうした」
「あれしきの小事、私が居なくても問題ない」
「ならば部屋に戻って休め。我らに構っている暇が、」
「黙れ」

沈黙が覆う。
元々口数の少ない二人だ。体調の悪さも相成って孫市は瞼を伏せる。
少し荒い呼吸音だけが耳に届いた。

「辛いのか」

視線を寄越せば普段と変わらない三成の姿。
特に何をするでもなくただ腰を下ろしたままの三成に笑いが出そうだ。

「辛ければなんだ。この風邪を引き受けるとでも言うのか」
「出来るのか?」
「…口吸いで移ると、ッ?!」

言うが早いか孫市の唇は塞がれていた。
正直、からかい混じりで言っただけだった。
そういうことを伝え聞いていたのは確かだが、まさか三成が行動に移すとは思わなかったのだ。
その口は直ぐに離れる。

「何をする…ッ」
「楽になったか?」
「なるわけがない…!」
「そうか」

再び塞がれる。
孫市にしてみれば口吸いごときで、という意味だったのだが三成には伝わらなかったようだ。
数度、吸われては離れる。
正直苦しくて堪らない。
しかし三成はそれに気付いていないようだ。

こいつは私を殺す気か… 。

こんなことで死ぬのは願い下げだ。
けれど体は思うように動かない。
あまりの苦しさに、孫市は考えることを止めた。

ようやく解放されたとき、孫市は文字通り息も絶え絶えだった。

「大人しく寝ていろ」

言われなくてもそうする。
それすら言えずに孫市は睡魔に逆らうことなく意識を手放した。


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三成なりに心配してるんだよ!と言ったところで何人の人が同意してくれるのやら。
三孫好き!と言っておいて三孫話少なかったので書いてみた。
二人のラブラブ具合が上手く表現出来んとです。
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