台風…俺にとってはすごく迷惑極まりない。
部活は休み。
傘をさしても、効果はない。
おまけに今は帰れる状態ですらない。
唯一の救いは、授業が早く切り上がるコトぐらいだ。
…いや、“だったんだ”。
放課後、学校にはすでに、生徒の気配はない。
俺が、ちょっと居眠りしている間に皆は下校したんだ。
担任は、ショートホームルームが終わると、さっさと職員室に切り上げちまうし。
ダチだって、俺を無視して帰りやがった。
まったくもって災難だ。
「河合くん?」
誰かは分からないが、俺の名前を呼んだ。
振り向いた先には、美佐 恵太(ミサ ケイタ)という同じクラスのヤツがいた。
「まだ、帰ってなかったんだね」
「お前もな…」
はっきりいって、俺はコイツが苦手だ。
なんたって、ガリ勉野郎だし。
頭のワルい俺とはわけが違う。
どうせなら、仲のいいヤツに声かけて欲しかった。
「これじゃ、帰れないね」
「あぁ」
「河合くんはどうする?」
「…」
イライラする。
なんで、こんな時に限って話しかけてくんだよ。
早く止んじまえ。
「…河合くんって僕のコト嫌い…?」
あぁ、嫌いだよ。
とはさすがに言えない。
「…さぁな」
「そっか…、僕は好きだよ」
「…」
「運動出来て、カッコよくて、楽しそうで…」
小さい美佐の俯いた顔は、当然ながら見えなくて、ただつむじを見つめていた。
「僕もそんな風に、なりたいと思った」
小さい美佐は小さい声で、無理だけどね、付け足した。
美佐って、以外にいいヤツ?
つい、気持ちとは裏腹のコトを口に出していた。
「無理じゃねぇと思うぞ?」
「ホント?」
顔を上げた美佐は、頬を染め、目はキラキラ輝いていた。
「あ…あぁ」
内心では無理だろ。
という、気持ちはあったが、一旦口に出した言葉は取り返しがつかない。
まぁ、こんなに喜んでるしいいか。
「僕、取り柄っていえば勉強しかなくて…趣味とかもなくて、楽しそうに部活に取り組んでいるアナタが羨ましかったんです」
俺が楽しそう…か。
「そんなの、人それぞれだろ
?楽しいか、楽しくないかなんて」
「でも、制服をオシャレに着たりとかもしたくて…」
アクセを着けたりってコトか?
そういやコイツ、いつもキチンと制服着てるもんな。
こんなヤツでも、そういうコト考えるんだ。
いつの間にか、俺の中にあったイライラはなくなっていた。
「あのさ、今度一緒に買いに行くか? こういうの」
俺はアクセを指差した。
「いいの「もちろんだろ。何遠慮してんだよ」
「うん」
美佐のはにかんだ笑顔は、俺の心まで温かくする。
「あ、雨」
外を見ると、本当の嵐の前の静けさなのか、少し空が見えるほどだ。
「帰れるか」
「うん」
俺たちは、校門で別れを交わす。
「じゃな、また明日」
「うん、またね」
そう、これは明日会うための約束。
明日も話そうな美佐。
完
書き終えた〜(*´Д`)=з
数時間で書き上げたぞ!!