マイソロ2(ルクセネ)
「セネルー!セーネールー!」
バンエルティア号に焔の青年の声が鳴り響く。
「あら、ルークどうしたの?」
偶然会ったルビアが尋ねると、ルークは困ったように頬を掻いた。
「セネル見なかったか?」
「セネル?…確かー…あ、甲板に行ってたわよ」
「甲板か、サンキューなルビア!」
ルビアに居場所を聞いたルークは走り去って行く。
「……なんだか面白そうね♪」
ルビアはこっそり、去った彼の後をつけた。
うたた寝日和
それにしてもいい天気だ
青い空、白い雲、そしてどこまでも続く美しい海。
今日は仕事が入ってないので、ここアドリビトムに来る前に、シャーリーに薦められた本を読もう。
そう思い甲板にやって来ていたはずのセネルは、すでにうつらうつらと頭を揺らしていた。
優しい潮風が彼の頬を撫で、更に眠気を誘う。
日頃の疲れや常に神経を研ぎ澄ましているせいか、彼の限界も近い。
そのあまりの心地良さに、セネルの意識は少しずつ霞がかっていく。
読んでいた本は既に手に無く、セネルは心地好い睡魔にそのまま身を委ねた。
------
「――セネル…?」
途中、イリアやスパーダにからかわれながらたどり着いた甲板を見渡すと、隅で座る白銀。
いつもならすぐに何かしら反応を返す彼が、今日は何も無いのを訝しみ、ルークは駆け寄った。
どこか怪我でもしたのだろうか、具合が悪いのか…いつも無茶ばかりするセネルのことだ、きっとまた何も言わなかったのだろう。
「…おい、大丈夫……って…」
顔を隠していたふわりとした髪を上げれば、気持ち良さそうな寝顔。
思わず笑みがこぼれた。
「幸せそうな顔しやがって…」
いつも彼を気にかけるクロエの気持ちがわかった気がした。
「今日は暖かいもんな。…でもそのままだと寒いだろ」
用があったルークは、とりあえず起きるまで待とうと上着をセネルに掛け、隣に腰を下ろした。
「……ん………」
僅かに身じろぎしたセネルは何か暖かいものを求めるようにルークに抱き着いた。
「―――!!!?」
思いも寄らないセネルの行動に驚いたルークは、受け止めることが出来ず甲板の固い床に倒れた。
セネルが床と激突しないようにすかさず抱いたので、ルークは身動きが取れなくなってしまった。
「…はぁ…ま、こんな日もいいか」
「…すぴー…」
相変わらず幸せそうな白銀を無理矢理起こすなどルークに出来るはずも無くて。
「……次の仕事に遅刻したら、お前のせいだかんな…」
愛しい白銀の体温を感じながら、焔も目を閉じた。
------
一方、ルークをつけていたルビアはというと。
「ラブラブね、いいもの見れたわ♪」
「なーんかルークの奴ムカつくんだが…」
「スパーダ、嫉妬?」
「アァ?んなわけねぇだろ」
「――いやぁ、若いですね〜」
「「「!!!?」」」
――途中会ったスパーダ、イリア、そしていつの間にか居たジェイドと共にちゃっかり覗いていた。
「ジ、ジェイド!?いつの間に…!」
「嫌ですね〜、ずっと居ましたよ。…スパーダ、若いのにボケました?」
「ダァーッ!ウッセェ!」
「こらこら、そんな大声を出すと二人が起きてしまいますよ?」
「チッ…」
その言葉に納得したのか、スパーダは一つ舌打ちをして顔を反らした。
「―――あれ?みんなして何してんの?」
不意に聞こえた幼い声。
振り向けば首を傾げる赤毛の少年。
その後ろにはガジュマの男が佇んでいた。
「こそこそと声がすると思えば…お前達か」
ユージーンは四人の後ろにいる二人を見てため息をついた。
「なになに?そこ、何かあるの?」
背伸びしスパーダの肩越しから様子を見たマオは、きょとんとした。
「…何でこんなとこで寝てるの?」
「それはだなぁ…」
ニヤニヤと笑っているスパーダから話を聞き終えた頃には、マオは欠伸をかいていた。
「…マオ、眠いのか?」
「んー、なんかスパーダの話長いし、二人見てたら眠いかも…」
それを聞いたユージーンは少年を抱き上げる。
「寝ていいぞ」
「子供扱いしないで欲しいんですケド……すぅ…」
ぽんぽんと背中をあやすように叩けば、マオは睡魔に勝てず寝息を立てはじめた。
「…あんた、慣れてるのね…」
「いや、大抵の子供はこうすればすぐ寝付くはずだ」
「はずって……」
「俺はマオ以外寝かしつけたことが無い」
「「「「・・・・・・」」」」
パシャ、パシャ
不意に聞こえた機械音に振り向くと、そこにはさも楽しそうにシャッターを切るルビアがいた。
(ていうか、そんなものどこから出した…;)
「…ふふふ…後でガイとティアとクロエに見せてあげようかしら♪」
(((……………;;)))
ただならぬルビアの後ろ姿に、普通に引いてる三人(ガジュマとへそ出しルックの少女と緑の少年)。
(………♪(邪笑))
意味ありげに口角を上げる、陰険鬼畜眼鏡。
……端から見ればどれ程異様な光景なのだろうか。
こっそり覗いていたリッドは、人知れずため息をついた。
(…まぁ、これも平和な証拠……なのか…。…さてと、ロイドでも誘おうかな)
そう考え、リッドは踵を返す。
もちろんルークが請け負った依頼を、片付けてやる為に、だ。
(…後でセネルに沢山パンを焼いてもらおう…よし)
グッ、と拳を握り、この船の船長であるチャットの元へ急いだ。
End?
→