話題:突発的文章・物語・詩


昨日、僕の脳内に住む彼女と口付けを交わそうと思ったら全力で拒否された。
理由を問うと、「貴方の存在は極端に魚介類に似ていて、それでいて猛禽類なの。だから山に住んで川に流される人生のほうがマシだわ!」と言われてしまった。
自分の脳内での出来事とはいえ、これは胸に響いた。山から川は桃太郎、魚介類はホオズキダイオウイカ、猛禽類はミミズクだろうか。
僕にはイカほどの柔軟性は無いし、猛禽類のような獰猛さも無い。ましてや桃太郎の人生を送るほうがよっぽど良いとは、一体全体どういうことなのだろう。
その時、歴史は動かなかったが毛穴が疼いた。
脳の神経が冴え、アドレナリンが最高潮に達していた。
そう、僕には脳内彼女と拳で語り合う機会があったのだ。
突き、蹴り、関節技、タックル、寝技、投げ技、ヘッドワーク、そして、日常生活に多大な影響を及ぼす裏技までも熟知している僕たちは、ゆったりとしたジャージを身に纏って対峙した。
脳内の彼女はムエタイの構えをとり、徐々に距離を詰めてくる。
そこで彼女はえぐるように落ちるスライダーを投げた。ここで俺は駆け引きに負けたのだと悟った。
プレッシャーを掛け合い、牽制を重ね、彼女の策を読み取ったつもりだった。
だがしかし、相手は俺よりも一枚上手だったのだ。
だが、俺は肩、腕、腰、脚、全ての力を推力にして白球を打ちに行く。
「見逃せばいいのに」と罵られるかもしれない。
「まだチャンスはあるのだから」と呆れられるかもしれない。
だが、俺にはこれが全てなのだ。
命よりも、プロとしての誇りを守り切ることが……!!

肩、腕、腰、脚、全ての筋肉が悲鳴を上げる。
元よりボールゾーンギリギリの球を打とうと無茶な体勢でバットを振ったのだ。
下手をすると、二度とバットを握れないかもしれない。
だが、後悔は無いだろう。
俺は、やり切ったのだ。

白球が柵を越えて大歓声が湧いた時、俺は地面に突っ伏していた。
心の震えが、身体を通して表れた時、俺は土を食べていたのだ。
これほどの歴史を感じさせる味があるか!?
今までの人生、このような味に出会ったことがない。
芳醇な歴史を直接的に味わい、心が震えた。
涙や鼻水を大量に流し、土を貪り喰っている。
豊富な栄養素、凄まじく濃厚な旨味、舌の上ですぐさま溶けるような触感、このような食材を知らなかった自分を思い切り恥じた。
今まで、何をしていたのだろう?
僕は脳内の彼女に語り掛けた。
すると彼女は膝関節に前蹴りを一閃。僕の膝は完全に破壊されてしまった。
僕の砕けた膝に一目だけ視線をやり、意にもかいさぬ様子で彼女は語り掛ける。

「今から貴方に人体実験を行うわ」

そう、僕は被験者45451919号。
過剰な薬物の投与に耐え、言うならば選ばれた人間だ。
筋肉は銃弾すら通さないほどに発達し、知能は3+3を二秒で解いてしまうほどに成長したのだ。
彼女は問う。

「今からゲームをしましょう」

ゲームのルールは単純。
トランプのカードをお互いに1〜9までを一枚ずつ用意をする。
そして互いが同時にカードを出し、数字で上回ったほうが勝ちということだ。
最初に強い数字を出してしまうと、後から困窮に陥ってしまう。
すなわちこれは心理戦だ。
彼女は冷静沈着。唐突に9を出すような真似はしないだろう。
完全にパターンは読めている。
そして何より、こちらには秘策があるのだ。

「まず私から行くわよ」

伏せられたカードが、僕の目の前に迫る。
それはとても美しい輝きを保ち、僕の脳髄を刺激した。

「こ、これは、1000万円!」

「そう、これがあれば貴方は私と同等の暮らしができるの」

彼女の濡れた唇から、エロティズムな吐息と共に私に飼われてみない?という言葉が漏れた。同時に僕の尻から大便が漏れた。
その大便は小便と共にカナリアの鳴き声で歌いながら遠くの山へ飛び立っていった。
なんとも美しい光景だろう。
自然と人間は、やはり共存できるのだ。

こんな学校生活を過ごしました!楽しいよ!